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第3章

3-4 強力ディフェンス

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 対戦相手キュームラス(Cu)の先発は、1番古川さん(男、推定身長188センチ)、13番安川さん(女、推定身長172センチ)、33番長岡さん(男、推定身長179センチ)と、めちゃ高い。ザクっと平均を計算すると――約180センチじゃん!

 Z―Fourの攻撃で、試合開始だ。
 美那が俺にチェックボールに行けと合図。
 トップチェックで対するのはCu33番。手足が長い。
 ゴールに向かって、左手のペイントエリアの角ハイポストでオツが相手をシールしていて、右フリースローレーンのミドルポストに美那がいる。これは、美那がオツの方に走りこんでくるパターンか? それとも俺の方か?
 ボールを受け取った俺は、ちょっとだけフェイントをかけて、オツにパス。
 Cu33番の長い腕を避けて、なんとかパスが通る。
 美那がオツに向かって走ってくる!
 ってことは……逆に俺は外を回り込むようにして美那がいた方に走り出す。
 オツからトスを受けた美那が、素早く振り返って2Pシュートを放つ。
 でも、ボールはリングの淵に当たって、外にはじかれるっ。

 俺はCu33番とリバウンドを競る。けど、高さでかなわない。それにポジショニングも向こうが上手うわてっぽい。あっさりボールを奪われてしまう。
 てか、俺より背が高い上に、ジャンプ力も技術もあるじゃんか!
 着地すると、俺をチラ見して、ニヤリと笑いやがる。クソ、負けねえぞ!!
 簡単には外にパスを出させないのが、せめても俺にできること。Cu33番がドリブルでアーク外に出ていくよう、横に広げた腕を動かしてパスコースを潰す。33番から目を離せないから、ほかの相手選手の位置はわからないけど、美那やオツのいるところはなんとなくわかるし、33番もその方向を意識しているっぽい!
 Cu33番は舌打ちしながら、ドリブルでサイド寄りのアークの外に出る。
 フェイントで俺を抜いて、中にドライブしていこうとするけど、そうはさせるか!!
 横の動きは俺の方が勝ってるぜッ。
 長身のCu1番が走りこんできたっぽいけど、オツがしっかりマークについているようだ。33番はパスの素振そぶりを見せるがあきらめる。
 残り5秒くらいのショットクロックを気にしてか、Cu33番は強引に2Pの体制に入る。
 33番の手を離れたボールに俺の指が、届いた! ボールはフリーになる。
 こぼれ球を美那がキャッチ。
 俺はCu33番を振り切るようにして、アークトップ付近にいたオツと入れ替わる。33番も来てるけど少しだけ間隔がある。たぶんオツのディフェンスのおかげだ。
 美那がファーサイドにパスをくれる。
 33番が飛び込んでくるけど、くるっとかわして、2Pシュートだぁ!
 スパッとボールがバスケットに吸い込まれる!
 ョシャッ!!

(Z)2対0(Cu)。

「いいぞ、リユ!」
 オツの声が飛んでくる。美那からは……ない。
 美那マークのCu13番女子がゴール後のボールをキャッチ。
 俺がマークのCu33番が素早く動き、速いパスが飛んでくる。
 しまったぁ! 位置が悪くて手を出せない。てか、向こうのポジショニングがウマイのか⁈
 Cu33番がインサイドにドライブに行くのを追おうしたら、Cu13番女子が立ちふさがってる⁉︎ くそ、追えねえ!
 美那がCu33番のディフェンスに入る。
 と思ったら、逆にCu13番女子が再びゴールにダイブしていく。美那も俺も13番を追う。そこに33番からのバウンスパスが!
 追いきれず、13番は完全フリーに。パスのボールにも届かない。
 レイアップを軽やかに決められてしまう。

 2対2。

 美那と短い会話を交わす。
「今、俺の動き、まずかった?」
「そんなことない。見事にクラウドピックをやられた」
「そうか、今のがスクリーンか!」
「キュームラスはこういうプレーが得意みたいね」
 と、言い残して美那がボールを拾いに行く。
 俺は反対にアークの外に向かう。Cu33番がまとわりついてくる。オツもCu1番の長身に絡まれている。
 美那は仕方なく、ドリブルでアークのトップ辺りに戻る。
 俺はダイブしようにも長い腕を広げた33番にコースをふさがれている。
 その時、オツがCu1番を一瞬振り切ってインサイドに切り込む。美那が速いバウンスパスを出す。
 反応が遅れたCu1番が腕を伸ばすが、オツがなんとかキャッチ!
 そのままステップを踏んで、シュートに行く。
 が、背後からCu1番も飛ぶ。
 オツの手を離れたボールは、高いジャンプのCu1番にはたかれ、コートの外に出る。
「クッソ!」
 珍しくオツが熱く悔しがっている。そうか。たぶん今のは自分ではイケた、と思ったんだ。俺にも決まるように見えたし。
 もしかして、キュームラスって、無茶ディフェンスのいいチームなの? なんか、俺も、動きたくても動かさせてもらえない感じだ。
 また俺がトップ。Cu33番は審判から受け取ったボールをワンバンワンバウンドで俺に渡す。
 オツと美那は最初と同じフォーメーションだ。俺から見て、オツが左のハイポスト(ペイントエリアのトップ側の角)、美那が右のミドルポストにポジショニング。
 今度もオツにパス。
 美那が俺に向かって走ってくる。
 って、ことは、美那がCu33番にスクリーンをかけるってことだから、俺はそのタイミングで中にカットだ!
 美那のマークのCu13番女子はどっちに動く? 俺? 美那?
 美那だ!
 フリーになった俺にオツからパスが。
 かるーくレイアップシュート。
 うっしゃっ、入った!

