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独立篇
甘い縁を結んだ男
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2学期、登校するやさっそく王太子に絡まれた。
いつもの四阿で秋になりかけた空を眺めながら話をする。
「とうとう、家を出たってね?」
「うん、お陰様で自由人さ」
なんだい羨ましいとガルディは遠い目をした、未来の王はなにを憂いているのか。
「学校はなるべく来たまえよ、卒業したらほとんど会えないだろう?」
「そうか、そうだね。俺は平民になったわけだし」
「・・・なにかこじつけて一代きりの爵位を」
「おいおい!やめてくれ!なんのために家をでたと」
ガルディは少し厳しい目で俺を見た。
「きみね、世間を甘くみてはいけないよ。特に元身内にね」
「公爵家がなにか?」
グアニルズ領の鉱山採掘量が激減で家が傾いているとガルディが言う。元父の新事業とやらが頓挫したようだ。
「まぁ失策だよね、採鉱が減っているのに選鉱所を増やして、魔道具作成にまで手をだした。」
「元とはいえ、息子の俺が全く知らないって・・・」
「気に病むことはないさ、公はもとよりキミに継がせる意思がなく資料を閲覧できなかったのだろう?」
「まあね。そうか・・・家はどうでもいいけど、弟が気がかりだよ」
ガルディは鞄から茶封筒を取り出し俺に見せた。
「預かっていた例のものさ、ちゃんと譲渡完了している。ただし、爵位のないキミが気がかりだ。どうする?」
「そうか、身分を笠に奪われる危険が」
「あぁ、私が保管していたほうが良いだろうね」
土地建物の権利書である、たかが紙束ひとつではあるが財産の証だ。
貴族に搾取されれば簡単に権利など書き換えられてしまう。
うう、と唸る俺にガルディがにやけた顔でもう一通だしてきた。
「―-まて、侯爵位拝命!?」
「キミが成人するまでの保険と思えば良いさ。公爵とはいえ貴族相手に無理強いはできまい?」
貴族を捨てたのにまた貴族へ戻る、悩んだがあの家は守りたいものが増えてしまった。
今後のことを思案し結局王太子の好意に甘えることにした。
「でもさ功績もないのに爵位貰えるのか?しかも侯爵って破格だよ」
「ちゃんと貢献してくれたじゃないか、ある未来の夫婦のために。」
「え?」
ガルディが鈴を鳴らすと四阿の陰から令嬢が現れた。
「メヌイース侯爵令嬢!」
「お久しぶりですわ、ふふ。やっと名前を憶えてくださいましたね」
そう言うと彼女はガルディの横へ侍る、ガルディは優しい目で彼女を見下ろし腰に手を回す。
「おいおい、みせつけますね」
「私達は心が通じ合いましたの、甘いレシピのお陰でね」
「あの簡単レシピのフォンダンで?」
令嬢は満面の笑みで「ありがとう」と言った。
国を背負う二人に貢献したのだと未来の王と王妃は微笑んだ。
円満な二人が護る国だ、優しく愛溢れる安寧の国になるだろう。
「もとよりキミは公爵家の出だ案ずるな、受けてくれるなら私達も嬉しい」
王太子の懇願を撥ね退けることを俺ができるわけもない。
「謹んで爵位を賜ります」レオは恭しく腰を折る。
侯爵レオニード・ルヴェフルはここに誕生した。
ルヴェフルはガルディの母方の姓であると後に知る。
母方の侯爵家は継ぐ者がいないため爵位返上のなったそうで、俺は棚ボタに預かれたそうだ。
タイミングと待遇が良すぎて怖いと言ったら。
「実力と運を持っている奴が最後に勝つのさ」
王太子は胡散臭い笑みを浮かべて俺に言った。
いつもの四阿で秋になりかけた空を眺めながら話をする。
「とうとう、家を出たってね?」
「うん、お陰様で自由人さ」
なんだい羨ましいとガルディは遠い目をした、未来の王はなにを憂いているのか。
「学校はなるべく来たまえよ、卒業したらほとんど会えないだろう?」
「そうか、そうだね。俺は平民になったわけだし」
「・・・なにかこじつけて一代きりの爵位を」
「おいおい!やめてくれ!なんのために家をでたと」
ガルディは少し厳しい目で俺を見た。
「きみね、世間を甘くみてはいけないよ。特に元身内にね」
「公爵家がなにか?」
グアニルズ領の鉱山採掘量が激減で家が傾いているとガルディが言う。元父の新事業とやらが頓挫したようだ。
「まぁ失策だよね、採鉱が減っているのに選鉱所を増やして、魔道具作成にまで手をだした。」
「元とはいえ、息子の俺が全く知らないって・・・」
「気に病むことはないさ、公はもとよりキミに継がせる意思がなく資料を閲覧できなかったのだろう?」
「まあね。そうか・・・家はどうでもいいけど、弟が気がかりだよ」
ガルディは鞄から茶封筒を取り出し俺に見せた。
「預かっていた例のものさ、ちゃんと譲渡完了している。ただし、爵位のないキミが気がかりだ。どうする?」
「そうか、身分を笠に奪われる危険が」
「あぁ、私が保管していたほうが良いだろうね」
土地建物の権利書である、たかが紙束ひとつではあるが財産の証だ。
貴族に搾取されれば簡単に権利など書き換えられてしまう。
うう、と唸る俺にガルディがにやけた顔でもう一通だしてきた。
「―-まて、侯爵位拝命!?」
「キミが成人するまでの保険と思えば良いさ。公爵とはいえ貴族相手に無理強いはできまい?」
貴族を捨てたのにまた貴族へ戻る、悩んだがあの家は守りたいものが増えてしまった。
今後のことを思案し結局王太子の好意に甘えることにした。
「でもさ功績もないのに爵位貰えるのか?しかも侯爵って破格だよ」
「ちゃんと貢献してくれたじゃないか、ある未来の夫婦のために。」
「え?」
ガルディが鈴を鳴らすと四阿の陰から令嬢が現れた。
「メヌイース侯爵令嬢!」
「お久しぶりですわ、ふふ。やっと名前を憶えてくださいましたね」
そう言うと彼女はガルディの横へ侍る、ガルディは優しい目で彼女を見下ろし腰に手を回す。
「おいおい、みせつけますね」
「私達は心が通じ合いましたの、甘いレシピのお陰でね」
「あの簡単レシピのフォンダンで?」
令嬢は満面の笑みで「ありがとう」と言った。
国を背負う二人に貢献したのだと未来の王と王妃は微笑んだ。
円満な二人が護る国だ、優しく愛溢れる安寧の国になるだろう。
「もとよりキミは公爵家の出だ案ずるな、受けてくれるなら私達も嬉しい」
王太子の懇願を撥ね退けることを俺ができるわけもない。
「謹んで爵位を賜ります」レオは恭しく腰を折る。
侯爵レオニード・ルヴェフルはここに誕生した。
ルヴェフルはガルディの母方の姓であると後に知る。
母方の侯爵家は継ぐ者がいないため爵位返上のなったそうで、俺は棚ボタに預かれたそうだ。
タイミングと待遇が良すぎて怖いと言ったら。
「実力と運を持っている奴が最後に勝つのさ」
王太子は胡散臭い笑みを浮かべて俺に言った。
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