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終
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「んぅ……」
おれが口付けると、ロディは初めこそは驚いたようだったものの、次第に積極的に応えてくれた。
舌先で口蓋をくすぐると、最初はおずおずと舌を絡ませるだけだったが、次第にロディの方からもおれの口内に舌が這入り込んでくる。
「っ、……クロ……」
キスが終わった後、ロディの顔を見ると、涙の膜に濡れたターコイズブルーの瞳がまるで宝石みたいだった。
そして、頬を赤らめて目を細めているロディは、今まで見たことがないくらいに嬉しそうに顔を綻ばせている。
「……夢みたいだ。クロと俺が両思いだなんて」
「っ、ロディ……」
満ち足りたような顔でおれの肩口に顔を埋めてくるロディ。
腰に腕を回されてぎゅうっと抱きつかれ、そんな風に言われると、なんだか柄にもなくおれも照れ臭くなる。
「そんなに嬉しいこと言ってくれるなら、頑張ってサービスしないとな」
つとめて明るい声を出すと、おれは自分のシャツに手をかけてボタンを外していった。ロディもまた、おれから身体を離すと、自分の着ている洋服に手をかけて脱いでいく。
その途中、服を脱ぎ終わったロディが、ふと何かに思い至ったようにおれの顔を見つめてきた。
「そういえば……」
「うん?」
「クロは、コリン殿の目の前で変身したんだったよな?」
「うん。まぁそうだけど」
脱いだ服を畳んで椅子に置くフリをしながら、ロディの質問に答えていく。
「……だからか? 商会で君に会った時のコリン殿の様子が少しおかしかったのは。顔を赤らめていたり、俺やリアン殿を交えて話している時でもチラチラと君の顔を盗み見たりしていたし……」
「そ、そうか? 全然気が付かなかったな」
いぶかしげなロディに、おれはしれっと平然を装って答える。
だがロディは、そんなおれをじろっとした目つきで睨んだ。
「君、コリン殿に何かしたんじゃないだろうな?」
うっ……!
さすがロディ、意外に鋭い!
で、でも、別にそこまでちょっかいはかけてないからセーフなはず!
そりゃ、少年らしいコリン君の初々しい反応が可愛くって、思わずちょっぴりからかっちゃったけど……!
「コリン君の目の前で変身して、そりゃちょっと会話はしたけど、でもそれぐらいだぜ。まぁ、おれが珍しいモンスターだから、単純な好奇心じゃないのか? おれの存在にこれから慣れていけばすぐに飽きるだろ」
「……そうか。まぁ、それならいいが……」
ロディはあまり納得していないようだったが、この場は引くことにしてくれたらしい。
おれは手を伸ばしてロディの腕を掴むと、身体に腕を回した。
今日はまだロディもおれも風呂に入ってなくて、その上ロディは一日中街の中をかけずり回っていたため、汗の匂いが香った。どこか心地いい匂いに、思わず顔を埋めたくなる。
……フレーメン反応とか起きないよね、おれ? 大丈夫だよね?
「なになに? ロディったら、もしかして、やきもちやいてくれてる?」
「ヤ……! い、いや、俺は、その……」
「嬉しいなー、ロディが嫉妬なんかしてくれるとは」
思わず鼻歌を歌いだしそうなくらいご機嫌になって、ロディにすりすりと頭を擦り付けるおれ。
しかし、ロディは「いや……」と小さく呟いた。
「ん? やきもちとは違ったか?」
「……いや、嫉妬で合っている。ただ、その……別に、今回が初めてじゃない」
今回が初めてじゃない……?
