公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

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人魚の街篇

レオを探す少女達

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――半日前に遡る。





「この海にいるのは間違いないよ」

不審者改め、魔法使いジェイラが例の漁村へ彼女らを連れ出していた。



「い、生きてますのよね!?」

最悪な事態を想定していたティルが青褪めて聞く。



「生きてる!だから探索に引っ掛かんのよ、生体エネルギーっつうのがね出てない限り探せないからね」

「しつもーん!生体エネって人間も動物も魔物も持ってるよねぇ?どうやって見分けてるの?」

フラが至極当然のツッコミをする。



「ふっふーん。私の斥候スキルは細かな補助があるの、私が探査対象に接触して面識があれば【鑑識眼】が自動発動すんのよ。アイツとの出会いは最悪だったし、強烈な記憶として残ってる。まぁ、無機質な探し物の見極めの場合は難しくなってくる、それは別のスキル【慧眼】【審美眼】を使うわ」

「そっかー、乳ビンタに感謝だね」

「……ぐっ、ようするに生き物ひとつひとつが情報の塊なわけよ、間違えようがないでしょ」



納得したとフラが感心する、傍らで疑問符を浮かべるバリラは「乳が記憶してんのか?」とまたも斜め上の感想を言う。



安堵したティルが膝から崩れ落ちた、気を張っていた分の疲労が出たようだ。

バリラが労わるように彼女の肩を撫で背に担いだ。

「こんなに痩せちゃって、バカ」

「……ごめんなさい、でも良かった。よかったですわ」背の上でひくひく泣いているティル、バリラもつい涙ぐんだ。



***



ジェイラたちは船を貸り沖を目指す、船乗りは訝しむも協力してくれた。

かつてデビルフィッシュ退治の恩だと引き受けてくれたのだ。

「ティル、4人分も結界はれるの?」

「はい、魔力増強の魔道具を装備しましたの。30分くらいなら潜れますわ」

「ティルは天才!すごーい!」

「でも、空気含有は限界があるのであまり無茶しないでくださいね、とくにバリラ」

「ウグッ」



それから沖に繋留を頼みティルが泡状の結界をみんなに掛け、海へ飛び込む。







マリンスノーが巻き上がる中、ジェイラの誘導で海底を目指した。

「ちょっとちょっと!海の底に反応あると思えば人魚の街じゃないのよ。アイツとんだ幸運持ちね」

「人魚の街ってほんとにあったの?」



一同は美しい景色に歓喜した、おとぎ話とばかり思っていた人魚の存在。

それが目の前にいる。色とりどりの珊瑚の街を優美に泳ぐ人魚達に目を奪われ惚けていた。



荊珊瑚から覗いていた彼女らは、いつの間にか屈強な男人魚たちに囲まれていた。

三叉槍を突きつけられ「害悪!」と罵られた。



仲間を探していると言っても聞く耳を持ってくれない。

「人間が我らの里に居るわけがない、謀るのもいい加減にしろ!」

「ほんとうなんだってば!この分からずや!」

ティルが問答する時間がないとジェイラを宥める「あと数分で泡が消えますわ!」



諦め帰ろうとしたその時、レオニードの気配をジェイラは強く感じた。

「バリラ!あそこの人魚っぽいの!レオの気配がする!」

「なんだって!?ちょっと行ってくる」



必死の形相でバリラは半魚のマルメディのもとへ突進した。

泡の中だというのに凄いスピードだった。



「ウオオオオオ!そこの人魚!とまれー!とまりやがれー!」

「なんでこっちへ来るの!?イヤーーー!」



そして人間怖いへ……
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