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第3章
3-23 ハイピッチ
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【前回のあらすじ】
ペギーの意表を突いたパスからルーシーに得点を許すも、リユの2Pのリバウンドをルーシーに競り勝った美那が得点を決める。MCのセットプレーからルーシーのシュートもリユが阻止。中バス女子2人から、美那とリユに声援が飛ぶ。
得点は(Z)2対2(MC)の同点。
残り時間は9分29秒。まだ試合は始まったばかり。
ペギーがルーシーとテッドに何か言っている。
俺がディフェンスでボールを外に出したので、またまたMC攻撃のチェックボールだ。
今回はルーシーがトップに来る。なので美那がチェックボールを担当する。
アークライン沿いの左サイドに回ったペギーに俺が付き、右のテッドはオツがマーク。フラット・トライアングルらしきフォーメーションは同じだ。
美那からトスされたボールをルーシーが受け取る。けど、ルーシーはすぐには動き出さない。
と、ペギーがコートの中央付近に向かって走り出す。もちろん俺もマークに走る。
反対側から、テッドも同じ方向に走ってくる。
ペギーは右のフリースローレーン辺りまで走り込む。
テッドはそれよりやや深い位置に走り込んでいる。
するとペギーがUターンするようにして左サイドに戻る。
なんか、よくわからんセットプレーみたいだぞ。でも、とにかく俺は、ペギーに付いていくしかない。
テッドがトップに向かって走っている。オツがそれを追う。
美那にスクリーンをかけるつもりか?
やっぱり!
ルーシーが鋭い蹴り出しのドリブルで右に飛び出す。
テッドのスクリーンに阻まれて、美那は追えない。
オツがルーシーのディフェンスに回るけど、すでにスピードの乗ったルーシーには追いつけない。
スッと軽く飛んだルーシーのレイアップが決まる。
「くっそぉっ!」
オツが悔しがる。
やられた、って気持ちは俺も同じ。美那もちょっと呆気に取られた表情だ。
(Z)2対4(MC)。
俺たちの見た入門書にはなかった動きだったよな……。
確か、ルーシーは、3on3から3x3に移ってきたとか言ってたから、前からこういう練習もしてたんだろうけど、わずか2日でここまで仕上げてくるとは……。
オツがゴールされたボールを拾う。
テッドがすでに、オツをカバーしている。
ルーシはトップ付近にいる美那のマークに戻っている。
チームとしての統率も取れてるじゃん。たぶんペギーに2日間かなりみっちりシゴかれたんだろうな……。
オツはテッドに手こずりながら、ドリブルでトップに戻っていく。
美那は右サイドをアーク沿いに走っていくけど、ルーシーは速い動きで内側に回ってパスコースを潰す。オツもパスを出せない。
じゃ、俺が行くしかないじゃん。
オツがアークの外に出るタイミングで、インサイドにダイブ。
「オツっ!」
走りながら、俺は叫ぶ。
オツがターンしながら、低いバウンスパスを出してくれる。
スタートダッシュで勝った俺は、ペギーを離している。
パスを受け取り、ドリブルで若干スピードが落ちると、ペギーに追いつかれる。そして、身体を当ててプレッシャーをかけられるけど、それは想定内。マッチョなスクリプツへの対抗で学んだ重心の使い方で、ペギーの圧力を凌ぐ。
それでもステップを踏んだ時には、走りたいコースよりも右にずらされていて、予想よりもバスケットが少し遠ざかっている。
伸びてくるペギーの手をかわしながら、右からフックシュートを打つ。
くそ、軌道がぶれる……。
ボールは、ボードにも当たらず、バスケットの上を越えて、反対側のリングに当たって、向こう側に落ちていく。少なくともショットクロックはリセットだ。
「リユ、リバン!」
オツの声が響く。
とはいえ、ポジション的にはペギーの方が有利な位置だ。
案の定、リバウンドはペギーに奪われてしまう。
だったら、せめて、攻撃をしにくいコーナーの方に追い込んでやる。
よし、左奥のサイドに追い詰めてやったぜ。
この場所はアークの外に出ると、サイドラインがすぐ後ろだから、ペギーもドリブル技を繰り出しにくい。
ペギーはドリブルでゆっくりとテッドとオツのいるトップの方に進んでいく。
突然、ドリブルのスピードを上げる。俺はわずかに離されてしまう。
身体をうまく使ってペギーのためにスペースを空けたテッドの懐に、ペギーが飛び込んでいく。
ボールをテッドに渡したのか、それともそのままドリブルで進んでいくのか、俺からは見えん!
テッドにボールを渡してる!!
すかさずテッドは、ペギーにショートパスを送る。
インサイドには、右サイドからルーシーがダイブしている。
俺はテッドが邪魔で、ペギーを追えない。
アーク沿いをドリブルで走るペギーを、オツが追う。
なんとか追い縋ったオツをあざ笑うかのように、ペギーがドリブル技が始める。
高速でワイドなフロントチェンジや、レッグスルー、ロールターンのフェイント。左右、前後の揺さぶりをかけ、オツのバランスを完全に崩して、ステップバックからの2Pシュート……さっき、俺が仕掛けたみたいなヤツじゃん!