でもおれ、ロディ以外にそこまで親しい人間っていないけど。
「クロがモンスターの姿の時に馴れ馴れしく触れてくる奴とか……正直、今までもそういう感情はあった」
「えっ……」
「あと、君はすごく社交的で明るい男だから……今までも恋人同士になった人間がいたんだろうな、とか。そういうことを考えて、見たことも会ったこともない人間に嫉妬したことさえある」
言葉を紡ぐ度に、ロディの声はどんどん小さくなっていって、もごもごと口もごっていった。
そして、それと比例してどんどんと顔は真っ赤に染まっていく。最後の言葉を言い終わる頃には、顔中どころかうなじまで真っ赤になっていた。
「す、すまない。君だってこんなこと言われても、どうしようもないよな」
「そんなことない。ロディが自分の気持ちをちゃんと話してくれて、すごく嬉しい」
林檎のようになった頬に顔をよせ、ちゅっと音を立ててキスをすると、ロディがおずおずとおれと視線を合わせた。
「でも、そんなにやきもちばっかりしてると、ロディが疲れるよな」
「……っ……」
「だからさ、嫉妬なんかしなくていいように、今日は思いっきりセックスしようぜ」
「なっ……ぅわっ!」
飛びつくように抱きつくと、ロディはバランスを崩してベッドの上に倒れた。
仰向けになった身体の上にのしかかると、殊更、汗の香りや体臭を強く感じた。
「っ、クロ……っ」
「こっちに触るのは初めてだな」
うきうきとした気分で、おれはロディの胸に手を伸ばす。
今までロディに触れた時には、治療という名目であったのでこちらには触れてこなかった。
でも、今日は違う。これからは違うのだ。
「ぁ、クロっ……そんなとこ……」
ロディの胸板はしっかりと筋肉がついているが、手に吸い付くような柔らかさと弾力がある。
多分、数ヶ月ほど冒険者としての仕事をしていなかったことで筋肉が少し落ちてしまっているからだろう。それが逆に、筋肉の硬さと、脂肪の柔らかさを同居させることになっていて、なんとも言えない触り心地だった。
「でも、ここは触ってもらえて嬉しそうだぞ」
「ッ……そ、そんな風な言い方をするなっ、んぅッ……!」
おれが指先で胸の上の乳首をつつくと、ロディが眉をしかめてびくりと身体を震わせた。
ロディの乳首は、今までの愛撫とキスのおかげでか、すっかり尖りきっている。
右の乳首は人差し指でつつくように、左の乳首は指の腹で頭を撫でるように触っていくと、ロディがもぞもぞと太腿をすり合わせて、涙目でおれを見上げた。
「ぁ、クロっ……そこ、何か変だ……ふっ、ぁ」
「気持ちいいだろ? 慣れればもっと良くなるから、これからも触ってあげる」
「ンんッ、あっ……!」
ロディの乳首は、つつかれるよりも指の腹でやんわりと撫でられる方が好きなようで、左の方がより硬く尖りきってきた。
「こうやって触られる方が好きなんだ、ロディ」
「っ、ぁ、そこばっかり、触らないでくれっ……」
そう言って、涙目で顔を真っ赤にして、懇願するようにおれを見上げてくるロディ。
その顔を見下ろしていると、背筋にぞくぞくとしたものが奔り抜けた。
「クロっ……」
「うん?」
両方の乳首を指先でくりくりと弄り続けていると、再びロディが懇願するようにおれを見上げてきた。
「っ……本当に、あまり、そっちばっかり触らないでくれ……俺だけ先に達してしまいそうだ……」
「別にイってもいいぞ? おれとしては男冥利に尽きるし」
おれの手首をやんわりと掴んでくるロディに、いったん手の動きを止める。
しまった、ちょっとやり過ぎただろうか?
「き、君に触られるのが嫌なわけではないんだ……ただ、その、せっかく君と初めて身体を重ねられるんだから、ちゃんと君とつながってから……その……」
しかし、その後の言葉は続かなかった。多分、恥ずかしくなったのだろう。
もごもごと口ごもってしまったロディに、おれは笑いながら、頬に指を滑らせる。
あー、本当に可愛いなぁ、うちのご主人様は!
先程、ロディはおれの周囲の人間に嫉妬しているなんて可愛いことを言ってくれていたけど、おれだって同じだ。例えば、彼がかつてパーティーを抜けるきっかけになった、詐欺女。
ロディは具体的なことは言ってなかったものの、彼女との間に肉体関係があったのは間違いないだろう。
でも、きっとその詐欺女は、ロディのこういう超絶に可愛い性格や表情は知らなかったに違いない。
「ロディは可愛いなぁ、もう」
「っ、ん……」
手の平で滑らかな頬を撫でると、ロディは気持ちよさそうに目を細めた。
「じゃあ、お言葉に甘えてこっちを触らせてもらおうかな」
「……ああ、頼む」
頬をピンクに染めながら、おれが触りやすいように自ら両足を軽く開いてくれるロディ。
正直、そのいじましい行動におれの方が先に暴発しそうになったが、理性を総動員させて堪える。
「ッ……ふ……」
下半身を見れば、ロディの陰茎は完全でないながらも半分まで勃起していた。治療の効果が出ているようで何よりだ。
おれはロディの足を左手で抱えると、右手の指を後孔に滑らせた。
先日からずっと慣らしていたとはいえ、この後ロディにおれを受け入れてもらうにはもう少し拡げなければいけないだろう。
「ッ、ンッ……あッ!」
潤んだそこに、つぷりと人差し指を埋めるとロディの身体がびくんと跳ねた。
