132 / 141
第3章
3-55 美那に会いたい!
しおりを挟む
【前回のあらすじ】
リユの美那への想いを悟った真由。なんとか真由を傷つけまいとするリユに対して真由は「残酷だけど、誠実で優しい」と言う。そして真由から遊歩道が終わるまで恋人つなぎをして歩いてほしいとお願いされたリユは迷った末に受け入れる。その終わりとともに真夏は終わってしまったとリユは感じる。
特急が動き出して、香田さんの姿はすぐに見えなくなる。
あー、なんかなぁ。やっぱり今日はキャンセルした方がよかったのかな?
なんか結果的にはさんざん思わせ振りな態度を取っておいて、いざ香田さんから誘われたら、フったみたいな感じになっちゃったよなぁ。
ひでえヤツなのかな、俺?
でも俺は美那を選んだんだ。
そうなんだよ。俺には美那しかいない。
もうずっと前から美那とそうなるのを諦めていたから気付かなかったんだ。本当は無理だとしても行くべきだったんじゃないのか? 自分がダメな人間だと思って、美那を避けるようにしてきたからな。
ほんと、情けねえ。
と、ポケットのスマホが震える。
え、香田さんからメッセージだ……。
——>森本くん、今日はありがとう。なんか変な感じになっちゃって、ごめんね。ちょっと変に思うかもしれないけど、わたし的には楽しかったよ。無理言って手をつないだりしてもらって、ごめんね。これからも今までみたいな友だちでいてくれる?
あー、2回も「ごめんね」とか。なんで香田さんが謝らなきゃいけないんだ? 謝るのは俺の方だろ? だけど、ちょっとポジティブな感じで安心した。
それにしても、なんて返信しよう。難しすぎる。そう言われても仕方がないとはいえ、残酷とか言われちゃったしな。香田さん的には、慎重にも慎重に検討を重ねて、たぶん俺なら、さほどの障害もなくボーイフレンド的な感じで付き合えると考えて誘ったところが、その直前になって俺が翻意したようなものだろうからな。
——香田さんは俺にとって数少ない友だちだから、こちらこそよろしくお願いします。それに謝るのは俺の方だし。
いや、なんか違う。俺が謝るとかえって香田さんを傷つけそうな気がする。
もうここはシンプルに行こう。結局何を言っても傷つけてしまいそうな気がする。
――香田さんは俺にとって数少ない友だちだから、友だちでいてくれると嬉しいです。信じてもらえないかもしれないけど、俺にとって今日は夢のような1日でした。憧れの香田さんとデートできて(俺が勝手にそう思い込んでいただけだけど)、しかも恋人つなぎで歩けて。たぶん今日のことは一生忘れないと思う。
ありゃ? 全然シンプルじゃない……でも本音ではある。問題は香田さんがどう受け取るかだよな。
てか俺の思いがシンプルじゃないんだから、シンプルに書けるはずないか……。憧れの香田さんとのデートを前に美那を女性として愛していることに気付いて、それでいて香田さんは憧れの女子のままだったし、な。
やっぱ香田さんとは小説つながりなんだろうな。
そういや香田さんの小説はなんてタイトルだったっけ?
〝ヨミカキ+αで作家になる!〟のサイトを開く。
神田悠真で検索。
そう、これ、『蒼い花』だ!
うわ、すげー、もう18話まで行ってんじゃん! しかもPV1200超えてるし。流行りのジャンルじゃないのにスゴイ。俺のとか、その10分の1くらいだもんな。まあ俺の小説はすっかりエタってるからな……現実に追い越されてしまった感タップリだし。
<——香田さんは俺にとって数少ない友だちだから、俺の方こそこれからも友だちでいてくれると嬉しいです。信じてもらえないかもしれないけど、俺にとって今日は夢のような1日でした。憧れの香田さんとデートできて(俺が勝手にそう思い込んでいただけだけど)、しかも恋人つなぎで歩けるなんて! たぶん今日のことは一生忘れないと思う。小説なんかを通して、また話をしたいです。神田悠真くんの『蒼い花』、もう18話まで進んでて、しかもスゴい読まれてますね。俺もまた読ませてもらいます。
うぇ、めちゃ長いじゃん。でもいいか。
えい! 送信。
即、既読がついて、数分後に返信が来た。
——>ありがとう。なんか自分と想像していたのは違う方向進んじゃったけど、森本くんとたくさん話せてよかったです。そうですね、お互いバレちゃったし、これからはもっと深く小説の話もできますよね!(こっそり) あ、それから、前に別のサイトで女子高生と自己紹介していたら、ちょっと変な人に絡まれちゃって……だから男子のフリしてます。どうか内緒にしておいてください!
<——了解です! じゃあ、また学校で。
——>じゃあ、また学校で。
あー、なんか決着がついた感じ?
香田さんと俺が連絡先交換して、美術館で会ったことは誰も知らないし、ふたりが同じ小説投稿サイトに投稿していることも誰も知らない。少なくとも学校で変な噂を立てられることはなさそうだ。なんとか新しい関係を築くことができればいいんだけど。
別れ際はかなり気まずい状況だったけど、少しはベクトルがいい方向に向いた感じ? これも香田さんの方から歩み寄りのメッセージをくれたからだよな。美那にしても、香田さんにしても、俺なんかよりずっと大人だよな……。
美那。
あー、なんか、急に美那に会いたくなった。
会ってどうするのかよくわからないけど、とにかく会いたい。
美那の顔が見たい。
4時半か。まだサスケコートに行ける?
でも今日はそういうんじゃないよな?
会って、気持ちをはっきりと伝えるべきなんじゃ?
あ、でも、そういや、美那も今日はなんか用事があるとかだったよな。
それに気持ちを伝えるって、そう軽いことじゃないよな。
やっぱちゃんとデート的なのに誘うべきなのか? プロポーズとかなら間違いなくそうだけど、告白の場合はどうなんだろ?
本当はデートに誘ってそれなりの雰囲気で伝えた方がいいのかもしれないけど、俺と美那の関係だしな。それに「善は急げ」ということわざもある。
あー、わからん。
そうだ、帰りにそのままサプライズ的に美那の家に寄ってみるか。
美那に好きだって伝える決意はできている。
もしいなかったら、そのときはあらためてデートに誘うというのもありだろう。美那は変に思うかもしれないけど。
うん、そうしよう!
【作者よりお知らせ】
今回で(想定していたより長くなってしまった)第3章は完結です。
次回から第4章が始まります!
どうぞお楽しみに!!
リユの美那への想いを悟った真由。なんとか真由を傷つけまいとするリユに対して真由は「残酷だけど、誠実で優しい」と言う。そして真由から遊歩道が終わるまで恋人つなぎをして歩いてほしいとお願いされたリユは迷った末に受け入れる。その終わりとともに真夏は終わってしまったとリユは感じる。
特急が動き出して、香田さんの姿はすぐに見えなくなる。
あー、なんかなぁ。やっぱり今日はキャンセルした方がよかったのかな?
なんか結果的にはさんざん思わせ振りな態度を取っておいて、いざ香田さんから誘われたら、フったみたいな感じになっちゃったよなぁ。
ひでえヤツなのかな、俺?
でも俺は美那を選んだんだ。
そうなんだよ。俺には美那しかいない。
もうずっと前から美那とそうなるのを諦めていたから気付かなかったんだ。本当は無理だとしても行くべきだったんじゃないのか? 自分がダメな人間だと思って、美那を避けるようにしてきたからな。
ほんと、情けねえ。
と、ポケットのスマホが震える。
え、香田さんからメッセージだ……。
——>森本くん、今日はありがとう。なんか変な感じになっちゃって、ごめんね。ちょっと変に思うかもしれないけど、わたし的には楽しかったよ。無理言って手をつないだりしてもらって、ごめんね。これからも今までみたいな友だちでいてくれる?
