公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

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人魚の街篇

虹色の薬

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ボロ船の住処に着くやマルメディは寝床の海藻へ抱き着きグッタリと寝落ちてしまった。

2時間かかる距離を1時間弱で泳いだのだから、相当消耗してるだろう。

俺は変化の腕輪を自分では外せないので、やむなくイルカ状態でご飯を探すことにした。



イワシの大群へ突っ込んでは口で捕らえる。

襤褸網にそれを詰め込む、10匹ほど捕らえた所で寝床へ戻る事にした。

貝も欲しいけどこの形なりでは難しい。野生のイルカの狩りなんて知らないからね。



網を咥えた時、背後に気配を感じた。

ふわふわと浮くように進む巨大な泡が4個こちらへ近づいてくる。

(あの時の人間だ!なんでここへ?)



慌てて岩陰へ隠れ様子を覗う、なにか探してるようだ。



「おっかしいなー感知はここで違いないのに」

「なぁ、息苦しくなってきたよ」

「そうですね。泡の結界もそろそろ消えます」

「浮上してもっかいくればいいもん」



女の子の人間達だ、こんな海になんのようだろう?獣みたいな子もいるぞ。

息苦しいのか一斉に海面へと上がっていく、関わらないほうが身のためだろう。

マルメディがますます人魚たちから敬遠されてしまうかも。



そういえば俺だって人間だ、ずっと居候しては良くない……。

そう考えたら急に悲しくなった、半魚の彼女とずっと暮らすなんて不可能だ。



***



寝床へ着くとマルメディはまだスヤスヤ寝ていた、流されない様に海藻の布団に絡まっていた。

銀の泡が長い髪へ纏わりついて真珠のようにキラキラしている。

女神みたいだとウットリ眺めてしまった……は!いけない女性の寝姿をじろじろ見るなんて!





寝床の船を掃除することにした、流されてきた貝殻や岩の欠片を集めて捨てる。

昆布ベッドに置いたままのマルメディの網袋を片付けようと見れば、ククアがくれた薬が目に入った。

(そうだ、毎晩一匙飲めって言ってたな)

でもこの姿では蓋は開けられない、仕方なく昆布ベットへ横たわり海藻を尾びれに巻いて昼寝することに。





すっかり海底が暗くなった頃、マルメディが俺を起こした。

「ごめんね、腕輪を外す前に寝てしまって不便だったでしょ?」

「ううん、イルカになるなんて貴重な体験ができて楽しかったよ」



それから俺達は遅い夕食をとった、どう調理したのか焼いたイワシを出された。そういえば介護して貰った時もミルク粥を出されたっけ。

どう調理したのか尋ねたが「秘密」と笑って教えてくれない。

船内の不思議空間も謎のままだ、海水で満ちているのに息はできるし、液体が流れ散ることもない。

きっとマルメディは高度な魔術を駆使しているのだろう。それは人魚の秘匿術な気がして深く追求することは憚れた。



彼女の懐へ入り過ぎたら、きっと避けられるとなんとなく悟る。



就寝前にあの薬を飲んだ、とろりと喉を通るそれは胃に入るとポワリと温かくなる。

これを飲みほした時、俺達はお別れなんだろうか……。



「マルメディ」と声を掛けたかったが強い眠けに阻まれ擦れて消えた。



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