だが、痛かったわけではないらしい。見れば、ロディの陰茎の先端から、一筋の透明な雫が溢れ落ちたところだった。
「まだイイところ触ってないのに、これだけでも気持ちいい?」
「わ、分からない……っ、んっ、ぅ」
連日の治療で、どうやらロディのおりこうさんなそこは、おれの指を快楽を与えてくれるものとして認識してくれたようだ。
いまだ人差し指を一本だけ埋めただけだというのに、きゅうきゅうと肉襞が絡みついて、奥に誘いこむように蠕動する。まるで、おれの指を一刻も早く、快楽を生み出すスイッチへと導くような動きだ。
これなら二本目を差し入れても大丈夫だろうと判断し、人差し指に加えて、中指もつぷつぷと中へ埋める。
「ぁ、くっ、ァっ……!」
「大丈夫か?」
「へ、平気だ……ッ、ふ、ァッ」
シーツを握りしめるロディに、大丈夫かと問いかける。
けれども、ロディは首を振って、おれに微笑んで見せた。快感と苦しさでない交ぜになっているだろうにも関わらず、健気に応えてくれるロディに、胸が愛おしさでいっぱいになる。
ナカに埋めた二本の指をゆっくりと動かしつつ、おれはロディに顔を近づけた。
「……っ、クロ……」
唇が触れた瞬間から、ターコイズブルーの瞳がとろりと潤む。
「ふっ……ん、ぅ……」
ロディの唇に舌を差し入れた瞬間、おれの頭がぐいっと引き寄せられた。
何かと思えば、いつの間にかロディの両腕がおれの首に回り、もっとと言わんばかりにおれの後頭部を掴んで自分の方に引き寄せている。
「ン、ふっ、んむっ……」
先程以上に積極的に……というよりも、今度のキスはロディにほとんどリードされた。
舌を唇ではむはむと食まれ、互いの唾液が泡立つぐらいに舌が絡んでくる。かと思えば、舌先で歯列をなぞられる。
下の体勢のロディの方が苦しいのではないかと思い、途中で顔を離そうとしたのだが、何かを勘違いされたのかおれの後頭部をがしりと掴むロディの手の力がますます強くなり、離すどころか一ミリも頭を動かせなくなった。
「はっ……ロディ、ずいぶん積極的だ、な」
正直、Bランク冒険者のロディと、底辺ランクモンスターのおれとでは、肺活量が段違いだ。
なので、キスが終わった頃にはおれの方が息を荒げている有り様だった。
ロディは何が嬉しいのか、そんなおれを見て満足そうににっこりと微笑む。
「ふふっ……初めて君をリードできたな」
「そう? おれはいつもロディの後について回ってるんだけどな」
「モンスターの姿の時は例外だろう」
いまだに息は苦しいものの、良いこともあった。
キスに没頭していたおかげで、ロディはあまり後孔の痛みは感じなかったようである。おかげ様で、ようやくそこはおれのモノを受け入れても裂けないくらいにほぐすことが出来た。
身体をゆっくりと起こすと、いつの間にか、自分の身体がだいぶ汗ばんでいたことに気がついた。空気に冷やされると、今までどれだけロディと密着していたのかを思い知らされるようだった。それと同時に、早く彼と繋がりたいという気持ちが胸の奥から湧き上がる。
熱に急き立てられるようにして、頭をもたげていた自分の陰茎を掴むと、数度ゆるく扱いてから、泥濘んだ沼のようになっている後孔にぴたりと押し当てた。
「……んっ……」
「力抜いて、ゆっくりと息してろよ?」
「っ、分かった……」
素直にこくこくと頷くロディ。その顔には、怯えと期待が半分ずつ浮かんでいる。
怯えについては、やはりこんな質量のものはまだ受け入れたことがないからだろう。けれど、さすがのおれもこれ以上は我慢してやれない。
「っ、く、ぁ……ッ!」
ずぷりとロディのナカを突き入れた瞬間、ロディが堪えきれない苦しげな声を上げた。
「ぁ、クロっ、クロっ……っ」
「だ、大丈夫か? やめるなら、おれは別に……」
「い、いい。やめないでくれ……大丈夫だから」
思わずおれの方があわあわとパニックになってしまったが、ロディはゆっくりと首を横に振った。
自分の方が苦しいだろうに、おれに向かって微笑んでみせすらする。
「クロ、頼む……俺は大丈夫だから……それよりも、もう待ちきれな……んぁっ!」
「っ、分かった……! じゃあ、おれも加減しないからな」
ロディのその言葉で、おれもいよいよ覚悟が決まった。
腰を動かし、先端まで埋まっていた陰茎を押し進める。ロディの中はさすがにキツかったが、それよりも肉襞の一枚一枚が熱を持ったように蠢き、おれの陰茎に纏わりついてきて、たまらなかった。
「ひ、あぁッ……!」
「はっ……! 大丈夫か、ロディ?」
「っ、俺は、大丈夫……それよりクロは、平気か? すごく苦しそうだ……」
「おれは大丈夫。ロディのナカが気持ちよすぎて我慢してるだけだから」
そう言って笑ってみせると、ロディも安心したように微笑んでくれた。
……ったく、こんな状況でおれのことを心配してどうするんだよ。
身体を屈めて、ロディの唇にそっと重ねるだけのキスをする。
そして、おれは陰茎を一度浅い場所まで引き抜いてから、再び根本まで埋めるようにして腰を打ち付け始めた。
陰茎を中に戻す時は、カリ首や亀頭の部分でごりごりとナカの前立腺を削るようにしてやれば、ロディがびくりと大きく身体をしならせた。
「ぁ、そこッ……! ひゃ、ぁ、あァッ!」
肉と肉のぶつかり合う音が部屋に響き始める。
