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酔っ払い

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各家が言祝ぎを届けに参列する、当然に王族代表で招かれたマグワード王子が先頭にたった。序列とはいえ中々に緊張する。王子は当たり障りない程度で終わらせようとしたが、マルベルがそれを許さなかった。
「まぁ、殿下。そちらの御仁のことを良く教えて頂きたいわ」
「ああ、従兄のティアというんだ。母方の遠縁なんだ」
「そうですの!素敵な方ですわ、後程ダンスに誘っても宜しくて?」

早速と見目の良いティアは餌食として付け狙われた、一瞬嫌そうな顔をしたが「貴族ぜんとしていろ」という言葉を思い出して優雅に微笑む。
「初めまして、私などでお相手が務まりますか……」
「いいえ、是非お願いしたいわ!とっても素敵だもの!」
「はは……」

使いなれない言葉を紡ぎピクピクと顔を引きつらせるティアは、困った表情を見せてチラリと公爵令息の方を見た。立腹して顔を顰めていると思いきや、さすが貴族だ余裕綽々な顔で微笑んでいた。
「では、後程」
「ええ!ティア様!」
すっかりその気で答えるマルベルは後方にいたノチェの事など眼中にない。恐らく名前すら憶えていないだろう。


「うへぇ~蛇みたいな女だ、纏わりつく目線が厭らしい!おえ!おえぇ!」
ティアは粘りつく視線を掃う仕草をして、しきりにえずくような態度をした。それを見咎めたマガワードは「止せみっともない」と頭を小突く。
「まったく、これだから……ティアはダンスは踊るなよボロがでる」
「わーってる、ステップなんて出来ないからな」
彼は適当な理由をつけて断るつもりのようだ、酔ってしまったといえば強引に誘う事はできないだろう。

彼らは断罪の時を考えた、一番に目立つシーンで行わなければ意味はない。それはやはりダンスの時と言えた。作戦では彼女マルベルが誘ってきた頃合いであろう、だが予期せずティアを誘ってくるとは思わなかった。
「誘いにきたらボクがやんわりと断るとして、ノチェはどうする?」
「わ、私は……向こうがソフィニアとわからないのなら名乗る気がないの。一生関わり合いにならずに済むならそれが一番だと思う」

「うん、そうか。その辺は臨機応変と行こうか」
「……ええ」
静かにその時を待っていると何処かで酔いに任せた貴族が大立ち回りをやりだした。まだ、宵の口だというのにはた迷惑なことだ。
「け~こんおめでとう……ひーっく。なんだよぉ……俺にも色目を使っていた癖に!売女が!」
その人物は目が座っており理性が吹き飛んでいた、家族達がどうにか収めようと必死な様子だ。

「ふん、役に立ちそうじゃないか。予定変更だ」


***

「やぁやぁ、ご機嫌じゃないですか。ロッド伯爵、酒に付き合って下さいよ」
「あ”あ”?」
「どうしてそんなに荒れてるのです、ボクに教えて欲しいなぁ」
「ろうしてってお前……あの女はなぁ、先に俺様に粉をかけてきたんらぁ!」
指をマルベル嬢の方向へ指してしきりに憤慨していた。
「くそぉ、私の後妻になりたいというから……ひっっく、喜んれいたのいうのにぃ」

にこやかに接したマガワードは慌てる伯爵の家族に「任せて」と小声で訴えると給仕を呼び、シャンパンのお代わりをする。
「そんらものでは酔えん!パカにしゅるなぁ」
「はいはい、乾杯しようじゃないか。ロッド卿―――調子にのるなよ、伯爵風情が」
「い!?あひゃぁ……王子殿下……あ、あのこれはその」

一気に酔いが醒めたらしいロッド伯爵はオドオドとし始めた。耳元で芝居に付き合えと言ったマガワードは肩を寄せて「マルベル嬢に乾杯しよう!」と宣った、その声はかなり煩かった。
「マガワード様?いったいどうされたの?」ノチェは訳がわからず狼狽えたが「まぁ、任せておいて」とウィンクした。

「ノチェ、俺達は壁際に除けていよう。ここはバカ王子にやらせよう、クククッ面白くなってきたぜぇ」
「馬鹿って……ティア酷くない?」




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