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第2章
2-18 美那の裸とハムスター
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コートの上で俺たちは燃えた。
ラインがあると、ほんとに違う。見なくてもゴールの位置が感覚的にわかる。体育館でやったときには気がつかなかったけど、特に俺みたいなクルクル向きを変えるタイプには、ゴール位置のいいガイドになる。
まともなバスケは松本のJKsとの対戦以来だから、さすがに俺の動きはちょっと鈍っている。体力の方は、重い機材を担いで有里子さんにこき使われたおかげで――思ったほどではなかったけど――、足腰を中心に強化されたといってもいいくらいだ。
ただドリブルのミスが多くて、美那との10点先取の1on1では惨敗だ。それでも今日の美那は、皮肉のひとつも言わない。
雨がちらついたので、6時前に練習は終了! あー、テンション上がりまくった!
帰りの挨拶をする時、俺たちが感動を熱く語りすぎて、杉浦さん夫妻もちょっと困ったみたいだったけど、でも満足げな顔をしていた。
「いやー、それにしても驚いたよな」
「うん。まさかね」
「そういや、前に杉浦さんからバスケのコートについて詳しく教えてくれって言われたな」
「それだよ! たぶん前から考えていてくれたんだ……」
「最後はあれか。バイトに行く前の日にテープを貼ってみて、ダメだったじゃん。あれが最後の一押しになったのかな」
「そういえばあの日、ちょっと考えてみるとか言って、次に来る日も念を押すように確認してたね」
「だけど、どうしよう。どうやってお礼をしたらいいんだ?」
どう考えても、業者に頼んで、きちんとラインを引いてもらったっぽい。
「そうだよね。こんなにしてもらってね……息子さんのためみたいなことは言ってくれたけど」
「とりあえず、優勝して、トロフィーでも見せるしかねえか」
「そうだね。またひとつモチベーションが増えた、ってことか」
「だな」
6時過ぎに家に戻ると、まだCX―5が停まっている。
「ただいまー」
「あ、おかえり」
と、かーちゃんの明るい声が居間から飛んでくる。
美那もちょっと驚いた顔をしている。
「おみやげもあるし、上がってくだろ?」
「あ、うん。部屋に荷物もあるし」
「部屋って、もうこの家の住人みたいじゃん」
「まーね」
ま、いっか。
「有里子さん、まだいたんですね」
「うん。あ、すみません、つい長居しちゃって」
と、有里子さんがかーちゃんに謝る。
「もうぜんぜん。あ、そうだ。夕飯も一緒にどうですか。里優、作ってくれる?」
「おい、俺、さっきバイト旅行から帰ってきたばかりだぜ」
「でも元気にバスケしてきたんでしょ?」
「ま、そうだけどさ……」
「いいじゃない。一緒につくろ」と、美那。
「わかったよ。ただ、ちょっと一服してからな」
「わたし、ちょっとシャワー浴びてくる。加奈江さん、シャワーお借りします」
「はい、どうぞ」
なんだよ、この馴染み方。夏休みに転がり込んできた姪っ子かなんかみたいじゃん。
俺は荷物を部屋に運び込む。
まず、おみやげを机の上に並べて、それから大量の洗濯物を入れた袋を取り出す。これは自分で洗わないと、かーちゃんに文句を言われるな。
俺は袋を持って下に降りて、なにげなく洗濯機のある洗面所の引き戸を開ける。
そこには、まさに、片足を上げてパンティを脱いでいる美那の後ろ姿が!
しかも驚いて振り返りやがったから、ピンク色の胸の中心もちらっと……。
「うわっ」という美那の短い叫びに、慌てて俺はドアを閉める。
「ご、ごめん。つい、うっかり、いつものつもりで……」
美那がドアから顔だけ出す。当然だが、明らかに怒った顔。
「ねえ、いま、完全に見たよね」
「す、すいません」
「シャワー浴びるって言ったよね」
「すいません。洗濯物を……」
「わたしも迂闊だったし、わざとじゃないことはわかってるけど……ま、リユならいいか。サスケコートのサプライズの続きってことで!」
そう言って、美那は引き戸をピシッと閉めた。
あーー。見てはいけない、スバラシイ、ウツクシスギルものを見てしまった。
美那の裸。
ヤバすぎる……。
部屋に戻っても、美しい残像が俺を苛む。あー、ダメだ。忘れられそうにない。やばい、暴発しそう……。だけど美那を想像して、スルわけにもいかない。
だけど、リユならいいか、って、弟に見られた感じかよ……。あぁあ、俺は完全に美那をオンナとして意識しちゃってるのにな。
そうだ、こういうときは、カイリーだ。カイリーの動画を見るしかない!