前立腺をおれの陰茎でがつがつと叩かれるという未知の刺激は、ナカで味わう快楽に慣らされ始めたロディの身体にはたまらなかったらしく、ロディの喉からはすぐに甲高い矯正が溢れた。
見れば、ロディの陰茎はすっかり勃起して、先端からはしとどに透明な先走りが垂れている。
「あ、ァっ……! クロっ、クロぉっ……!」
「本当に可愛いよ、ロディ。大好きだ」
「ん、ぁっ……なら、ずっと、俺と一緒にいてくれるか……っ?」
「うん、約束する。おれは何があってもずっとロディと一緒にいる。ロディが嫌だって言っても、もう離れてなんかやらないからな……っ」
「クロっ……」
おれの言葉に、ロディはとてもへにゃりと微笑んだ。
あんまりにも幸せそうに笑うロディに、おれはゴクリと生唾を飲み込む。ロディの胎内に埋めた自分の陰茎がどくんと脈打つのが分かった。
たまらず、おれは陰茎を引き抜くと、一気にそれをロディのナカに叩きつけた。いっそ暴力的とも言えるほどの勢いで前立腺を叩かれたロディの足先がぴんと伸びる。
「ぁ、あぁ……っ! クロっ……!」
ロディの腰をわし掴み、最奥まで何度も腰を打ち付ける。
快楽に喘ぐロディをとてもたまらなかったが、残念ながらおれも彼もこれ以上は限界だろう。
最後に、結腸をノックするように、陰茎でごつんと最奥を突くと、ロディはもはや悲鳴に近い喘ぎ声をあげた。
「ぁ、あ、ぁああッ……!」
一番深いところで、陰茎から白濁液をぶちまけた。
同時に、ロディの陰茎からもどぴゅりと勢いよく白濁液が吐き出される。
「っ……ん……」
しばらく快楽の余韻に浸った後、ゆっくりとロディの胎内から陰茎を引き抜くと、それに合わせておれの吐き出した白濁液がどぷりと後孔から溢れ出てきた。
それを見届けると、おれはそのままロディの身体の上にどさりと覆いかぶさった。
久しぶりの他人とのセックスで、しかもこんなに濃厚な交わりともくれば、さすがに身体が疲れた。しかも、今日は誘拐騒ぎだのと色々あったばかりなのだ。
ロディはおれの身体を受け止めると、身体の位置を変えて胸元におれを抱き寄せてくれた。ロディの二の腕に頭を預ける体勢だ。先程の胸と同じように、腕枕もまた大変心地よい感触だった。ぜひこれからもやってもらいたい。
「なぁ、ロディ」
「うん……?」
ロディもおれ以上に疲れたのだろう。
肩で息をしつつ、あまり力ない声でおれに応える。
「ロディの勃起不全も完治したみたいだな、おめでとう」
「ああ……そういえば、そうだな」
それどころじゃなかったよ、と言ってロディは苦笑いを浮かべた。光栄の至りだ。
「なぁ、ロディ」
「うん……?」
「ちょっと手、貸して」
おれのおねだりに、ロディは不思議そうな顔をしつつも、大人しくおれに右手を差し出してくれた。
ロディの右手を眼の前にしたおれは、しばらくしげしげとその掌を眺めた後で、手の平にそっと口づける。
「ふふっ、くすぐったいぞ……どうかしたのか?」
「ううん。ただ、ロディが好きだなって思っただけ」
ロディの手は、おれが彼の身体で一番好きな部位だ。
この世界で、一番最初におれに手を差し伸べてくれたロディ。
「……さっきはけっこう勢いで言ったけどさ……これから、もしかすると仕事や人間関係で、おれはまたロディの負担になるかもしれない。でも……それでも、おれはロディの傍にいたいんだ。本当にいいのか?」
ロディの掌からそっと唇を離して、静かに語りかける。
すると、おれの頬にあたたかいものが触れた。見れば、ロディの手がおれの頬を包み込むように触れていた。
「初めから言ってるだろう? それは俺の台詞だ。俺の方が君の傍にいたくて、君を傍に置いておきたいんだ。それにどんな人間と付き合っても苦労はするさ。以前の都市でそれは嫌というほど思い知った」
「あはは、そうだったな」
ロディの冗談に、思わず声を出して笑ってしまった。
「だから、大丈夫だ。俺も困った時はクロに頼る。だから、君も俺に頼ってくれ。君に頼られる俺になれるよう、これから頑張っていくから」
「……うん、ありがとう」
……そうだ。結局のところ、どうあってもおれ達にはこれから、様々な問題が降り掛かってくるだろう。
でも、あの時、ロディに助けられたからおれがここにいて、おれがロディを助けたからロディはここにいるんだ。
だから何が起きたって、また最初の通りにやればいいだけだ。二人で、お互いを助け合っていく。そう考えると、簡単なことじゃないか。
うむうむ。やっぱり、おれ達はお似合いのカップルだな。
こう、鍋蓋に綴じ蓋的な感じで。
「よし! そうと決まれば、もうワンラウンドくらいしようか!」
「何故そうなる!?」
「だって、ロディはおれのこと助けてくれるって言っただろー。こんなに可愛いロディを前にしてるんだから、せっかくだしもう一回くらいヤりたい」
「そ、それとこれとは話が違う!」
慌てた様子でおれを押しのけようとするロディ。
そんなロディの身体にのしかかり、その唇にキスをしようと覆いかぶさった時――頭の中で、明るい女性の声が響いた。
『――おめでとうございます! 善行・児童誘拐防止における功徳ポイントが300ポイント付与されました。今週より善行推奨キャンペーン第二弾を開催しておりますため、追加のスキルを取得できますが、いかがなさいますか?』
「…………は?」
……いや、あの。
様々な問題が降り掛かってくるだろうとは言ったけどさ、こんなに今すぐ?