 3対2。

 Cu33番がボールを拾う。
 さあ、ディフェンスだ。
 って、トップ付近にフリーで走りこんだCu13番女子に簡単にパスを通されてしまう。しまった、ゴールゲットでちょっと油断したー!
 美那がディフェンスに入るけど、13番女子に2Pシュートを打たれてしまった……。
 綺麗に決まってしまう。プラス4点。

 3対6。
 もしかして、あえて俺に1点シュートを打たせて、2点の2倍を奪う作戦だったのかも……。動画再生で3x3の試合をいくつも観てたら、失点を気にせず、次の自分たちの攻撃に結びつけているチームがいたな。その場合、1P献上して、2Pを取るって感じだったけど、この試合のルールは女子2倍ポイントだからな。くそ、効果絶大じゃねえか。

 ゴールされたボールを俺がキャッチ。
 アークの外側で美那がサイドに走りこんでくる。
 Cu13番が美那のディフェンスに来てるけど、パスは通った!
 美那は13番のディフェンスになかなかシュートに行けない。インサイドの俺にボールを戻してくる。
 けど、33番にがっちりバスケット側を押さえられていて、俺もシュート体制に移れない。
 オツがゴールに向かって飛び込んでくる。美那はトップに向かって動いている。
 どっちにパスを出す。33番は俺のシュートとオツへのパスの防御があるから、角度的に美那だ!
 美那へのパスが通る。2Pを狙う美那。Cu13番が立ちふさがる。
 バックステップして2Pシュートを放つ美那だけど、13番女子も高く飛んで、手を伸ばす。
 ボールは13番の手の上を飛ぶ。
 けど、長すぎた。バスケットの付け根に当たって、外に飛ぶ。
 オツとCu1番のリバウンド争い。
 身長もジャンプもめちゃ高い1番に奪われてしまう。
 1番はすぐにアウトサイドのCu13番女子にパス。
 美那がディフェンスに走る。
 Cu13番は上手いドリブルで美那を困惑。スッと横に動いて2Pを打ってくる。
 これがあっさり入ってしまう。

 3対10。
 やべえ。まだ開始して1分しか経ってないのに、10点?
 なにしろ女子に2Pを2本決められてるからな。それだけで8点だ。
 それに美那もなんかちょっとだけ動きが悪い気がする。ほんのちょっとだけど。

 オツがゴールのボールを取る。
 俺も美那もパスコースをひらくために、アークに沿って走るけど、腕の長いCu1番の巧みなディフェンスでオツはパスを出せない。
 ドリブルアウトせざるを得ないオツ。
 オツがアークの外に出たタイミングで、美那がゴールにダイブしていく。
 そこにオツがパス!
 美那にパスが通る。そのままステップを踏んで、シュートに行く。
 Cu13番もディフェンスに飛ぶけど、美那はボールを右から左に持ち替えて、シュートを放つ。
 ボードに当たったボールがバスケットに吸い込まれる。
 うぉー、やったぜ、美那!!
 珍しく美那がガッツポーズを取っている。そんだけ、Cu13番のディフェンスがきついのかもしれない。

 5対10。
 一方で、Cu13番女子もかなり悔しがっている様子。マンツーman-to-manで同じ女子の高校生に点を取られたからかもな。
 点差が詰まったとはいえ、まだ5点もある。

 Cu13番女子がボールを拾う。
 俺がマークするCu33番がアーク沿いにダッシュ。13番からのパスが出る。
 パスは通っちまったけど、ギリでディフェンスに間に合った。中には進入させないぜ。
 それにしてもキュームラスはすげえ運動量だ。くそ、だんだん息が切れてきた。しかも、なかなかプレーが途切れねえし。
 そんな状態を見透かしたのか、33番がドリブルで俺を揺さぶってくる。
 タッと33番が動き出す。一瞬、遅れちまう。
 と、Cu13番女子がダイブしてくる。
 33番から13番に正確なパス。
 13番女子はドリブルを入れて、一気にシュートに。
 ただ美那もマークを外されてはいない。ちゃんと付いている。
 美那が必死に伸ばした指に13番のシュートが当たる。
 ボールはコースが乱れて、ボードに当たって、反対側に落ちていく。
 落ちたボールにCu1番とオツが飛び込んでいく。
 Cu1番が先に触れるけど、ボールはベースラインの向こう側に転がる。
 ベンチではナオさんが今や遅しと立ち上がっている。
 美那をチラッと見ると、頷いた。
 ベンチの方に走る。
「リユくん、シュート良かったよ」
「かなりディフエンスが上手いみたいなんで、気をつけてください」
「うん。わかった」
 俺はベンチに腰を落とし、ため息をつく。気をつけて、とか言っても、技術差だから何の足しにもならねえか。
 確かキュームラスは、全員、中高バスケ部で、しかも県レベルの強豪校出身とかだったよな。技術もだけど、やっぱ体力もすげえな。
 オツさんからは試合が連続するから体力の配分に気をつけろって言われたけど、無理じゃん。
 しかもまだ残り時間8分40秒。1分半も経ってねえのかよ!
 あ、でも美那は、オツ・美那を中心に、ナオさんと俺が替わっていって、みたいなことを言ってたからな。それをうまく使うしかないな。たぶん、ナオさんも長い時間は持たないだろうから。
 よし、いつでも行けるように、気を引き締めておくぜ!!
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