完結 婚約破棄をしたいのなら喜んで!

音爽(ネソウ)

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新しい縁

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やがて傷心のベルティナの元に縁談の話がもちあがる、アマデオの来襲から数日後のことだった。
彼女はうんざりした顔で「もうご縁はいらないわ」と呟く。

父親は言う、もはやアマデオは廃嫡されることが決まり婚約は白紙撤回されたのだと。慰謝料は支払われたし、ベルティナは社交上傷もついていない、なんの憂いもないのだ。

だが、ベルティナはアマデオの婚約者として5年間も縛られて来た。気持ちを切り替えろと言われても無理な話だ。

「お父様、私は誰とも縁を紡ぎたくないのです、このまま捨て置いてください。なんなら修道院へ参ります」
「そんなことは許されないぞ!私の可愛い娘を修道院などに」
「……ですが私はもう」

悲しい表情でそう述べた彼女に卿は「なんということだ」と嘆く。
「分かったよベルティナ、気持ちを無視して悪かった。しばらくはゆっくりと過ごしなさい」
「ありがとう御父様、我儘を許してくれて」


その後の彼女は日常へと戻った、もう勘違いした男アマデオの突撃は回避出来たし、ゆったりと四阿で茶を嗜むくらいには安定した。
「良いお天気ですねぇ、お嬢様」
「ふふ、本当にね」ローズジャムをひと掬いして紅茶に落とした。少し温くなったが今の時期はこれくらいが良い。

実はアマデオの贈り物は続いていたのだが、ベルティナの目に触れないよう処分されていた。もう無関係なのだから教える必要はないというルーベンス卿の配慮だった。
それに加えて私兵による警戒は怠っていない、虫一匹たりと侵入できる余地はない。

「はあ、美味しいわ」そう呟く彼女に安堵の表情が浮かぶ。

***


「新しい教師?それはどの部門のかしら」
「はい、大陸語学と政治学でございます。特に政治学はお嬢様は苦手ですよね」
「うへぇ……お父様ったら、御休みを下さったと思えばこんな事をや~だ~!」

多少はしたない言葉を混ぜて不満を言う彼女は通常運転になっていた。本来の彼女は何処か抜けていて冗談を言う事が好きなのだ。



「お初にお目にかかります、フェロ・セティと申します」
「まぁ、ご丁寧によろしくお願いしますわ先生」

彼は三つ年上で茶色の髪に眼鏡の男性だ、爵位はないらしい。特徴的なのはやたら背が高いところだ。
穏やかそうな相貌に彼女は好感を持つ。

「では政治学から始めましょうか」
「ええ~!お手柔らかにね」






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