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第3章
3-16 ルーシー登場
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【前回のあらすじ】
試合巧者のScは、交代できない唯一の女子0番をゲームの中で休ませ、ここぞという時に動かす戦略。一方、チームワークが高まってきたZもオツとリユの1Pで食らいつく。最後は、余力を残していた相手男子2人の予想外の激しい動きについていけず、KO負けを喫する。周りの拍手を受け、相手にプレーを褒められ、全力で戦ったリユは思わず涙。美那が優しく抱擁してくれる。
オツと美那が拘束されていたオフィシャル業務は、Scの仲間がヘルプに来てくれて、ふたりは仕事から解放されることになった。
とりあえず2試合分、1時間弱は、4人で休みを取ることができる。ただ次は、あとで対戦する新生(?)モンスターズ・クッキーの試合なので今一度、スカウティング(相手情報の収集)が必要だ。今度はルーシーも出るかもしれないしな。
美那が俺たちに声を掛ける。
「ペギーたちの試合が始まるまで、短いミーティングをしましょう。それから試合を観て、そのあとリユにマッサージをしてもらうという流れで」
「おお、そうだな。リユ、すまんな」とオツ。
「いや、別に。でもそんなに期待しないでくださいよ」
それから美那がナオさんに何かを耳打ちしている。
荷物を持って、ゴール奥の壁際に落ち着く。
アリーナは学校の体育館と違ってエアコンがそこそこ効いている。美那とナオが汗を軽く拭いて、上下のジャージを着る。オツも同じだ。俺もそれを真似する。
「フォーメーションを2試合試してみたわけですけど、先輩、どうでした?」
「うん」とだけオツは答え、10秒ほど考える。
「初めてにしては上手く機能していたな。リユもナオも良くやったと思う。思っていた通り、使える相手、場面というのは確実に出て来そうだ。ただ、やっぱりこのチームの力を発揮できるのは、それを崩して、フリーに動く状況だよな」
「そうですね。わたしも手応えを感じました。特にさっきの試合で前半途中でフリーを組み込んだ時。向こうもすぐに対応してきたにも関わらず、6対14くらいから16対16の同点にまで一気に持ち込みましたからね。最後は、体力の配分を含めて、向こうの試合運びの巧さにやられた感じですけどね。2試合ともKO負けという結果でリユは悔しいかもしれないけど、間違いなく今後につながると思います」
美那はそう言うと、すぐ横の俺の方を向いて、微笑む。
俺は笑顔を作れずに小さく頷く。
「ナオはどうだった?」
「そうだな……わたしもサークルで少しは5人制のフォーメーションをやっているし、形はちょっと違うけど、なんとか付いていけた感じかな……それより、バスケの技術とか体格差とか、そっちの方が課題に感じた」
「対戦相手のレベルを考えると、ナオはいいプレーをしてたと思う。体格差はわたしも同じかな。0番は同じ女子だけど、いざ力づくで攻められると防ぎきれない感じだった」
「そこは、力を逃す技を身につけないとな。高校レベルだと、女子であそこまで筋肉質な選手はいないもんな。俺が驚いたのは、リユが割としっかりそこに対応できていたことだな」
「うん、そう。わたしも、リユくん、すごいなと思って見てた。どうやってるの?」とナオさん。ナオさんはほんと学ぶ意欲が旺盛だよな。
「いや、特にそんな特別なことはやってないと思うけど……まあ、バイクで曲がるときに、体重を預けて車体を傾ける感じと近いのかな」
「バイクか……リユは応用力というか、共通項を持つ、違う種類の事柄を結びつける能力が高いんだな。リユの長所は特殊で真似できないとか言ってきたけど、そういう能力に長けているのもあるんだな」