驚異的なプレーを15分くらい見ていたら、ようやく心が落ち着いた。
ドアをノックする音に続いて、「リユ、入るよー」と、普段通りの美那の声。
「あ、ああ」
入ってきた美那は、水色のTシャツにルーズなジーンズで、髪の毛をタオルで拭っている。
「なんだ、またカイリー見てたの?」
「う、うん。さっきは、ごめ……」
「もう、いいって」
俺の言葉を美那が遮る。
「一緒に住めばああいうこともあるよね」
「一緒に住むって……」
「ほんとにそうなるかも、っていう風向き」
「そうなのか……」
「もしほんとにそうなったら、嫌かもしれないけど、お願いね。ナオさんの女子寮みたいな手段もあるかもしれないけど、今のところ、ここが唯一の頼みの綱だから」
「ああ」
そうかー。やっぱそういう方向か。でもなにが美那にとって一番いいか、まだわかんないもんな。
美那は当たり前のようにベッドに腰掛ける。
「お、そうだ。これ、おみやげ」
俺は手を伸ばして、ジャムが三つ入った袋と、ハムスター・ペアの入ったピンク色の包みを美那に渡す。
そして、座っていた椅子を美那の方に寄せる。
「わ、美味しそうなジャム! これは?」
「開けてみ」
「うん」
リボンを解いた美那は微妙な表情。
もしかして、ハズした?
でも徐々にほころびてきて、やがて満面の笑みに。
「なに、これ。わたしのこと、思いっきり見つめてきてるんだけど」
美那はそう言って、俺を見る。
「ハムスター?」
「それはわかるけど、どういう意味がこもってるの?」
「別に、意味とかそんなないけど。美那が、カワイイって思うんじゃないかと思ったのと、有里子さんが、まだ小さいけど必死に大きくなろうとしてる姿が俺たちみたいだ、って言ったから……」
「ふーん。わたしたち……この巣みたいなのは? それと本物のどんぐり」
「え? なにそれ?」
「ほら」
見ると、ハムスターくんたちは、同じ素材でできた、2体がすっぽり収まるような鳥の巣みたいなものの中にいる。巣に入ったハムスターくんたちの間には本物のどんぐりがはめてある。こんなの知らねえし。しかも、なんかチョー可愛いし。ジィーと俺のことを見つめてやがる。
「これ、蒼山さんの奥さんのハンドメイドで、パッケージも奥さんがしてくれたから、俺もこの状態は初めて見た」
「ふーん、そうなんだ」
美那は優しい目でハムスターたちを見つめながら指でそっと撫でて、「かわいい」と、つぶやく。そして、ほっこりした明るい瞳で俺を見る。
「ありがとう。大事にする」
「ああ、うん」
あの特殊能力を持つ蒼山さんは、美那のことを一生大事にした方がいい、って言っていたし、早紀さんは蒼山さんから俺の話をたくさん聞いたとか言っていたし、なんか、意味が込められてるのかな。
「そうだ。リユ、ご飯作らなきゃ」
「お、そうだった」
俺も美那も立ち上がる。
「ねえ、リユ。ちょっと大人っぽくなったね」
「そ、そうか? まあ、なんか雑用とはいえちゃんとした仕事をしたし、建築の先生と話もしたりしたし、人生の可能性もちょっとだけ見えてきた気がするし、旅は人を育てる、って感じ?」
「うん」
下に降りると、かーちゃんと有里子さんはまだ楽しげになにか話してる。
「なんか、あのふたり、ずいぶん気が合うみたいね」
「そうだな」
今日は生協が来た日なので、食材はたくさんある。美那によるとご飯は昼に炊いた残りだけど、そこは我慢してもらおう。それにさすがにちょっとかったるいし、肉野菜炒め程度にするか。豆腐があるから、味噌汁はいけるな。
アゴ出汁のパッケージを水を張った鍋に入れて、一番弱い火でゆっくりと煮出す。
「何にするの?」
「簡単に肉野菜炒めと豆腐の味噌汁かな」
