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桜舞い散る茶会

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チェリーブロッサムが見頃を迎えた頃合いで設けた茶会の席、我が婚約者様ルワン・ミクソール伯爵令息は不機嫌全開だった。
「はぁ……見事な満開だというのに」
「なんか言ったかクソブス?空気が汚れるから口を開くな!お前が吐いた息など吸いたくない!」
「……」

わたくしオリヴィエ・ロックベルは青く澄んだ春の空を虚しく眺める。
ロックベル公爵家の庭園は、外壁に沿うように植えられた異国の花が自慢です。十数本が一斉に満開に咲き乱れ今まさに夢のような景色だというのに。わたくしの心は長雨に打たれ腐った紫陽花のよう。

溜息をこっそり吐いた時でした。
ハラリと花弁がカップに落ちました、なんて風流なんでしょう!
うっとり眺め紅茶を口に含み春を堪能していたら……
「ゴミが落ちた茶を飲むなんて!気持ち悪いヤツめ!不愉快だ、俺は帰る!」
「ご、ごみ!?」
「ウルサイくそブス!話しかけるな!」

ルワン様は乱暴に立ち上がり、門扉の方へ足早に去って行かれます。
あまりに荒く立ち上がったので紅茶は零れ、ケーキスタンドは倒れてしまいました。
あぁ、せっかく料理人が腕を奮ってくれた茶菓子が台無しです。

追うことも面倒です、どうせ見送っても「近寄るなブス!」と罵られるだけですから。
「お嬢様、お召し物は汚れませんでしたか?すぐ片付けますね」
「ええ、平気よ。ありがとうネリー、いつもありがとう。せっかくだからこのまま桜を眺めているわ」
「はい、この風情がわからない阿呆はほっときましょう。桜茶をお入れしますね」
「ふふ、ありがとう」

ネリーはわたくし付の侍女でとても気が利く優しい子です。傷ついた心が癒されます、ずっとそばにいて下さい。

ヒュルリと一陣の風が吹き、薄桃色の花弁が渦を作り舞い散りました。
きっと満開の花はあっという間に葉だけになってしまうでしょう。

「儚いわ、まるで恋心のようね」
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