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第3章
3-27 敵ながらアッパレ?
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【前回のあらすじ】
リユのフリースローのタイミングでルーシーがジャックと交代。フリースローがなんとか決まり、10対10の同点に戻す。次のMCの攻撃はオツが数的不利を凌ぎ、ジャックのシュートミスを誘う。ボールを奪ったZ―Fourは、オツがダンクを決める。MCはペギーの「ビッグバード!」という掛け声からのコンビネーションから、テッドのダンクで強烈な返礼。一方でZも、オツからのパスを受けたリユが、テッドの高いディフェンスを交わすため、身体が落下する中でシュートを放つ。
ボールがテッドのディフェンスを抜けたところまでしか、俺には見えない。
シュートを放つ瞬間は、ボードの一部が見えていたから、方向はだいたい合っているはずだ。
なんか、辺りが妙に静まり返っている。
遠くのコートでやっているバレーボールの音は聞こえるのに。
辛うじてナイキのカイリーモデルは無事に着地したものの、後ろによろめいて、尻もちをつく。相当無理な姿勢だったから、仕方ない。
テッドが後ろを振り向いて、「No Way……」と呟いているのを見上げる。
いや、ノー・ウェイ、ってどういう意味よ? 道がない⁇ 方法がない?
バスケットのネットの揺れる音がした。
あの角度だと、横から当たったってことはないよな?
「……リユ」
ため息のような美那の声が聞こえる。
タン、タン、タンと、ボールがコートの床に弾む音が収束していく。
「うぉぉぉぉーーー!」
オツの獣のような叫び声が耳に届く。
それから、うわぁぁぁーーーー!! というコートを包み込むような歓声。大きな拍手も起こる。といっても、たぶん十数人分のだけど。
「……入った?」
俺の呟きに、テッドが俺を見る。
テッドが爽やかな笑顔を浮かべ、俺に右手を差し出す。
俺の腕を引っ張って立つのを助けてくれたテッドが、「Good Shot!!」と言って、俺の肩をポンポンと2度軽く叩く。まあ、ナイス・シュートと同じ意味だろう。
「お兄さーーーん!」
中バス女子の声だ。
美那が駆け寄ってくる。
「すごいよ、カイリーユ! 愛してる!!」
ハイタッチとちょっと照れたような可愛い笑顔を残して、美那は、トップに戻るペギーのディフェンスに走っていく。
間違いない。
得点を表示するモニターは「Z-Four 12 — 11 Monster's Cookie」になってる!
やべ、入ったのかよ、あれ。
ま、サスケコートで一人練習をするとき、遊び半分で、ああいうプレーもイメージしてやっておいたからな。いま入ったのは、たぶんほとんど奇跡だけど。
テッドがボールを拾う。
スペースのある左ウイングにドリブルで戻る。俺はそれを追う。
トップのペギーは美那がマーク。
右ウイングのジャックは、オツががっちり守っている。
ペギーがカットインの動きを見せるけど、美那がそれを許さない。
テッドも俺をドリブルで抜こうとするけど、俺だって1on1では簡単には負けない。オフボールのディフェンスは……やっぱ木村主将に教えてもらうしかねえかぁ。オツの提案に、ほぼ合意しちゃったしな。
ルーシーが抜けた今、MCの攻撃はどうしてもペギーが中心になる。
美那が気合の入ったディフェンスでペギーの動きを封じると、MCは攻め手に欠ける。
MCは、なんとかテッドからペギーにパスを繋ぐけど、これまでにないくらいの集中力で美那はペギーの突破を許さない。
ペギーはショットクロックぎりぎりで、無理矢理な2Pシュートを打つ。
これも美那のDの圧力を受けているから、まともなシュートにはならない。
ボールはバックボードにも当たらず、アウト・オブ・バウンズになる。
ナオがもう立ち上がって、交代を要求している感じ。
俺は、トップの方にゆっくりとした駆け足で戻る。
「リユくん、めちゃカッコよかった。わたしも、頑張る!」
「うっす!」
俺はナオの背中を見送り、ゆっくりと椅子に腰を落とす。
ふと、少し向こうに座るルーシーに目を向けると、こっちを見ている。
視線が合うと、にこりとする。
俺は小さく頷いて、それに応える。
「テキナガラ、アッパレデス!」
ルーシーはそう言うと、俺にウインクしやがる。
意味わかんねー!
それにしても、敵ながら天晴なんて、よく知ってるな。
これって、敵に塩を送る、ってヤツ? ちょっと違うか……でも敵にでも褒められるとちょっと嬉しい、みたいな……。
残り時間、7分24秒。
得点は12対11で、Z—Fourの1点リードだ!
