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フェインゼロス帝国篇
お家事情とヨモギ餅
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レオとモルティガは妙な動きをしていたが仲間達は詮索することはなかった。
家の事情のことに踏み込むほど無粋ではない。
「話してくれるのを待ちましょう」ティルが銀髪を揺らしてそう言った。
姦し娘たちはその言葉に素直に同意する。
「うちらは自分のやるべきことをしようぜ、春先はそこそこ忙しいからな」
「うん、貴重な薬草が芽吹く頃だもんね!あの葉っぱは高く売れるんだもん!頑張るよ!」
「あの葉っぱ?」
フラの葉っぱ発言にジェイラがなんの事だと頭を傾いだ。
「ジェイラは知らない?止血剤になる葉っぱだよ、名前はんーっと……マグワート」
「あぁ、あの粉っぽいヤツ!お茶にして飲むと美味しいよね」
新芽は柔らかく香りも高い為、春先は貴重な薬草だと知られていた。
「ヨモギか、新芽を使った餅は美味いからな」
「え!?草を食べるの?」
「そうだよ、とても美味しいんだぞ」
レオの発言に一同の目がギラギラと輝いた、甘味と知るやさっそく採集に行こうと張り切った。
「それなら俺は餅粉と餡子を仕込んで待ってるよ」
いつも通りのレオの様子にバリラ達は少し安心した。
「あ、あのさレオ。無理はすんなよ?」
「え?……あぁわかってるよ。今は話せなくてごめんな」
レオは頭を掻いて謝罪するが、彼女達はそんなことはないと頭を横に振る。
***
小豆をグツグツと大鍋で煮込みながらレオは報告書を精査した。
「……屋敷と領地は一時的に王家管理と……俺は除籍してるからエドガーに戻してやりたいな」
元両親がやらかした損害を考えると容易ではいないだろうとレオは憂う。
何より巻き込まれた領民に申し訳が無いと渋面になった。
父として人間としても何処かズレていたソイツの顔を浮かべると「クソ野郎が!」とつい悪態を吐いてしまった。
すると頭上から声がした。
「荒れておりますね、珍しいこと」
「……モルティガか、神出鬼没だなお前は」
「クフフッそれが生業でございますからね、なにやら嗅ぎなれない匂いに釣られてしまいまして」
「あぁ、豆を煮ていたんだ。ほんとは一晩水に漬けておくんだけどさ」
少し長めに煮込めば問題ないさとレオは言う。そして懐かしい顔をして鍋の中を覗きこんでいた。
「ふむ、見た事のない料理のようですねェ、前世のものですか?」
「……そんなことまで知ってんのかよ、お前は怖いな」
レオは仏頂面でそう言うと、モルティガは愉快そうに笑うだけだった。
「そうそう、お土産がございますよォ。どうぞ」
モルティガは逆さのまま腕を伸ばしてソレをレオに手渡した。
「これは!?」
レオは2通の封筒を手にして驚嘆した。
「エド……ミル……。」
何より欲しかったものを手にしてレオは泣きそうになってその場に蹲った。
そんなレオを気遣ってか、モルティガは音もなくキッチンの天井から消えていた。
”前略 レオ兄様、お元気でしょうか。ボクもミルも王の庇護下にあり無事に過ごしています。お家の事情は粗方ご存じでしょう、でも心配しないでください。こう見えてボクらは案外冷静です、意外と図太い所があるようで自分でも吃驚しています。暫くは蝙蝠男さんを通じて連絡しますね。”
「エド、おまえは本当に10歳か?ああもうすぐ11歳になるね。俺よりしっかりしてんじゃん!」
苦笑しながら弟の手紙を閉じて妹の手紙を開いた。
丸々していて拙い字が並んでいた。
”レオ兄、動物園みたいな国に行っていたと聞いたわ!ずるいわよ!お土産はあるんでしょうね?でもきっとそんな気遣いはできてないんでしょ!シュー・ア・ラ・クレームを差し入れしてくれたら許すわ!”
