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第2章
2-28 ルーシーからのメール
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車だと、どうしても駐車場のあるファミレスとかファーストフードになる。
今日は、俺たちの高校の近くにある、国道沿いのファミレスに寄る。
オツさんとナオさんは、これからまた別のところに行くっぽい雰囲気で、ふたりでピザとパスタにドリンクバーという軽食な感じ。俺と美那もそれに合わせる。ま、家ももうすぐ近くだしな。
「それにしても、ペギーたちはバスケの楽しみ方を知ってる感じだったよな」
オツさんがまたペギーたちの話を持ち出す。よほど、インパクトがあったのだろう。
やつら、笑顔で真剣にプレーしてたもんな。
「そうだ。わたしたちのチームの合言葉は、〝エンジョイ・バスケットボール!〟にしましょうよ」
キャプテンの美那が提案する。
「いい、それ!」
ナオさんも即、賛同。
「いいんじゃね?」と、俺。
オツさんは?
なんかしらんが、腕を組んでうつむきながら考え込んでいる。
オツさんが、バッと顔を上げる。
「美那、それだ!」
「はい?」
「俺に足りなかったのは、それだ」
「は、はぁ」
「うん。それだ。それで行こう。俺は、実山での部活の呪縛に囚われ続けてきた気がする」
「確かに……先輩の動きは常に橋詰先生の指示を待ち、指導を恐れているような感じですね」
「だろ? そうだ、これからはリユを目指そう」
「え、俺?」
「ま、あれだな、考えるのを止めよう」
「俺だって、少しは考えてプレーしてますから」
「わかってるよ。だけど、そうじゃない時もあるよな。特に美那とのコンビネーション。今日だって、ペギーを出し抜いてたじゃないか」
「まあ、それは……でも、それだって日頃の練習の成果ですから」
「美那はどうなんだ?」
「え、わたし?」
なんで美那のやつ、焦ってるんだ? ナオさんにもクスリ笑いされているし。
「ああ。お前もリユのことがわかるんだろ? じゃなきゃ、あんな風に動けないよな」
「まあ、そう、なんですか、ね?」
美那のやつ、ルーシーの日本語みたいになってるし。
「航太さん、たぶん、美那ちゃんとリユくんは、長い付き合いの中で生まれた特別な絆みたいなものがあるんだと思うわ。ね、リユくん?」
「ま、そうっすかね。俺はわかんないけど、少なくとも美那はいつも俺のことを理解して、助けてくれるかな」
「だよね。なんか、普通の友達とも恋人とも兄弟とも違う、不思議な一体感みたいなのがあるよね」
「ってことは、バスケだけのことじゃないということか。なんか、リユに関係することは学べそうで学べないことが多いな。特殊すぎて」
「そんなこともないと思うけど……」
うーん、これって褒められているのともちょっと違うような。
「ところで、リユ。さっきの放物線の方程式だけど、式を言ってみろよ」
「あ、ああ、ええ。えっと、放物線だから、ワイ・イコール、エックスの2乗、いや3乗?」
「それもすぐ出てこないのか。先が思いやられるな」
オツさんは食い終わった皿を重ねて端に寄せると、バッグからノートPCを出して、俺とナオさんの席を変わらせる。
表計算ソフトを立ち上げて、数字と数式を入力すると、あっという間に数種類の放物線グラフが表示される。
さすが理系の大学生は違うな……。
「つまり、リユがさっき言ってたのは、この y = -ax^2 の係数aの値を例えば0・5から2まで変化させた時に、俺の2ポイントシュートの軌道は……これだとちょっと見づらいな。ゼロを基準に変えるか」
オツさんは数式に値を加えて、グラフの始点をゼロに統一する。
おー、すげー。
「今日の俺は、この係数aが0・5くらいで、2は大きすぎるにしても、1から1・5くらいの感じがいい、ってことだろ? あくまでもイメージだが」
「そうです。まさにそんな感じです。すごいっすね。あっという間に」
「2年なら、このくらいのことは情報科学で習ってないか?」
「いや、たぶん、まだかな? こういうのが教科書に載ってた気はしますけど、こんな風にバスケと結びつけられるなんて、思ってもみませんでした」
「理系ってのはこんな感じだ。これを自分でプログラミングして図にするなんてこともやるけど、それだって覚えてしまえば、そんな難しいことじゃないさ」
「そうなんだ……でも、なんか、理系の世界が垣間見えたような気がします。面白そうですね」
