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花の意味
しおりを挟む「お嬢様、お花が届きました」
侍女が恭しく花束を持参して部屋に入って来た、だがベルティナの顔は苦悶の表情だ。その花の意味も差出人にも嫌悪しているのだ。
「いままで碌に贈ってくれなかったクセに、調子の良いことだわ」
共に送って来たカードには”愛しいキミへ”と書かれている、空々しいことだと彼女は言って握り潰す。何もかもが遅すぎてまったく心に響かない。
「花言葉を知って贈って寄越したのだとしたらとんだマヌケだわ、いいえ……危機感を覚えるわ」
クレマチスの花が揺れてこちらを見ていた、花言葉は「縛り付ける」ということ。意図して送ったのだとしたら恐ろしいことだとベルティナは自身の身体を摩る。
「どういたしましょう?お花はここに置かない方が宜しいですよね」
「そうね、もうしわけないけれど処分して」蒼い顔をした彼女は花束から目を逸らして言う。
あの日、決別の言葉を放った時の事を思い出して、キリリと胃の痛みを堪えて「うっ」と呻く。
なんでもない事のように彼はさらりと『そんなだから可愛気がないんだ』と言った。彼が間違ったことを当たり前のように述べたのでそれは違うと進言したに過ぎない。
たったそれだけだというのに、ここぞとばかりに彼は文句を言って来た。
「可愛気がない……ふふ、そうね、その通りだわ。だからと言って間違いを正すのは仕方がないわ」
いつもの彼女だったならば『ごめんなさい』と謝っていただろう。
だがあの日は譲らなかった、間違いを正した自分を捻じ曲げてまで肯定する気になれなかったのだ。
「そうよ……あの方は王族の名を間違えて言ったのだもの」
***
一方その頃、アレッシ子爵邸ではベルティナのことを想って溜息を吐くアマデオの姿があった。身勝手な彼は自分のことばかり優先しては「心が苦しい」と言い放つ。
彼女のことを想うのならば開放してやるべきなのだが、そればかりは駄目だと言って今日も破棄について拒否をする。
「いい加減にしないか!お前の我儘は通りはしないのだぞ」
「ですが、父上!ボクは諦めがつかないんだ!どうしても彼女の心を取り戻したいのだ!」
堂々巡りの対話に疲れた卿は「はぁ」と嘆息して部屋を出て行ってしまった。猶予はそれほどない、ルーベンス伯爵から貰った日数は後半月だ。
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