「いや、そんな褒めても、マッサージ代は安くなりませんから。っていうのは冗談ですけど、そうなんですかね?」
「この間話した、後藤先生の時も、そんなだったじゃない」と美那。
「後藤先生か。懐かしいな。それはどんな話だ?」とオツ。
「後藤先生って?」とナオ。
オツがナオに、実山学院の数学教師で、数学教育の研究をしていて、ちょっと特殊な教え方をする教師だ、と説明する。
「中2の時、授業中に後藤先生がドヤ顔で出した難しい問題を、他の誰もわからなかったのに、リユが颯爽と手を挙げて、いくつかの公式とかを組み合わせて、完璧な正解を答えて、先生を唸らせたんですよ。クラスメートもフリーズしちゃって」
美那がなぜか嬉しそうに話す。
「ほう。なんだ、理系のセンスはもともとあるんじゃないか。だったら、理系へのコンバートも、まあ簡単じゃないとは思うけど、可能性はかなりあるんじゃないか?」
「だと、いいんですけど……」
「それから、チーム内での役割分担みたいなのも、かなりはっきり見えてきましたね」と、美那が話をバスケに戻す。
「そうだな」とオツが受ける。「スコアシートを見ないとはっきりとは言えないが、美那とリユが点取り屋になっているよな。ナオのジャンプしてパスキャッチからのシュートも、相手が防ぎにくいプレーだな。だいたいは想定通りなんだが、この短期間でよくここまで来たというのが正直な感想だ」
「それから、先輩のオフボールでのディフェンスも」
「まあ、それは得意だしな。そこは経験も必要だし、俺と美那でカバーしていこう」
ウォームアップ終了のブザーが鳴る。
お、ルーシーもやってたんじゃん! しまった、見損ねた。試合には出るのかな?
「じゃあ、モンスターズ・クッキーのスカウティングに入りましょう」
「ここでいいのか?」とオツ。
「さっきは、前半だけ、リユくんと上で観てた」
ナオさんが上を指差す。
「もう始まるし、前半はここで観て、後半から上に行きましょうか?」と美那。
「そうだな。そうしよう」とオツ。
オツ、ナオ、美那、俺の順で、壁にもたれて並ぶ。
「この試合は、ルーシーも出そうな感じだね」と美那が言う。
「そうだな」
「さっき、チラッと見えたけど、かなり上手そうだったよ」
「マジか。まあ、そういう気はしてたけど」
突然、美那の手が俺の左手に重ねられる。
驚いて、美那を見る。
美那は前を向いたまま、澄まし顔で静かに微笑んでいる。そしてあろうことか、指と指を絡めてくる。これは、恋人繋ぎじゃねえかっ! さっきの試合の途中でも、ファウルを受けて飛ばされた時にしてきたよな。
ど、どういうつもりなんだ⁈ 俺的には、心地いいし、なんか安心するし、いいんだけど……どう受け止めていいのか困惑してしまう。
でも美那のことだから、幼馴染の延長で、他意はないんだろうな。女子同士なら仲が良ければ、こんな風にしそうだし。オツの大学に行った時、ナオさんとも、再会を喜んで駅で抱き合ってたし。かーちゃんも、俺たちは〝友達以上、恋人以上〟ってわけのわからんことを言っていたし。
コートに選手たちが出てきた。
「お、ルーシー、先発じゃん!」
「だね」
美那が俺を見る。
なぜか寂しげな笑顔を浮かべ、そっと手を離す。
またもや俺は意味がわからず、どんな顔をしたらいいのか困る。
左手に残る美那の感触が、俺はなんかとっても大切なもののような気がして、右手で左の拳を優しく包み込む。それが逃げていかないように。
美那はちらっと俺を見て、すぐにコートに視線を戻す。
大人っぽい綺麗な横顔だ。
なんか、最近、どんどんキレイになってきたような気がする。女子にはそういう時期があるんだろうか? それともチームリーダーとして、Z—Fourの活動が充実してきたから? 部活より楽しい、って言ってたし。そういや、ナオさんは、今日の美那の微妙な感じについて、乙女心絡みじゃないかと言っていたな。そっちの方なのかな?
