カイリーユと山下美那、Z(究極)の夏〜高2のふたりが駆け抜けたアツイ季節の記録〜

百一 里優

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第3章

3-25 紳士的殴り合い

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【前回のあらすじ】
 美那がテッドのシュートをファウルで止めて、テッドがフリースローを失敗。2点のビハインドを維持する。そこで攻撃権を得たZ—Fourは、チョー格好いい美那のノー・ルックのバックパスを呼び込んだリユが1Pを決める。さらにリユと美那のダブルチームでボールを奪取スティール、リユが2Pを決め、一気に逆転だ!



 得点は(Z)9対8(MC)と1点リード。
 俺が決めたゴールのボールを、テッドが拾いに行く。
 テッドのディフェンスに、俺が向かう。
 サラサラ金髪、さわやか笑顔のテッドの表情が厳しい。睨むように俺を見る。
 トップのルーシーは美那がマーク。左ウイングのペギーにはオツが付く。
 背中を向けるオツがペギーの動きに集中しているのに気づいたらしいテッドが、ペギーに高くて速いパスを出す。
「オツ! パス!」と、俺は叫ぶ。
 オツはすぐに振り返ったけど、ジャンプが遅れて届かず、高いジャンプのペギーがキャッチ。
 ペギーは、着地する前にルーシーにパスを出す。
 テッドが美那に向かってダッシュする。美那にスクリーンをかけるつもりだ。
「美那、スクリーン!」と俺。
 そのまま俺は、さらにテッドにスクリーンをかける形になる。
 俺はどうすればいい? ルーシーが飛び出してくるのを捕まえればいいのか?
 美那よりも動きが速いルーシーは確実にパスを受けると、一旦左に行くと見せかけてのロールターンで美那のディフェンスを、ゴールに向かっての右——ゴールを背にした俺から見ると左——から抜けてくる。
 思った通りじゃん!
 美那はテッドのスクリーンで追えない。
 俺はルーシーのディフェンスに走る。
 ルーシーは、俺が来るのを想定していたのだろう。俺から遠ざかるようにアークのライン上を右にドリブルしていく。
 ドリブルしてるのに、速い!
 だけど、あのスピードだと、止まって2Pシュートするのは難しくねえか?
「リユ、ペギーがダイブ!」
 美那が叫ぶ。MCモンスターズ・クッキーの気心の知れた絶妙な動きに振り回せる俺たちは、思わず、掛け声を連発している。
 だけど美那に言われた時には、俺が微妙に届かない高さで、ルーシからペギーへのループパスが出されている。
 ペギーがジャンプして、それをキャッチ。
 ただ、オツが背後でディフェンスして、中にはいられるのを抑えている。
 ペギーがペイントエリア内に押し込むも、オツが気合のディフェンスだ。
 テッドが走り込んで、ペギーをフォロー。
 ペギーからテッドに、パスが出される。
 美那は後ろから追う形で、ディフェンスできない。
 オツがテッドの対応に動いた瞬間、テッドからペギーに速いバウンスパス。
 パスが通ってしまう。
 もうダメか、と思いきや、オツがそれにも反応。
 どうやら、オツは、テッドからのリターンパスを読んでいたらしい。
 とはいえ、ペギーの動きは速い。
 オツが無理めに身体を押す感じで、止めに入る。
 ペギーのオーバーハンド・レイアップシュートはリングを捉えることなく、ボードに当たって、跳ね返り、そのままコートに落ちる。
 またまた審判の笛。
 オツのファウルだ。
 ペギーが肩をすくめる。
 オツが、すまん、という感じで、ペギーに手のひらを向ける。
 ペギーがちょっとだけ笑って、それに応え、オツの手を軽く叩く。

 オツもまた、ファウルでペギーのシュートを阻止した形だ。
 女子特別ルールで、1Pシュート中のファウルなので、2回のフリースローが与えられる。
 まあ流石さすがというか、残念ながら、ペギーは2本ともきっちり決める。
 それでも、ファウルで止めなければ、ほぼ確実にゴールを決めていただろうから、ここは確率の問題だ。ペギーだってフリースローを外すことだってあるはずだからな。

 これで、また逆転を許した。
(Z)9対10(MC)。
 でもまだ1点差。残り時間は8分9秒だ。
 ゴールのボールをオツが取る。
 仕切り直しという感じだ。
 オツが、ゆっくりとしたドリブルで、左ウイングに戻っていく。テッドがそこに付いていく。
 美那はトップに戻り、ルーシーがマーク。
 俺はペギーを連れて、右ウイングに向かう。
 正直、ナオと交代したいところだけど、まだルーシーがプレーしているから、それもできない。確か、チェックボールじゃなくても、フリースローの前なら交代できたはずなんだけど……。
 でもここは俺が踏ん張るしかない。それにキツいのは俺だけじゃなさそうだし。テッドもキツそうだし、ルーシーだってかなりへばっている感じだ。美那だって、必死な感じだもんな。オツとペギーだって、楽ではなさそうだ。
 てか、ジャックが前の2試合でかなり消耗したっぽくて、ベンチで辛そうに座ってるし。
 ナオはときどき立ち上がって、元気に声援を送ってくれるけど。

 アークの外に出たオツが、片手を伸ばして距離を取って、向き合うテッドのスティールを防ぎつつ、ゆっくりとしたドリブルを続ける。
 さあ、オツはここからどうやって組み立てていくんだ?
 と、思ったら、美那が俺を見る。
 視線が合う。
 そしたら、なんか、勝手に身体が動き出した。
 ペギーの左から、よくわからないまま中央にダイブする、俺……。
 ほんの一瞬遅れて、美那がルーシーの左側に回り込む。
 そこへ、オツからバウンスパス!
 美那がキャッチするも、ルーシーがきっちり付いている。
 俺はそのままペギーの圧を受けながらも、ゴール下近くまで走り込む。
 美那は左サイドを向いてドリブルでじりじりとゴールに近づいてくる。背中でルーシーのディフェンスを遠ざけている。
 膠着こうちゃく状態におちいったのかと思ったら、そこから美那が一気に動く。
 スピードを急に上げてゴールの左下まで走り込んだ美那は、ルーシーを背負いながら、勝負をかける。
 左手でのレイアップシュートの態勢で、ジャンプ。
 ルーシーも飛ぶ。シュートを阻止しようと、左手を上にぐっと伸ばしている。
 ボールをはなつと同時に、美那が叫ぶ。
「リユ!」
 美那の投げたボールは、バックボードの四角の中央に当たって、俺の方に跳ねてくる。
 そうか、リバウンドのポジション的には、ペギーよりも俺が有利な位置だ。
 ペギーの圧力を背中で押し返しながら、ジャンプ一番。
 美那から託されたボールをしっかりキャッチ! そして、着地。
 間髪入れず、そのまま飛んで、シューーート。
 のはずが、後ろからペギーに腕を弾かれる。
 ボールはきちんと投げられず、下に落ちる。
 で、審判の笛。
 今度は、ペギーがファウルで止めに来たのかぁ!
 ペギーが俺の肩を叩く。
 俺は手を上げて、それに応える。
 なんか、とっても紳士的な殴り合いって感じだぁ!!
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