あー、2回も「ごめんね」とか。なんで香田さんが謝らなきゃいけないんだ? 謝るのは俺の方だろ? だけど、ちょっとポジティブな感じで安心した。
それにしても、なんて返信しよう。難しすぎる。そう言われても仕方がないとはいえ、残酷とか言われちゃったしな。香田さん的には、慎重にも慎重に検討を重ねて、たぶん俺なら、さほどの障害もなくボーイフレンド的な感じで付き合えると考えて誘ったところが、その直前になって俺が翻意したようなものだろうからな。
——香田さんは俺にとって数少ない友だちだから、こちらこそよろしくお願いします。それに謝るのは俺の方だし。
いや、なんか違う。俺が謝るとかえって香田さんを傷つけそうな気がする。
もうここはシンプルに行こう。結局何を言っても傷つけてしまいそうな気がする。
――香田さんは俺にとって数少ない友だちだから、友だちでいてくれると嬉しいです。信じてもらえないかもしれないけど、俺にとって今日は夢のような1日でした。憧れの香田さんとデートできて(俺が勝手にそう思い込んでいただけだけど)、しかも恋人つなぎで歩けて。たぶん今日のことは一生忘れないと思う。
ありゃ? 全然シンプルじゃない……でも本音ではある。問題は香田さんがどう受け取るかだよな。
てか俺の思いがシンプルじゃないんだから、シンプルに書けるはずないか……。憧れの香田さんとのデートを前に美那を女性として愛していることに気付いて、それでいて香田さんは憧れの女子のままだったし、な。
やっぱ香田さんとは小説つながりなんだろうな。
そういや香田さんの小説はなんてタイトルだったっけ?
〝ヨミカキ+αで作家になる!〟のサイトを開く。
神田悠真で検索。
そう、これ、『蒼い花』だ!
うわ、すげー、もう18話まで行ってんじゃん! しかもPV1200超えてるし。流行りのジャンルじゃないのにスゴイ。俺のとか、その10分の1くらいだもんな。まあ俺の小説はすっかりエタってるからな……現実に追い越されてしまった感タップリだし。
<——香田さんは俺にとって数少ない友だちだから、俺の方こそこれからも友だちでいてくれると嬉しいです。信じてもらえないかもしれないけど、俺にとって今日は夢のような1日でした。憧れの香田さんとデートできて(俺が勝手にそう思い込んでいただけだけど)、しかも恋人つなぎで歩けるなんて! たぶん今日のことは一生忘れないと思う。小説なんかを通して、また話をしたいです。神田悠真くんの『蒼い花』、もう18話まで進んでて、しかもスゴい読まれてますね。俺もまた読ませてもらいます。
うぇ、めちゃ長いじゃん。でもいいか。
えい! 送信。
即、既読がついて、数分後に返信が来た。
——>ありがとう。なんか自分と想像していたのは違う方向進んじゃったけど、森本くんとたくさん話せてよかったです。そうですね、お互いバレちゃったし、これからはもっと深く小説の話もできますよね!(こっそり) あ、それから、前に別のサイトで女子高生と自己紹介していたら、ちょっと変な人に絡まれちゃって……だから男子のフリしてます。どうか内緒にしておいてください!
<——了解です! じゃあ、また学校で。
——>じゃあ、また学校で。
あー、なんか決着がついた感じ?
香田さんと俺が連絡先交換して、美術館で会ったことは誰も知らないし、ふたりが同じ小説投稿サイトに投稿していることも誰も知らない。少なくとも学校で変な噂を立てられることはなさそうだ。なんとか新しい関係を築くことができればいいんだけど。
別れ際はかなり気まずい状況だったけど、少しはベクトルがいい方向に向いた感じ? これも香田さんの方から歩み寄りのメッセージをくれたからだよな。美那にしても、香田さんにしても、俺なんかよりずっと大人だよな……。
美那。
あー、なんか、急に美那に会いたくなった。
会ってどうするのかよくわからないけど、とにかく会いたい。
美那の顔が見たい。
4時半か。まだサスケコートに行ける?
でも今日はそういうんじゃないよな?
会って、気持ちをはっきりと伝えるべきなんじゃ?
あ、でも、そういや、美那も今日はなんか用事があるとかだったよな。
それに気持ちを伝えるって、そう軽いことじゃないよな。
やっぱちゃんとデート的なのに誘うべきなのか? プロポーズとかなら間違いなくそうだけど、告白の場合はどうなんだろ?
