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トラブルプランツ スタンピード篇

猿面男の不幸(グロ注意)

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内紛が完全に収まったのは陽が落ちる寸前の頃だった。
窮状にも拘わらずジャルバは抗い、王都内を駆け巡り意外にもモルティガを翻弄したのでる。

「窮鼠ならぬ窮猿だねェ、クフフフッ楽しませてくれるじゃないか!」
モルティガの能力、音波による攻撃でほとんどの猿は戦意を喪失するか絶命していた。
それでも最後までジャルバの目には諦めの色は見えなかった。

しかし、追い掛け回すことに飽きたモルティガが物理攻撃に移るや、ジャルバはあっさりと降伏した。
顔と身体に傷を負う事をなにより恐れていたからだ。

ほぼ散壊していた猿軍は敗走したが、王都周辺を固めていた騎士達によって抵抗虚しく一網打尽にされて終わる。

***

「申し開きはあるか?」
野太く威厳ある声が玉座の上から降って来る。


強力なキャンセラー付きの拘束具に体の自由を奪われたサル顔が獅子王の顔を睨みつけた。
先ほど罪状を滔々と読み上げた宰相が「無礼者!」と言って罪人の顔を殴りつけた。

2mほど吹っ飛んだ猿はあまりの痛みにキィーキィー声を上げて悔し気に叫ぶ。
「野蛮なノウキン猫は腕力で抑えるしかできんのだな!私の顔に傷をつけた罪は重いぞ」

再び制裁を加えようとした宰相だが、王に停止され大人しく下がる。


「謀反を起こすは重罪である……残念だ。素晴らしい功績を数多成したお前に余は期待しておったのだ。どうしてこのような事をした?この椅子が欲しかったのか?見た目だけ豪華だが金で固めたこれは硬くて座り心地は最悪だぞ、国を背負う重責で余はいつも胃が痛い。」


それを聞いた猿は不機嫌そうに顔を顰め、身を起こすとやっと口を開く。

「俺よりバカに仕えるのが嫌になっただけさ、獅子王あんたは確かに万人を愛する懐の深さは持っている、だがなそれだけだ。俺がどれだけ優れた魔道具を作ろうとそれを軍事に使おうとしない、宝の持ち腐れだ!なんと腹立たしいなんと歯痒い!世界を掌握するほどの技術を我らは有しているのに!」


だが、獅子王は静かに「そうか」と一言述べて目を閉じた。
謀反を起こされるのは愚王の罪だと獅子王は己を恥じているのだった。



「では、この液体はなんの為に開発した?人智を超えた恐ろしい作用があると聞いておる」
「……ほう、無能なりにその薬の偉大さを知ったか。褒めてやろうフハハハハッ!」

全く反省の色を見せないジャルバに、獅子王は深くため息を吐いた。
かつては”共に国を豊かにしよう”と手を結び、酒を酌み交わした仲だった。


「道はいつから違えていたのだ……、余はお前を憎みきれぬ。世界一、豊かで穏やかな国を作ろうと語り合ったではないか」

翳りを帯びた獅子王の目は、悪意に歪むジャルバをとらえて言葉を待つ。

「酒の席での約束を鵜呑みにする野郎は阿呆だ……」
「なるほど、覚えておこう」


獅子王は宰相を呼び、耳元でなにかを囁く。

「あのようなものを……謁見の間に宜しいのですか?」
「かまわん、現実を見せねばあやつは目を覚まさないだろう」



ガラガラと重量のある大音が謁見の間の床に響かせてジャルバに近づいてきた。

「な、なんだ!?この化け物は!」

黑い鉄柵の檻に入れられた異形の生き物に慄き、ジャルバは床を這って逃げようとした。
しかし、騎士によって身を押さえられ、それを許されなかった。


「ジャルバよ、良く見物しろ。自称賢いお前にならソレが何かわかるだろう?」
宰相が冷ややかな声で言う。


それは赤黒い毛に覆われ凸凹に膨れた大きな身体を持ち、有り得ない箇所から手足が生えて歪に捻じ曲がっていた。
背に生えた5本の腕、脚はムカデのように10本並んでいる。

更に恐ろしいのは、所かまわずに突き出ている6個の頭だ。
背に腹に、臀部と胸部にと大小の頭と顔があった。

それらの顔は表情の抜けた人間の顔だった、獣ように咆哮したり突然笑いだしたり各々忙しい。
まさに狂気の光景。



「ま、まさかそんな……あぁぁああ!あれは完璧だったはずだ!こんなはずでは!」

「良く見ろ、お前が大好きなキメラだ。お前が精製した薬物を投与された死刑囚の成れの果てさ。案ずることはない某国の大悪人を譲り受けたまで。なんでも年若い娘たちを攫って嬲り殺しにした殺人鬼だそうだ、同情は要らん」

「ひっ!ひぃぃぃ!やめてくれ!お願いだソイツを俺に見せないでくれ!」

ジャルバはその場に蹲り、呻き声をあげた後に盛大に吐いた。
王達は堪らずすぐに洗浄魔法を従者に頼んだ。



「……危うく貰いゲロするところだったぞ、全く傍迷惑な研究をしていたものよ」
若干えずきながら、獅子王は忌々し気にジャルバを睨みつける。


「うぅ……違うんだ。俺は、俺はただ……本来の姿に戻りたかった、人間になり人を愛しみたかったのさ」
「どういう意味だ?」

ジャルバが何を言っているかわからない王達は戸惑うばかりだった。


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