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番外編・中(ロディ×クロ)
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「えっ! 抱きたいって、そういう意味での抱きたいってこと!?」
「……普通はそれ以外にないだろう」
「普通かなぁ、それ」
改めてベッドの上に座りなおして話をしたところ、なんと、とんでもないことが発覚した。
ロディが言っていた『抱きたい』というのは、その、性的な意味でのコトだったらしい。びっくり。
おれはまさかとてもそんな意味で言われたとは予想だにしていなかったのだが、ロディはむしろ呆れたような顔であった。曰く、恋人同士で普通はそれ以外の意味はないだろうとのことだ。ごもっともである。
なお、おれは先程まで猫の姿になっていたため、人間に戻った今は全裸でベッドに吸わている状態だ。
こうなると、服を着直した方がいいのか、でもそれだとロディを拒否しているように思われるだろうからやめた方がいいのかわからなくなる。とりあえず、迷いに迷って、先ほど放り出したシャツだけを肩に羽織った。
「でも、よかった」
「うん?」
ベッドの上、隣に座ったロディがそんなことを呟いた。
どうしたのかと思い顔を覗き込むと、ロディもまたこちらを見つめ返してきた。ターコイズブルーの澄んだ瞳に、おれの顔が映っている。
「先ほど、獣の姿に変身された時は、かわされたのかと思ったんだ。だから、クロは……俺に抱かれるのは嫌なのかと」
あー……ロディにしてみれば、その気満々でベッドに恋人と行ったら、お相手からいきなりそんな気はないと言われたんだもんな。確かにそれはショックだっただろう。
……ご、ごめんロディ。察しの悪いペットを許して欲しい。
「悪かった、ロディ。まさか、ロディがそんなこと言い出すとは思ってなくて」
「別に、誤解が解けたならいいさ」
と、ロディの腕がするりとおれの腰に回された。そして、手のひらでゆるりと腰骨を撫でられる。
思っても見なかった刺激と、やわらかい皮膚を他人の掌に触れられたことで、ぞくぞくとした刺激が背筋を奔った。
「ちょ、ちょっと待て、ロディ」
「うん、どうした?」
「いや、あの……マ、マジでロディはおれを抱くつもりなの? 本気で?」
思わず、おれの腰を抱いているロディの腕を掴み、その動きを止めてしまう。
すると、ロディが眉を八の字に下げて悲しそうな顔になってしまった。
「……嫌なのか?」
「いや、もちろん嫌ではないんだけどさ!」
ロディの悲しそうな顔に、おれの心がちくちくと罪悪感で苛まれる。
気がつけば、なんだか取り返しのつかないことを口走っていた。でも、おれの言葉でホッとしたように顔を緩ませるロディは大変可愛い。
うー……いや、おれもさぁ、大切なご主人様で恋人のお願いだし、ばばんと気前よく聞いてあげたい気持ちもあるんだけどさぁ。
嫌、というか…………正直、怖い。
つーか、青天の霹靂すぎて、覚悟が全然できてないんですけど。
まさかロディからこんなこと言われるなんて思わないじゃん?
でもさ、覚悟ができないなんて言うのはさ、どうかと思うし。だっておれ、今まで散々ロディにえっちなコトしてきて、さんざんロディを抱いてきたんだぞ?
そのおれが、「逆の立場は怖い」「覚悟ができない」なんてロディに言えないよな……。
ロディだってきっと初めの時は怖くて不安だったに違いない。それでも、おれを信じて、おれのことを好きだって思ってくれたから、委ねてくれたんだ。
だから――おれだって、ロディが望んでくれてるなら同じように応えるべきだ。
と、黙り込んだおれの揺れる心境が伝わったのか、ロディがそっとおれの手を握ってきた。
そして、やさしく手の甲を撫でられる。
「……クロ。俺は別に、君に無理強いしたいわけじゃない。君を我慢させてまでやろうと思ってるわけじゃない」
「我慢とか、そんなのじゃないよ。ただ、その……あー、なんていうか。抱かれた側ってないから、ちょっと、覚悟が決まらないというか……」
情けなさにがりがりと頭を掻きつつ、仕方なしに告白する。
ロディはおれの言葉に初めはきょとんとしていたものの、すぐにおかしそうに顔を綻ばせた。
「ふふっ。そうか……クロでも、そんな風に怖がることもあるんだな」
「なに笑ってるんだよ」
「すまない。あまりにも新鮮だったから、つい」
おかしそうに、そしてとても愛おしそうに目を細めて、おれを見つめてくるターコイズブルーの瞳。
限りなく愛情が込められた視線に、思わずどきりと心臓が高鳴る。
「なぁ、クロ」
再び、ロディの腕がおれの腰に回される。
今度は手が触れるだけではなく、ぐいと力強くロディの方に引き寄せられた。
「その……俺は君ほど上手くないかもしれないが、でも、絶対に怖い思いはさせないし、優しくするから。クロが嫌なら一度きりにすると約束もするから……今回だけ、許してくれないか?」
「……っ」
甘く低い声が、おれを宥めるように優しく囁く。
……はぁ。