「キャベツと玉ねぎとニンジン? あ、ブロッコリーもあったよ」
「お、いいね。有里子さんもいるし、あと一品くらいなんかできるかな」
「キュウリとトマトと紫蘇のサラダとか?」
「おまえ、それやってくれる?」
「うん」
「じゃ、俺もちょっとシャワーを浴びてきていいか?」
「うん。その間に材料を用意しておく」
「ああ、頼んだ」
10分くらいでシャワーから戻ると、美那は炒め物用の野菜を切っておいてくれた。
まずは冷蔵庫から豚コマを取り出して、中華鍋で火を通しながら塩と胡椒で下味をつけて一度取り出す。空いた中華鍋に玉ねぎ、ニンジンの順に投入。時間もないし、ブロッコリーは電子レンジで軽く熱を入れておく。玉ねぎとニンジンにほどよく火が入ったところで強火にして、豚肉とキャベツを入れる。さらにブロッコリーを加えて、塩と胡椒で全体に味をつけて、最後に料理酒と醤油を軽く廻し入れる。
味噌汁はその合間に完成させる。
傍らでは美那がサラダを作っている。冷蔵庫にはイタリアンドレッシングしかないから、お酢とごま油とサラダ油、塩・胡椒と醤油で簡単に和風ドレッシングを作る。
「すごい。ドレッシングもつくるんだ」
「このフラスコみたいな容器で、分量を計って、蓋して混ぜるだけだから、簡単じゃん」
「リユと結婚する人は幸せだなぁ。さっと料理作ってくれちゃうもんね」
「いや、俺だって毎日やるのはイヤだからな。レパートリーだってそんなに豊富じゃないし」
美那がかーちゃん達に声をかけて、食卓の用意をしてくれる。その間に、料理を皿に盛り付ける。有里子さんがいるので、ちょっと面倒だけど、大皿ではなくて、小さめのお皿で一人分ずつ。美那だけなら、完全に大皿だな。
ラインがあると、ほんとに違う。見なくてもゴールの位置が感覚的にわかる。体育館でやったときには気がつかなかったけど、特に俺みたいなクルクル向きを変えるタイプには、ゴール位置のいいガイドになる。
まともなバスケは松本のJKsとの対戦以来だから、さすがに俺の動きはちょっと鈍っている。体力の方は、重い機材を担いで有里子さんにこき使われたおかげで――思ったほどではなかったけど――、足腰を中心に強化されたといってもいいくらいだ。
ただドリブルのミスが多くて、美那との10点先取の1on1では惨敗だ。それでも今日の美那は、皮肉のひとつも言わない。
雨がちらついたので、6時前に練習は終了! あー、テンション上がりまくった!
帰りの挨拶をする時、俺たちが感動を熱く語りすぎて、杉浦さん夫妻もちょっと困ったみたいだったけど、でも満足げな顔をしていた。
「いやー、それにしても驚いたよな」
「うん。まさかね」
「そういや、前に杉浦さんからバスケのコートについて詳しく教えてくれって言われたな」
「それだよ! たぶん前から考えていてくれたんだ……」
「最後はあれか。バイトに行く前の日にテープを貼ってみて、ダメだったじゃん。あれが最後の一押しになったのかな」
「そういえばあの日、ちょっと考えてみるとか言って、次に来る日も念を押すように確認してたね」
「だけど、どうしよう。どうやってお礼をしたらいいんだ?」
どう考えても、業者に頼んで、きちんとラインを引いてもらったっぽい。
「そうだよね。こんなにしてもらってね……息子さんのためみたいなことは言ってくれたけど」
「とりあえず、優勝して、トロフィーでも見せるしかねえか」
「そうだね。またひとつモチベーションが増えた、ってことか」
「だな」
6時過ぎに家に戻ると、まだCX―5が停まっている。
「ただいまー」
「あ、おかえり」
と、かーちゃんの明るい声が居間から飛んでくる。
美那もちょっと驚いた顔をしている。
「おみやげもあるし、上がってくだろ?」
「あ、うん。部屋に荷物もあるし」
「部屋って、もうこの家の住人みたいじゃん」
「まーね」
ま、いっか。
「有里子さん、まだいたんですね」
「うん。あ、すみません、つい長居しちゃって」
と、有里子さんがかーちゃんに謝る。
「もうぜんぜん。あ、そうだ。夕飯も一緒にどうですか。里優、作ってくれる?」
「おい、俺、さっきバイト旅行から帰ってきたばかりだぜ」
「でも元気にバスケしてきたんでしょ?」
「ま、そうだけどさ……」
「いいじゃない。一緒につくろ」と、美那。
「わかったよ。ただ、ちょっと一服してからな」
「わたし、ちょっとシャワー浴びてくる。加奈江さん、シャワーお借りします」
「はい、どうぞ」
なんだよ、この馴染み方。夏休みに転がり込んできた姪っ子かなんかみたいじゃん。
俺は荷物を部屋に運び込む。
まず、おみやげを机の上に並べて、それから大量の洗濯物を入れた袋を取り出す。これは自分で洗わないと、かーちゃんに文句を言われるな。
俺は袋を持って下に降りて、なにげなく洗濯機のある洗面所の引き戸を開ける。
そこには、まさに、片足を上げてパンティを脱いでいる美那の後ろ姿が!
しかも驚いて振り返りやがったから、ピンク色の胸の中心もちらっと……。
「うわっ」という美那の短い叫びに、慌てて俺はドアを閉める。
「ご、ごめん。つい、うっかり、いつものつもりで……」
美那がドアから顔だけ出す。当然だが、明らかに怒った顔。
「ねえ、いま、完全に見たよね」
「す、すいません」
「シャワー浴びるって言ったよね」
「すいません。洗濯物を……」
「わたしも迂闊だったし、わざとじゃないことはわかってるけど……ま、リユならいいか。サスケコートのサプライズの続きってことで!」
そう言って、美那は引き戸をピシッと閉めた。
あーー。見てはいけない、スバラシイ、ウツクシスギルものを見てしまった。
美那の裸。
ヤバすぎる……。
部屋に戻っても、美しい残像が俺を苛む。あー、ダメだ。忘れられそうにない。やばい、暴発しそう……。だけど美那を想像して、スルわけにもいかない。
だけど、リユならいいか、って、弟に見られた感じかよ……。あぁあ、俺は完全に美那をオンナとして意識しちゃってるのにな。
そうだ、こういうときは、カイリーだ。カイリーの動画を見るしかない!
驚異的なプレーを15分くらい見ていたら、ようやく心が落ち着いた。
ドアをノックする音に続いて、「リユ、入るよー」と、普段通りの美那の声。
「あ、ああ」
入ってきた美那は、水色のTシャツにルーズなジーンズで、髪の毛をタオルで拭っている。
「なんだ、またカイリー見てたの?」
「う、うん。さっきは、ごめ……」
「もう、いいって」
俺の言葉を美那が遮る。
「一緒に住めばああいうこともあるよね」
「一緒に住むって……」
「ほんとにそうなるかも、っていう風向き」
「そうなのか……」
「もしほんとにそうなったら、嫌かもしれないけど、お願いね。ナオさんの女子寮みたいな手段もあるかもしれないけど、今のところ、ここが唯一の頼みの綱だから」
「ああ」
そうかー。やっぱそういう方向か。でもなにが美那にとって一番いいか、まだわかんないもんな。
美那は当たり前のようにベッドに腰掛ける。
「お、そうだ。これ、おみやげ」
俺は手を伸ばして、ジャムが三つ入った袋と、ハムスター・ペアの入ったピンク色の包みを美那に渡す。
そして、座っていた椅子を美那の方に寄せる。
「わ、美味しそうなジャム! これは?」
「開けてみ」
「うん」
リボンを解いた美那は微妙な表情。
もしかして、ハズした?
でも徐々にほころびてきて、やがて満面の笑みに。
「なに、これ。わたしのこと、思いっきり見つめてきてるんだけど」
美那はそう言って、俺を見る。
「ハムスター?」
「それはわかるけど、どういう意味がこもってるの?」
「別に、意味とかそんなないけど。美那が、カワイイって思うんじゃないかと思ったのと、有里子さんが、まだ小さいけど必死に大きくなろうとしてる姿が俺たちみたいだ、って言ったから……」
「ふーん。わたしたち……この巣みたいなのは? それと本物のどんぐり」
「え? なにそれ?」
「ほら」
見ると、ハムスターくんたちは、同じ素材でできた、2体がすっぽり収まるような鳥の巣みたいなものの中にいる。巣に入ったハムスターくんたちの間には本物のどんぐりがはめてある。こんなの知らねえし。しかも、なんかチョー可愛いし。ジィーと俺のことを見つめてやがる。
「これ、蒼山さんの奥さんのハンドメイドで、パッケージも奥さんがしてくれたから、俺もこの状態は初めて見た」
「ふーん、そうなんだ」
美那は優しい目でハムスターたちを見つめながら指でそっと撫でて、「かわいい」と、つぶやく。そして、ほっこりした明るい瞳で俺を見る。
「ありがとう。大事にする」
「ああ、うん」
あの特殊能力を持つ蒼山さんは、美那のことを一生大事にした方がいい、って言っていたし、早紀さんは蒼山さんから俺の話をたくさん聞いたとか言っていたし、なんか、意味が込められてるのかな。
「そうだ。リユ、ご飯作らなきゃ」
「お、そうだった」
俺も美那も立ち上がる。
「ねえ、リユ。ちょっと大人っぽくなったね」
「そ、そうか? まあ、なんか雑用とはいえちゃんとした仕事をしたし、建築の先生と話もしたりしたし、人生の可能性もちょっとだけ見えてきた気がするし、旅は人を育てる、って感じ?」
「うん」
下に降りると、かーちゃんと有里子さんはまだ楽しげになにか話してる。
「なんか、あのふたり、ずいぶん気が合うみたいね」
「そうだな」
今日は生協が来た日なので、食材はたくさんある。美那によるとご飯は昼に炊いた残りだけど、そこは我慢してもらおう。それにさすがにちょっとかったるいし、肉野菜炒め程度にするか。豆腐があるから、味噌汁はいけるな。
アゴ出汁のパッケージを水を張った鍋に入れて、一番弱い火でゆっくりと煮出す。
「何にするの?」
「簡単に肉野菜炒めと豆腐の味噌汁かな」
「キャベツと玉ねぎとニンジン? あ、ブロッコリーもあったよ」
「お、いいね。有里子さんもいるし、あと一品くらいなんかできるかな」
「キュウリとトマトと紫蘇のサラダとか?」
「おまえ、それやってくれる?」
「うん」
「じゃ、俺もちょっとシャワーを浴びてきていいか?」
「うん。その間に材料を用意しておく」
「ああ、頼んだ」
10分くらいでシャワーから戻ると、美那は炒め物用の野菜を切っておいてくれた。
まずは冷蔵庫から豚コマを取り出して、中華鍋で火を通しながら塩と胡椒で下味をつけて一度取り出す。空いた中華鍋に玉ねぎ、ニンジンの順に投入。時間もないし、ブロッコリーは電子レンジで軽く熱を入れておく。玉ねぎとニンジンにほどよく火が入ったところで強火にして、豚肉とキャベツを入れる。さらにブロッコリーを加えて、塩と胡椒で全体に味をつけて、最後に料理酒と醤油を軽く廻し入れる。
味噌汁はその合間に完成させる。
傍らでは美那がサラダを作っている。冷蔵庫にはイタリアンドレッシングしかないから、お酢とごま油とサラダ油、塩・胡椒と醤油で簡単に和風ドレッシングを作る。
「すごい。ドレッシングもつくるんだ」
「このフラスコみたいな容器で、分量を計って、蓋して混ぜるだけだから、簡単じゃん」
「リユと結婚する人は幸せだなぁ。さっと料理作ってくれちゃうもんね」
「いや、俺だって毎日やるのはイヤだからな。レパートリーだってそんなに豊富じゃないし」
美那がかーちゃん達に声をかけて、食卓の用意をしてくれる。その間に、料理を皿に盛り付ける。有里子さんがいるので、ちょっと面倒だけど、大皿ではなくて、小さめのお皿で一人分ずつ。美那だけなら、完全に大皿だな。
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