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「ねぇん、良いでしょう?コラン~お願い!私も行きたいのぉ」
「えぇ、仕方ないなぁ」
目の前でイチャつくのはコランタム・アネックス王太子と幼馴染だというマーガレット・ビルド伯爵令嬢だ。どういうつもりなのか、婚約者であるセレンジェール・アルドワン公爵令嬢との久しぶりの遠出に付き添いたいと言い出した。

当然断わるだろうと思っていたセレンジェールだったが、あっさりと許可を出したことに驚きを隠せない。
「あの、王太子様……それはちょっと困ります」
「え、どうして?湖に付いてくるくらい良いじゃないか。それに護衛達も共に来るんだ同じだろう?」
「そうですぅ、ちょっと我儘がすぎるんじゃなくてぇ?」
「な……!」

どちらが我儘を言っているのかと彼女は憤ったが、ここで声を荒げてはマーガレットの思う壺だ。きっとセレンジェールを悪者に仕立て上げ「酷いですぅ」と泣きじゃくるのだろう。彼女は落ち着いた声でこういった。

「私は一時でもお慕いしているコランタム様と二人きりで過ごしたいだけです。それが我儘でしょうか?」
「う、いや決してそのような事は」
彼女はコランタムを愛していた、マーガレットがどんなに邪魔してこようが彼女は諦めない。諦めきれないのだ。

「わ、わかった。なるべく時間を作るよ、それで良いだろう?」
「……はい、信用してますわ」
それを良く思わないマーガレットはススッと背後に周り「あぁ嫌だ、嫉妬は見苦しいわぁ」とセレンジェールにだけ聞こえるように呟くのだ。



3人は幼い事から交流があった、セレンジェールの父親が近衛騎士隊を統べる団長でその伝手で年の近いコランタムの良き遊び相手になった。一方で、マーガレットは元第三王女が臣籍降下したことで義理の叔母になり、やはりコランタムと交流すことになった。

彼女たちは仲睦まじく交遊していた、だがそれが少し変わっていく事態になる。
「え、私がお嫁に?王子様のですか?」
「ああ、そうだぞ。気心知れた相手だろう、王子も喜んでいると言う」
「私がお妃様に……まあ素敵」
当時10歳になったばかりのセレンジェールと12歳になったコランタムの縁だった。

それを聞きつけたマーガレットは面白くない、身分から言えばセレンジェールのほうが相応しい。だが、そんなことは彼女にとってどうでもいい事だ。

「悔しいわ!私のほうがずっとコランタムを好きなのに!」






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