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第4章
4-1 もしかしてプロポーズ?
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【前回のあらすじ】
美那に気持ちが向いていることが真由に知られ、気まずい終わりを迎えたリユの初めてのデート。すぐに真由からメッセージが届き、関係修復の道筋がほのかに見え、リユはほっとする。美那に会って気持ちを伝えたくなったリユは、帰りに美那の家に寄ろうと決める。
電車の中で美那になんて伝えるかを考えた。でも結局のところ、「愛している」と「好きだ」と「俺と付き合ってほしい」という言葉しか思い浮かばない。
考えてみると、女子に告白するの、初めてじゃん。
まさか相手は美那というか、人生を振り返ってみると、やっぱり相手は美那だったというか。
俺が、好きだっ、って言ったら、どんな顔するんだろ?
それにもし、有里子さんの読みが違っていて、「え、リユ、なに言ってんの?」とか言われたりして。
いやいや、そんなことはないはずだ。
それにいずれにせよ、俺は美那が好きなんだ。
ずっと一緒にいたいんだ。
美那の笑顔を見ていたいんだ。
そうか。ずっとお前の笑顔を見ていたい、とか言うのもありか? それじゃ、意味が伝わらないか?
でも、俺がカッコつけても仕方ねえし、やっぱストレートに思いをぶつけるしかねえよな。
駅から美那の家までは歩いて10分ほどだ。
普段何気なく歩いていた上り坂だけど、なんか美那の家に近づくにつれて、だんだんドキドキしてきた。
あっという間に玄関に到着だ。
でもなんか静かだ。誰もいないのかな?
インターホンのボタンを押す。
応答がない。
もう一度押す。
応答がない。
けど、階段を降りてくる音が微かに聞こえてくる。
「え、リユ?」
美那の声だ!
俺からは美那は見えないけど、モニターには俺が映っているはずなのに、なぜか疑問形だ。
「あ、うん。今、ちょっと時間ある?」
「え、ちょっと待って。5分待っててくれる?」
「あ、うん」
こういう時はどうやって時間をやり過ごしたらいいんだろう。さすがにカイリーの動画を観るって気分でもないな。いや、でも、カイリーの力にあやかれるかも。
そんなわけで短めのお気に入り動画を開く。
うぉー、やっぱ、カイリーはすっげー!
つい、一緒に身体を動かしてしまう。
美那の来る気配がないので、もう一本。
と、玄関ドアの解鍵音が。
動画を止める間もなく、美那が顔を出す。
なんか疲れて、ちょっと緊張したような顔だ。
「まさか、またカイリー?」
「あ、うん」
「どうぞ」
ちょっといつもと違う、硬くてヨソヨソしい感じ。
「お邪魔します」と言いながら、靴を脱いで、中に入る。
園子さんはいない?
「お母さん、今日、実家に帰ってる」
まるで俺の疑問を察したかのように美那が言う。
やっぱ、それか。
「そうなんだ。またなんか進展があった感じ?」
「うん、どうなんだろ。お盆で親戚が集まるから、その前に親と話すみたい」
「そうか」
「リユ、今日はなんか用事だったんじゃないの?」
「あ、うん。もうそれは終わった」
「あ、そうなんだ。珍しいよね、約束なしで来るの」
「ごめん。あ、なんていうか、お前に話したいことがあって」
「へぇ」
なんか思い切り美那の顔が強張ってるような気が……。
「もしかして、俺、なんかタイミング悪かった?」
「え、別にそんなことないけど。どこで話す? お母さんいないから、居間でもいいし、それとも部屋に行く?」
む、こういうのはどっちがいいのか?
「そうだなぁ、部屋?」
「うん」
美那が背を向けて、階段をゆっくりと上がっていく。俺は少し遅れてそれに続く。
薄いピンクのTシャツに白いショートパンツ。きれいに伸びた脚が眩しい。
カイリーのでかいポスター。ベッドの横の壁には15番と16番のZ—Fourのユニフォーム。そしてベッドの端っこにはこの間のテディベアくんがちょこんと座っている。
先に自分の部屋に入った美那は、どういうわけか窓を背にして正座している。
「なんか、お前、緊張してる?」
緊張してるのは、俺も同じだけど。もしかして、その雰囲気が伝わってる?
