公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

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獣王国篇

タコ焼きすんぞ!

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面倒を背負いこんだレオは覇気がない、しかも稼ぎ時に海に沈んでいたから資金繰りが宜しくない。
当てにしていた例の金の山分けは年明けになりそうだと、国王ガルディからの手紙に謝罪が綴られていた。

どうやら急に決まった王位継承でゴタゴタが発生したらしく、その対応で手いっぱいのようだ。
派閥間で起きたトラブルはガルディ一人ではどうにもならない、罰金として徴収したことなど後回しになった。

国税庁が独自に動き分配処理すれば良い気もするが、「執政を纏められない無能」「男爵の謀反行為を長年放置した」などと揚げ足のネタにされかねない。


「仕方ないよなぁ……防寒対策は極力節約だな」
レオの頭はこの冬をどう乗り切るかで頭がいっぱいになった。

ギルドは冬季は依頼が激減する。豪雪地帯ならば雪掻きや冬の魔物退治などがあるが、大勢の冒険者に満遍なく依頼をまわせるわけがない。それを見越して夏秋に稼ぐのが冒険者の心得である。



「そういえばタコパしてなかったな」
「タコパ!」


ぼそりと言った台詞をフラが拾って、期待に満ちた顔で目を輝かせた。

「うん、粉モノは割と安価だもんな、タコは食いきれないほどあるし腹いっぱいになるぞ」
足一本で数百人分はあるだろうとレオは苦笑いした。



「タコ焼きで稼ぐ手もあるけどさ、デビルと名がつくヤツを食べる習慣ある?」
仲間を見回し問うレオに彼女達はお互いの顔を見回す。


「うーん、ぶっちゃけデビルフィッシュを食べるという概念がねぇわ」
冷たい現実を言うバリラ。


「そうですわね、好んで食べる国は少ないでしょうね。見た目がアレですから」
バリラと同郷出身のティルも浮かない顔をした、レオはガッカリ肩を落とす。


「生でもいいけど、火を通すと甘くて旨味があってコリコリ食感が堪らないんだけどな、丸く焼いた生地に甘めのソースとマヨネーズ、そして青のりの香り!添えた紅ショウガ!」

「フラも食べてみたいよ!お願いレオー!」


ピョンピョンと跳ねるフラは他二人とは対照的な反応だ。

「フラと二人では、あのタコは食いきれない気がするな」
「もう!いーじゃん!試食を兼ねて作ろうよ!」



押しに負けたレオはガッチリ冷凍されたタコの足を1kgほど切りわけた。
フラの火魔法で半解凍したタコ足を塩でぬめりを落とす。太いからうまく行かず苦戦した。
汚れを落としたら茹でてザクザクと乱切りしていくレオ。


「わぁ赤くなった!凄いねレオ!」

素直に反応するフラに若干嬉しいレオである。次は出汁を作ろうと鍋を火にかける。

だがしかしそこでハタと気が付く、タコ焼き用プレートが無い!



「お願いします!バリラ様!拳王様!」図解した紙を渡して平伏し懇願するレオ。


「ちょ……私は剣王の方を目指してんだけど?なんだよもぉー」


唆されてキッチン裏の庭へ連れ出されたバリラはバーベキュー用の鉄板に拳を振り下ろす、……が失敗だった。
穴は穿ったがまん丸ではなくて拳の型に凹んだだけだったのだ、浅慮なレオは己のアホ加減にガクリと地に崩れた。


「ここは魔法使いフラウット様が頑張ってあげるよぉ♪でも危ないから後退してて」

フラは大きな杖を掲げ分厚い氷の壁を造った、それから石礫に熱を加えている、焼き石とでもいうか……。炭団によく似ている。


「鉄板を丸く凹ませろ!ペェドラシャーマ!20連打!」
マシンガンのような打音が轟いた、堪らずレオとバリラは耳を塞いでしゃがみ込んだ。


ドガドガと弾かれていく石と打たれる鉄板の不協和音はただただ喧しい。

表の犬小屋からペットことジィエラが、昼寝を邪魔されて出てきて文句を言う。

「なぁーに?うっさいんだけど、ご主人のキOタマでも爆発したぁ?不潔な男は嫌いだわ」
「……お前なんてことを」


「あ、ごめんなさいご主人様。弾けるほどOンOマ大きくないですね!」
「ジェイラ!ハウス!」





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