もっとも美那とこんなにしょっちゅう近くにいることなんて、ほんと幼稚園以来だからな。いままで、なんとなく、大人っぽくなったとか、色気が出てきたとか、ちょっと離れたところから傍観して、どんな風に美那が変わってきたのか、あんまり注意して見てなかった。前田俊のことも、まったくと言っていいほど気がつかなかったし。まあ、テニス部の事件以来、俺が自分の殻に閉じこもっていたようなところもあるけど。
少なくとも、このチームで活動しているしばらくの間——大会が終わるまでは、美那を近くで見ていられそうだな。
なんだか、まだ左手に残っている、この美那の温もりが、それまでの短い時間のように儚く感じられて、ちょっと切なくなるぜ。
審判のホイッスルが鳴る。
俺の意識もコートに戻る。
MCの攻撃で試合開始だ。
そしてトップは、ルーシーが担当している!
ペギーとテッドが先発で、ざくっとした感じに左右にポジショニングしている。
対する長身チームのCuは、13番女子の安川さん(推定172センチ)、22番女子の岡部さん(推定174センチ)、33番男子の長岡さん(推定179センチ)が先発。
ルーシーの身長に合わせてか、13番女子がチェックボールを担当する。
ペギーのマークには、なんと33番の男子がついている。でも、このふたりは身長は同じくらいだし、ペギーの技術を考えると、むしろ妥当なんだろう。
アークのトップで、審判から投げられたボールを、13番女子は一度ホールドせずに、手のひらで受けて、直接ワンバウンドさせて、ルーシーに渡す。
2秒ほど全体の動きが止まる。13番に隠れて、俺たちからルーシーの動きは良く見えない。
突然、13番女子の向こうの右手から、ルーシーが飛び出してくるっ!
速い!!
13番女子は完全に置き去りだ。
ペギーとテッドはそれぞれマークの選手を抑え込んでいて、ルーシーにスペースを作っている。
その道を、飛ぶようなドリブルでやって来たルーシーが、ステップから、レイアップの体勢でジャンプ!
ルーシーの手を離れたボールは、俺たちの側からは見えなくなる。
わずかな時間をおいて、ボードの向こう側から、まっすぐにボールが落ちてくる。ネットがわずかに揺れる。
ルーシーが両方の拳を握り、肘を腰の辺りに引くガッツポーズを決める。
そして、叫ぶ。
「クッキーーーーーッ!!」
試合巧者のScは、交代できない唯一の女子0番をゲームの中で休ませ、ここぞという時に動かす戦略。一方、チームワークが高まってきたZもオツとリユの1Pで食らいつく。最後は、余力を残していた相手男子2人の予想外の激しい動きについていけず、KO負けを喫する。周りの拍手を受け、相手にプレーを褒められ、全力で戦ったリユは思わず涙。美那が優しく抱擁してくれる。
オツと美那が拘束されていたオフィシャル業務は、Scの仲間がヘルプに来てくれて、ふたりは仕事から解放されることになった。
とりあえず2試合分、1時間弱は、4人で休みを取ることができる。ただ次は、あとで対戦する新生(?)モンスターズ・クッキーの試合なので今一度、スカウティング(相手情報の収集)が必要だ。今度はルーシーも出るかもしれないしな。
美那が俺たちに声を掛ける。
「ペギーたちの試合が始まるまで、短いミーティングをしましょう。それから試合を観て、そのあとリユにマッサージをしてもらうという流れで」
「おお、そうだな。リユ、すまんな」とオツ。
「いや、別に。でもそんなに期待しないでくださいよ」
それから美那がナオさんに何かを耳打ちしている。
荷物を持って、ゴール奥の壁際に落ち着く。
アリーナは学校の体育館と違ってエアコンがそこそこ効いている。美那とナオが汗を軽く拭いて、上下のジャージを着る。オツも同じだ。俺もそれを真似する。
