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フェインゼロス帝国篇
テトラビスと青い天使
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レオニードの母国、テトラビスは『平和ボケの国』と他国に蔑称で呼ばれていた。
決して国軍が弱いわけではないが、他国間の諍いの仲裁はしても参戦することに消極的だからだ。
それに加え、無理に貿易をせずとも安泰な国力がある。豊かな土地を持ち、大きな鉱山も有し資源にも困らない。
妬みも含めて蔑称がつけられている事情もあった。
友好国も多いが敵も多いのである。
モルティガの協力もあり兄弟間のやり取りが平和に続いていた。
そして、元公爵家の問題もポツポツとだが集まりつつあった。
幾度目かの調査報告書面でやたら目にする名称にレオは困惑していた。
「なぁ、モルティガ。この青い天使とはなんかの暗号か?」
「いえいえ、帝国側の独特の呼び名のようですねェ。おそらくですが鉱山と関係があるようで」
「鉱山?……」
地理に疎いレオは世界地図を引っ張り出してしかめっ面になった。
フェインゼロス帝国は東大陸を牛耳る軍事国家である、テトラビスの東部連峰を挟んだ向こう側が帝国だった。
連峰に沿うように流れる大河アンジオが互いを阻むように流れていた。
「フェインゼロス……どっかで聞いたんだけど」
「そりゃ聞くでしょ、大帝国は有名ですからねェ」
「いや、そういうんじゃなくてさ。うぅーんなんだっけ?身近な人から聞いた気がするんだ」
眉間に皺を寄せて唸るレオを”面白い顔”だと言って、天井にぶら下がり観察するモルティガは呑気なものだ。
そこへ娘たちが依頼の仕事から帰ってきて「お腹空いた」と騒ぐ。
「お、珍しいな~地図なんて開いてさ。学園の課題か?」
バリラがちょっかいをだして、地図を眺める。
「レーオー!お腹空いたぁ!オヤツはないの?」
「ご主人様!タコ焼きしましょうよー!」
「あーもう、……考えがまとまらねぇ!」
思い出しかけた所で騒がれたレオは一旦匙を投げて、彼女達のオヤツを作ろうと地図を丸める。
手軽にできるものはないかとパントリーを物色する。
ミックスナッツとシリアルが出てきた。
朝ご飯用だが中途半端な量なので消費しちまおうとレオは取り出した。
「ナッツを砕いて小麦粉と砂糖とメープル……卵を一個」
黑い鉄板に適度に掬って並べた、あとは焼くだけだ。
「レオ、食べていい?」「ご主人さまぁ、味見だけでも」
「だーめ、粗熱が取れないと美味しくないし、火傷するぞ」
ブーブーと文句を垂れるフラとジェイラが纏わりついてきて鬱陶しいと怒る。
クッキーは冷めないとサクサク感がでないのでレオは我慢をさせる。
「ほらほら、お茶を飲んでる間に冷めるから!つーか手を洗って来いよ、真っ黒じゃないか」
「はーい」「ぶぅぶぅ」
居間に全員が集まって落ち着くと、レオがなんとか冷めたクッキーを大皿に盛ってやってきた。
「シリアルクッキーだ、ひとり5個だぞ」
「「「「いただきまーす」」」」
バリボリ頬張る彼女らを余所にモルティガは林檎をカリカリ噛み砕いていた。
果物が主食だという彼はクッキーに興味がないようだ。
腹を満たす彼らを余所に、再び長考に入ったレオはゲッソリしてカウチに寝そべった。
先ほどのことをグルグルと考えていた。
ふと、上品にクッキーを咀嚼している、とある人物と目が合った。
長い銀髪を揺らして、彼女は微笑み返した。
「!!!!!思い出したぞ!元王女ティリル!」
「え?な、なんですの?」
狼狽えるティルを余所に「思い出した!」と叫んでスッキリした様子のレオに怪訝な目を向けた。
「落ち着けよレオ、ティルが困ってんだろ?」
同郷のバリラが割って入る。
「フェインゼロスは二人の母国だったよな!?」
「へ?あ……うんそうだけど、なんだよいきなり」
勢いよくバリラの手を取ったレオに吃驚する彼女は若干頬を染めた。
「青い天使って知ってるか?なぁ!?教えてくれよ!」