「そ、そうかな?」
「いや、実は俺もちょっと緊張してる」
「そうなんだ?」
「うん」
俺もなんとなく美那に合わせて、正座で向かい合う。
互いを窺うような視線が絡み合う。こんな風に美那と向き合ったのは初めてかも。
「で、話って?」
「あ、うん」
うぅ、めちゃ、緊張する。いつの間にか握りしめていた拳の内側が汗ばんでいるのがわかる。
「あのさ、俺、美那の笑顔を一生見ていたい」
思わず口をついて出た。けど、これじゃ唐突すぎて、意味わかんないよな?
「え?」
やっぱり。
引きつったような感じだった美那の表情が、ちょっと意味がわからないんですけど? 的な疑問系の顔になっている……。
「あ、つまり、俺は……お前が好きだ。付き合ってほしい!」
「え?」
え? これも通じない?
「だから、俺はお前を愛してる。一生、お前と一緒にいたい」
「え?」
あ、もしかして、これじゃ、プロポーズ?
「じゃなくて、あ、でもそうなんだけど……」
でも、やっぱりそうなんだよ。
突然、美那の表情が歪んで、両方の目から涙が溢れ出る。
え、なんかマズかった?
次の瞬間、美那が俺に襲いかかってくる。
じゃなくて、抱きついてきた!
「リ、ユ……」
消え入るような声。
これって、どういう状況? ポジティブに捉えていいんだよな?
「わたしも……わたしも、リユとずっと一緒にいたい……」
美那が振り絞るように言う。
やっぱ、OKってことだよな?
俺は鍛えた体幹で堪えながら、そっと美那の背中に手を回す。
「好き。大好き。ずっと好き」
「うん」
「ずっと、怖かった」
美那が小さな声で言う。
「え?」
「リユと真由ちゃんが付き合うんじゃないか、って。今も、俺、香田さんと付き合うことになったから、とか言われるの覚悟してた」
「いや、それは」
美那が身体を起こす。
すぐ目の前の美那の濡れた瞳が俺を見る。
「今日、真由ちゃんと会ってたんでしょ?」
「え?」
なんで、美那が知ってる?
「隠さなくてもいいよ」
「ああ、うん」
「胸が張り裂けそうだった」
「……」
なんて答えていいかわからない。
美那がすっと立ち上がる。机の横の棚にあるティッシュに手を伸ばす。
「あ、ごめん。気が利かなくて」
美那が俺を見て、少し笑う。
「え、いいよ、そんなこと」
俺の前を通り過ぎて、美那はベッドに座る。
「リユもいつまでも正座してないで、こっちに座って?」
「ああ、うん」
俺は立ち上がって、美那の横に腰を下ろす。
「実は、わたし、真由ちゃんから恋愛相談を受けてた」
「え? そうなの?」
香田さんは、美那とはほかのクラスではよく話す方とか言ってたよな。でもまあそんなことは普通言わねえか。
「うん。あ、でも相手が誰かは真由ちゃんは言わなかったけど。言うというか、やりとりはメッセージアプリだったけど。でも、間違いなく相手はリユだろうと思ってた」
「そうなんだ……」
「このあいだの練習試合の日、わたし、変だったでしょ?」
「あ、うん」
「真由ちゃんから次の土曜日にデートすることになったみたいなこと聞いたから。そして、リユからは土曜日に予定が入ったって連絡があったし」
そうだったのか……。
「だからあの日、わたし、メンタル超ヤバかったの」
「そんな感じはしてたけど」
「自分でもいけないと思ったけど、どうしようもなくて」
「でも試合になったら、そんなこと感じさせなかったけどな」
「ああ、うん。バスケしてる時は、ね。試合の後はちょっとはふっきれたし」
「だけど、お前、香田さんとのデートを取り持ってやるみたいなことも言ってたじゃん」
「はぁ」
美那が大きなため息をつく。
「だってさ、リユが真由ちゃんのことを好きらしいって話はヤナギとかからも聞いてたし、リユに直接訊いてみたら、やっぱり憧れてるみたいなこと言うし。つまりわたしの中では、リユと真由ちゃんは両片思い」
「そりゃ、まあ、そうだったのかもしれないけど」
「まあ、わたしだって、前田とあんなことになっちゃったけどさ。それだって、リユはわたしのことは好きじゃないのかな、とか思ったのもあるんだから。そりゃ、あのときは大人っぽいアイツをカッコいいと思ってたし、アイツから口説かれたのもあるし、親のことがあってむしゃくしゃしてたのもあるけど……」
