上 下
6 / 6

その後

しおりを挟む


開店休業状態に陥ったザカリード商店はみるみるうちに衰退して行き、一か月と持たずに閉業に追い込まれた。それはそうだろうただの麦の固まりが売れるはずがない。

窮地に追い込まれたボニートはなんとかハンナレッタを連れ戻そうと躍起になったが時すでに遅しで、かつてあったハンナレッタ駄菓子店は引っ越した後だった。

「どうして!?どうしてこうなったのだ……全ては左団扇で上手く行っていたのに」
彼は青褪めた面持ちで弟が放った言葉を思い出す。

『そのうち酷い目に合うからね』




***


「兄さんの店は潰れたよ、まぁ領地があるから何とかするだろう。とても小さいけれどね」
「まあ、そうなんですか?お気の毒に」
ハンナレッタは苦笑してそう答える他ない、丸投げして無理矢理働かされたようなものだった。何れはこうなっていただろうと想像に難くない。


彼女はかつていた街を離れて新しく開店する駄菓子店の準備に追われて忙しくしている。下女だったスーヤとラベンも一緒に奮闘している。
「火力がいまいちですねぇ、もっと抑えめにしないと」
「しないとねぇ」
そんな彼女らを見つめて微笑むハンナレッタは「頼もしいことだわ」と呟くのだ。

「騎士団から近いから頻繁に通わせて貰うよ、皆はタコ焼きと今川焼に夢中なんだ」とアドリアノが言う。
「ふふ、嬉しいです。そうそう新作のお好み焼きを食べていきませんか?」
「ああ、是非食べさせてくれ!」

そうして談笑しながら豚玉を焼く彼女は「なんて幸せなんだろう」と言う。
今はまだ恋心は芽生えていない彼女と、ザカリード家を出たばかりのアドリアノはいつ告白しようか迷っている。

「恋心駄々漏れなのにねぇ、もっと強くでるべき!」
「出るべき!」
スーヤとラベンは一向に進展しない二人の恋のキューピッドになってあげようと相談している。



「いらっしゃいませ!ハンナレッタ駄菓子店にようこそ!」








しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ピンクブロンド男爵令嬢の逆ざまあ

アソビのココロ
恋愛
ピンクブロンドの男爵令嬢スマイリーをお姫様抱っこして真実の愛を宣言、婚約者に婚約破棄を言い渡した第一王子ブライアン。ブライアンと話すらしたことのないスマイリーは、降って湧いた悪役令嬢ポジションに大慌て。そりゃ悪役令嬢といえばピンクブロンドの男爵令嬢が定番ですけれども!しかしこの婚約破棄劇には意外な裏があったのでした。 他サイトでも投稿しています。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

【完結】婚約破棄断罪を企んでおられるようなので、その前にわたくしが婚約破棄をして差し上げますわ。〜ざまぁ、ですわ!!〜

❄️冬は つとめて
恋愛
題名変えました。 【ざまぁ!!】から、長くしてみました。 王太子トニックは『真実の愛』で結ばれた愛するマルガリータを虐める婚約者バレンシアとの婚約破棄を狙って、卒業後の舞踏会でバレンシアが現れるのを待っていた。

失踪していた姉が財産目当てで戻ってきました。それなら私は家を出ます

天宮有
恋愛
 水を聖水に変える魔法道具を、お父様は人々の為に作ろうとしていた。  それには水魔法に長けた私達姉妹の協力が必要なのに、無理だと考えた姉エイダは失踪してしまう。  私サフィラはお父様の夢が叶って欲しいと力になって、魔法道具は完成した。  それから数年後――お父様は亡くなり、私がウォルク家の領主に決まる。   家の繁栄を知ったエイダが婚約者を連れて戻り、家を乗っ取ろうとしていた。  お父様はこうなることを予想し、生前に手続きを済ませている。  私は全てを持ち出すことができて、家を出ることにしていた。

【完結】妹のせいで貧乏くじを引いてますが、幸せになります

恋愛
 妹が関わるとロクなことがないアリーシャ。そのため、学校生活も後ろ指をさされる生活。  せめて普通に許嫁と結婚を……と思っていたら、父の失態で祖父より年上の男爵と結婚させられることに。そして、許嫁はふわカワな妹を選ぶ始末。  普通に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……  唯一の味方は学友のシーナのみ。  アリーシャは幸せをつかめるのか。 ※小説家になろうにも投稿中

逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます

黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。 ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。 目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが…… つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも? 短いお話を三話に分割してお届けします。 この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。

巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~

アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

【一話完結】片思いの王子は婚約者に嫉妬してくれるのかを聞いてみたが玉砕した

宇水涼麻
恋愛
断罪劇ものの短編です。 生徒総会の席で舞台に上がった王子は婚約者の公爵令嬢に問いただす。 「嫉妬により醜い虐めをしたのか?」 「いたしません」 崩れ落ちる王子。王子は公爵令嬢に、側近に、何を求めていたのだろうか。

処理中です...