おれが口付けると、ロディは初めこそは驚いたようだったものの、次第に積極的に応えてくれた。
舌先で口蓋をくすぐると、最初はおずおずと舌を絡ませるだけだったが、次第にロディの方からもおれの口内に舌が這入り込んでくる。
「っ、……クロ……」
キスが終わった後、ロディの顔を見ると、涙の膜に濡れたターコイズブルーの瞳がまるで宝石みたいだった。
そして、頬を赤らめて目を細めているロディは、今まで見たことがないくらいに嬉しそうに顔を綻ばせている。
「……夢みたいだ。クロと俺が両思いだなんて」
「っ、ロディ……」
満ち足りたような顔でおれの肩口に顔を埋めてくるロディ。
腰に腕を回されてぎゅうっと抱きつかれ、そんな風に言われると、なんだか柄にもなくおれも照れ臭くなる。
「そんなに嬉しいこと言ってくれるなら、頑張ってサービスしないとな」
つとめて明るい声を出すと、おれは自分のシャツに手をかけてボタンを外していった。ロディもまた、おれから身体を離すと、自分の着ている洋服に手をかけて脱いでいく。
その途中、服を脱ぎ終わったロディが、ふと何かに思い至ったようにおれの顔を見つめてきた。
「そういえば……」
「うん?」
「クロは、コリン殿の目の前で変身したんだったよな?」
「うん。まぁそうだけど」
脱いだ服を畳んで椅子に置くフリをしながら、ロディの質問に答えていく。
「……だからか? 商会で君に会った時のコリン殿の様子が少しおかしかったのは。顔を赤らめていたり、俺やリアン殿を交えて話している時でもチラチラと君の顔を盗み見たりしていたし……」
「そ、そうか? 全然気が付かなかったな」
いぶかしげなロディに、おれはしれっと平然を装って答える。
だがロディは、そんなおれをじろっとした目つきで睨んだ。
「君、コリン殿に何かしたんじゃないだろうな?」
うっ……!
さすがロディ、意外に鋭い!
で、でも、別にそこまでちょっかいはかけてないからセーフなはず!
そりゃ、少年らしいコリン君の初々しい反応が可愛くって、思わずちょっぴりからかっちゃったけど……!
「コリン君の目の前で変身して、そりゃちょっと会話はしたけど、でもそれぐらいだぜ。まぁ、おれが珍しいモンスターだから、単純な好奇心じゃないのか? おれの存在にこれから慣れていけばすぐに飽きるだろ」
「……そうか。まぁ、それならいいが……」
ロディはあまり納得していないようだったが、この場は引くことにしてくれたらしい。
おれは手を伸ばしてロディの腕を掴むと、身体に腕を回した。
今日はまだロディもおれも風呂に入ってなくて、その上ロディは一日中街の中をかけずり回っていたため、汗の匂いが香った。どこか心地いい匂いに、思わず顔を埋めたくなる。
……フレーメン反応とか起きないよね、おれ? 大丈夫だよね?
「なになに? ロディったら、もしかして、やきもちやいてくれてる?」
「ヤ……! い、いや、俺は、その……」
「嬉しいなー、ロディが嫉妬なんかしてくれるとは」
思わず鼻歌を歌いだしそうなくらいご機嫌になって、ロディにすりすりと頭を擦り付けるおれ。
しかし、ロディは「いや……」と小さく呟いた。
「ん? やきもちとは違ったか?」
「……いや、嫉妬で合っている。ただ、その……別に、今回が初めてじゃない」
今回が初めてじゃない……?
