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悔しい思いをして家を奪われたネイベルだったが、止むをえず実家へと帰ることにした。何れにせよ愛人を作るような愚かな夫など要らないと思った。
「あー!思い出しても腹の立つ!なんなのよあの男とオバサンは!」
恋人期間を合わせれば七年間も共に過ごしたというのに、愛はあっと言う間に冷えて霧散したのだ。これまで囁かれて来た愛の言葉はすべて虚しい嘘へと変化して反吐が出るとネイベルは怒る。
そして、愛娘をバカにされたことに激高した両親はすぐに弁護士を立てて動こうとネイベルのサポートをする。
下町では有名な商会のアバネシー家は娘が受けた屈辱を晴らそうと奔走するのだ。
「だいたい碌に働きもせずにヒモのような男だったのでしょ、さっさと切れば良かったのよ」
「うん、そうよね。私がバカだった!心配かけてごめんなさい」
何かとだらしない夫だったが、放っておけないと見捨てられずにズルズル夫婦を続けていた。ダメな男ほどモテるというが正にそれなのだろう。
「それにしてもなんでまた五十代の愛人なの?私より年上じゃないの」
「うーん。恐らくだけど彼には母親がいないから……その反動みたいな?マザコン、ババコン?」
「……気持ち悪いわよ」
夫たちの所業の調査と制裁するための準備の為にしばらく放置していたネイベルだったが、夫から手紙が届いて面倒そうに扱った。渋々と読んでみたがそのあり得ない内容に真顔になった。そして、腹を抱えて爆笑したのである。
気が触れたかと家族は心配したが……
「あははははっ!怒りを越えると嗤ってしまうのね、知らなかったわ!あ~おかしい!」
訝しむ両親に手紙を渡して読んで良いと許可した。
====
愚かな妻ネイベルへ
いい加減に臍を曲げるのを止めて帰って来い、自分の立場を忘れたのか?
俺がいないと何もできない癖に、いつも生意気なおまえに腹が立っていた。
だから、俺は心優しいベティに惹かれてしまったんだ!だが断じてこれは浮気ではないぞ!
心からベティを愛しているのだからな!
だが、安心しろ。長年暮らした情けで、お前の事も俺の家に置いてやる感謝するが良い!
帰宅する際にはちゃんと生活費を持ってこいよ。
お前がベティの世話をしないせいで働きに出られなかったのだ、職場を追われたのはお前のせいなんだから。
なるべく早く帰って来い、でないと離婚して永遠に会えなくなるぞ。
お前の絶対的主のミックより
====
「……離婚されたくなければ帰ってこい生活費を寄越せか、なるほど巫山戯ておるな」
それを読んだ父親は笑いはしなかったが、額に怒りの筋を浮かばせて一応証拠として保管すると言った。
浮気をしておきながらネイベルの愛は自分のもので、裏切らないと信じている内容だった。離婚されたら困るのは妻だと勘違いしている様子だ。
今までもほとんど働いてなかった癖に、ミックは己が生活の要で大黒柱だと思い込んでいるのだ。
「貴方が居座っている家は私の名義な事を忘れているようね」
いよいよ我慢ならなくなった妻は売却か賃貸に出してしまおうと決断する、祖母が残した大切な家だがバカ共に寄生されるよりはマシだと思うのだ。
「あー!思い出しても腹の立つ!なんなのよあの男とオバサンは!」
恋人期間を合わせれば七年間も共に過ごしたというのに、愛はあっと言う間に冷えて霧散したのだ。これまで囁かれて来た愛の言葉はすべて虚しい嘘へと変化して反吐が出るとネイベルは怒る。
そして、愛娘をバカにされたことに激高した両親はすぐに弁護士を立てて動こうとネイベルのサポートをする。
下町では有名な商会のアバネシー家は娘が受けた屈辱を晴らそうと奔走するのだ。
「だいたい碌に働きもせずにヒモのような男だったのでしょ、さっさと切れば良かったのよ」
「うん、そうよね。私がバカだった!心配かけてごめんなさい」
何かとだらしない夫だったが、放っておけないと見捨てられずにズルズル夫婦を続けていた。ダメな男ほどモテるというが正にそれなのだろう。
「それにしてもなんでまた五十代の愛人なの?私より年上じゃないの」
「うーん。恐らくだけど彼には母親がいないから……その反動みたいな?マザコン、ババコン?」
「……気持ち悪いわよ」
夫たちの所業の調査と制裁するための準備の為にしばらく放置していたネイベルだったが、夫から手紙が届いて面倒そうに扱った。渋々と読んでみたがそのあり得ない内容に真顔になった。そして、腹を抱えて爆笑したのである。
気が触れたかと家族は心配したが……
「あははははっ!怒りを越えると嗤ってしまうのね、知らなかったわ!あ~おかしい!」
訝しむ両親に手紙を渡して読んで良いと許可した。
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愚かな妻ネイベルへ
いい加減に臍を曲げるのを止めて帰って来い、自分の立場を忘れたのか?
俺がいないと何もできない癖に、いつも生意気なおまえに腹が立っていた。
だから、俺は心優しいベティに惹かれてしまったんだ!だが断じてこれは浮気ではないぞ!
心からベティを愛しているのだからな!
だが、安心しろ。長年暮らした情けで、お前の事も俺の家に置いてやる感謝するが良い!
帰宅する際にはちゃんと生活費を持ってこいよ。
お前がベティの世話をしないせいで働きに出られなかったのだ、職場を追われたのはお前のせいなんだから。
なるべく早く帰って来い、でないと離婚して永遠に会えなくなるぞ。
お前の絶対的主のミックより
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「……離婚されたくなければ帰ってこい生活費を寄越せか、なるほど巫山戯ておるな」
それを読んだ父親は笑いはしなかったが、額に怒りの筋を浮かばせて一応証拠として保管すると言った。
浮気をしておきながらネイベルの愛は自分のもので、裏切らないと信じている内容だった。離婚されたら困るのは妻だと勘違いしている様子だ。
今までもほとんど働いてなかった癖に、ミックは己が生活の要で大黒柱だと思い込んでいるのだ。
「貴方が居座っている家は私の名義な事を忘れているようね」
いよいよ我慢ならなくなった妻は売却か賃貸に出してしまおうと決断する、祖母が残した大切な家だがバカ共に寄生されるよりはマシだと思うのだ。
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