完結 婚約破棄をしたいのなら喜んで!

音爽(ネソウ)

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誘拐

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「お嬢様?お嬢様ー!」
侍女の慌てぶりに護衛兵が駆け寄ってきた、だがやはりベルティナは何処にもおらず店内を隈なく探ったが発見にいたらなかった。

「ああ、お嬢様、いったいどちらに?」
泣き崩れる侍女を介抱して護衛兵たちは街中を探すことにした。だが、行方は杳として知ることは出来なかった。
「どういうことだ!お前達一人は出入り口にいたのだろう?」
「はい、間違いないく……可笑しいですね」

護衛兵は指を数えて持ち場にいたものを数えた、ひとり、ふたり……そして。
「っ!一人多いぞ!どうして気づかなかったんだ、いつの間にか護衛が一人増えている!」
「なんだって!?」

護衛兵は5名だ、だがいつしか6名に増えていたのだ。甲冑を身に着けた護衛兵は顔が認識できない、そこを衝かれたのだと知った護衛は愕然とした。白昼堂々と誘拐劇は行われたのである。



***


「あぁ、マヌケな護衛兵たちで助かったよ。ふふふ」
甲冑を脱いだ人物が優雅な所作で髪を掻きあげた、その人物はアマデオ・アレッシだった。彼は重い甲冑を脱ぎ捨てると「ふぅ」と溜息を吐いた。

「慣れないことはするものではないな、些か草臥れたよ」
ベッドに横たわるベルティナを一瞥すると彼は大きく伸びをして、その横に倒れこんだ。そして疲れた身体を癒そうと目を瞑る。

「おやすみ、時間はたっぷりあるさ」



寝息を立てだした彼を確認するとベルティナはそっと起き出した。ずっと機会を伺っていたのだ。心臓がバクバクと煩い、少しづつ距離をとり離れて行く。

「はぁはぁ……」
どこかの安宿と思われる部屋から抜け出して彼女は階下に降りた。すると転寝する宿の主を見つける、そーと抜け出すように足を顰めて出口に向かう。

「おや、どちらに?」
「ひぃ!……あ、あの」
思いがけず声を掛けられた彼女は恐る恐る背後を見た。眠りこけていたと思った店主が大欠伸をしていた。

「私は暇します、金銭は……ありませんのでこれを」
彼女はブレスレットを外すと店主に渡した、それは見事な彫金のもので宿代を遥かに超える代物だ。

「はあ、宜しいのですか?これほどの物を」
「良いのです!ごめん遊ばせ!」
彼女は脱兎の如く走り出してドアを開けた、外は薄暗くなっていて驚いた。ここは何処だろうとオロオロした。

「ああ。拙いわ……一体どこなの?」
外灯も疎らな僻地と見た彼女は兎に角そこから走りだす。目指したのは城が見える場所だ。そこに行けばどうにかなるとただ直走る。




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