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トラブルプランツ スタンピード篇
不穏
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完全撤収をしたレオ達は、戦利品を前に呑気に馬車の旅を満喫していた。
果物の甘い香りで充満する馬車内は癒し空間だ。
「キウイはちょっと硬いねぇ、そしてすっぱい!」
フラがキウイを丸かじりして顔を顰める、木熟したとはいえ味にバラつきがあった、やはり捥いだ後は追熟しなければ美味しくないようだ。
「これは林檎と一緒に保存してやると熟して柔らかく甘くなるんだ。」
「ふーん、どれくらいで美味しくなるの?」
一週間くらいと答えると少し残念そうに「わかったぁ」と言い、帰りは青果店に寄るんだと興奮していた。
ティルはパインを早く食べたいと珍しく我儘を言う、しかし移動中に刃物は危ないし汁が飛び散るからと宥めて我慢して貰った。
「でもさぁ、こんなに食べきれないよね。」
「そうだなぁシロップ漬けと砂糖漬けにしたり、ドライフルーツにすればかなり持つだろ」
「そっか!それならずっと楽しめるな!」
バリラもやはり甘いものが好きな女の子らしい発言をしている。
ジェイラはというと、保存が短そうな巨大葡萄に齧りついて至福の状態にいた。
だが半分でギブアップして、ティルに分けていた。
「この葡萄は丸かじりよりジュースが良くないですか?」
ティルが食べ難いといいながら巨大葡萄の楽しみ方を色々考えていた。
激しい戦闘後とあって、疲れと安堵ですっかり腑抜けていたレオ達だが、王都のギルドではスタンピードの調査が行われ慌ただしが増していた。
***
タウンハウスに戻ってすぐに、レオはギルドに呼び出された。
各PT代表やソロの冒険者が個別に面談するようだ、討伐の際の様子などを細かく報告するようアンケート用紙が配られる。
こんなことは初めてだとギルド内は騒めく、やはり通常のスタンピードとは異質なのだろう。
レオも落ち着きなかったが、アンケートに書き込むことで平静を装う。
それから30分後、アンケートが回収され面談が開始された。
それぞれが個室に呼び出され、急に慌ただしくなった。
レオはというとギルマスの部屋へ呼び出された、仕方ないと肩を竦めて入室する。
「こんにちは、インドラさん」
「うむ、数日ぶりだな。討伐ご苦労だった!」
面談が終わったらカレーを作ってくれとレオを困らせるインドラ。
「で、発生源での討伐はどうだった?」
「そうですね、最後に倒したのはキメラ型の魔物でした。他には特に……」
「おいおい、キメラがいたことが大問題だろ!人の手による接ぎ木の収穫方法はある。しかし野生のはずの魔物にキメラはありえん!例え寄生型だとしてもだ、寄生された側は栄養を摂られて死ぬ。共生して行動はしないのだからな」
「うーん、まぁ普通のキウイもパインも寄生植物ではないですね。ゴホン!アレを鑑定した結果がこれです」
レオはそういうとメモを一枚机に置いた。
それを読んだインドラは額に手を当てて唸る。
「レオ、お前は人が悪いぜ!人によるバイオ生物って知っての発言か」
メモには「遺伝子操作がされた異形植物」と記されていた。
「すみません、揶揄うつもりは、ただ信じられなくて。それに鑑定士は他にもいるでしょ?」
とうぜん先に知った情報でしょうとレオは顔色を覗う。
「そりゃいるけどな……お前さんほど精度が良くないんだ」
「ありゃ」
レオは前世での記憶に残る《遺伝子組み換え》程度の知識をふんわり知っているだけだ。
それでも遥かに発展していた元の世界ですら、近年になって漸くクローン技術などが成せたというのに、移動手段がいまだ馬という、このレトロ世界で遺伝子工学が存在するとは信じがたいと彼は思った。
石斧で狩りをしてた原人が、ある日突然パソコンでネット注文するくらいの差がある。
「で、魔法工学とやらが絡んだのは掴んだのですか?」
「いや、嫌疑在りという段階から進めてない。猿共は狡賢い、とっくに隠蔽してんだろうさ」
「猿ですか?」
「あぁ、工学省を牛耳り纏めてるのは霊長種のやつらなんだ。切れ者が多いぶん油断ならん輩よ。優れた魔道具を作れるもんだから調子にのっている」
奸智に長けていると言う霊長種、つまり猿型獣人は反抗的だとアライグマのビケットに聞いたことをレオは思い出した。
果物の甘い香りで充満する馬車内は癒し空間だ。
「キウイはちょっと硬いねぇ、そしてすっぱい!」
フラがキウイを丸かじりして顔を顰める、木熟したとはいえ味にバラつきがあった、やはり捥いだ後は追熟しなければ美味しくないようだ。
「これは林檎と一緒に保存してやると熟して柔らかく甘くなるんだ。」
「ふーん、どれくらいで美味しくなるの?」
一週間くらいと答えると少し残念そうに「わかったぁ」と言い、帰りは青果店に寄るんだと興奮していた。
ティルはパインを早く食べたいと珍しく我儘を言う、しかし移動中に刃物は危ないし汁が飛び散るからと宥めて我慢して貰った。
「でもさぁ、こんなに食べきれないよね。」
「そうだなぁシロップ漬けと砂糖漬けにしたり、ドライフルーツにすればかなり持つだろ」
「そっか!それならずっと楽しめるな!」
バリラもやはり甘いものが好きな女の子らしい発言をしている。
ジェイラはというと、保存が短そうな巨大葡萄に齧りついて至福の状態にいた。
だが半分でギブアップして、ティルに分けていた。
「この葡萄は丸かじりよりジュースが良くないですか?」
ティルが食べ難いといいながら巨大葡萄の楽しみ方を色々考えていた。
激しい戦闘後とあって、疲れと安堵ですっかり腑抜けていたレオ達だが、王都のギルドではスタンピードの調査が行われ慌ただしが増していた。
***
タウンハウスに戻ってすぐに、レオはギルドに呼び出された。
各PT代表やソロの冒険者が個別に面談するようだ、討伐の際の様子などを細かく報告するようアンケート用紙が配られる。
こんなことは初めてだとギルド内は騒めく、やはり通常のスタンピードとは異質なのだろう。
レオも落ち着きなかったが、アンケートに書き込むことで平静を装う。
それから30分後、アンケートが回収され面談が開始された。
それぞれが個室に呼び出され、急に慌ただしくなった。
レオはというとギルマスの部屋へ呼び出された、仕方ないと肩を竦めて入室する。
「こんにちは、インドラさん」
「うむ、数日ぶりだな。討伐ご苦労だった!」
面談が終わったらカレーを作ってくれとレオを困らせるインドラ。
「で、発生源での討伐はどうだった?」
「そうですね、最後に倒したのはキメラ型の魔物でした。他には特に……」
「おいおい、キメラがいたことが大問題だろ!人の手による接ぎ木の収穫方法はある。しかし野生のはずの魔物にキメラはありえん!例え寄生型だとしてもだ、寄生された側は栄養を摂られて死ぬ。共生して行動はしないのだからな」
「うーん、まぁ普通のキウイもパインも寄生植物ではないですね。ゴホン!アレを鑑定した結果がこれです」
レオはそういうとメモを一枚机に置いた。
それを読んだインドラは額に手を当てて唸る。
「レオ、お前は人が悪いぜ!人によるバイオ生物って知っての発言か」
メモには「遺伝子操作がされた異形植物」と記されていた。
「すみません、揶揄うつもりは、ただ信じられなくて。それに鑑定士は他にもいるでしょ?」
とうぜん先に知った情報でしょうとレオは顔色を覗う。
「そりゃいるけどな……お前さんほど精度が良くないんだ」
「ありゃ」
レオは前世での記憶に残る《遺伝子組み換え》程度の知識をふんわり知っているだけだ。
それでも遥かに発展していた元の世界ですら、近年になって漸くクローン技術などが成せたというのに、移動手段がいまだ馬という、このレトロ世界で遺伝子工学が存在するとは信じがたいと彼は思った。
石斧で狩りをしてた原人が、ある日突然パソコンでネット注文するくらいの差がある。
「で、魔法工学とやらが絡んだのは掴んだのですか?」
「いや、嫌疑在りという段階から進めてない。猿共は狡賢い、とっくに隠蔽してんだろうさ」
「猿ですか?」
「あぁ、工学省を牛耳り纏めてるのは霊長種のやつらなんだ。切れ者が多いぶん油断ならん輩よ。優れた魔道具を作れるもんだから調子にのっている」
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