「ミルらしい手紙だな。ハハハハッ」
なんてことない手紙だったが、レオは心が温かくなって「ほぅ」とため息を吐く。
「だいじょうぶ、俺が家を取り戻してやるからな!」
家の事情のことに踏み込むほど無粋ではない。
「話してくれるのを待ちましょう」ティルが銀髪を揺らしてそう言った。
姦し娘たちはその言葉に素直に同意する。
「うちらは自分のやるべきことをしようぜ、春先はそこそこ忙しいからな」
「うん、貴重な薬草が芽吹く頃だもんね!あの葉っぱは高く売れるんだもん!頑張るよ!」
「あの葉っぱ?」
フラの葉っぱ発言にジェイラがなんの事だと頭を傾いだ。
「ジェイラは知らない?止血剤になる葉っぱだよ、名前はんーっと……マグワート」
「あぁ、あの粉っぽいヤツ!お茶にして飲むと美味しいよね」
新芽は柔らかく香りも高い為、春先は貴重な薬草だと知られていた。
「ヨモギか、新芽を使った餅は美味いからな」
「え!?草を食べるの?」
「そうだよ、とても美味しいんだぞ」
レオの発言に一同の目がギラギラと輝いた、甘味と知るやさっそく採集に行こうと張り切った。
「それなら俺は餅粉と餡子を仕込んで待ってるよ」
いつも通りのレオの様子にバリラ達は少し安心した。
「あ、あのさレオ。無理はすんなよ?」
「え?……あぁわかってるよ。今は話せなくてごめんな」
レオは頭を掻いて謝罪するが、彼女達はそんなことはないと頭を横に振る。
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小豆をグツグツと大鍋で煮込みながらレオは報告書を精査した。
「……屋敷と領地は一時的に王家管理と……俺は除籍してるからエドガーに戻してやりたいな」
元両親がやらかした損害を考えると容易ではいないだろうとレオは憂う。
何より巻き込まれた領民に申し訳が無いと渋面になった。
父として人間としても何処かズレていたソイツの顔を浮かべると「クソ野郎が!」とつい悪態を吐いてしまった。
すると頭上から声がした。
「荒れておりますね、珍しいこと」
「……モルティガか、神出鬼没だなお前は」
「クフフッそれが生業でございますからね、なにやら嗅ぎなれない匂いに釣られてしまいまして」
「あぁ、豆を煮ていたんだ。ほんとは一晩水に漬けておくんだけどさ」
少し長めに煮込めば問題ないさとレオは言う。そして懐かしい顔をして鍋の中を覗きこんでいた。
「ふむ、見た事のない料理のようですねェ、前世のものですか?」
「……そんなことまで知ってんのかよ、お前は怖いな」
レオは仏頂面でそう言うと、モルティガは愉快そうに笑うだけだった。
「そうそう、お土産がございますよォ。どうぞ」
モルティガは逆さのまま腕を伸ばしてソレをレオに手渡した。
「これは!?」
レオは2通の封筒を手にして驚嘆した。
「エド……ミル……。」
何より欲しかったものを手にしてレオは泣きそうになってその場に蹲った。
そんなレオを気遣ってか、モルティガは音もなくキッチンの天井から消えていた。
”前略 レオ兄様、お元気でしょうか。ボクもミルも王の庇護下にあり無事に過ごしています。お家の事情は粗方ご存じでしょう、でも心配しないでください。こう見えてボクらは案外冷静です、意外と図太い所があるようで自分でも吃驚しています。暫くは蝙蝠男さんを通じて連絡しますね。”
「エド、おまえは本当に10歳か?ああもうすぐ11歳になるね。俺よりしっかりしてんじゃん!」
苦笑しながら弟の手紙を閉じて妹の手紙を開いた。
丸々していて拙い字が並んでいた。
”レオ兄、動物園みたいな国に行っていたと聞いたわ!ずるいわよ!お土産はあるんでしょうね?でもきっとそんな気遣いはできてないんでしょ!シュー・ア・ラ・クレームを差し入れしてくれたら許すわ!”
「ミルらしい手紙だな。ハハハハッ」
なんてことない手紙だったが、レオは心が温かくなって「ほぅ」とため息を吐く。
「だいじょうぶ、俺が家を取り戻してやるからな!」
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