綺麗な弧を描いたボールがバスケットに吸い込まれていく。
まずい、女子の2Pで4点追加だ……。
(Z)2対8(MC)。
残り時間は9分03秒。
まだ1分経ってないのに、8失点だとーっ⁈
考えてみれば、ここまでMCは2勝0敗、俺たちZは0勝2敗。もしかして、全然敵わないのか?
いや、そんなことはないはずだ。内容的には互角に近い気がする。
美那がバスケットから落ちてきたボールを拾う。表情は冷静だ。
最後のプレーの影響で、俺のマークにはテッドが付いている。
だったら、千切ってやる!
美那は、ルーシーのディフェンスを防ぎながら、左サイドにドリブルしていく。
トップ付近にいた俺は、テッドの右側からダイブするフェイントをかけて、くるっと回って、美那の向かう左サイドに走る。いや、特に戦略があるわけじゃないんだけど……。
気づいた美那が、俺の走る先に、少し弾む緩めのパスを出してくれる。
ナイスパスだぜっ、美那!
そのまま、ドリブルでアーク沿いに走る。ゴール下に向かって切り込んでいく。
美那についていたルーシーが、俺のディフェンスに走り出す。テッドも来ているのが、視界に入る。
どうする? このままシュートに行く?
いや、美那がフリーになっているはずだ!
「美那!」
俺は、背中に向かって呼びかける。
「リユ!」
よっしゃっ。
俺は急ブレーキをかけて、ターンする。
ルーシーと反対側の右手で、テニスのフォアハンド、野球のサイドスローの動きで、美那にパス。
すこしずれたコースも、美那はなんなくキャッチ。
美那がそのまま、アークの外からシュートを放つ。
俺の頭の上を飛んでいったボールは、リングの淵に当たって、そのままバスケットに落ちていく。
やったぜっ!!
なんて素晴らしいコンビネーション! 自画自賛だけど。
Zも女子2Pのお返しで、4点追加。
(Z)6対8(MC)。
残り時間は8分57秒。
なんか、ボクシングで言ったら、序盤から壮絶な殴り合いになってる試合だぜ。
でも、めちゃ楽しいじゃん!
オツも見たことないような笑顔だし。ナオも興奮して飛び上がってるし。
中バス女子からも、またまた声援が飛んでるし。って、いつの間にか、ギャラリーも増えてるし。
ペギーの意表を突いたパスからルーシーに得点を許すも、リユの2Pのリバウンドをルーシーに競り勝った美那が得点を決める。MCのセットプレーからルーシーのシュートもリユが阻止。中バス女子2人から、美那とリユに声援が飛ぶ。
得点は(Z)2対2(MC)の同点。
残り時間は9分29秒。まだ試合は始まったばかり。
ペギーがルーシーとテッドに何か言っている。
俺がディフェンスでボールを外に出したので、またまたMC攻撃のチェックボールだ。
今回はルーシーがトップに来る。なので美那がチェックボールを担当する。
アークライン沿いの左サイドに回ったペギーに俺が付き、右のテッドはオツがマーク。フラット・トライアングルらしきフォーメーションは同じだ。
美那からトスされたボールをルーシーが受け取る。けど、ルーシーはすぐには動き出さない。
と、ペギーがコートの中央付近に向かって走り出す。もちろん俺もマークに走る。
反対側から、テッドも同じ方向に走ってくる。
ペギーは右のフリースローレーン辺りまで走り込む。
テッドはそれよりやや深い位置に走り込んでいる。
するとペギーがUターンするようにして左サイドに戻る。
なんか、よくわからんセットプレーみたいだぞ。でも、とにかく俺は、ペギーに付いていくしかない。
テッドがトップに向かって走っている。オツがそれを追う。
美那にスクリーンをかけるつもりか?
やっぱり!