「まあ、面白そうと思えるなら、できるんじゃないか? やってみろよ。文系から理系へのコンバート。細かいことは学校で先生に訊いてもらうしかないが、こんなアドバイスならできるから」
「あ、はい。ありがとうございます。お願いします」
俺はすごく真面目な気持ちになって、オツさんに頭を下げた。
顔を上げると、ナオさんは微笑ましい感じ、美那はニコニコして、俺たちを見てる。
「じゃ、勉強の話は今日はこれで終わりな」
「はい。ありがとうございました」
また、ナオさんと席を交換する。
席に戻ると、美那が肘で俺を小突いて、「よかったじゃん」と、囁く。
「ああ。サンキュ」
「別にわたしは何もしてないけど?」
「いや、お前が谷先生に話をするように勧めてくれたお陰」
「ああ。ま、ね。でもお互いさまだから」
「俺の方は何もしてないけど」
「そんなことないよ」
美那の言い方が、これ以上ないくらい柔らかい。笑顔も優しい。
めちゃ、可愛いじゃん。なんだよ、美那。調子、狂うし。
「美那、戦術の方はそれぞれ練習パートナーに説明しておいて、次の試合で少し試す感じか?」
オツさんが美那に話しかける。
「そうですね。大会までにあと何回練習試合を組めるでしょうね?」
「そうだなぁ、今度の日曜の他に、あと1回は当たりをつけてある。リユは8月17日土曜日がダメなんだよな?」
「ああ、はい。最後のライディングスクールが」
「バイクか。わかった」
そんな感じで、今日は、予定していたチーム戦術の方はあまり進まなかったけど、オツさんが実山バスケ部の呪縛から解かれたらしいのが、大きな成果だった。それにペギーとの対戦は楽しかったしな。
今日は学校の近くだし、電車で帰ってもいいくらいなんだけど、またオツさんが美那の家の前まで送ってくれることになった。
車が走り出してすぐ、隣に座る美那がなぜかメッセージを送ってきた。
なぜ?
――>先輩とナオさんに長野のお土産は?
そういうことか……完全に抜け落ちてたな。
<――やべ、すっかり忘れてた……美那と、かーちゃんと、杉浦さんのことしか考えなかった。
――>真由ちゃんは?
<――あとで気づいて、一応、家用に買ったジャム、1個だけ取ってある。まあ、渡す機会もないと思うけど。休み明けに学校で渡すのもちょっと間延び?
――>1個だけなんだ?
<――や、だって渡せる可能性、低いもんな。
――>じゃあ、家まで送ってくれるし、先輩とナオさんには私にくれたジャムを渡したら? まだ2個、開けてないから。私の家に忘れていった、ってことにして。
<――いいのか?
――>うん、いいよ。わたしはハムスターくんたちがいるから❤️
<――悪いな。
なんと、今度はルーシーからメールだ。美那にも届いている。
<Hi! Mina, Riyu,
さっきはありがとうございます。
楽しかった。
また一緒にプレイしたいとペギーがうるさいです。
あと2週間ほど日本にいますけど、もう一度、一緒にプレーできますか。>
「マジか」と俺。
「そんなことになりそうな気はしてたけど」
美那は笑顔だ。
「どうした?」
オツさんが訊いてくる。
「ルーシーからわたしとリユにメールが来て、ペギーがもう一回プレーしたいって、煩いらしんですよ」
「笑っちゃいたけど、結構悔しかったのかな」
なんかオツさんも嬉しそうだ。
「そうだ、練習試合に参加してもらえば?」
ナオさんがナイスアイディアを出してくれる。
「あと2週間日本にいるらしいですから、次の試合なら間に合いますね」
「そうだな。先方に了解を得ないといけないが……」
「相手はサニーサイドの3試合目のレベルなんですよね?」
「俺も実際にチームを見たわけじゃないからはっきりとは言えないが、少なくとも声をかけた人間はあのレベルだ」
「じゃあ、ペギーはともかく、チームとしてはちょっと厳しいですかね?」
「どうだろうな」
「俺はもう一回、ペギーたちとやってみたいな。今日負けて、もう一度やりたいと言ってきたからには、態勢を立て直してくるんじゃないかな」
「そうかも。ちょっとルーシーに訊いてみます」
「そうしてくれ。その方がいい」
オツさんが車を駐車場付きのマックに入れる。
ナオさんとちょっと相談して、今日はこれからどこかに行くのを中止にしたっぽい。
「じゃあ、俺もちょっと、二つのチームに訊いてみる」
店に入って、ドリンクとポテトを頼む。
「ねえ、リユ。ルーシーは日本語の文章、わかるのかな?」
「メールは日本語で来てたけどな。とりあえず日本語で書いて、あとはネットで翻訳して、両方、送れば?」
「そうだね」
「あ、そういや、ナオさん、英語が得意そうでしたよね?」
と、俺がナオさんに振る。
「え、わたし? まあ、英文科ではあるけど」
