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第3章

3-5 ダイビングボレー!

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 入ったナオさんに美那が何かささやく。ナオさんがうなずく。
 美那がトップのポジションでゲームを再開だ。攻撃権はZ。
 オツもナオも、アークの外の中程にいる。
 美那から見て、左にオツ、右にナオの配置。オツにはCu1番長身、ナオには俺をカバーしていた33番がそのままマークに付いている。
 そうだ、これは対「松本JKs」で「おでん」がとったフラットトライアングルってフォーメーションだ!
 トップでCu13番女子からボールを受け取った美那が間髪入れずに右のナオに向かってドリブル。
 逆にナオは美那に向かって動く。
 サイドライン側を走るナオが、美那からハンドオフパス手渡しパスを受ける。
 ぶつかりそうになるCu13番女子と33番男子はマークを入れ替えざるを得ない。
 オツがCu1番長身のマークを外すようにトップ側に動くと、そこにナオがパス!
 さすがのナイスコンビネーションだ。
 今度は美那が、ナオの方に走りこんで、Cu13番にスクリーンをかける。ナオが密集の外側を回って、ゴールへとカットインしていく!
 Cu33番がナオを追おうとする。なにしろ女子は2倍ポイントだしな。
 と、美那がさらにゴール方向に飛び込んでいく。
 すげえ、完全にディフェンスを振り回してる!!
 オツが美那に正確なバウンスパス。
 美那は楽勝でキャッチして、美しいフォームでレイアップシューーート!
 決まったっ。1Px2=2点追加。

 7対10。

 次のCuの攻撃は13番女子が2Pを打つけど、スイッチディフェンスで対応していたナオが高いジャンプではたく! ルーズボールはCu33番が美那に競り勝つものの、美那のディフエンスでショットクロックバイオレーション(12秒超過)に持ち込む。

 Z攻撃のチェックボールで再開。
 さっきと同じでフラットトライアングルを形成。美那からナオ、オツまでの動きは同じだけど、なんとそこからオツが2Pを狙う。
 おーー。
 けど、リングに弾かれる。
 でも、なんか、いい感じ。入る予感をさせる素直な軌道だ。

 ゴールに向かっていたナオとCu33番がリバンウンドを競る。
 ナオが超高いたっけージャンプでボールをキャッチ。リングに当たったから、ショットクロックはリセットだ。
 アーク外の右サイドを走り込む美那に、ナオがパス。
 パスは通るけど、Cu13番女子ががっちり美那をディフェンス。
 切り崩せない美那は、トップに戻っていたナオにパス。
 ナオの高さを警戒したのか、なんとCu1番長身がディフェンスに来た。
 それでもナオはジャンプして果敢に2Pを狙う。
 ボールはCu1番の指の上を越えていく!
 コースがぶれて、直接バックボードに当たって跳ね返ってくる。
 いいな、このナオさんのアグレッシブなプレー!!

 今度はオツとCu33番の競り合い。動きの速さでまさる33番にボールを確保されてしまう。
 でもオツはアウトレットパスを許さない。33番はドリブルで左サイドのアークの外に出る。
 トップ付近にいたCu1番長身にパス。
 ナオが立ちはだかる。
 技術的にはドリブルで抜けそうだけど、たぶんまだナオの実力を把握してないこともあるだろうし、あるいはさっき2Pを打たれたのがよほど悔しかったのか、やや強引に2Pを打ちにいく。
 そこでナオが驚異のブロック!
 指先じゃなくて指の付け根に当ててるし……。
 オフィシャル席のスクリプトのメンバーからも「ウォ」と驚きの声が上がる。
 背中しか見えないけど、Cu1番もちょっと固まってるっぽい。なにしろ身長差は15センチくらいはあるもんな。

 ルーズボールは美那がゲット。でもCu13番女子の執拗なディフェンスを抜けず、外にパスできない。押し出されるようにしてドリブルで出る。
 全員が左サイドに寄った状態で、動きにくそうだ。
 トップ付近にいたナオがCu1番の脇を抜けて、右の方にカットインしていく。
 すげえ、ナオもバスケらしい動きになってきているじゃん!
 美那から速いバウンスパスが出る。
 ナオがキャッチしてドリブルに入るけど、オツについていたCu33番がディフェンスに回っている。シュートまで持っていけない。
 美那がサポートのため右サイドに走る。Cu1番長身がマークに入る。
 Cu33番が、美那へのパスを警戒したらしい隙を突いて、ナオはフリー気味のオツにパス!
 そして、オツが躊躇ちゅうちょなく2Pシュート!!
 惜しくもバスケットに嫌われて、外に飛ぶ。
 でもいいじゃん! もう入るのは時間の問題、と思えてくる。

