「ざまぁされる似非ヒロインだ」と姉に言われますが意味がわかりません。

音爽(ネソウ)

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この二人の脳にはキノコが生えている

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異常な日々を送った一年が過ぎ、13歳になった私は社交界デビューをすることに。
正直面倒でしかない、15歳で学園入学までの2年が恨めしいわ。

恋愛も結婚もどうでもいい、薬学と魔法学を学び研究して社会貢献するのが将来の夢だから。
聖女にしか使えないという治癒魔法に興味があって、もし一般人も使える可能性が開けたら素晴らしいと思っている。

聖女という縛りがどうも納得できないのよ。
数人しかいないと言われていて、職に就いた彼女たちの過酷な使命を改善できたらと思う。
結界術と治癒を毎日酷使されるなんて奴隷じゃないの。許せない!
立場は優遇されてると言われてるけど、皆短命なのはなぜ?負担が大きいからよね!

そんなことを考えて一人怒りを沸々とさせていたらデビュタントドレスが届いた。
そんなのどうでも良いわ。

極力控えめな値段で用意して欲しいとお願いしたの。
無駄に華美にするなら着ないと脅してね。一回きりのドレスなんてレンタルでもいいくらいよ。

届いたドレスはいたってシンプルだった、及第点ね。
両親は不満そうだったが、無駄遣いして家が傾いてしまうと説いたらやっと理解してくれました。

やたらドレスを新調したがる母も家令から出された帳簿を見て青くなった。
このままでは数年で財政破綻すると知ったのだもの当然ね!

「というか、なぜ気が付かないのかしら収支報告は毎月聞いてたはずよね?」
そう言って父を睨めば目が泳いでいる、母に隠してたのね……。

「お父様、愚かなことはおやめ下さいね?」
「う、うぐ。わかった今後は節約に努める、だから睨まないでおくれ」

私に弱い父は項垂れて懇願する。
とりあえず一家離散の危機は回避できそうね。

ところが姉はこの方針にご不満のようだった。
侯爵家としての威厳がとか、世間体とか。ギャーギャーと騒いでいたが、元から両親は姉を邪険にしており聞く耳をもつはずがなかったわ。

こんなところで姉妹差別が役に立つとはね。
姉が悔しそうに歯噛みしていたが、父の逆鱗に触れて大人しくなった。
これを見て姉が虐げられてるのは、こういう態度が影響してるのではと思うようになったわ。


良く観察すれば姉はいつも居丈高な態度を取っている。
「どうせ皆裏切るのでしょ!似非ヒロインと一緒に自滅しろ!アハハハッ」

そう意味不明な因縁をつけては執従者達を虐待しています。

それを咎めれば矛先は私になり、幾度か打たれたわ。
当然に両親は怒るわよ、一体姉はなにがしたいのかしら?自滅しそうなのは貴女だわ。

***

こんな日々が続いてグッタリしていると、招かれざる客……もといバカがやって来ました。
「デビュタントのエスコートは是非私にさせて欲しい!」
「はあ?」

先触れなしに訪問したかと思えば何を言ってるのですか、馬鹿王子。
「姉の立場を潰す気ですか?夜会において婚約者を蔑ろにするなんて軽蔑しますわ!」

不敬かと思う態度ですが、間違いを諫めるのは臣下の務めです。
捨てられた子犬みたいな顔をなさいますが、それ演技ですよね。バレバレです。

「わたくしは良いの……妹が幸せならば」
出てない涙を拭いヨヨヨと泣き真似をする姉に呆れます。

姉といいバカといい、ほんとうに頭がおかしいです。
人は恋愛や婚約などをすると脳内にキノコでも生えるんでしょうか?

これ以上おかしな事をグダグダ言うなら鼻フックしてぶん投げますよ!


というわけでエスコートは従兄レナードに頼みました、彼もデビューなので丁度良かったわ。
ハァ……無事に終われば良いのですが。

***

姉視点


「フロランは押しが弱いのよね!どうしてもっと食らいつかないのかしら」
このままじゃ婚約破棄イベントなんて到底無理じゃないの!

お花畑の愚妹はさいきん勉強ばかりするし、どうなってるの!?
あんたはヘラヘラ笑い、フニャフニャバカな事を喋って王子を誘惑すれば良いのに。

「そうよ、シナリオでは今頃はバカップル成立してるはずなのに」
これはおかしい、バグかしら?システムエラー?


あぁこのままでは帝国の冷徹皇太子マティアス・モンテレイド様と婚姻できない!
隠れ攻略者で私の推しキャラなのよ、絶対結婚したい!

「あんな顔だけ王子なんて御免だわ!無理にでも破棄しなきゃ」
あんなのが王に収まったら国は崩壊して、ゲーム内で最低最悪と称された大破滅エンドになってしまう。

あれは悲惨すぎる、愚王が招いた戦で帝国に蹂躙され草木一本生えない砂漠になるのよ。
性悪の私でさえ、国民が飢え苦しむシーンはトラウマになったわ。


なんとしてでもバカビッチ共をくっつけなければ。
フロランは弱いとはいえ妹に恋してる、これはシナリオ通りの展開。
私のことはツマラナイ女としては見てるが嫌悪にまでは育っていないわ。

「うーん、嫌われて破棄に持ち込むには……」

王国崩壊は二人に押し付けて、私は帝国の皇妃になり妹ざまぁをして寵愛を一身に浴びる妻になるの。
誰にも邪魔はさせないから!

昏い笑顔で今後の策を練っていた時、私は背後の人物に気が付かないでいた。
これが破滅エンドへの道が確定するとも知らずに。
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