ここまで言わせて、断るわけにはいかないよなぁ……。
「分かったよ。その代わり、とびっきり優しくしてくれよな、ご主人様」
「……普通はそれ以外にないだろう」
「普通かなぁ、それ」
改めてベッドの上に座りなおして話をしたところ、なんと、とんでもないことが発覚した。
ロディが言っていた『抱きたい』というのは、その、性的な意味でのコトだったらしい。びっくり。
おれはまさかとてもそんな意味で言われたとは予想だにしていなかったのだが、ロディはむしろ呆れたような顔であった。曰く、恋人同士で普通はそれ以外の意味はないだろうとのことだ。ごもっともである。
なお、おれは先程まで猫の姿になっていたため、人間に戻った今は全裸でベッドに吸わている状態だ。
こうなると、服を着直した方がいいのか、でもそれだとロディを拒否しているように思われるだろうからやめた方がいいのかわからなくなる。とりあえず、迷いに迷って、先ほど放り出したシャツだけを肩に羽織った。
「でも、よかった」
「うん?」
ベッドの上、隣に座ったロディがそんなことを呟いた。
どうしたのかと思い顔を覗き込むと、ロディもまたこちらを見つめ返してきた。ターコイズブルーの澄んだ瞳に、おれの顔が映っている。
「先ほど、獣の姿に変身された時は、かわされたのかと思ったんだ。だから、クロは……俺に抱かれるのは嫌なのかと」
あー……ロディにしてみれば、その気満々でベッドに恋人と行ったら、お相手からいきなりそんな気はないと言われたんだもんな。確かにそれはショックだっただろう。
……ご、ごめんロディ。察しの悪いペットを許して欲しい。
「悪かった、ロディ。まさか、ロディがそんなこと言い出すとは思ってなくて」
「別に、誤解が解けたならいいさ」
と、ロディの腕がするりとおれの腰に回された。そして、手のひらでゆるりと腰骨を撫でられる。
思っても見なかった刺激と、やわらかい皮膚を他人の掌に触れられたことで、ぞくぞくとした刺激が背筋を奔った。
「ちょ、ちょっと待て、ロディ」
「うん、どうした?」
「いや、あの……マ、マジでロディはおれを抱くつもりなの? 本気で?」
思わず、おれの腰を抱いているロディの腕を掴み、その動きを止めてしまう。
すると、ロディが眉を八の字に下げて悲しそうな顔になってしまった。
「……嫌なのか?」
「いや、もちろん嫌ではないんだけどさ!」
ロディの悲しそうな顔に、おれの心がちくちくと罪悪感で苛まれる。
気がつけば、なんだか取り返しのつかないことを口走っていた。でも、おれの言葉でホッとしたように顔を緩ませるロディは大変可愛い。
うー……いや、おれもさぁ、大切なご主人様で恋人のお願いだし、ばばんと気前よく聞いてあげたい気持ちもあるんだけどさぁ。
嫌、というか…………正直、怖い。
つーか、青天の霹靂すぎて、覚悟が全然できてないんですけど。
まさかロディからこんなこと言われるなんて思わないじゃん?
でもさ、覚悟ができないなんて言うのはさ、どうかと思うし。だっておれ、今まで散々ロディにえっちなコトしてきて、さんざんロディを抱いてきたんだぞ?
そのおれが、「逆の立場は怖い」「覚悟ができない」なんてロディに言えないよな……。
ロディだってきっと初めの時は怖くて不安だったに違いない。それでも、おれを信じて、おれのことを好きだって思ってくれたから、委ねてくれたんだ。
だから――おれだって、ロディが望んでくれてるなら同じように応えるべきだ。
と、黙り込んだおれの揺れる心境が伝わったのか、ロディがそっとおれの手を握ってきた。
そして、やさしく手の甲を撫でられる。
「……クロ。俺は別に、君に無理強いしたいわけじゃない。君を我慢させてまでやろうと思ってるわけじゃない」
「我慢とか、そんなのじゃないよ。ただ、その……あー、なんていうか。抱かれた側ってないから、ちょっと、覚悟が決まらないというか……」
情けなさにがりがりと頭を掻きつつ、仕方なしに告白する。
ロディはおれの言葉に初めはきょとんとしていたものの、すぐにおかしそうに顔を綻ばせた。
「ふふっ。そうか……クロでも、そんな風に怖がることもあるんだな」
「なに笑ってるんだよ」
「すまない。あまりにも新鮮だったから、つい」
おかしそうに、そしてとても愛おしそうに目を細めて、おれを見つめてくるターコイズブルーの瞳。
限りなく愛情が込められた視線に、思わずどきりと心臓が高鳴る。
「なぁ、クロ」
再び、ロディの腕がおれの腰に回される。
今度は手が触れるだけではなく、ぐいと力強くロディの方に引き寄せられた。
「その……俺は君ほど上手くないかもしれないが、でも、絶対に怖い思いはさせないし、優しくするから。クロが嫌なら一度きりにすると約束もするから……今回だけ、許してくれないか?」
「……っ」
甘く低い声が、おれを宥めるように優しく囁く。
……はぁ。
ここまで言わせて、断るわけにはいかないよなぁ……。
「分かったよ。その代わり、とびっきり優しくしてくれよな、ご主人様」
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