「いや、俺だって、お前には相手にされてないとか思ってたし」
「なんか、お互いの誤解とバカみたいな意地の張り合いみたいなものだったのかな?」
「かもな」
「わたしなんか、出会ったあの日から、ずぅーーとリユのことが好きなんだから。だからリユの小説読んで、胸キュンしまくりだった」
「マジで?」
「うん。それにわたしの気持ちが見透かされているのかと思った。そしてリユは真由ちゃんを好きで、真由ちゃんもリユのことを好きっぽい。そして、リユに無理矢理バスケを始めさせたら、リユはめちゃ素敵になっていくし、もう自分の気持ちを抑えきれなくなったの」
「それで、このあいだのキス?」
「……うん」
そう答えてうつむいた美那が顔を上げて、横に座る俺を見る。
「ねえ、さっきのって、プロポーズ?」
「え? まあ、告ったつもりだけど、でもそういうことになる。この間かーちゃんが俺と美那は〝友達以上恋人以上〟だから発展するのが難しいみたいなこと言っててさ、どこに着地すんだよって突っ込んだら、結婚? ってかーちゃんがボケたこと言ったと思ったけど、やっぱりそうなのかも、とか」
「わたしでいいの?」
「いいもなにも、美那以上の女なんてこの世にいないじゃん」
「それはちょっと買いかぶりすぎじゃ……」
「そんなことないって。他のやつのことは知らないけど、俺にとってはそうなの」
「うん。ありがとう。うれしい」
美那が潤んだ瞳で見つめてくる。そして、微妙に顔を近づけてくる。
こ、これはキスを求める感じ?
美那が瞼を閉じる。
だよな。
俺は意を決してゆっくりと唇を寄せる。
そっと重ねる。
初めての、俺からのキス、だ。
わー、なんて気分だ!
美那が腕を回してくる。
俺も腕を回して、抱き寄せる。
ああ、やばい。
気持ちよすぎる。美那、可愛すぎる。
抱き合う力が強くなる。
美那の存在を強く感じる。
わずかに呼吸の乱れた美那の口唇が少し開く。
美那の舌が俺の口の中に滑り込んでくる!
舌と舌が絡みつく。
うゎ、やば。気持ちよすぎて頭が痺れる……。
美那に気持ちが向いていることが真由に知られ、気まずい終わりを迎えたリユの初めてのデート。すぐに真由からメッセージが届き、関係修復の道筋がほのかに見え、リユはほっとする。美那に会って気持ちを伝えたくなったリユは、帰りに美那の家に寄ろうと決める。
電車の中で美那になんて伝えるかを考えた。でも結局のところ、「愛している」と「好きだ」と「俺と付き合ってほしい」という言葉しか思い浮かばない。
考えてみると、女子に告白するの、初めてじゃん。
まさか相手は美那というか、人生を振り返ってみると、やっぱり相手は美那だったというか。
俺が、好きだっ、って言ったら、どんな顔するんだろ?
それにもし、有里子さんの読みが違っていて、「え、リユ、なに言ってんの?」とか言われたりして。
いやいや、そんなことはないはずだ。
それにいずれにせよ、俺は美那が好きなんだ。
ずっと一緒にいたいんだ。
美那の笑顔を見ていたいんだ。
そうか。ずっとお前の笑顔を見ていたい、とか言うのもありか? それじゃ、意味が伝わらないか?
でも、俺がカッコつけても仕方ねえし、やっぱストレートに思いをぶつけるしかねえよな。
駅から美那の家までは歩いて10分ほどだ。
普段何気なく歩いていた上り坂だけど、なんか美那の家に近づくにつれて、だんだんドキドキしてきた。
あっという間に玄関に到着だ。
でもなんか静かだ。誰もいないのかな?
インターホンのボタンを押す。
応答がない。
もう一度押す。
応答がない。
けど、階段を降りてくる音が微かに聞こえてくる。
「え、リユ?」
美那の声だ!
俺からは美那は見えないけど、モニターには俺が映っているはずなのに、なぜか疑問形だ。
「あ、うん。今、ちょっと時間ある?」
「え、ちょっと待って。5分待っててくれる?」
「あ、うん」
こういう時はどうやって時間をやり過ごしたらいいんだろう。さすがにカイリーの動画を観るって気分でもないな。いや、でも、カイリーの力にあやかれるかも。
そんなわけで短めのお気に入り動画を開く。
うぉー、やっぱ、カイリーはすっげー!