「フォーメーションを2試合試してみたわけですけど、先輩、どうでした?」
「うん」とだけオツは答え、10秒ほど考える。
「初めてにしては上手く機能していたな。リユもナオも良くやったと思う。思っていた通り、使える相手、場面というのは確実に出て来そうだ。ただ、やっぱりこのチームの力を発揮できるのは、それを崩して、フリーに動く状況だよな」
「そうですね。わたしも手応えを感じました。特にさっきの試合で前半途中でフリーを組み込んだ時。向こうもすぐに対応してきたにも関わらず、6対14くらいから16対16の同点にまで一気に持ち込みましたからね。最後は、体力の配分を含めて、向こうの試合運びの巧さにやられた感じですけどね。2試合ともKO負けという結果でリユは悔しいかもしれないけど、間違いなく今後につながると思います」
美那はそう言うと、すぐ横の俺の方を向いて、微笑む。
俺は笑顔を作れずに小さく頷く。
「ナオはどうだった?」
「そうだな……わたしもサークルで少しは5人制のフォーメーションをやっているし、形はちょっと違うけど、なんとか付いていけた感じかな……それより、バスケの技術とか体格差とか、そっちの方が課題に感じた」
「対戦相手のレベルを考えると、ナオはいいプレーをしてたと思う。体格差はわたしも同じかな。0番は同じ女子だけど、いざ力づくで攻められると防ぎきれない感じだった」
「そこは、力を逃す技を身につけないとな。高校レベルだと、女子であそこまで筋肉質な選手はいないもんな。俺が驚いたのは、リユが割としっかりそこに対応できていたことだな」
「うん、そう。わたしも、リユくん、すごいなと思って見てた。どうやってるの?」とナオさん。ナオさんはほんと学ぶ意欲が旺盛だよな。
「いや、特にそんな特別なことはやってないと思うけど……まあ、バイクで曲がるときに、体重を預けて車体を傾ける感じと近いのかな」
「バイクか……リユは応用力というか、共通項を持つ、違う種類の事柄を結びつける能力が高いんだな。リユの長所は特殊で真似できないとか言ってきたけど、そういう能力に長けているのもあるんだな」
「いや、そんな褒めても、マッサージ代は安くなりませんから。っていうのは冗談ですけど、そうなんですかね?」
「この間話した、後藤先生の時も、そんなだったじゃない」と美那。
「後藤先生か。懐かしいな。それはどんな話だ?」とオツ。
「後藤先生って?」とナオ。
オツがナオに、実山学院の数学教師で、数学教育の研究をしていて、ちょっと特殊な教え方をする教師だ、と説明する。
「中2の時、授業中に後藤先生がドヤ顔で出した難しい問題を、他の誰もわからなかったのに、リユが颯爽と手を挙げて、いくつかの公式とかを組み合わせて、完璧な正解を答えて、先生を唸らせたんですよ。クラスメートもフリーズしちゃって」
美那がなぜか嬉しそうに話す。
「ほう。なんだ、理系のセンスはもともとあるんじゃないか。だったら、理系へのコンバートも、まあ簡単じゃないとは思うけど、可能性はかなりあるんじゃないか?」
「だと、いいんですけど……」
「それから、チーム内での役割分担みたいなのも、かなりはっきり見えてきましたね」と、美那が話をバスケに戻す。
「そうだな」とオツが受ける。「スコアシートを見ないとはっきりとは言えないが、美那とリユが点取り屋になっているよな。ナオのジャンプしてパスキャッチからのシュートも、相手が防ぎにくいプレーだな。だいたいは想定通りなんだが、この短期間でよくここまで来たというのが正直な感想だ」
「それから、先輩のオフボールでのディフェンスも」
「まあ、それは得意だしな。そこは経験も必要だし、俺と美那でカバーしていこう」
ウォームアップ終了のブザーが鳴る。
お、ルーシーもやってたんじゃん! しまった、見損ねた。試合には出るのかな?