でもおれ、ロディ以外にそこまで親しい人間っていないけど。
「クロがモンスターの姿の時に馴れ馴れしく触れてくる奴とか……正直、今までもそういう感情はあった」
「えっ……」
「あと、君はすごく社交的で明るい男だから……今までも恋人同士になった人間がいたんだろうな、とか。そういうことを考えて、見たことも会ったこともない人間に嫉妬したことさえある」
言葉を紡ぐ度に、ロディの声はどんどん小さくなっていって、もごもごと口もごっていった。
そして、それと比例してどんどんと顔は真っ赤に染まっていく。最後の言葉を言い終わる頃には、顔中どころかうなじまで真っ赤になっていた。
「す、すまない。君だってこんなこと言われても、どうしようもないよな」
「そんなことない。ロディが自分の気持ちをちゃんと話してくれて、すごく嬉しい」
林檎のようになった頬に顔をよせ、ちゅっと音を立ててキスをすると、ロディがおずおずとおれと視線を合わせた。
「でも、そんなにやきもちばっかりしてると、ロディが疲れるよな」
「……っ……」
「だからさ、嫉妬なんかしなくていいように、今日は思いっきりセックスしようぜ」
「なっ……ぅわっ!」
飛びつくように抱きつくと、ロディはバランスを崩してベッドの上に倒れた。
仰向けになった身体の上にのしかかると、殊更、汗の香りや体臭を強く感じた。
「っ、クロ……っ」
「こっちに触るのは初めてだな」
うきうきとした気分で、おれはロディの胸に手を伸ばす。
今までロディに触れた時には、治療という名目であったのでこちらには触れてこなかった。
でも、今日は違う。これからは違うのだ。
「ぁ、クロっ……そんなとこ……」
ロディの胸板はしっかりと筋肉がついているが、手に吸い付くような柔らかさと弾力がある。
多分、数ヶ月ほど冒険者としての仕事をしていなかったことで筋肉が少し落ちてしまっているからだろう。それが逆に、筋肉の硬さと、脂肪の柔らかさを同居させることになっていて、なんとも言えない触り心地だった。
「でも、ここは触ってもらえて嬉しそうだぞ」
「ッ……そ、そんな風な言い方をするなっ、んぅッ……!」
おれが指先で胸の上の乳首をつつくと、ロディが眉をしかめてびくりと身体を震わせた。
ロディの乳首は、今までの愛撫とキスのおかげでか、すっかり尖りきっている。
右の乳首は人差し指でつつくように、左の乳首は指の腹で頭を撫でるように触っていくと、ロディがもぞもぞと太腿をすり合わせて、涙目でおれを見上げた。
「ぁ、クロっ……そこ、何か変だ……ふっ、ぁ」
「気持ちいいだろ? 慣れればもっと良くなるから、これからも触ってあげる」
「ンんッ、あっ……!」
ロディの乳首は、つつかれるよりも指の腹でやんわりと撫でられる方が好きなようで、左の方がより硬く尖りきってきた。
「こうやって触られる方が好きなんだ、ロディ」
「っ、ぁ、そこばっかり、触らないでくれっ……」
そう言って、涙目で顔を真っ赤にして、懇願するようにおれを見上げてくるロディ。
その顔を見下ろしていると、背筋にぞくぞくとしたものが奔り抜けた。
「クロっ……」
「うん?」
両方の乳首を指先でくりくりと弄り続けていると、再びロディが懇願するようにおれを見上げてきた。
「っ……本当に、あまり、そっちばっかり触らないでくれ……俺だけ先に達してしまいそうだ……」
「別にイってもいいぞ? おれとしては男冥利に尽きるし」
おれの手首をやんわりと掴んでくるロディに、いったん手の動きを止める。
しまった、ちょっとやり過ぎただろうか?
「き、君に触られるのが嫌なわけではないんだ……ただ、その、せっかく君と初めて身体を重ねられるんだから、ちゃんと君とつながってから……その……」
しかし、その後の言葉は続かなかった。多分、恥ずかしくなったのだろう。
もごもごと口ごもってしまったロディに、おれは笑いながら、頬に指を滑らせる。
あー、本当に可愛いなぁ、うちのご主人様は!