ルーシーが鋭い蹴り出しのドリブルで右に飛び出す。
テッドのスクリーンに阻まれて、美那は追えない。
オツがルーシーのディフェンスに回るけど、すでにスピードの乗ったルーシーには追いつけない。
スッと軽く飛んだルーシーのレイアップが決まる。
「くっそぉっ!」
オツが悔しがる。
やられた、って気持ちは俺も同じ。美那もちょっと呆気に取られた表情だ。
(Z)2対4(MC)。
俺たちの見た入門書にはなかった動きだったよな……。
確か、ルーシーは、3on3から3x3に移ってきたとか言ってたから、前からこういう練習もしてたんだろうけど、わずか2日でここまで仕上げてくるとは……。
オツがゴールされたボールを拾う。
テッドがすでに、オツをカバーしている。
ルーシはトップ付近にいる美那のマークに戻っている。
チームとしての統率も取れてるじゃん。たぶんペギーに2日間かなりみっちりシゴかれたんだろうな……。
オツはテッドに手こずりながら、ドリブルでトップに戻っていく。
美那は右サイドをアーク沿いに走っていくけど、ルーシーは速い動きで内側に回ってパスコースを潰す。オツもパスを出せない。
じゃ、俺が行くしかないじゃん。
オツがアークの外に出るタイミングで、インサイドにダイブ。
「オツっ!」
走りながら、俺は叫ぶ。
オツがターンしながら、低いバウンスパスを出してくれる。
スタートダッシュで勝った俺は、ペギーを離している。
パスを受け取り、ドリブルで若干スピードが落ちると、ペギーに追いつかれる。そして、身体を当ててプレッシャーをかけられるけど、それは想定内。マッチョなスクリプツへの対抗で学んだ重心の使い方で、ペギーの圧力を凌ぐ。
それでもステップを踏んだ時には、走りたいコースよりも右にずらされていて、予想よりもバスケットが少し遠ざかっている。
伸びてくるペギーの手をかわしながら、右からフックシュートを打つ。
くそ、軌道がぶれる……。
ボールは、ボードにも当たらず、バスケットの上を越えて、反対側のリングに当たって、向こう側に落ちていく。少なくともショットクロックはリセットだ。
「リユ、リバン!」
オツの声が響く。
とはいえ、ポジション的にはペギーの方が有利な位置だ。
案の定、リバウンドはペギーに奪われてしまう。
だったら、せめて、攻撃をしにくいコーナーの方に追い込んでやる。
よし、左奥のサイドに追い詰めてやったぜ。
この場所はアークの外に出ると、サイドラインがすぐ後ろだから、ペギーもドリブル技を繰り出しにくい。
ペギーはドリブルでゆっくりとテッドとオツのいるトップの方に進んでいく。
突然、ドリブルのスピードを上げる。俺はわずかに離されてしまう。
身体をうまく使ってペギーのためにスペースを空けたテッドの懐に、ペギーが飛び込んでいく。
ボールをテッドに渡したのか、それともそのままドリブルで進んでいくのか、俺からは見えん!
テッドにボールを渡してる!!
すかさずテッドは、ペギーにショートパスを送る。
インサイドには、右サイドからルーシーがダイブしている。
俺はテッドが邪魔で、ペギーを追えない。
アーク沿いをドリブルで走るペギーを、オツが追う。
なんとか追い縋ったオツをあざ笑うかのように、ペギーがドリブル技が始める。
高速でワイドなフロントチェンジや、レッグスルー、ロールターンのフェイント。左右、前後の揺さぶりをかけ、オツのバランスを完全に崩して、ステップバックからの2Pシュート……さっき、俺が仕掛けたみたいなヤツじゃん!
綺麗な弧を描いたボールがバスケットに吸い込まれていく。
まずい、女子の2Pで4点追加だ……。
(Z)2対8(MC)。
残り時間は9分03秒。
まだ1分経ってないのに、8失点だとーっ⁈
考えてみれば、ここまでMCは2勝0敗、俺たちZは0勝2敗。もしかして、全然敵わないのか?
いや、そんなことはないはずだ。内容的には互角に近い気がする。
美那がバスケットから落ちてきたボールを拾う。表情は冷静だ。
最後のプレーの影響で、俺のマークにはテッドが付いている。
だったら、千切ってやる!
美那は、ルーシーのディフェンスを防ぎながら、左サイドにドリブルしていく。
トップ付近にいた俺は、テッドの右側からダイブするフェイントをかけて、くるっと回って、美那の向かう左サイドに走る。いや、特に戦略があるわけじゃないんだけど……。
気づいた美那が、俺の走る先に、少し弾む緩めのパスを出してくれる。
ナイスパスだぜっ、美那!
そのまま、ドリブルでアーク沿いに走る。ゴール下に向かって切り込んでいく。
美那についていたルーシーが、俺のディフェンスに走り出す。テッドも来ているのが、視界に入る。
どうする? このままシュートに行く?
いや、美那がフリーになっているはずだ!
「美那!」
俺は、背中に向かって呼びかける。
「リユ!」
よっしゃっ。
俺は急ブレーキをかけて、ターンする。
ルーシーと反対側の右手で、テニスのフォアハンド、野球のサイドスローの動きで、美那にパス。
すこしずれたコースも、美那はなんなくキャッチ。
美那がそのまま、アークの外からシュートを放つ。
俺の頭の上を飛んでいったボールは、リングの淵に当たって、そのままバスケットに落ちていく。
やったぜっ!!
なんて素晴らしいコンビネーション! 自画自賛だけど。
Zも女子2Pのお返しで、4点追加。
(Z)6対8(MC)。
残り時間は8分57秒。
なんか、ボクシングで言ったら、序盤から壮絶な殴り合いになってる試合だぜ。
でも、めちゃ楽しいじゃん!
オツも見たことないような笑顔だし。ナオも興奮して飛び上がってるし。
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