リユのフリースローのタイミングでルーシーがジャックと交代。フリースローがなんとか決まり、10対10の同点に戻す。次のMCの攻撃はオツが数的不利を凌ぎ、ジャックのシュートミスを誘う。ボールを奪ったZ―Fourは、オツがダンクを決める。MCはペギーの「ビッグバード!」という掛け声からのコンビネーションから、テッドのダンクで強烈な返礼。一方でZも、オツからのパスを受けたリユが、テッドの高いディフェンスを交わすため、身体が落下する中でシュートを放つ。
ボールがテッドのディフェンスを抜けたところまでしか、俺には見えない。
シュートを放つ瞬間は、ボードの一部が見えていたから、方向はだいたい合っているはずだ。
なんか、辺りが妙に静まり返っている。
遠くのコートでやっているバレーボールの音は聞こえるのに。
辛うじてナイキのカイリーモデルは無事に着地したものの、後ろによろめいて、尻もちをつく。相当無理な姿勢だったから、仕方ない。
テッドが後ろを振り向いて、「No Way……」と呟いているのを見上げる。
いや、ノー・ウェイ、ってどういう意味よ? 道がない⁇ 方法がない?
バスケットのネットの揺れる音がした。
あの角度だと、横から当たったってことはないよな?
「……リユ」
ため息のような美那の声が聞こえる。
タン、タン、タンと、ボールがコートの床に弾む音が収束していく。
「うぉぉぉぉーーー!」
オツの獣のような叫び声が耳に届く。
それから、うわぁぁぁーーーー!! というコートを包み込むような歓声。大きな拍手も起こる。といっても、たぶん十数人分のだけど。
「……入った?」
俺の呟きに、テッドが俺を見る。
テッドが爽やかな笑顔を浮かべ、俺に右手を差し出す。
俺の腕を引っ張って立つのを助けてくれたテッドが、「Good Shot!!」と言って、俺の肩をポンポンと2度軽く叩く。まあ、ナイス・シュートと同じ意味だろう。
「お兄さーーーん!」
中バス女子の声だ。
美那が駆け寄ってくる。
「すごいよ、カイリーユ! 愛してる!!」
ハイタッチとちょっと照れたような可愛い笑顔を残して、美那は、トップに戻るペギーのディフェンスに走っていく。
間違いない。
得点を表示するモニターは「Z-Four 12 — 11 Monster's Cookie」になってる!
やべ、入ったのかよ、あれ。
ま、サスケコートで一人練習をするとき、遊び半分で、ああいうプレーもイメージしてやっておいたからな。いま入ったのは、たぶんほとんど奇跡だけど。
テッドがボールを拾う。
スペースのある左ウイングにドリブルで戻る。俺はそれを追う。
トップのペギーは美那がマーク。
右ウイングのジャックは、オツががっちり守っている。
ペギーがカットインの動きを見せるけど、美那がそれを許さない。
テッドも俺をドリブルで抜こうとするけど、俺だって1on1では簡単には負けない。オフボールのディフェンスは……やっぱ木村主将に教えてもらうしかねえかぁ。オツの提案に、ほぼ合意しちゃったしな。
ルーシーが抜けた今、MCの攻撃はどうしてもペギーが中心になる。
美那が気合の入ったディフェンスでペギーの動きを封じると、MCは攻め手に欠ける。
MCは、なんとかテッドからペギーにパスを繋ぐけど、これまでにないくらいの集中力で美那はペギーの突破を許さない。
ペギーはショットクロックぎりぎりで、無理矢理な2Pシュートを打つ。
これも美那のDの圧力を受けているから、まともなシュートにはならない。
ボールはバックボードにも当たらず、アウト・オブ・バウンズになる。
ナオがもう立ち上がって、交代を要求している感じ。
俺は、トップの方にゆっくりとした駆け足で戻る。
「リユくん、めちゃカッコよかった。わたしも、頑張る!」
「うっす!」
俺はナオの背中を見送り、ゆっくりと椅子に腰を落とす。
ふと、少し向こうに座るルーシーに目を向けると、こっちを見ている。
視線が合うと、にこりとする。
俺は小さく頷いて、それに応える。
「テキナガラ、アッパレデス!」
ルーシーはそう言うと、俺にウインクしやがる。
意味わかんねー!
それにしても、敵ながら天晴なんて、よく知ってるな。
これって、敵に塩を送る、ってヤツ? ちょっと違うか……でも敵にでも褒められるとちょっと嬉しい、みたいな……。
残り時間、7分24秒。
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