先程、ロディはおれの周囲の人間に嫉妬しているなんて可愛いことを言ってくれていたけど、おれだって同じだ。例えば、彼がかつてパーティーを抜けるきっかけになった、詐欺女。
ロディは具体的なことは言ってなかったものの、彼女との間に肉体関係があったのは間違いないだろう。
でも、きっとその詐欺女は、ロディのこういう超絶に可愛い性格や表情は知らなかったに違いない。
「ロディは可愛いなぁ、もう」
「っ、ん……」
手の平で滑らかな頬を撫でると、ロディは気持ちよさそうに目を細めた。
「じゃあ、お言葉に甘えてこっちを触らせてもらおうかな」
「……ああ、頼む」
頬をピンクに染めながら、おれが触りやすいように自ら両足を軽く開いてくれるロディ。
正直、そのいじましい行動におれの方が先に暴発しそうになったが、理性を総動員させて堪える。
「ッ……ふ……」
下半身を見れば、ロディの陰茎は完全でないながらも半分まで勃起していた。治療の効果が出ているようで何よりだ。
おれはロディの足を左手で抱えると、右手の指を後孔に滑らせた。
先日からずっと慣らしていたとはいえ、この後ロディにおれを受け入れてもらうにはもう少し拡げなければいけないだろう。
「ッ、ンッ……あッ!」
潤んだそこに、つぷりと人差し指を埋めるとロディの身体がびくんと跳ねた。
だが、痛かったわけではないらしい。見れば、ロディの陰茎の先端から、一筋の透明な雫が溢れ落ちたところだった。
「まだイイところ触ってないのに、これだけでも気持ちいい?」
「わ、分からない……っ、んっ、ぅ」
連日の治療で、どうやらロディのおりこうさんなそこは、おれの指を快楽を与えてくれるものとして認識してくれたようだ。
いまだ人差し指を一本だけ埋めただけだというのに、きゅうきゅうと肉襞が絡みついて、奥に誘いこむように蠕動する。まるで、おれの指を一刻も早く、快楽を生み出すスイッチへと導くような動きだ。
これなら二本目を差し入れても大丈夫だろうと判断し、人差し指に加えて、中指もつぷつぷと中へ埋める。
「ぁ、くっ、ァっ……!」
「大丈夫か?」
「へ、平気だ……ッ、ふ、ァッ」
シーツを握りしめるロディに、大丈夫かと問いかける。
けれども、ロディは首を振って、おれに微笑んで見せた。快感と苦しさでない交ぜになっているだろうにも関わらず、健気に応えてくれるロディに、胸が愛おしさでいっぱいになる。
ナカに埋めた二本の指をゆっくりと動かしつつ、おれはロディに顔を近づけた。
「……っ、クロ……」
唇が触れた瞬間から、ターコイズブルーの瞳がとろりと潤む。
「ふっ……ん、ぅ……」
ロディの唇に舌を差し入れた瞬間、おれの頭がぐいっと引き寄せられた。
何かと思えば、いつの間にかロディの両腕がおれの首に回り、もっとと言わんばかりにおれの後頭部を掴んで自分の方に引き寄せている。
「ン、ふっ、んむっ……」
先程以上に積極的に……というよりも、今度のキスはロディにほとんどリードされた。
舌を唇ではむはむと食まれ、互いの唾液が泡立つぐらいに舌が絡んでくる。かと思えば、舌先で歯列をなぞられる。
下の体勢のロディの方が苦しいのではないかと思い、途中で顔を離そうとしたのだが、何かを勘違いされたのかおれの後頭部をがしりと掴むロディの手の力がますます強くなり、離すどころか一ミリも頭を動かせなくなった。
「はっ……ロディ、ずいぶん積極的だ、な」
正直、Bランク冒険者のロディと、底辺ランクモンスターのおれとでは、肺活量が段違いだ。
なので、キスが終わった頃にはおれの方が息を荒げている有り様だった。
ロディは何が嬉しいのか、そんなおれを見て満足そうににっこりと微笑む。
「ふふっ……初めて君をリードできたな」
「そう? おれはいつもロディの後について回ってるんだけどな」
「モンスターの姿の時は例外だろう」
いまだに息は苦しいものの、良いこともあった。
キスに没頭していたおかげで、ロディはあまり後孔の痛みは感じなかったようである。おかげ様で、ようやくそこはおれのモノを受け入れても裂けないくらいにほぐすことが出来た。
身体をゆっくりと起こすと、いつの間にか、自分の身体がだいぶ汗ばんでいたことに気がついた。空気に冷やされると、今までどれだけロディと密着していたのかを思い知らされるようだった。それと同時に、早く彼と繋がりたいという気持ちが胸の奥から湧き上がる。
熱に急き立てられるようにして、頭をもたげていた自分の陰茎を掴むと、数度ゆるく扱いてから、泥濘んだ沼のようになっている後孔にぴたりと押し当てた。
「……んっ……」
「力抜いて、ゆっくりと息してろよ?」
「っ、分かった……」
素直にこくこくと頷くロディ。その顔には、怯えと期待が半分ずつ浮かんでいる。
怯えについては、やはりこんな質量のものはまだ受け入れたことがないからだろう。けれど、さすがのおれもこれ以上は我慢してやれない。
「っ、く、ぁ……ッ!」
ずぷりとロディのナカを突き入れた瞬間、ロディが堪えきれない苦しげな声を上げた。
「ぁ、クロっ、クロっ……っ」
「だ、大丈夫か? やめるなら、おれは別に……」
「い、いい。やめないでくれ……大丈夫だから」
思わずおれの方があわあわとパニックになってしまったが、ロディはゆっくりと首を横に振った。
自分の方が苦しいだろうに、おれに向かって微笑んでみせすらする。
「クロ、頼む……俺は大丈夫だから……それよりも、もう待ちきれな……んぁっ!」
「っ、分かった……! じゃあ、おれも加減しないからな」
ロディのその言葉で、おれもいよいよ覚悟が決まった。
腰を動かし、先端まで埋まっていた陰茎を押し進める。ロディの中はさすがにキツかったが、それよりも肉襞の一枚一枚が熱を持ったように蠢き、おれの陰茎に纏わりついてきて、たまらなかった。
「ひ、あぁッ……!」
