完結 婚約破棄をしたいのなら喜んで!

音爽(ネソウ)

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彼の中のサンドラ

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「さあ、ベルティナ……こちらへいらっしゃいな。ウフフフ……」
正気の沙汰ではないことは明確だった、彼女はさらに小さくなりガタガタと震える。そんな彼女の肩を抱いて「私が護るよ」と王子が力強く言った。

「フェ、フェロ……私はどうしたら良いの?」
「大丈夫、落ち着いて!キミは私の後ろにいるんだ。良いね?」
「は、はい、だけど……」

相手はベルティナだけを見ている、丸投げしても良いのかと彼女は葛藤する。だが、そんな彼女を無理矢理に押し退けると彼は剣を構えてアマデオと対峙する。
「はあ、また邪魔をするというの?お兄様の敵め……許さないから」

彼はあくまでとしてそこにいた、目が爛々と輝き先ほどとは違って瞳に光が射した。ラファエロはそれを見逃さない。

「演技が上手いのだな、アマデオよ。ずいぶんとバカにされたものだ。いまキミは正気に戻っているね」
「……そんな事はどうでもいいさ、今ここで亡き者にしてしまえば王子だろうが関係ない」
「ほお、私が一人で行動していると思っているのか?お目出度いことだ」
「……え?」

腐っても王子だ、隠れて見守る者が常に付いている、陰から6名の男達がやってきてあっと言う間にアマデオを取り囲んでしまった。

「んな!卑怯な!」
「卑怯だと、果たしてどちらがだね?先に彼女を拐したのはそちらだ」
「くそう!」

アマデオは短剣を振り回して自棄を起こした、ブンブンと振り回す剣は誰彼構わず攻撃する。一見は立居振る舞いに手こずりそうだ。だが、そこは王子に就く影たちだ、彼の背後から一撃してあっさりと昏倒させてしまった。

「王子殿下、あまり無茶をなさいますな」
「いや、すまん。だが少しくらいはカッコつけさせてくれよ」
ラファエロは巫山戯た口調でそう言った。


***


捕縛されたアマデオは二重人格者だと診断された、だからと言って罪が消えるわけがない。この国の法ではどんな異常者だろうが処される、明らかな殺意があった彼は極刑になるはずだ。王族に楯突いてただで済まされるわけがないのだ。

「王子妃になる彼女を誘拐するなど無謀なことをしたものだ。何度極刑を与えても足りはしない!」
セリオッティ国王は大変立腹して、愛息子である王子の代わりに怒り狂った。ラファエロは第四王子で最後の息子である、第一王子とは10歳も離れており遅く生まれただけに余計に庇護されている。

「まぁまぁ、貴方。アレッシ子爵は解体で一族郎党私財を取り上げで良いじゃないですか」
「甘い!5親等まで死罪だ!」
「あらまぁ、それは困ったことだわ」

後に死罪と聞いたベルティナは「どうか御子だけは勘弁して欲しい」と嘆願した。
結局はアマデオ本人と当主だけが処罰となった。だが、財産のほとんどを失った子爵家は「死んだほうがマシだ」と大いに嘆いた。

アマデオの中に異常性を見ていながら口を閉ざしていたアレッシ卿は死罪を受け入れた。
「ああ、あの時の判断がこんなことに……私は罪深い」
彼は数年間幽閉された後に断頭台に立つことになる。数年の猶予を与えられたのは恩赦ではなく、その罪を重くその身に刻み反省させる為である。



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