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魔王
しおりを挟む暫くは学園内は平和な日々が続いた、パワド・ロックメントが不在なのを除けば、バルトラン王子もルフセン・ミュラーも大人しいものだ。ルフセンはちらちらとルチアの方を気にしていたが、それを無視していればなんという事はない。
「平和ボケしそうだな、まぁこれが私の望みだったのだが」
「なるほど、これが平和。ご主人は学園生活を満喫なされているのですね」とガスパルが言う。
「まぁね」
大欠伸をして伸びをすれば若干だが足が釣るような感覚がきた、慌てて魔法でもってそれを回避する。運動不足は否めない。
「ふえぇ~平和だぁ」
ポカポカとした陽光を浴びた彼女はカフェの一角で微睡み始めた。誰よりも平和主義な彼女はとても魔王とは思えない。これで良いのかとガスパルは首を傾げた、時折魔界の方へ通信するのだが、これといって不満の声は届かない。
「まぁ良いでしょう、もう暫くは」
ガスパルも翼を閉じるとその辺の天井にぶら下がり惰眠を貪りだした。
***
変化が訪れたのは其れから数日後の事だった。
不気味な雲が現れてそれから大嵐がやって来た。天候が荒れるなどベタな展開だとルチアは感想を述べた。
「いやあワクワクしますなぁ!まるで魔界のようじゃないですか!ほら御覧なさい私の魔力が増大しています」
「ああ、はいはい。そうだね~」
魔王城の周辺のような雰囲気に興奮しているガスパルは若干だが身体が膨れていた。ひょっとしたら元の姿に戻るのではとルチアは思う。
「良かったじゃないか、いまなら元の姿に戻れるかもよ?」
「そうでしょうか?些か魔力が足りないのですが」
それならばとルチアはちょとした黒魔法を展開して彼の周囲を包んでやった。
「おお!力が戻りました!はぁああ」
言うが早いか、あっと言う間に本来の姿に戻ったガスパルは均整の取れた美青年に変化したではないか。それでも8割くらいだというガスパルは大きな蝙蝠の翼をばさりとした。
「さて、どういうことだとこの変化を思う?」
「私の見立てでは……人間界に魔王がもう一人現れたということでしょう」
「へえ、私と同等なのか?」
だが、ガスパルは顔を横に振って答える。
「貴方様が100とするなら0.01程度かと思います」
「たったの0.01かよ……」
詰まらなそうに言う彼女だったが、どうして魔王らしきが生まれたのかとガスパルは頭を傾いだ。
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