「はっ……! 大丈夫か、ロディ?」
「っ、俺は、大丈夫……それよりクロは、平気か? すごく苦しそうだ……」
「おれは大丈夫。ロディのナカが気持ちよすぎて我慢してるだけだから」
そう言って笑ってみせると、ロディも安心したように微笑んでくれた。
……ったく、こんな状況でおれのことを心配してどうするんだよ。
身体を屈めて、ロディの唇にそっと重ねるだけのキスをする。
そして、おれは陰茎を一度浅い場所まで引き抜いてから、再び根本まで埋めるようにして腰を打ち付け始めた。
陰茎を中に戻す時は、カリ首や亀頭の部分でごりごりとナカの前立腺を削るようにしてやれば、ロディがびくりと大きく身体をしならせた。
「ぁ、そこッ……! ひゃ、ぁ、あァッ!」
肉と肉のぶつかり合う音が部屋に響き始める。
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「あ、ァっ……! クロっ、クロぉっ……!」
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「ん、ぁっ……なら、ずっと、俺と一緒にいてくれるか……っ?」
「うん、約束する。おれは何があってもずっとロディと一緒にいる。ロディが嫌だって言っても、もう離れてなんかやらないからな……っ」
「クロっ……」
おれの言葉に、ロディはとてもへにゃりと微笑んだ。
あんまりにも幸せそうに笑うロディに、おれはゴクリと生唾を飲み込む。ロディの胎内に埋めた自分の陰茎がどくんと脈打つのが分かった。
たまらず、おれは陰茎を引き抜くと、一気にそれをロディのナカに叩きつけた。いっそ暴力的とも言えるほどの勢いで前立腺を叩かれたロディの足先がぴんと伸びる。
「ぁ、あぁ……っ! クロっ……!」
ロディの腰をわし掴み、最奥まで何度も腰を打ち付ける。
快楽に喘ぐロディをとてもたまらなかったが、残念ながらおれも彼もこれ以上は限界だろう。
最後に、結腸をノックするように、陰茎でごつんと最奥を突くと、ロディはもはや悲鳴に近い喘ぎ声をあげた。
「ぁ、あ、ぁああッ……!」
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同時に、ロディの陰茎からもどぴゅりと勢いよく白濁液が吐き出される。
「っ……ん……」
しばらく快楽の余韻に浸った後、ゆっくりとロディの胎内から陰茎を引き抜くと、それに合わせておれの吐き出した白濁液がどぷりと後孔から溢れ出てきた。
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ロディはおれの身体を受け止めると、身体の位置を変えて胸元におれを抱き寄せてくれた。ロディの二の腕に頭を預ける体勢だ。先程の胸と同じように、腕枕もまた大変心地よい感触だった。ぜひこれからもやってもらいたい。
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「ああ……そういえば、そうだな」
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「なぁ、ロディ」
「うん……?」
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ロディの右手を眼の前にしたおれは、しばらくしげしげとその掌を眺めた後で、手の平にそっと口づける。
「ふふっ、くすぐったいぞ……どうかしたのか?」
「ううん。ただ、ロディが好きだなって思っただけ」
ロディの手は、おれが彼の身体で一番好きな部位だ。
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「……さっきはけっこう勢いで言ったけどさ……これから、もしかすると仕事や人間関係で、おれはまたロディの負担になるかもしれない。でも……それでも、おれはロディの傍にいたいんだ。本当にいいのか?」
ロディの掌からそっと唇を離して、静かに語りかける。
すると、おれの頬にあたたかいものが触れた。見れば、ロディの手がおれの頬を包み込むように触れていた。
「初めから言ってるだろう? それは俺の台詞だ。俺の方が君の傍にいたくて、君を傍に置いておきたいんだ。それにどんな人間と付き合っても苦労はするさ。以前の都市でそれは嫌というほど思い知った」
「あはは、そうだったな」
ロディの冗談に、思わず声を出して笑ってしまった。
「だから、大丈夫だ。俺も困った時はクロに頼る。だから、君も俺に頼ってくれ。君に頼られる俺になれるよう、これから頑張っていくから」
「……うん、ありがとう」
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でも、あの時、ロディに助けられたからおれがここにいて、おれがロディを助けたからロディはここにいるんだ。
だから何が起きたって、また最初の通りにやればいいだけだ。二人で、お互いを助け合っていく。そう考えると、簡単なことじゃないか。
うむうむ。やっぱり、おれ達はお似合いのカップルだな。
こう、鍋蓋に綴じ蓋的な感じで。
「よし! そうと決まれば、もうワンラウンドくらいしようか!」
「何故そうなる!?」
「だって、ロディはおれのこと助けてくれるって言っただろー。こんなに可愛いロディを前にしてるんだから、せっかくだしもう一回くらいヤりたい」
「そ、それとこれとは話が違う!」
慌てた様子でおれを押しのけようとするロディ。
そんなロディの身体にのしかかり、その唇にキスをしようと覆いかぶさった時――頭の中で、明るい女性の声が響いた。
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