公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

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獣王国篇

フラウットの家

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 なかなか新鮮な空の旅だった。シェフが生み出した最高の料理を俺とアマミヤとリーズで楽しんだ後、少々昼寝をしながらアルコールを抜き、気付けばオストロンに到着していた。

「これまた随分と文明が進んだな。見たことないぞこんな飛行船」

 ドラグーンタワーから数十キロ離れた荒野にあるオストロンの軍事施設に専用機を着陸させた。専用機から外へ出ると、青龍リオさん、マルファス、アテナを含めたオストロンの要人十人が俺達を出迎えてくれた。

「これは前の世界にいた時に国のトップが乗っていた物を模した飛行船ですよ」

「成程。立派な飛行船だな。うちにも流通させてほしいものだ」

「一基で金貨1,000枚取りますけど大丈夫ですか?」

「――それは少し困ったな。皆の意見が必要だ」

 青龍リオさんはそう言って他の要人の表情を伺った。

「買いましょう」

「こんな立派な飛行船があれば、他国への財力のアピールにもなります!」

 と、やたらと要人達は乗り気だった。多分本人達も乗ってみたいだけだろうな――。オストロンの国民は青龍リオさんの事を神様扱いしているしな。

「本当に買うの? 金貨1,000枚って凄い額だよ?」

 マルファスは国民の反対の恐れを考慮しているようだった。

「検討が必要だな。アテナは現状の国の出費状況を確認しておいてくれ」

「かしこまりました」

 とアテナは返事をしていた。要人達は――少し残念そうな表情をしている。


「ナリユキ閣下。この度は世界を救って下さり誠にありがとうございました。私はグラウディー・マルキージオと申します」

 一人の貴族が俺にそうお礼を言ってきた。彼は青い瞳が特徴的で、茶色の髪をオールバックにして整えた顎髭が似合う色気がある中年男性だった。年齢は四十半ばくらいだろうか。何より特徴的なのは、他の貴族達とは違いグレーのスーツを着ていた。

「いえいえ。皆と力を合わせたから戦う事ができました。それに、青龍リオさんの力が無ければ、自国の自然を意識してしまい、全力で戦う事もできなかったでしょう」

「またまたご謙遜を」

 と、マルキージオ卿は笑みを浮かべていた。

「今回、ナリユキ閣下の助力が出来る事を我々は大変光栄に思っております。我々は青龍リオ・シェンラン様を神と崇めておりますが、今回の一件でナリユキ閣下も同義です。黒龍復活で失われていたかもしれない命を守ってくださいました。もちろん、我々の大切な家族も守ってくださいました。ここにいる七家は、ナリユキ閣下の御力になれるのであれば御身を捧げる覚悟もできております」

 そう言ってオストロンの貴族達は俺に対して土下座をしてきた。流石に困る――。

「彼等、オストロン七大青家ななだいせいかが自らで決定した事だ。オストロンが繁栄したのも彼等と彼等の先祖が余に助力してくれたからこそだ。彼等の力があれば、マーズベルもより繁栄する事だろう。彼等の気持ちを受け取ってあげてくれないか?」

「ええ。勿論です。皆さん宜しくお願いします」

 俺がそう伝えると、七大青家ななだいせいかの貴族達は顔を上げるなり互いの顔を見合わせて喜びに満ち溢れていた。

 彼等も種族は様々だった。先程挨拶をしてきたマルキージオ卿を含めて人族は四名。その他は森妖精エルフ山小人ドワーフ一角獣ユニコーンの三種族。特に一角獣ユニコーンなんてマーズベルにもいない種族なので大変珍しい。

「いいから皆立って下さい。ずっと膝を付かれた状態なのは恥ずかしいです」

 俺がそう言うとマルキージオ卿の合図で七大青家ななだいせいかの皆が立ち上がった。

「今回、他国への遠征はこの私が務めさせて頂きます。ナリユキ閣下。並びにミユキ・アマミヤ様、リーズ様。どうぞよろしくお願い致します」

「宜しくお願い申し上げます」

 俺とアマミヤとリーズはマルキージオ卿に改めて挨拶を行った。

「よし、ではそろそろ行くとしようか」

 青龍リオさんがそう言うと飛竜ワイバーンが雄叫びを上げる。

 俺達は飛竜ワイバーンの背に乗り。ここから数分かけてドラグーンタワーへと向かう。

 15分程飛んで到着すると青龍リオさんの部下。オストロンの軍事戦力達が手厚く迎えてくれた。勿論、一回目の黒龍ニゲル討伐の時に生き残った戦士もいた。

 七大青家ななだいせいかと同様に俺は英雄扱いされていた。他国なのに歓迎されっぷりが、五芒星会議ペンタグラム・サミットの時の比では無い。

 大人気ロックバンドのバンドメンバーになった気分に近いかもしれない。それほど熱烈な歓迎だったし、耳栓が発動しそうなくらい大きな拍手で迎えてくれた。

「凄い歓迎ね」

 少し照れてしまっている俺を見たアマミヤがそう言ってきた。

「うるさいな。さっさと俺についてこい」

「はいはい」

 静かなところが好きなアマミヤだが、アマミヤもこの状況は心地良いと感じてくれているようだ。

 会議はドラグーンタワーの最上階でやるらしい。つまり六芒星会議ヘキサグラム・サミットが行われるあの会議室だ。いつも強制転移フォース・テレポートで行っていたから、どうやって上に行くんだろうと思っていたところ、ヒーティスにあるアビスツリーと同じ原理だった。

 六つの石像に囲まれた二十人程が立てそうな台座に立ち、マルキージオ卿が「最上階へ」と呟くと、台座はエレベーターの如く上昇していった。

 しかし不思議なのは俺達の言語――というかこの国の言語だった。ヒーティスのように魔族語ではなかったら誰でも上に上がる事ができるからセキュリティはどうなんだろう? と余計な心配をしていたが。

「声紋認証というやつだ。言語は何でもいいが、登録された人しかこの昇降機を使用する事ができない」

「成程。セキュリティはバッチリですね」

「そういう事だ」

 ドラグーンタワーの最上階の会議部屋に到着し、席に着くなり資料を配られた。

「では始めよう」



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