「……あぁ、つーか落ち着けバカタレ」
鳩尾にワンパンを食らったレオは床で悶絶しながら「青い……天使ぃ」と呟いた。
決して国軍が弱いわけではないが、他国間の諍いの仲裁はしても参戦することに消極的だからだ。
それに加え、無理に貿易をせずとも安泰な国力がある。豊かな土地を持ち、大きな鉱山も有し資源にも困らない。
妬みも含めて蔑称がつけられている事情もあった。
友好国も多いが敵も多いのである。
モルティガの協力もあり兄弟間のやり取りが平和に続いていた。
そして、元公爵家の問題もポツポツとだが集まりつつあった。
幾度目かの調査報告書面でやたら目にする名称にレオは困惑していた。
「なぁ、モルティガ。この青い天使とはなんかの暗号か?」
「いえいえ、帝国側の独特の呼び名のようですねェ。おそらくですが鉱山と関係があるようで」
「鉱山?……」
地理に疎いレオは世界地図を引っ張り出してしかめっ面になった。
フェインゼロス帝国は東大陸を牛耳る軍事国家である、テトラビスの東部連峰を挟んだ向こう側が帝国だった。
連峰に沿うように流れる大河アンジオが互いを阻むように流れていた。
「フェインゼロス……どっかで聞いたんだけど」
「そりゃ聞くでしょ、大帝国は有名ですからねェ」
「いや、そういうんじゃなくてさ。うぅーんなんだっけ?身近な人から聞いた気がするんだ」
眉間に皺を寄せて唸るレオを”面白い顔”だと言って、天井にぶら下がり観察するモルティガは呑気なものだ。
そこへ娘たちが依頼の仕事から帰ってきて「お腹空いた」と騒ぐ。
「お、珍しいな~地図なんて開いてさ。学園の課題か?」
バリラがちょっかいをだして、地図を眺める。
「レーオー!お腹空いたぁ!オヤツはないの?」
「ご主人様!タコ焼きしましょうよー!」
「あーもう、……考えがまとまらねぇ!」
思い出しかけた所で騒がれたレオは一旦匙を投げて、彼女達のオヤツを作ろうと地図を丸める。
手軽にできるものはないかとパントリーを物色する。
ミックスナッツとシリアルが出てきた。
朝ご飯用だが中途半端な量なので消費しちまおうとレオは取り出した。
「ナッツを砕いて小麦粉と砂糖とメープル……卵を一個」
黑い鉄板に適度に掬って並べた、あとは焼くだけだ。
「レオ、食べていい?」「ご主人さまぁ、味見だけでも」
「だーめ、粗熱が取れないと美味しくないし、火傷するぞ」
ブーブーと文句を垂れるフラとジェイラが纏わりついてきて鬱陶しいと怒る。
クッキーは冷めないとサクサク感がでないのでレオは我慢をさせる。
「ほらほら、お茶を飲んでる間に冷めるから!つーか手を洗って来いよ、真っ黒じゃないか」
「はーい」「ぶぅぶぅ」
居間に全員が集まって落ち着くと、レオがなんとか冷めたクッキーを大皿に盛ってやってきた。
「シリアルクッキーだ、ひとり5個だぞ」
「「「「いただきまーす」」」」
バリボリ頬張る彼女らを余所にモルティガは林檎をカリカリ噛み砕いていた。
果物が主食だという彼はクッキーに興味がないようだ。
腹を満たす彼らを余所に、再び長考に入ったレオはゲッソリしてカウチに寝そべった。
先ほどのことをグルグルと考えていた。
ふと、上品にクッキーを咀嚼している、とある人物と目が合った。
長い銀髪を揺らして、彼女は微笑み返した。
「!!!!!思い出したぞ!元王女ティリル!」
「え?な、なんですの?」
狼狽えるティルを余所に「思い出した!」と叫んでスッキリした様子のレオに怪訝な目を向けた。
「落ち着けよレオ、ティルが困ってんだろ?」
同郷のバリラが割って入る。
「フェインゼロスは二人の母国だったよな!?」
「へ?あ……うんそうだけど、なんだよいきなり」
勢いよくバリラの手を取ったレオに吃驚する彼女は若干頬を染めた。
「青い天使って知ってるか?なぁ!?教えてくれよ!」
「……あぁ、つーか落ち着けバカタレ」
鳩尾にワンパンを食らったレオは床で悶絶しながら「青い……天使ぃ」と呟いた。
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