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侍女ララの話
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「お嬢様にお見せしたいものがございます、あのさきほどのデボラ様の御話を聞いてしまいまして」
侍女のララが古びた一冊の本を手渡してきたの。
どこか知らない国の文字が表紙に書かれていた、開いて見ればやはり知らない文字が並んでいてさっぱり読めない。
入手先を訪ねる前に彼女が説明した。
東大陸の東端から大海を渡った遠い異国の書物だと語る、そんな高価そうなものを何故侍女が?
「私の祖先はその小国出身なのです、5代目あたりで身上を潰すまでは裕福な商人だったそうです」
「なるほど……その商人が海を渡ってということかしら?」
ララは静かに同意の頷きを返した。
「それでララはこれを読めるの?」
「はい、難しい表現は理解しがたいですけどおおよその話は理解できました」
どんな内容なのか私はとても気になった。
「良かったら読み聞かせてくれる?」
「はい、子供向けですのですぐ終わります」
ララはスウッっと息を吸ってその本を読み始めた「不遇の乙女は冷酷皇太子に溺愛される……」
タイトルを聞いた瞬間に姉のあの戯言が蘇ったわ。
それからララは淡々とその物語を読み上げていったの。
「……いかがでしょうか?」
読み終えたララが少し気まずそうに私の顔を覗う。
「ええ、ありがとうとても興味深い内容だったわ。物語というよりまるで預言書ね」
「そうです!なにもかもがミラベルお嬢様を。いいえ、この家と国の様子を見ていたかのような内容です」
先刻、姉が憑りつかれたように話したあの内容とほぼ同じだった。どうして姉がこの物語を知ったのかは不明。
私はあまりの事に激しい頭痛に襲われしばし考えがまとまらずにいた。
ララは箇条書きに書いたメモを手渡してくれた、主要な出来事をまとめたものだという。
「お嬢様どうか破滅などされませんように」
「ええ、だけどこの本は一体なんなの?」
かつて異国で流行った夢物語であるとララは言う。
「それでですね、これを書いた筆者が言うには【自分は転生者で不幸にもゲーム世界ではモブ以下だ】と愚痴をこぼしてさそうですよ。悔しいから物語をしたためて本にしたそうです」
「転生者?」
「一度亡くなって再び記憶を持ったまま蘇ったと解釈されてます」
そんなバカな!
待って、それじゃ姉はその転生者という巫山戯た存在なの?それなら辻褄が合う部分があるわね。
げーむとかシナリオ通りの生き方とか言ってたもの。
私が帝国の皇太子に断罪される文章なんてそのままだもの、あぁ酷いわ!どうして第三者の予言に従わなきゃならないの?
「ありがとうララ、今度異国語を教えて貰えるかしら?調べたい事があるの」
「はい、もちろんです!」
ララに御礼を言って絶対に姉に本をみせたりしないように約束して貰った。
姉にとっては幸せの予言の書だけど私には破滅の書だもの。
「あぁ嫌だ……姉の踏み台でしかないのが私の存在意義だなんて受け入れられない!」
託されたメモを開いて、これから起こるだろう試練を乗り越える算段をした。
「ええと、分岐?フラグが立つというのね。デビュタントを王太子にエスコートされる、うわっやっぱりアレはフラグってやつなのね!」
かつてエスコートをしたいと迫ってきたフロランの言動を思い出して背中が寒くなった。
でも従兄レナードに頼んだから大丈夫かしら?
「間違ってもバカが我が家へこないようにしなければ……」
アレのことだ身分を笠に無理矢理パートナーに成り代わるかもしれないわね。
私は1週間後に迫るデビュタントの夜会について、話し合いたいとレナードに先触れを送った。
侍女のララが古びた一冊の本を手渡してきたの。
どこか知らない国の文字が表紙に書かれていた、開いて見ればやはり知らない文字が並んでいてさっぱり読めない。
入手先を訪ねる前に彼女が説明した。
東大陸の東端から大海を渡った遠い異国の書物だと語る、そんな高価そうなものを何故侍女が?
「私の祖先はその小国出身なのです、5代目あたりで身上を潰すまでは裕福な商人だったそうです」
「なるほど……その商人が海を渡ってということかしら?」
ララは静かに同意の頷きを返した。
「それでララはこれを読めるの?」
「はい、難しい表現は理解しがたいですけどおおよその話は理解できました」
どんな内容なのか私はとても気になった。
「良かったら読み聞かせてくれる?」
「はい、子供向けですのですぐ終わります」
ララはスウッっと息を吸ってその本を読み始めた「不遇の乙女は冷酷皇太子に溺愛される……」
タイトルを聞いた瞬間に姉のあの戯言が蘇ったわ。
それからララは淡々とその物語を読み上げていったの。
「……いかがでしょうか?」
読み終えたララが少し気まずそうに私の顔を覗う。
「ええ、ありがとうとても興味深い内容だったわ。物語というよりまるで預言書ね」
「そうです!なにもかもがミラベルお嬢様を。いいえ、この家と国の様子を見ていたかのような内容です」
先刻、姉が憑りつかれたように話したあの内容とほぼ同じだった。どうして姉がこの物語を知ったのかは不明。
私はあまりの事に激しい頭痛に襲われしばし考えがまとまらずにいた。
ララは箇条書きに書いたメモを手渡してくれた、主要な出来事をまとめたものだという。
「お嬢様どうか破滅などされませんように」
「ええ、だけどこの本は一体なんなの?」
かつて異国で流行った夢物語であるとララは言う。
「それでですね、これを書いた筆者が言うには【自分は転生者で不幸にもゲーム世界ではモブ以下だ】と愚痴をこぼしてさそうですよ。悔しいから物語をしたためて本にしたそうです」
「転生者?」
「一度亡くなって再び記憶を持ったまま蘇ったと解釈されてます」
そんなバカな!
待って、それじゃ姉はその転生者という巫山戯た存在なの?それなら辻褄が合う部分があるわね。
げーむとかシナリオ通りの生き方とか言ってたもの。
私が帝国の皇太子に断罪される文章なんてそのままだもの、あぁ酷いわ!どうして第三者の予言に従わなきゃならないの?
「ありがとうララ、今度異国語を教えて貰えるかしら?調べたい事があるの」
「はい、もちろんです!」
ララに御礼を言って絶対に姉に本をみせたりしないように約束して貰った。
姉にとっては幸せの予言の書だけど私には破滅の書だもの。
「あぁ嫌だ……姉の踏み台でしかないのが私の存在意義だなんて受け入れられない!」
託されたメモを開いて、これから起こるだろう試練を乗り越える算段をした。
「ええと、分岐?フラグが立つというのね。デビュタントを王太子にエスコートされる、うわっやっぱりアレはフラグってやつなのね!」
かつてエスコートをしたいと迫ってきたフロランの言動を思い出して背中が寒くなった。
でも従兄レナードに頼んだから大丈夫かしら?
「間違ってもバカが我が家へこないようにしなければ……」
アレのことだ身分を笠に無理矢理パートナーに成り代わるかもしれないわね。
私は1週間後に迫るデビュタントの夜会について、話し合いたいとレナードに先触れを送った。
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