「そうか! 一緒にやってもらえますか?」
「うん」
3人で文面を考える。
近々3つのチームで練習試合をするけど、参加するチームのレベルは私たちのチームより高いので、先ほどのあなたたちのチームのレベルでは、一緒にプレイすることは難しい――なんて書けないもんな。英語より、まずなんて伝えるのかが、難しいじゃんか。
オツさんはとりあえずメールを送った後で、電話をしてみると言って、店の外に出た。
ナオさんが椅子を俺たちの方に持ってきて、美那を真ん中にして、文面を考える。
最終的にこんな文面に落ち着いた:
私たちのチーム(Z―Four)は、次の日曜日(8月4日)に、3x3の練習試合を別の2つのチームとすることになっています。
その2つのチームは私たちのチームよりもレベルが高いと聞いています。
今、チーム代表のオツが先方のチームにペギーたちのチームが参加できるかどうかを問い合わせています。
今日のゲームではコンディションが万全ではないという印象を受けました。もし、ペギーたちがその練習試合に参加したいと考えて、他の参加チームの同意も得られた場合、もう少しコンディションを整えて試合に臨むことは可能でしょうか?
英訳はこんな感じ:
Our team, Z-Four, will have the 3x3 practice match with two other teams in next Sunday, August 4th.
We’ve heard that the two teams are of a higher level than ours.
Now, Otsu, the team representative, is asking to the two other teams if Peggy's team can join the practice match.
We got the impression that your condition are not perfect in today's game.
If Peggy, Jack and Ted want to participate in the practice match and we could get the consent of the other participating teams, is it possible to get your physical condition a little better for the match?
とりあえず、英語と日本語と両方ともメールに貼り付けて、美那からルーシーに送った。
うまく伝わるかどうか……。
(2022年6月14日:美那のセリフで「オツさん」となっていた部分を「先輩」に修正しました)
今日は、俺たちの高校の近くにある、国道沿いのファミレスに寄る。
オツさんとナオさんは、これからまた別のところに行くっぽい雰囲気で、ふたりでピザとパスタにドリンクバーという軽食な感じ。俺と美那もそれに合わせる。ま、家ももうすぐ近くだしな。
「それにしても、ペギーたちはバスケの楽しみ方を知ってる感じだったよな」
オツさんがまたペギーたちの話を持ち出す。よほど、インパクトがあったのだろう。
やつら、笑顔で真剣にプレーしてたもんな。
「そうだ。わたしたちのチームの合言葉は、〝エンジョイ・バスケットボール!〟にしましょうよ」
キャプテンの美那が提案する。
「いい、それ!」
ナオさんも即、賛同。
「いいんじゃね?」と、俺。
オツさんは?
なんかしらんが、腕を組んでうつむきながら考え込んでいる。
オツさんが、バッと顔を上げる。
「美那、それだ!」
「はい?」
「俺に足りなかったのは、それだ」
「は、はぁ」
「うん。それだ。それで行こう。俺は、実山での部活の呪縛に囚われ続けてきた気がする」
「確かに……先輩の動きは常に橋詰先生の指示を待ち、指導を恐れているような感じですね」
「だろ? そうだ、これからはリユを目指そう」
「え、俺?」
「ま、あれだな、考えるのを止めよう」
「俺だって、少しは考えてプレーしてますから」
「わかってるよ。だけど、そうじゃない時もあるよな。特に美那とのコンビネーション。今日だって、ペギーを出し抜いてたじゃないか」
「まあ、それは……でも、それだって日頃の練習の成果ですから」
「美那はどうなんだ?」
「え、わたし?」
なんで美那のやつ、焦ってるんだ? ナオさんにもクスリ笑いされているし。
「ああ。お前もリユのことがわかるんだろ? じゃなきゃ、あんな風に動けないよな」
「まあ、そう、なんですか、ね?」
美那のやつ、ルーシーの日本語みたいになってるし。
「航太さん、たぶん、美那ちゃんとリユくんは、長い付き合いの中で生まれた特別な絆みたいなものがあるんだと思うわ。ね、リユくん?」
「ま、そうっすかね。俺はわかんないけど、少なくとも美那はいつも俺のことを理解して、助けてくれるかな」
「だよね。なんか、普通の友達とも恋人とも兄弟とも違う、不思議な一体感みたいなのがあるよね」
「ってことは、バスケだけのことじゃないということか。なんか、リユに関係することは学べそうで学べないことが多いな。特殊すぎて」
「そんなこともないと思うけど……」
うーん、これって褒められているのともちょっと違うような。
「ところで、リユ。さっきの放物線の方程式だけど、式を言ってみろよ」
「あ、ああ、ええ。えっと、放物線だから、ワイ・イコール、エックスの2乗、いや3乗?」
「それもすぐ出てこないのか。先が思いやられるな」
オツさんは食い終わった皿を重ねて端に寄せると、バッグからノートPCを出して、俺とナオさんの席を変わらせる。
表計算ソフトを立ち上げて、数字と数式を入力すると、あっという間に数種類の放物線グラフが表示される。
さすが理系の大学生は違うな……。
「つまり、リユがさっき言ってたのは、この y = -ax^2 の係数aの値を例えば0・5から2まで変化させた時に、俺の2ポイントシュートの軌道は……これだとちょっと見づらいな。ゼロを基準に変えるか」
オツさんは数式に値を加えて、グラフの始点をゼロに統一する。
おー、すげー。
「今日の俺は、この係数aが0・5くらいで、2は大きすぎるにしても、1から1・5くらいの感じがいい、ってことだろ? あくまでもイメージだが」
「そうです。まさにそんな感じです。すごいっすね。あっという間に」
「2年なら、このくらいのことは情報科学で習ってないか?」
「いや、たぶん、まだかな? こういうのが教科書に載ってた気はしますけど、こんな風にバスケと結びつけられるなんて、思ってもみませんでした」
「理系ってのはこんな感じだ。これを自分でプログラミングして図にするなんてこともやるけど、それだって覚えてしまえば、そんな難しいことじゃないさ」
「そうなんだ……でも、なんか、理系の世界が垣間見えたような気がします。面白そうですね」
「まあ、面白そうと思えるなら、できるんじゃないか? やってみろよ。文系から理系へのコンバート。細かいことは学校で先生に訊いてもらうしかないが、こんなアドバイスならできるから」
「あ、はい。ありがとうございます。お願いします」
俺はすごく真面目な気持ちになって、オツさんに頭を下げた。
顔を上げると、ナオさんは微笑ましい感じ、美那はニコニコして、俺たちを見てる。
「じゃ、勉強の話は今日はこれで終わりな」
「はい。ありがとうございました」
また、ナオさんと席を交換する。
席に戻ると、美那が肘で俺を小突いて、「よかったじゃん」と、囁く。
「ああ。サンキュ」
「別にわたしは何もしてないけど?」
「いや、お前が谷先生に話をするように勧めてくれたお陰」
「ああ。ま、ね。でもお互いさまだから」
「俺の方は何もしてないけど」
「そんなことないよ」
美那の言い方が、これ以上ないくらい柔らかい。笑顔も優しい。
めちゃ、可愛いじゃん。なんだよ、美那。調子、狂うし。
「美那、戦術の方はそれぞれ練習パートナーに説明しておいて、次の試合で少し試す感じか?」
オツさんが美那に話しかける。
「そうですね。大会までにあと何回練習試合を組めるでしょうね?」
「そうだなぁ、今度の日曜の他に、あと1回は当たりをつけてある。リユは8月17日土曜日がダメなんだよな?」
「ああ、はい。最後のライディングスクールが」
「バイクか。わかった」
そんな感じで、今日は、予定していたチーム戦術の方はあまり進まなかったけど、オツさんが実山バスケ部の呪縛から解かれたらしいのが、大きな成果だった。それにペギーとの対戦は楽しかったしな。
今日は学校の近くだし、電車で帰ってもいいくらいなんだけど、またオツさんが美那の家の前まで送ってくれることになった。
車が走り出してすぐ、隣に座る美那がなぜかメッセージを送ってきた。
なぜ?
――>先輩とナオさんに長野のお土産は?
そういうことか……完全に抜け落ちてたな。
<――やべ、すっかり忘れてた……美那と、かーちゃんと、杉浦さんのことしか考えなかった。
――>真由ちゃんは?
<――あとで気づいて、一応、家用に買ったジャム、1個だけ取ってある。まあ、渡す機会もないと思うけど。休み明けに学校で渡すのもちょっと間延び?
――>1個だけなんだ?
<――や、だって渡せる可能性、低いもんな。
――>じゃあ、家まで送ってくれるし、先輩とナオさんには私にくれたジャムを渡したら? まだ2個、開けてないから。私の家に忘れていった、ってことにして。
<――いいのか?
――>うん、いいよ。わたしはハムスターくんたちがいるから❤️
<――悪いな。
なんと、今度はルーシーからメールだ。美那にも届いている。
<Hi! Mina, Riyu,
さっきはありがとうございます。
楽しかった。
また一緒にプレイしたいとペギーがうるさいです。
あと2週間ほど日本にいますけど、もう一度、一緒にプレーできますか。>
「マジか」と俺。
「そんなことになりそうな気はしてたけど」
美那は笑顔だ。
「どうした?」
オツさんが訊いてくる。
「ルーシーからわたしとリユにメールが来て、ペギーがもう一回プレーしたいって、煩いらしんですよ」
「笑っちゃいたけど、結構悔しかったのかな」
なんかオツさんも嬉しそうだ。
「そうだ、練習試合に参加してもらえば?」
ナオさんがナイスアイディアを出してくれる。
「あと2週間日本にいるらしいですから、次の試合なら間に合いますね」
「そうだな。先方に了解を得ないといけないが……」
「相手はサニーサイドの3試合目のレベルなんですよね?」
「俺も実際にチームを見たわけじゃないからはっきりとは言えないが、少なくとも声をかけた人間はあのレベルだ」
「じゃあ、ペギーはともかく、チームとしてはちょっと厳しいですかね?」
「どうだろうな」
「俺はもう一回、ペギーたちとやってみたいな。今日負けて、もう一度やりたいと言ってきたからには、態勢を立て直してくるんじゃないかな」
「そうかも。ちょっとルーシーに訊いてみます」
「そうしてくれ。その方がいい」
オツさんが車を駐車場付きのマックに入れる。
ナオさんとちょっと相談して、今日はこれからどこかに行くのを中止にしたっぽい。
「じゃあ、俺もちょっと、二つのチームに訊いてみる」
店に入って、ドリンクとポテトを頼む。
「ねえ、リユ。ルーシーは日本語の文章、わかるのかな?」
「メールは日本語で来てたけどな。とりあえず日本語で書いて、あとはネットで翻訳して、両方、送れば?」
「そうだね」
「あ、そういや、ナオさん、英語が得意そうでしたよね?」
と、俺がナオさんに振る。
「え、わたし? まあ、英文科ではあるけど」
「そうか! 一緒にやってもらえますか?」
「うん」
3人で文面を考える。
近々3つのチームで練習試合をするけど、参加するチームのレベルは私たちのチームより高いので、先ほどのあなたたちのチームのレベルでは、一緒にプレイすることは難しい――なんて書けないもんな。英語より、まずなんて伝えるのかが、難しいじゃんか。
オツさんはとりあえずメールを送った後で、電話をしてみると言って、店の外に出た。
ナオさんが椅子を俺たちの方に持ってきて、美那を真ん中にして、文面を考える。
最終的にこんな文面に落ち着いた:
私たちのチーム(Z―Four)は、次の日曜日(8月4日)に、3x3の練習試合を別の2つのチームとすることになっています。
その2つのチームは私たちのチームよりもレベルが高いと聞いています。
今、チーム代表のオツが先方のチームにペギーたちのチームが参加できるかどうかを問い合わせています。
今日のゲームではコンディションが万全ではないという印象を受けました。もし、ペギーたちがその練習試合に参加したいと考えて、他の参加チームの同意も得られた場合、もう少しコンディションを整えて試合に臨むことは可能でしょうか?
英訳はこんな感じ:
Our team, Z-Four, will have the 3x3 practice match with two other teams in next Sunday, August 4th.
We’ve heard that the two teams are of a higher level than ours.
Now, Otsu, the team representative, is asking to the two other teams if Peggy's team can join the practice match.
We got the impression that your condition are not perfect in today's game.
If Peggy, Jack and Ted want to participate in the practice match and we could get the consent of the other participating teams, is it possible to get your physical condition a little better for the match?
とりあえず、英語と日本語と両方ともメールに貼り付けて、美那からルーシーに送った。
うまく伝わるかどうか……。
(2022年6月14日:美那のセリフで「オツさん」となっていた部分を「先輩」に修正しました)
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