公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
上 下
124 / 172
フェインゼロス帝国篇

お家事情とヨモギ餅

しおりを挟む
レオとモルティガは妙な動きをしていたが仲間達は詮索することはなかった。
家の事情のことに踏み込むほど無粋ではない。


「話してくれるのを待ちましょう」ティルが銀髪を揺らしてそう言った。
姦し娘たちはその言葉に素直に同意する。

「うちらは自分のやるべきことをしようぜ、春先はそこそこ忙しいからな」
「うん、貴重な薬草が芽吹く頃だもんね!あの葉っぱは高く売れるんだもん!頑張るよ!」

「あの葉っぱ?」
フラの葉っぱ発言にジェイラがなんの事だと頭を傾いだ。

「ジェイラは知らない?止血剤になる葉っぱだよ、名前はんーっと……マグワート」
「あぁ、あの粉っぽいヤツ!お茶にして飲むと美味しいよね」


新芽は柔らかく香りも高い為、春先は貴重な薬草だと知られていた。
「ヨモギか、新芽を使った餅は美味いからな」

「え!?草を食べるの?」
「そうだよ、とても美味しいんだぞ」

レオの発言に一同の目がギラギラと輝いた、甘味と知るやさっそく採集に行こうと張り切った。
「それなら俺は餅粉と餡子を仕込んで待ってるよ」


いつも通りのレオの様子にバリラ達は少し安心した。
「あ、あのさレオ。無理はすんなよ?」

「え?……あぁわかってるよ。今は話せなくてごめんな」
レオは頭を掻いて謝罪するが、彼女達はそんなことはないと頭を横に振る。


***

小豆をグツグツと大鍋で煮込みながらレオは報告書を精査した。
「……屋敷と領地は一時的に王家管理と……俺は除籍してるからエドガーに戻してやりたいな」

元両親がやらかした損害を考えると容易ではいないだろうとレオは憂う。
何より巻き込まれた領民に申し訳が無いと渋面になった。


父として人間としても何処かズレていたソイツの顔を浮かべると「クソ野郎が!」とつい悪態を吐いてしまった。
すると頭上から声がした。

「荒れておりますね、珍しいこと」
「……モルティガか、神出鬼没だなお前は」

「クフフッそれが生業でございますからね、なにやら嗅ぎなれない匂いに釣られてしまいまして」
「あぁ、豆を煮ていたんだ。ほんとは一晩水に漬けておくんだけどさ」


少し長めに煮込めば問題ないさとレオは言う。そして懐かしい顔をして鍋の中を覗きこんでいた。
「ふむ、見た事のない料理のようですねェ、前世のものですか?」
「……そんなことまで知ってんのかよ、お前は怖いな」


レオは仏頂面でそう言うと、モルティガは愉快そうに笑うだけだった。


「そうそう、お土産がございますよォ。どうぞ」
モルティガは逆さのまま腕を伸ばしてソレをレオに手渡した。


「これは!?」
レオは2通の封筒を手にして驚嘆した。


「エド……ミル……。」
何より欲しかったものを手にしてレオは泣きそうになってその場に蹲った。
そんなレオを気遣ってか、モルティガは音もなくキッチンの天井から消えていた。





”前略 レオ兄様、お元気でしょうか。ボクもミルも王の庇護下にあり無事に過ごしています。お家の事情は粗方ご存じでしょう、でも心配しないでください。こう見えてボクらは案外冷静です、意外と図太い所があるようで自分でも吃驚しています。暫くは蝙蝠男さんを通じて連絡しますね。”


「エド、おまえは本当に10歳か?ああもうすぐ11歳になるね。俺よりしっかりしてんじゃん!」
苦笑しながら弟の手紙を閉じて妹の手紙を開いた。
丸々していて拙い字が並んでいた。


”レオ兄、動物園みたいな国に行っていたと聞いたわ!ずるいわよ!お土産はあるんでしょうね?でもきっとそんな気遣いはできてないんでしょ!シュー・ア・ラ・クレームを差し入れしてくれたら許すわ!”


「ミルらしい手紙だな。ハハハハッ」
なんてことない手紙だったが、レオは心が温かくなって「ほぅ」とため息を吐く。

「だいじょうぶ、俺が家を取り戻してやるからな!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル 異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった 孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます さあ、チートの時間だ

異世界でひっそりと暮らしたいのに次々と巻き込まれるのですが?

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 旧名「異世界でひっそりと暮らしたいのですが」  俺──柊 秋人は交通事故で死んでしまった。  気付き目を開けると、目の前には自称女神様を名乗る神様がいた。そんな女神様は俺を転生させてくれた。  俺の転生する世界、そこは剣と魔法が飛び交うファンタジー世界!  その転生先はなんと、色鮮やかな花々が咲き乱れる楽園──ではなかった。  神に見放され、英雄や勇者すら帰ることはないとされる土地、その名は世界最凶最難関ダンジョン『死を呼ぶ終焉の森』。  転生から1年経った俺は、その森の暮らしに適応していた。  そして、転生してから世界を観てないので、森を出た俺は家を建ててひっそりと暮らすも次々と巻き込まれることに──……!?

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

聖女も聖職者も神様の声が聞こえないって本当ですか?

ねここ
ファンタジー
この世界では3歳になると教会で職業とスキルの「鑑定の儀」を受ける義務がある。 「鑑定の儀」を受けるとスキルが開放され、スキルに関連する能力を使うことができるようになり、その瞬間からスキルや身体能力、魔力のレベルアップが可能となる。 1年前に父親を亡くしたアリアは、小さな薬店を営む母メリーアンと2人暮らし。 3歳を迎えたその日、教会で「鑑定の儀」を受けたのだが、神父からは「アリア・・・あなたの職業は・・・私には分かりません。」と言われてしまう。 けれど、アリアには神様の声がしっかりと聞こえていた。 職業とスキルを伝えられた後、神様から、 『偉大な職業と多くのスキルを与えられたが、汝に使命はない。使命を担った賢者と聖女は他の地で生まれておる。汝のステータスを全て知ることができる者はこの世には存在しない。汝は汝の思うがままに生きよ。汝の人生に幸あれ。』 と言われる。 この世界に初めて顕現する職業を与えられた3歳児。 大好きなお母さん(20歳の未亡人)を狙う悪徳領主の次男から逃れるために、お父さんの親友の手を借りて、隣国に無事逃亡。 悪徳領主の次男に軽~くざまぁしたつもりが、逃げ出した国を揺るがす大事になってしまう・・・が、結果良ければすべて良し! 逃亡先の帝国で、アリアは無自覚に魔法チートを披露して、とんでも3歳児ぶりを発揮していく。 ねここの小説を読んでくださり、ありがとうございます。

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

処理中です...