16 / 18
混沌の玉
しおりを挟む久しぶりに魔界に戻ったルチアは早速と同胞らを蘇らせた。彼らは涙を流して礼を述べる。
「まぁ、落ち着け。それでどのような方法で葬られたのだ?」
竜種と思われる魔物が一頭、謁見の間に出てきて答える。
「は、はい!私共は先行して戦ったのですが、アヤツは真っ白な玉を持っていました。大きさは手の平に乗る程度だったかと……それを掲げたと思えば幾度が明滅させて白い光が我らを飲み込んだのです」
「なるほどな、最終兵器と思われるものをすでに手にしていたか、しかしそれは数十人の司祭らが祈りを捧げ聖水を結晶化させたものだ。う~ん、それは混沌の玉と呼ばれるものだ。魔王を倒す最後の手段、やはり転生者か……」
あり得ないアーティファクトを所持していると思われるマリエラ・アマールは転生した運営の人間であると確信した。
ガスパルが進言する。
「その通りでございます、それを使用された後に魔王様は一気に力を失せられて討伐されたのですから」
「うん、そうだよな。私もプレイ中に使った覚えがあるぞ、ただもうちょい名前がどうにかならんのかと例えば清き玉とか聖なる玉とか、その辺はやっぱりクソゲーだよな」
「はて、ぷれい中とは?」
ガスパルの余計な詮索はおいといて、今はマリエラへの警戒をしなくてはならない。相手は造り手なのだから、何をされるかわかりはしない。
「ならば先手必勝だよな、相手が卑怯なことをするのなら手を緩める必要はない」
***
魔王はマリエラ・アマールが潜んでいると思われる山脈にやってきた。人里離れたそこは恰好の隠れ場所と言えよう。北の山脈は雪深く、万年雪が凍結している、どういうわけかいつも吹雪いているのだ。
「ゲームだからなんでもありなのか、困った環境だよなぁ」
彼女はファイアウォールを利用して周囲を固めた、こうして歩けば風雪などものともしない。ただ、火加減はたいへんだ。
「あちち!御主人もうちょっと範囲を広く」
「ああ、わかったよ。てか、付いて来なくても良いのに」
「そうは行きません!従者としてどこへでもお供しますよ!」
「はいはい」
歩く事数十分、いよいよ彼らが潜む洞窟を発見した。気配を読むことが出来る魔王はジュッと火の壁を消した。ここからは己自身の姿を消して行かなければならない。
「行くぞガスパル、姿を消す魔法を掛けるぞ」
「はい!」
魔王は洞窟を進む、入ってすぐに微温湯のような空気が広がった。どうにか魔法で寒さを凌いでいたらしい。
奥へ進むにつれて、異様な空気に気が付く。
「この臭いは……」
魔王ルチアは益々と警戒して進む。
12
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
完結 白皙の神聖巫女は私でしたので、さようなら。今更婚約したいとか知りません。
音爽(ネソウ)
恋愛
もっとも色白で魔力あるものが神聖の巫女であると言われている国があった。
アデリナはそんな理由から巫女候補に祀り上げらて王太子の婚約者として選ばれた。だが、より色白で魔力が高いと噂の女性が現れたことで「彼女こそが巫女に違いない」と王子は婚約をした。ところが神聖巫女を選ぶ儀式祈祷がされた時、白色に光輝いたのはアデリナであった……
聖なる歌姫は喉を潰され、人間をやめてしまいました。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ロレーナに資格はない!」
「歌の下手なロレーナ!」
「怠け者ロレーナ!」
教会の定めた歌姫ロレーナは、王家の歌姫との勝負に負けてしまった。それもそのはず、聖なる歌姫の歌は精霊に捧げるもので、権力者を喜ばせるものではない。
完結 勇者様、己の実力だといつから勘違いしてたんですか?
音爽(ネソウ)
恋愛
勇者だと持ち上げられた彼はこれまでの功績すべてが自分のものと思い込む。
たしかに前衛に立つ彼は目立つ存在だった、しかしペアを組んだ彼女がいてこそなのだが……。
ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)
青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。
父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。
断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。
ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。
慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。
お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが
この小説は、同じ世界観で
1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について
2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら
3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。
全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。
続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。
本来は、章として区切るべきだったとは、思います。
コンテンツを分けずに章として連載することにしました。
悪役令嬢のわたしが婚約破棄されるのはしかたないことだと思うので、べつに復讐したりしませんが、どうも向こうがかってに破滅してしまったようです。
草部昴流
ファンタジー
公爵令嬢モニカは、たくさんの人々が集まった広間で、婚約者である王子から婚約破棄を宣言された。王子はその場で次々と捏造された彼女の「罪状」を読み上げていく。どうやら、その背後には異世界からやって来た少女の策謀があるらしい。モニカはここで彼らに復讐してやることもできたのだが――あえてそうはしなかった。なぜなら、彼女は誇り高い悪役令嬢なのだから。しかし、王子たちは自分たちでかってに破滅していったようで? 悪役令嬢の美しいあり方を問い直す、ざまぁネタの新境地!!!
完結 俺に捧げる至宝はなんだと聞かれたので「真心です」と答えたら振られました
音爽(ネソウ)
恋愛
欲深で知られる隣国の王子と見合いした王女。
「私の差し上げられる至宝は真心」と答えたら怒って帰国してしまった。
後に、その真心というのは拳大の宝石であると気が付いた王子は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる