公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

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人魚の街篇

ジェイラという魔法使い

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主不在の屋敷は、次第に荒れて元の廃墟に戻りそうだった。

バリラとフラは日銭を稼ぎ必死だったが、家の惨状までは手が出せない。



元気なふりで生活をして、取り繕っても精神は悲鳴をあげている。



「ティル、スープくらい飲まなきゃ」

「……ごめんなさい」



飲んでも吐いてしまう事をバリラもわかってはいたが、頬がコケて肌はカサカサに渇き、頭髪は栄養不足でツヤがない。

このままではティルが死んでしまう。



「ティル、おまえ一人の責任じゃないから」

「……ええ」

わかっていると言葉を飲んで涙が流れた、仲間を失った辛さを共有することはレオを諦めることになりそうだったから。



フラは肩や腕にミミズ腫れがたくさんできた。

生きていることを願うことしか出来ない自分に苛立って、体を掻き毟るのが癖になった。

さいきんでは目立たない箇所を掻いて誤魔化している。



「バレバレだっつの」バリラが小さくつぶやいた。

二人のためにジュースを作ろうとマーケットへ買い物へでようとした。

食欲がなくても林檎ジュースは飲んでくれるから。







「ん?」

玄関先でどこかで見た姿があった、あの不審者である。

「……たかり?うちは御覧の通り荒んだ貧乏冒険者の家だよ」

「違うわよ、失礼ね!レオニードってやつに用があんのよ。いろいろとね」



まず不審者は怒りに任せて突撃したことを謝罪した。

名は「ジェイラ」雷攻撃と特殊魔法を使う魔法使いであることと、レオを知るきっかけを話した。



「ぶっふ!乳ビンタって!……あははっレオらしい」

「うっさいわねー、平民の小娘は生きるのに必死なの!そんでレオは海に流されたって?探索はしてんの?」

「……探してはいるよ。でも」





ジェイラは苛立って「だったら探索が得意のヤツを雇え」と怒鳴った。

先立つものがないとバリラがしょげた。

「格安で受けるヤツがここにいるわよ!広範囲探索が得意な優秀な魔法使いがね!報酬は寝床とご飯でいいわ」

「広範囲探索マジ!?」

「まあね、野ネズミだって逃さないわ、斥候タイプのスキルなら自信ありよ。情報集めで稼いだり防御も得意で」



バリラは雄叫びをあげて話途中のジェイラを屋敷に引き摺っていった。

「ちょちょっと!丁寧にあつかってよ!ぎゃああ服が破れたー!」



「ティルー!フラー!光明が見えたぞー!レオの阿呆を絶対連れ帰るぞ!」
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