つい、一緒に身体を動かしてしまう。
美那の来る気配がないので、もう一本。
と、玄関ドアの解鍵音が。
動画を止める間もなく、美那が顔を出す。
なんか疲れて、ちょっと緊張したような顔だ。
「まさか、またカイリー?」
「あ、うん」
「どうぞ」
ちょっといつもと違う、硬くてヨソヨソしい感じ。
「お邪魔します」と言いながら、靴を脱いで、中に入る。
園子さんはいない?
「お母さん、今日、実家に帰ってる」
まるで俺の疑問を察したかのように美那が言う。
やっぱ、それか。
「そうなんだ。またなんか進展があった感じ?」
「うん、どうなんだろ。お盆で親戚が集まるから、その前に親と話すみたい」
「そうか」
「リユ、今日はなんか用事だったんじゃないの?」
「あ、うん。もうそれは終わった」
「あ、そうなんだ。珍しいよね、約束なしで来るの」
「ごめん。あ、なんていうか、お前に話したいことがあって」
「へぇ」
なんか思い切り美那の顔が強張ってるような気が……。
「もしかして、俺、なんかタイミング悪かった?」
「え、別にそんなことないけど。どこで話す? お母さんいないから、居間でもいいし、それとも部屋に行く?」
む、こういうのはどっちがいいのか?
「そうだなぁ、部屋?」
「うん」
美那が背を向けて、階段をゆっくりと上がっていく。俺は少し遅れてそれに続く。
薄いピンクのTシャツに白いショートパンツ。きれいに伸びた脚が眩しい。
カイリーのでかいポスター。ベッドの横の壁には15番と16番のZ—Fourのユニフォーム。そしてベッドの端っこにはこの間のテディベアくんがちょこんと座っている。
先に自分の部屋に入った美那は、どういうわけか窓を背にして正座している。
「なんか、お前、緊張してる?」
緊張してるのは、俺も同じだけど。もしかして、その雰囲気が伝わってる?
「そ、そうかな?」
「いや、実は俺もちょっと緊張してる」
「そうなんだ?」
「うん」
俺もなんとなく美那に合わせて、正座で向かい合う。
互いを窺うような視線が絡み合う。こんな風に美那と向き合ったのは初めてかも。
「で、話って?」
「あ、うん」
うぅ、めちゃ、緊張する。いつの間にか握りしめていた拳の内側が汗ばんでいるのがわかる。
「あのさ、俺、美那の笑顔を一生見ていたい」
思わず口をついて出た。けど、これじゃ唐突すぎて、意味わかんないよな?
「え?」
やっぱり。
引きつったような感じだった美那の表情が、ちょっと意味がわからないんですけど? 的な疑問系の顔になっている……。
「あ、つまり、俺は……お前が好きだ。付き合ってほしい!」
「え?」
え? これも通じない?
「だから、俺はお前を愛してる。一生、お前と一緒にいたい」
「え?」
あ、もしかして、これじゃ、プロポーズ?
「じゃなくて、あ、でもそうなんだけど……」
でも、やっぱりそうなんだよ。
突然、美那の表情が歪んで、両方の目から涙が溢れ出る。
え、なんかマズかった?
次の瞬間、美那が俺に襲いかかってくる。
じゃなくて、抱きついてきた!
「リ、ユ……」
消え入るような声。
これって、どういう状況? ポジティブに捉えていいんだよな?
「わたしも……わたしも、リユとずっと一緒にいたい……」
美那が振り絞るように言う。
やっぱ、OKってことだよな?
俺は鍛えた体幹で堪えながら、そっと美那の背中に手を回す。
「好き。大好き。ずっと好き」
「うん」
「ずっと、怖かった」
美那が小さな声で言う。
「え?」
「リユと真由ちゃんが付き合うんじゃないか、って。今も、俺、香田さんと付き合うことになったから、とか言われるの覚悟してた」
「いや、それは」
美那が身体を起こす。
すぐ目の前の美那の濡れた瞳が俺を見る。
「今日、真由ちゃんと会ってたんでしょ?」
「え?」
なんで、美那が知ってる?
「隠さなくてもいいよ」
「ああ、うん」
「胸が張り裂けそうだった」
「……」
なんて答えていいかわからない。
美那がすっと立ち上がる。机の横の棚にあるティッシュに手を伸ばす。
「あ、ごめん。気が利かなくて」
美那が俺を見て、少し笑う。
「え、いいよ、そんなこと」
俺の前を通り過ぎて、美那はベッドに座る。
「リユもいつまでも正座してないで、こっちに座って?」
「ああ、うん」
俺は立ち上がって、美那の横に腰を下ろす。
「実は、わたし、真由ちゃんから恋愛相談を受けてた」
「え? そうなの?」
香田さんは、美那とはほかのクラスではよく話す方とか言ってたよな。でもまあそんなことは普通言わねえか。
「うん。あ、でも相手が誰かは真由ちゃんは言わなかったけど。言うというか、やりとりはメッセージアプリだったけど。でも、間違いなく相手はリユだろうと思ってた」
「そうなんだ……」
「このあいだの練習試合の日、わたし、変だったでしょ?」
「あ、うん」
「真由ちゃんから次の土曜日にデートすることになったみたいなこと聞いたから。そして、リユからは土曜日に予定が入ったって連絡があったし」
そうだったのか……。
「だからあの日、わたし、メンタル超ヤバかったの」
「そんな感じはしてたけど」
「自分でもいけないと思ったけど、どうしようもなくて」
「でも試合になったら、そんなこと感じさせなかったけどな」
「ああ、うん。バスケしてる時は、ね。試合の後はちょっとはふっきれたし」
「だけど、お前、香田さんとのデートを取り持ってやるみたいなことも言ってたじゃん」
「はぁ」
美那が大きなため息をつく。
「だってさ、リユが真由ちゃんのことを好きらしいって話はヤナギとかからも聞いてたし、リユに直接訊いてみたら、やっぱり憧れてるみたいなこと言うし。つまりわたしの中では、リユと真由ちゃんは両片思い」
「そりゃ、まあ、そうだったのかもしれないけど」
「まあ、わたしだって、前田とあんなことになっちゃったけどさ。それだって、リユはわたしのことは好きじゃないのかな、とか思ったのもあるんだから。そりゃ、あのときは大人っぽいアイツをカッコいいと思ってたし、アイツから口説かれたのもあるし、親のことがあってむしゃくしゃしてたのもあるけど……」
「いや、俺だって、お前には相手にされてないとか思ってたし」
「なんか、お互いの誤解とバカみたいな意地の張り合いみたいなものだったのかな?」
「かもな」
「わたしなんか、出会ったあの日から、ずぅーーとリユのことが好きなんだから。だからリユの小説読んで、胸キュンしまくりだった」
「マジで?」
「うん。それにわたしの気持ちが見透かされているのかと思った。そしてリユは真由ちゃんを好きで、真由ちゃんもリユのことを好きっぽい。そして、リユに無理矢理バスケを始めさせたら、リユはめちゃ素敵になっていくし、もう自分の気持ちを抑えきれなくなったの」
「それで、このあいだのキス?」
「……うん」
そう答えてうつむいた美那が顔を上げて、横に座る俺を見る。
「ねえ、さっきのって、プロポーズ?」
「え? まあ、告ったつもりだけど、でもそういうことになる。この間かーちゃんが俺と美那は〝友達以上恋人以上〟だから発展するのが難しいみたいなこと言っててさ、どこに着地すんだよって突っ込んだら、結婚? ってかーちゃんがボケたこと言ったと思ったけど、やっぱりそうなのかも、とか」
「わたしでいいの?」
「いいもなにも、美那以上の女なんてこの世にいないじゃん」
「それはちょっと買いかぶりすぎじゃ……」
「そんなことないって。他のやつのことは知らないけど、俺にとってはそうなの」
「うん。ありがとう。うれしい」
美那が潤んだ瞳で見つめてくる。そして、微妙に顔を近づけてくる。
こ、これはキスを求める感じ?
美那が瞼を閉じる。
だよな。
俺は意を決してゆっくりと唇を寄せる。
そっと重ねる。
初めての、俺からのキス、だ。
わー、なんて気分だ!
美那が腕を回してくる。
俺も腕を回して、抱き寄せる。
ああ、やばい。
気持ちよすぎる。美那、可愛すぎる。
抱き合う力が強くなる。
美那の存在を強く感じる。
わずかに呼吸の乱れた美那の口唇が少し開く。
美那の舌が俺の口の中に滑り込んでくる!
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