 リバンドはCu33番に奪われる。
 33番からアーク外にいるCu13番女子にパスが通ってしまう。
 すぐさまオツがディフェンスに入って、2Pシュートは許さない。
 ナオがマークに付くCu33番がインサイドを細かく動く。マークが若干ズレてしまう。
 そこにCu13番からパスが。
 でもバスケット側はナオが立ちふさがっている。Cu33番はシュートに行けない。
 アウトサイドにいるCu1番長身に高いパスが通る。美那とは身長のミスマッチだ。たぶん30センチ近く違う。
 簡単に2Pを打たれてしまう。
 でも、ボールはやや長いか?
 バスケットリングに跳ね返される。
 よし、外れた。

 戻ってきたボールはスピードに勝る美那が奪取!
 とはいえ、Cu1番長身にがっちり守られていて、外にいるオツとナオにパスは出せない。
 スペースのあるトップにドリブルで戻る美那。
 にしても、なかなか攻められねえな。
 マークに付いたままのCu1番長身を、美那がドリブルで抜いていく。
 よし、いけ、美那!
 ところがオツに付いていたCu13番女子がディフェンスに飛び込んでいく。
 ステップを踏んだ美那がオーバーハンドレイアップに入る。
 Cu13番がそれに合わせて、飛ぶ。
 13番が空中でボールに手を伸ばしながら、美那に体を当てる。
 美那の体勢が乱れ、ボールはまともなシュートにならない。
 審判のホイッスルが鳴り、腕が上がる。
 シュート体勢でのファウルでフリースローをゲットだ。ここでも女子2倍ポイントが反映される。

 残り時間はまだ7分40秒もある。得点はZが7、Cuが10。これが入れば1点差だ。
 ところが、美那のフリースローは少々乱れ、バスケットに嫌われてしまう。美那のやつ、フリースローは滅多に外さないって自慢してたんだけどな……。
 ボールはCu1番長身がキャッチ。攻撃権も奪われてしまった。

 CuもZもミスが目立ち始める。
 いや。というよりも、互いにディフェンスが激しくなっているのか?
 なんか攻撃の潰し合いという様相だ。
 攻守の入れ替わりが激しい。
 美那のインサイドシュートのリバウンドを奪ったCu13番女子が、長身1番にボールを回す。それをオツがスティールに行って、ボールはコートの外に出る。

 ディスプレーの示す時間は6分48秒。
 ナオがこっちに走ってくる。俺はラインのところでナオを待つ。
「全然……シュートに……いけない」
 乱れた呼吸でナオさんが言う。
「……ねえ……リユくん?」
「はい?」
「難しいかもしれないけど……美那をサポートしてあげて」
「うっす」
 まだ呼吸の荒いナオとハイタッチして、コートに戻る。
 やっぱり、美那はちょっとばかり調子が悪いみたいだよな。

 このタイミングで、Cuも選手が変わる。
 33番男子がアウトで、22番女子が入ってくる。身長は俺と同じくらい。175センチ近くありそう。
 女子2人はやばいよな。こっちは女子2人の体制で美那のインサイドのシュートが一本だけだったし。でも一方で相手には点を与えていないんだから、ナオのディフェンスもかなり頑張ってたってことだな。俺と同じで体力的にはかなり厳しそうだったけど。
 美那が指で俺にトップを指示する。俺はうなずいてこたえる。
 Cuの攻撃で試合再開だから、俺はボールを敵に渡して、最初の攻撃を防ぐ役だ。
 相手は今出てきた22番女子。どんなプレーをするのか。ウォームアップは自分のことでいっぱいで、観察し損ねた。
 Cuの残り二人は両サイドに広がっている。

 審判から受け取ったボールを22番女子にトス。
 わっ、結構速えー!
 22番は、美那がマークする13番女子に向かってドリブル。
 一瞬遅れて対応する。
 と、13番女子もこっちに来てる。
 これは! 俺たちがやったフラットトライアングルの動きじゃ⁈
 俺と美那は鉢合わせみたいな感じになる。マークを入れ替えざるを得ない。
 ボールをもらった13番は即、オツがマークする1番長身にパス。
 すると22番が戻ってきて、俺と美那の間に入る。同時に、13番が美那の外を回り込んでインサイドに走りこんでいく。美那がそれを追おうとした瞬間、その間隙かんげきを22番がカットイン!
 しまった!!
 ちょっとだけ遅れて、俺もダッシュ。
 女子の2倍ポイントはイヤだー!
 俺はテニスでつちかった瞬発力で追う。
 1番長身から22番女子に速いバウンスパスが出される。
 くっそ、テニスでパッシングショットを打たれた時のダイビングボレーだっ!
 横っ跳びになって、腕をいっぱいに伸ばす。
 指先がパスのボールに触れたぁ!!
 ボールの軌道はわずかにズレたっぽい。
 22番はボールをハンブルして、ボールはコートの外に。
 おっし、やった!
 たぶんバスケ的にはヘンテコなプレーなんだろうけど、構わないぜ。

 立ち上がると美那がいた。
「さすが、元テニスボーイのカイリーユ。ナイスディ
 そしてハイタッチ!
 美那がはにかむように微笑んだ!
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