カイリーユと山下美那、Z(究極)の夏〜高2のふたりが駆け抜けたアツイ季節の記録〜

百一 里優

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第1章

1-14 ライディングスクールで対戦相手?(2)

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「え、もしかして、3x3スリー・エックス・スリー?」
 タナカさんが驚いた顔をする。
「はい」
「あのストリートでやるやつ?」と、イトウさん。
「まあ、それに近いものです」と、タナカさんが答える。
「ストリートは3on3スリー・オン・スリーって呼ばれてますけど、3x3という正式競技ができたんですよ。少しルールも違います。東京オリンピックでも正式種目になりました」
「詳しいんですね」と、俺。
「僕もやってるから」と、タナカさん。
「そうなんですか!」
 おお、こんなところに同士がいるとは。
 同士って、俺はまだ昨日初めてコートに立った超初心者だったな……。すっかり美那ワールドに巻き込まれちまっている。
「チームとかに所属してるの?」
「まあ、昨日、チームが結成されたばかりで……」
「お、そうなんだ。あ、ごめんね、イトウさん、の講習会での話題で盛り上がっちゃって」
 さすが、大人だ。気遣いだ。
「いえ、いいです。俺も興味ありますから」
 イトウさんも大人だ。それとも俺がガキなだけなのか?
「僕は会社の同好会でやっててさ。森本君たちは、どの辺で練習とかしてるの?」
「まだ昨日が初回だったんですけど、新横浜辺りのコートを借りました」
「じゃあ、けっこう近いね。うちの会社は川崎市でさ、会社の体育館が敷地内にあって、週2とか3のペースで昼休みとか仕事の後とかやってるんだ」
「へー、いいですね」
 俺も早く練習場所を見つけないとなぁ。いつまでたってもうまくなれん。
「森本君のチームはどのくらいのレベルなの? 全員、初心者?」
「いえ。4人だけのチームで、バスケ経験者ふたり、初心者ふたりです。もうひとりの初心者はバレーボールをやっていた人でジャンプ力が半端なくて、戦力になりそうですけど、僕なんかまだドリブルも下手で」
「そうか。でもバイクの上達を見ると、バスケもすぐ上手くなりそうだな。試合とかはしないの? まだ結成したばかりで、そこまでは考えてないか」
 なんだ、この展開。まさか、試合したいとか?
「無謀にも9月の大会にすでにエントリーしてて、いま練習試合の相手を探しているところですけど……」
 と、俺は恐る恐る言ってみる。
「それはそれは。よかったら、今度、試合しない? うちも新入部員が入ったし、対外試合する相手を探してたんだ。メンバー同士とか、いつも同じチームとだけとやりあってても、刺激が少ないから。うちは10人以上いるし、ほどよいレベルで構成できると思うんだ。どうかな? 休日なら会社に申請すれば、社外の人も一緒に体育館を使えるし」
「もしあれだったら、チームの代表と話してもらえませんか? 僕は一番下っ端なんで……」
「もちろん。いつ連絡しようか? 連絡先を教えてもらえる?」
「つながるかわかんないですけど、いま、電話してみましょうか?」
「ほんと? 善は急げっていうからね」
「じゃあ。イトウさん、すいません」
 俺もちょっと大人の気遣い。
 イトウさんが手を上げて、応えてくれる。
 昨日教えてもらったオツさんの番号に電話をしてみる。
 まさか、ナオさんとベッドの中、とかないよな?
 そうか、門限があるから、ナオさんは女子寮に帰ってるか。
「あの、森本ですけど」
「モリモト? あ、リユか」
「ああ、はい」
「どうした。まさか、辞めるとかじゃないよな」
 えらくドスの効いた声だ。
 機嫌悪いとか?
「違いますよ。今朝だってドリブルの練習しましたから。それより、今、バイクの講習会に来てるんですけど、練習試合をしたいという人がいて……」
「あ? なんでバイクの講習会なんて行ってるんだ? そうか、バイクを買ったんだったっけ? なんでバイクの講習会でバスケの練習試合なんだ? すまん、いま電話で起こされて、意味がわからん」
「すみません。たまたま昼休みに話をした人が、会社で3x3の同好会をしてる人で、会社が川崎市で、メンバー10人に新入部員もいるし、うちのチームとレベルを合わせたメンバー構成で練習試合できるんじゃないかって……しかも休日なら会社の体育館を使えるそうです!」
 俺は、寝ぼけているオツさんに邪魔されないように、分かっている情報を一気にまくし立てた。
「おまえ、俺をからかってるんじゃないよな?」
「違いますよ。タナカさんっていうんですけど、電話代わってもらってもいいですか?」
「悪い。ちょっとだけ待ってくれ。30秒」
「はい」
 やりとりを聞いていたらしい、タナカさんとイトウさんは笑っている。
 オツさんの声はでかいので、スピーカーにしてなくても聞こえていたのだろう。俺もスマホをちょっと耳から離していたし。
 オツさんを待つ間、俺はタナカさんに状況を説明した。
「待たせたな。じゃあ、代わってくれ」
 俺はタナカさんにスマホを渡した。
 タナカさんの大人な話し方に、オツさんも俺とは違う大人の対応をしているらしい。だからオツさんの話し声はほとんど聞こえてこない。ただタナカさんの穏やかな表情を見るとスムーズに話は進んでいるようだ。
「うまくいくといいな」と、イトウさんが声をかけてくれる。
 会話の終わったタナカさんが、「ありがとう」と、笑顔でスマホを返してくれた。
「もしもし、どうでした?」
「でかした、リユ。前期末試験はいつ終わる?」
「7月9日です」
「何曜日だ?」
「火曜です」
「じゃあ、そのすぐ後あたりで試合を組んでもらおう。ミナには俺からすぐに連絡してみる。じゃあな」
 試験後すぐかよ。
 練習する時間がほとんどないじゃん。
 ま、ナオさんを入れた3人がメインで、俺は控えだろうな。
「じゃあ、森本君、よろしくね。ハナムラさんと連絡を取り合って、日程とかを決めるよ。ありがとう。楽しみにしてるよ」
「はい!」
 なんか燃えてきたぜ。もう何回もコートで練習はできないだろうし、美那に任せきりにしないで、自分でも使えるところを探してみなきゃな。
 何光年も離れているとはいえ、カイリー・アービングという目標ができたからには、絶対にそこに近づいてやる‼︎
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