「じゃあ、モンスターズ・クッキーのスカウティングに入りましょう」
「ここでいいのか?」とオツ。
「さっきは、前半だけ、リユくんと上で観てた」
ナオさんが上を指差す。
「もう始まるし、前半はここで観て、後半から上に行きましょうか?」と美那。
「そうだな。そうしよう」とオツ。
オツ、ナオ、美那、俺の順で、壁にもたれて並ぶ。
「この試合は、ルーシーも出そうな感じだね」と美那が言う。
「そうだな」
「さっき、チラッと見えたけど、かなり上手そうだったよ」
「マジか。まあ、そういう気はしてたけど」
突然、美那の手が俺の左手に重ねられる。
驚いて、美那を見る。
美那は前を向いたまま、澄まし顔で静かに微笑んでいる。そしてあろうことか、指と指を絡めてくる。これは、恋人繋ぎじゃねえかっ! さっきの試合の途中でも、ファウルを受けて飛ばされた時にしてきたよな。
ど、どういうつもりなんだ⁈ 俺的には、心地いいし、なんか安心するし、いいんだけど……どう受け止めていいのか困惑してしまう。
でも美那のことだから、幼馴染の延長で、他意はないんだろうな。女子同士なら仲が良ければ、こんな風にしそうだし。オツの大学に行った時、ナオさんとも、再会を喜んで駅で抱き合ってたし。かーちゃんも、俺たちは〝友達以上、恋人以上〟ってわけのわからんことを言っていたし。
コートに選手たちが出てきた。
「お、ルーシー、先発じゃん!」
「だね」
美那が俺を見る。
なぜか寂しげな笑顔を浮かべ、そっと手を離す。
またもや俺は意味がわからず、どんな顔をしたらいいのか困る。
左手に残る美那の感触が、俺はなんかとっても大切なもののような気がして、右手で左の拳を優しく包み込む。それが逃げていかないように。
美那はちらっと俺を見て、すぐにコートに視線を戻す。
大人っぽい綺麗な横顔だ。
なんか、最近、どんどんキレイになってきたような気がする。女子にはそういう時期があるんだろうか? それともチームリーダーとして、Z—Fourの活動が充実してきたから? 部活より楽しい、って言ってたし。そういや、ナオさんは、今日の美那の微妙な感じについて、乙女心絡みじゃないかと言っていたな。そっちの方なのかな?
もっとも美那とこんなにしょっちゅう近くにいることなんて、ほんと幼稚園以来だからな。いままで、なんとなく、大人っぽくなったとか、色気が出てきたとか、ちょっと離れたところから傍観して、どんな風に美那が変わってきたのか、あんまり注意して見てなかった。前田俊のことも、まったくと言っていいほど気がつかなかったし。まあ、テニス部の事件以来、俺が自分の殻に閉じこもっていたようなところもあるけど。
少なくとも、このチームで活動しているしばらくの間——大会が終わるまでは、美那を近くで見ていられそうだな。
なんだか、まだ左手に残っている、この美那の温もりが、それまでの短い時間のように儚く感じられて、ちょっと切なくなるぜ。
審判のホイッスルが鳴る。
俺の意識もコートに戻る。
MCの攻撃で試合開始だ。
そしてトップは、ルーシーが担当している!
ペギーとテッドが先発で、ざくっとした感じに左右にポジショニングしている。
対する長身チームのCuは、13番女子の安川さん(推定172センチ)、22番女子の岡部さん(推定174センチ)、33番男子の長岡さん(推定179センチ)が先発。
ルーシーの身長に合わせてか、13番女子がチェックボールを担当する。
ペギーのマークには、なんと33番の男子がついている。でも、このふたりは身長は同じくらいだし、ペギーの技術を考えると、むしろ妥当なんだろう。
アークのトップで、審判から投げられたボールを、13番女子は一度ホールドせずに、手のひらで受けて、直接ワンバウンドさせて、ルーシーに渡す。
2秒ほど全体の動きが止まる。13番に隠れて、俺たちからルーシーの動きは良く見えない。
突然、13番女子の向こうの右手から、ルーシーが飛び出してくるっ!
速い!!
13番女子は完全に置き去りだ。
ペギーとテッドはそれぞれマークの選手を抑え込んでいて、ルーシーにスペースを作っている。
その道を、飛ぶようなドリブルでやって来たルーシーが、ステップから、レイアップの体勢でジャンプ!
ルーシーの手を離れたボールは、俺たちの側からは見えなくなる。
わずかな時間をおいて、ボードの向こう側から、まっすぐにボールが落ちてくる。ネットがわずかに揺れる。
ルーシーが両方の拳を握り、肘を腰の辺りに引くガッツポーズを決める。
そして、叫ぶ。
「クッキーーーーーッ!!」
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