本当はデートに誘ってそれなりの雰囲気で伝えた方がいいのかもしれないけど、俺と美那の関係だしな。それに「善は急げ」ということわざもある。
あー、わからん。
そうだ、帰りにそのままサプライズ的に美那の家に寄ってみるか。
美那に好きだって伝える決意はできている。
もしいなかったら、そのときはあらためてデートに誘うというのもありだろう。美那は変に思うかもしれないけど。
うん、そうしよう!
【作者よりお知らせ】
今回で(想定していたより長くなってしまった)第3章は完結です。
次回から第4章が始まります!
どうぞお楽しみに!!
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
鎌倉讃歌
星空
ライト文芸
彼の遺した形見のバイクで、鎌倉へツーリングに出かけた夏月(なつき)。
彼のことを吹っ切るつもりが、ふたりの軌跡をたどれば思い出に翻弄されるばかり。海岸に佇む夏月に、バイクに興味を示した結人(ゆいと)が声をかける。
【本当にあった怖い話】
ねこぽて
ホラー
※実話怪談や本当にあった怖い話など、
取材や実体験を元に構成されております。
【ご朗読について】
申請などは特に必要ありませんが、
引用元への記載をお願い致します。
わけありのイケメン捜査官は英国名家の御曹司、潜入先のロンドンで絶縁していた家族が事件に
川喜多アンヌ
ミステリー
あのイケメンが捜査官? 話せば長~いわけありで。
もしあなたの同僚が、潜入捜査官だったら? こんな人がいるんです。
ホークは十四歳で家出した。名門の家も学校も捨てた。以来ずっと偽名で生きている。だから他人に化ける演技は超一流。証券会社に潜入するのは問題ない……のはずだったんだけど――。
なりきり過ぎる捜査官の、どっちが本業かわからない潜入捜査。怒涛のような業務と客に振り回されて、任務を遂行できるのか? そんな中、家族を巻き込む事件に遭遇し……。
リアルなオフィスのあるあるに笑ってください。
主人公は4話目から登場します。表紙は自作です。
主な登場人物
ホーク……米国歳入庁(IRS)特別捜査官である主人公の暗号名。今回潜入中の名前はアラン・キャンベル。恋人の前ではデイヴィッド・コリンズ。
トニー・リナルディ……米国歳入庁の主任特別捜査官。ホークの上司。
メイリード・コリンズ……ワシントンでホークが同棲する恋人。
カルロ・バルディーニ……米国歳入庁捜査局ロンドン支部のリーダー。ホークのロンドンでの上司。
アダム・グリーンバーグ……LB証券でのホークの同僚。欧州株式営業部。
イーサン、ライアン、ルパート、ジョルジオ……同。
パメラ……同。営業アシスタント。
レイチェル・ハリー……同。審査部次長。
エディ・ミケルソン……同。株式部COO。
ハル・タキガワ……同。人事部スタッフ。東京支店のリストラでロンドンに転勤中。
ジェイミー・トールマン……LB証券でのホークの上司。株式営業本部長。
トマシュ・レコフ……ロマネスク海運の社長。ホークの客。
アンドレ・ブルラク……ロマネスク海運の財務担当者。
マリー・ラクロワ……トマシュ・レコフの愛人。ホークの客。
マーク・スチュアート……資産運用会社『セブンオークス』の社長。ホークの叔父。
グレン・スチュアート……マークの息子。
未来の貴方にさよならの花束を
まったりさん
青春
小夜曲ユキ、そんな名前の女の子が誠のもとに現れた。
友人を作りたくなかった誠は彼女のことを邪険に扱うが、小夜曲ユキはそんなこと構うものかと誠の傍に寄り添って来る。
小夜曲ユキには誠に関わらなければならない「理由」があった。
小夜曲ユキが誠に関わる、その理由とは――!?
この出会いは、偶然ではなく必然で――
――桜が織りなす、さよならの物語。
貴方に、さよならの言葉を――
俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる