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甘
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おれが膝の上にのった状態のままで再び人間体になると、ロディがぎょっとした顔になった。まぁ、突如として全裸の男にのしかかられれば、誰しも多少の驚きは覚えるだろうが。
「おい、クロっ……!」
ロディも鍛えてるとはいえ、いきなり大の男が上にのしかかってきたことでさすがにバランスを崩し、ベッドへ仰向けに倒れる。おれはそんなロディの身体の上に乗ったまま、右手を彼の下腹部に伸ばした。
「ぁ……ッ!」
おれの指先が下腹部よりさらに先にすべると、ロディが身をこわばらせる。狭いベッドがぎしりと軋んだ音を立てた。
しかし、今のおれはそんな耳障りな音も気にならない。もう一度、指先でそこをやわやわと触れる。
「おお、やっぱりロディ、ちょっと反応してるじゃん! よかったなー」
「ク、クロ……そんなに触るな……っ」
まだ完全な勃起にはほど遠いが、そこは確かに緩く反応を見せていた。
おれはロディの部屋着のズボンに片手をすべりこませ、指先で直にそこに触れる。ロディの陰茎はわずかに頭をもたげている程度ではあったが、おれの指が先端に触れるとふるふると震えた。
「っ……んッ……」
しかし、おれの指がいくら触れても、反応はそこまでだった。これ以上の勃起はまだ難しそうだ。
とは言え 、それでもこれは非常に重要な進歩といえよう。こちらの世界に炊飯器があるなら、今からお赤飯でも炊いてあげたい気分だ。
「ク、クロ……今日もするのか? その、昨日みたいな……」
「昨日だって気持ちよかっただろ?」
「っ……」
ロディはいよいよ、顔から蒸気でも噴き出しそうなくらいに真っ赤になった。
このまま、ロディの顔をどれぐらい赤くさせられるかのベスト記録にチャレンジするのも興味があるけれど、とりあえず今日はやめておこう。
おれはロディの下肢を触っていた手をズボンから抜く。そして、逆の手でロディの顔に触れると、手の甲で頬をそっと撫でた。
「でも、昨夜も言った通り、ロディが嫌ならしないぜ。元々は、ロディの治療というか、慣らし運転みたいなものなんだし。ロディが不快なことをやっても元も子もないもんな」
「……嫌、ではないが」
「恥ずかしい?」
ロディは少し逡巡したが、おれの質問にこくりと小さく頷いた。
その様子に、おれはガッツポーズを取りたい気持ちをなんとか堪える。
「君の方は……嫌じゃないのか?」
「嫌なわけないだろ。それどころか、おれは充分に楽しませてもらってるけど」
おどけた仕草で大仰に振る舞ってみせる。
ロディ的には、このおれが嫌々やっているように見えるんだろうか? 昨夜、あんなに目を輝かせていたおれを見ていなかったんだろうか。
しかし、おれの予想とは裏腹に、ロディはまじまじとおれを見つめてきた。
「……てっきり、君は昨日のことを後悔してるのかと思った」
「え?」
「昼間、コリン殿たちにずいぶん甘えていたじゃないか」
あ、甘え……?
……ああ! もしかして猫の姿の時の、冒険者ギルドでのことか?
そういえば、あの時なんだかロディの態度がちょっと冷たい感じだったっけ。トロールが出現したことで有耶無耶になってたけど。
「……俺の相手をするのが、君もいよいよ面倒になったのかと」
「そりゃまた、なんで?」
「君は俺よりも若いし……人当たりもいい。獣の姿の時だって、すぐに誰とでも仲良くなる。俺みたいな奴の所にいるよりは、コリン殿みたいに金も人脈もある人間のところに行った方が、その呪いだって解く手段がすぐに見つかるだろうし……だから、今日コリン殿の所に行ったのは、もしかして彼の所に移りたいからなのかとも少し考えていたんだ」
そう言うと、ロディは片手を上げて自分の目元を腕で覆ってしまった。
えー、なに? ロディはおれが、ロディのこと嫌になったからコリン君に媚び売ってたって思ったってこと?
それは心外な!
だっておれ、コリン君には確かに媚びは売ってたけど。それ以上にロディには甘え甘え状態じゃん? もちろん猫の姿の時だけの話だ。
……うーん……むしろ、これはおれの気持ちや態度が上手く伝わっていないというより、ロディが自分に自信が持てていないのかな?
表面的には平気そうに見えてきたけど、やっぱりロディの心の傷は深いんだな。なんでもないようなちょっとしたことでも、ナーバスになって悩み続ける状態になってしまうんだろう。
おれはロディをなだめるように、そっと優しい声を出した。
「コリン君のところに行ったのは、護衛が急に足りなくなったとか言ってたのを小耳に挟んだからだよ」
……猫耳に挟んだって言葉は聞いたことがないから、この場合は小耳でいいんだよね? 気になったけれど、今、ロディもそんなことを聞かれても困るだろう。
「で、それならロディが一緒に薬草採取に行ければいいじゃんって思って、お二人の架け橋になればと思って近づいただけだよ。話のきっかけ作りで、別にコリン君に首輪を変えたいと思って行ったわけじゃないぞ?」
「……それだけか?」
ロディが顔の上に置いた腕からほんの少し顔を覗かせた。ターコイズブルーの瞳がちらりと見える。
その瞳に、おれは苦笑いを零しながら答えた。
「それだけだよ。というか、昨日も今日もこんなにおれは楽しみながらやってるのに、ロディに一欠片も伝わってなかったことにビックリだ」
「……っ、俺は……」
「でも、それってつまり、もっと楽しんでやっていいことだよね?」
身をかがめて、ロディが自分の顔を隠している腕に、ちゅっと音を立ててキスをする。
ターコイズブルーの瞳が丸く見開かれ、ついで、腕がゆるゆると降ろされた。その顔はこれ以上ないというくらいに真っ赤である。
「……す、すまなかった。おかしなことを言ったな」
「ううん。なんかモヤモヤしていることがあったら、これからも今みたいにちゃんと言って欲しいな」
それにしても、治療行為という名目ばかりか、ロディを不安にさせないためという大義名分まで頂けるとは思わなかったけど。
まったく。こんなにおれを調子に乗らせて、うちのご主人様は一体どうしたいんだ。どうなっても知らないぞー。わりとマジで。
「ロディ、もうちょっとこっち寄ってね」
だんだん体勢がきつくなってきたので、ロディにもっとベッドに寄ってもらう。
ロディは顔を赤くしつつも、おれの指示通りにちゃんとベッド中央に寄ってくれた。そのため、昨日と同じような大勢になった。ロディは仰向けにベッドに寝転がり、おれがその足の間に陣取ってロディを見下ろしている状態だ。
ふと、コリン君の話題にともなっておれは昼間疑問に思っていたことを思い出した。
「そういやコリン君と言えば、昼間話してたのってどういうこと?」
「話?」
「ロットワンダ商会はまだ冒険者チームを持っていない、って言ってたよね? 商会が冒険者チームを持ってるのって珍しいことじゃないのか?」
「ああ……冒険者ギルドではなく、商人ギルドに登録している冒険者の話だ」
「商人ギルドに登録?」
二人の体勢と比べてなんとも色気のない話題だが、こういう話をしている方がロディの気が紛れるだろう。
おれはロディのシャツや足元にひっかかっていたズボンに手をかけつつ、話の続きを促す。
「冒険者ギルドに登録している冒険者と、商人ギルドに登録している冒険者は、仕事の内容が違うんだ……んっ。冒険者ギルドが治安のためのモンスター退治を行っているのに対し、商人ギルドの冒険者は、商隊の護衛や、商会の求める素材採取をやるのが主だな……」
「へぇ、そうなんだ」
「……君は商人の家の出じゃなかったのか?」
あっ、しまった。ロディがいぶかしげにおれを見ている。
そ、そうだった。確かに今の質問は、おれの設定的に不自然だった。
おれは誤魔化すようにロディに笑ってみせ、そして彼の下肢に再び手を伸ばした。
「いや、おれの住んでた所とは勝手が違うみたいだからね」
「ぁっ、クロッ……」
「今日もこっち触ってみるね」
おれは左手でロディの太腿を抱え、反対の手でロディの後孔を指の腹でゆっくりとなぞる。入り口を指先でくすぐるようになぞると、そこはまるでおれの指を招くようにヒクヒクと震えた。
ご招待をお断りする理由はないので、ゆっくりと人差し指を埋めていく。昨日弄ったばかりだからか、そこはまだしっとりとやわらかかった。
「んぅっ……! ぁ、ん、アぁっ……」
人差し指を完全に埋めると、おれは昨日見つけたロディのイイ所を指先でとんとんと叩いた。
そのノックに合わせて、ロディの身体がびくびくと震える。
「ぁ、クロっ……き、昨日もそこ、触ったよな……?」
「そうだよ。ここ、弄ったことない?」
「な、なんか、そこ、おかしな感じがする……っ! 勝手に、その、身体が……」
ロディは上半身を枕に預けて、自分の下半身を信じられないものを見るかのように見ている。
彼の陰茎はまだ完全な勃起にはいたっておらず、先ほどと同様に、頭をゆるくもたげた状態から変わってはいなかった。それでも、その先端からは透明な雫が早くもとぷりと溢れ始めている。
「ここ、昨日も言った通り、前立腺って言ってね。男同士のセックスはここを使うんだよ。気持ちいいだろ?」
「ひゃっ……!」
人差し指でしこりをグリッと潰すと、ロディの口からは押し出されるように声があがった。
「いっ、今の、それっ……ふ、あぁッ!」
「それで、こっちのちょっと奥の部分。こっちがちょうど精嚢の裏側。こっちもたまらないだろ」
「ぁっ、あ、あァッ!」
壁を叩くたびにロディの内腿はびくびくと震え続ける。なんだかまるで、一つの楽器を演奏しているみたいだ。
未知の快楽のためか、ロディのターコイズブルーの瞳から、ぼろぼろと涙が溢れてきた。おれはロディの太腿を抱えていた左手を離すと、身体をかがめて、その涙をぺろりと舐め取る。
うん、しょっぱい。
「ぁ、クロっ……」
「うん?」
身体を起こすと、ロディがすがるようにおれを見上げてきた。
そして、ロディの右手がおずおずとおれに向かって伸ばされる。同時に、ロディの後孔がきゅうきゅうと開いたり締まったりするのを繰り返し、動きを止めていたおれの指を締め付けてくるものだからたまらない。
「……本当、おれのご主人様は可愛いなぁ」
「んっ……ぁ、クロ……」
「うん、大丈夫だからもっと気持ちよくなろうな」
ロディから伸ばされた右手を左手で取り、その指先をぎゅっと握ってやる。
おれがロディの手を左手で握ったため、彼の足を抱えることはできなくなったのだが、そこはロディが自分で太腿を上げてくれた。ただ、自分で自分の秘部を見せつけるような体勢になったため、ロディの顔はオーバーヒートでも起こしそうなぐらいに真っ赤になったけれど。
おれは右手の人差し指をいったん後孔から抜くと、ロディの陰茎からとめどなく零れる先走りにを、今度もまた指にまとわせる。そして、今度は中指と合わせて二本の指をゆっくりと埋めた。
おれ指が前立腺を左右に弾くようにナカで動くと、ロディの下腹部がそれに合わせてびくびくと痙攣した。
「んぁっ! ぁ、ふ……んあァっ……!」
二本の指で前立腺と精嚢を叩き、ノックし、つつき、こねくりまわす。
その度に、ロディの陰茎からはいっそう透明な雫がだらだら溢れた。下腹部の痙攣があまりにも激しい時など、彼の内腿に彼の垂れ下がった陰茎がびたびたと当たるぐらいだった。
「あ、ぁッ、ふぁ、クロっ……そ、それっ……!」
ロディは自分の状態が分かっているのかいないのか、身体をくねらせ、涙をぼろぼろと流しておれの指をぎゅうと握りしめてくる。
あまりにも卑猥な光景に、おれは今日、自分が全裸なのをとてつもなく後悔した。ロディは気づいてないようだが、おれの陰茎も段々と張り詰めだしているのだ。
こうなれば、ロディに気づかれない内に終わらせるしかないようだ。
おれは立て続けに、前立腺のみを指の腹でぐりぐりと押し込んだ。すると、ロディは喉をのけぞらせて、ひときわ大きな声をあげた。
「ぁ、あァ、んあァッ……ぁ、あぁッ!」
おれの指の責め立てに、とうとうロディの身体全体が弓のように大きくしなった。
そして、ナカに埋めているおれの指が痛いぐらいにしめつけられる。だが、昨夜と違うことがあった。ロディの陰茎からは何も出てこなかったのだ。
ただ、透明な先走りを垂れ下がった頭からだらだらと力なく零すだけであった。だが、ロディの反応は完全に絶頂したもののそれである。
……あれ? あ、あれー? おかしいな?
昨日と同じようにロディにところてんで射精してもらうつもりだったんだけど。
……もしかして、最後にちょっと焦って、前立腺だけを触ったのが悪かったかな?
ロディは身体全部が大きく何度もびくびくと痙攣させていたが、ようやく、その動きが静かになった。
反応が落ち着いた頃合いを見計らって、おれはゆっくりとロディの後孔から二本の指を引き抜く。
「ロディ、大丈夫?」
「……クロ……なんだか、その……昨日よりもすごい、身体全体が痺れているみたいなんだが」
おれはシーツで自分の下半身をロディから見えないように隠しながら、はぁはぁと荒い息を零すロディを覗き込む。すると、ロディはぐったりとしながら力ない瞳でおれを見返した。
あー……これはやっぱりあれか。
ところてんではなく、まさかのメスイキをロディにさせてしまうとは。完全な計算違いだ。
「ロディ、大丈夫? 変な感じとかするか?」
「ああ……いや、まだちょっと余韻が抜けていないが、大丈夫だ……」
「なら良かった。今日もこのまま眠っていいよ、あとはおれがやっておくから」
初めての女性的な絶頂を体験したロディの瞼が、ゆっくりと落ちていく。
その瞼が完全に閉ざされると、おれはロディの眦にそっと触れるだけのキスをしてから、ベッドから降りた。
……ふう。とりあえず、今日もロディがこのまま眠ってくれて良かった。
しかし、まさかロディにメスイキをさせてしまうとは……完全に計算が狂った。昨日はところてんで上手くいったのになー。
楽しんでやるとは言ったけど、さすがにこの結果は自分の趣味に走りすぎだ。おれはロディの治療をしたいのであって、彼を快楽の沼に引きずりこみたいわけじゃないし。
でも、ロディのロディもちょっと反応するようになってたしな。これは素晴らしい前進ですよ!
うん。だからまぁ、今日は一歩進んで一歩下がったっていうことで!
…………あれ。それだと前進はしてないな?
「おい、クロっ……!」
ロディも鍛えてるとはいえ、いきなり大の男が上にのしかかってきたことでさすがにバランスを崩し、ベッドへ仰向けに倒れる。おれはそんなロディの身体の上に乗ったまま、右手を彼の下腹部に伸ばした。
「ぁ……ッ!」
おれの指先が下腹部よりさらに先にすべると、ロディが身をこわばらせる。狭いベッドがぎしりと軋んだ音を立てた。
しかし、今のおれはそんな耳障りな音も気にならない。もう一度、指先でそこをやわやわと触れる。
「おお、やっぱりロディ、ちょっと反応してるじゃん! よかったなー」
「ク、クロ……そんなに触るな……っ」
まだ完全な勃起にはほど遠いが、そこは確かに緩く反応を見せていた。
おれはロディの部屋着のズボンに片手をすべりこませ、指先で直にそこに触れる。ロディの陰茎はわずかに頭をもたげている程度ではあったが、おれの指が先端に触れるとふるふると震えた。
「っ……んッ……」
しかし、おれの指がいくら触れても、反応はそこまでだった。これ以上の勃起はまだ難しそうだ。
とは言え 、それでもこれは非常に重要な進歩といえよう。こちらの世界に炊飯器があるなら、今からお赤飯でも炊いてあげたい気分だ。
「ク、クロ……今日もするのか? その、昨日みたいな……」
「昨日だって気持ちよかっただろ?」
「っ……」
ロディはいよいよ、顔から蒸気でも噴き出しそうなくらいに真っ赤になった。
このまま、ロディの顔をどれぐらい赤くさせられるかのベスト記録にチャレンジするのも興味があるけれど、とりあえず今日はやめておこう。
おれはロディの下肢を触っていた手をズボンから抜く。そして、逆の手でロディの顔に触れると、手の甲で頬をそっと撫でた。
「でも、昨夜も言った通り、ロディが嫌ならしないぜ。元々は、ロディの治療というか、慣らし運転みたいなものなんだし。ロディが不快なことをやっても元も子もないもんな」
「……嫌、ではないが」
「恥ずかしい?」
ロディは少し逡巡したが、おれの質問にこくりと小さく頷いた。
その様子に、おれはガッツポーズを取りたい気持ちをなんとか堪える。
「君の方は……嫌じゃないのか?」
「嫌なわけないだろ。それどころか、おれは充分に楽しませてもらってるけど」
おどけた仕草で大仰に振る舞ってみせる。
ロディ的には、このおれが嫌々やっているように見えるんだろうか? 昨夜、あんなに目を輝かせていたおれを見ていなかったんだろうか。
しかし、おれの予想とは裏腹に、ロディはまじまじとおれを見つめてきた。
「……てっきり、君は昨日のことを後悔してるのかと思った」
「え?」
「昼間、コリン殿たちにずいぶん甘えていたじゃないか」
あ、甘え……?
……ああ! もしかして猫の姿の時の、冒険者ギルドでのことか?
そういえば、あの時なんだかロディの態度がちょっと冷たい感じだったっけ。トロールが出現したことで有耶無耶になってたけど。
「……俺の相手をするのが、君もいよいよ面倒になったのかと」
「そりゃまた、なんで?」
「君は俺よりも若いし……人当たりもいい。獣の姿の時だって、すぐに誰とでも仲良くなる。俺みたいな奴の所にいるよりは、コリン殿みたいに金も人脈もある人間のところに行った方が、その呪いだって解く手段がすぐに見つかるだろうし……だから、今日コリン殿の所に行ったのは、もしかして彼の所に移りたいからなのかとも少し考えていたんだ」
そう言うと、ロディは片手を上げて自分の目元を腕で覆ってしまった。
えー、なに? ロディはおれが、ロディのこと嫌になったからコリン君に媚び売ってたって思ったってこと?
それは心外な!
だっておれ、コリン君には確かに媚びは売ってたけど。それ以上にロディには甘え甘え状態じゃん? もちろん猫の姿の時だけの話だ。
……うーん……むしろ、これはおれの気持ちや態度が上手く伝わっていないというより、ロディが自分に自信が持てていないのかな?
表面的には平気そうに見えてきたけど、やっぱりロディの心の傷は深いんだな。なんでもないようなちょっとしたことでも、ナーバスになって悩み続ける状態になってしまうんだろう。
おれはロディをなだめるように、そっと優しい声を出した。
「コリン君のところに行ったのは、護衛が急に足りなくなったとか言ってたのを小耳に挟んだからだよ」
……猫耳に挟んだって言葉は聞いたことがないから、この場合は小耳でいいんだよね? 気になったけれど、今、ロディもそんなことを聞かれても困るだろう。
「で、それならロディが一緒に薬草採取に行ければいいじゃんって思って、お二人の架け橋になればと思って近づいただけだよ。話のきっかけ作りで、別にコリン君に首輪を変えたいと思って行ったわけじゃないぞ?」
「……それだけか?」
ロディが顔の上に置いた腕からほんの少し顔を覗かせた。ターコイズブルーの瞳がちらりと見える。
その瞳に、おれは苦笑いを零しながら答えた。
「それだけだよ。というか、昨日も今日もこんなにおれは楽しみながらやってるのに、ロディに一欠片も伝わってなかったことにビックリだ」
「……っ、俺は……」
「でも、それってつまり、もっと楽しんでやっていいことだよね?」
身をかがめて、ロディが自分の顔を隠している腕に、ちゅっと音を立ててキスをする。
ターコイズブルーの瞳が丸く見開かれ、ついで、腕がゆるゆると降ろされた。その顔はこれ以上ないというくらいに真っ赤である。
「……す、すまなかった。おかしなことを言ったな」
「ううん。なんかモヤモヤしていることがあったら、これからも今みたいにちゃんと言って欲しいな」
それにしても、治療行為という名目ばかりか、ロディを不安にさせないためという大義名分まで頂けるとは思わなかったけど。
まったく。こんなにおれを調子に乗らせて、うちのご主人様は一体どうしたいんだ。どうなっても知らないぞー。わりとマジで。
「ロディ、もうちょっとこっち寄ってね」
だんだん体勢がきつくなってきたので、ロディにもっとベッドに寄ってもらう。
ロディは顔を赤くしつつも、おれの指示通りにちゃんとベッド中央に寄ってくれた。そのため、昨日と同じような大勢になった。ロディは仰向けにベッドに寝転がり、おれがその足の間に陣取ってロディを見下ろしている状態だ。
ふと、コリン君の話題にともなっておれは昼間疑問に思っていたことを思い出した。
「そういやコリン君と言えば、昼間話してたのってどういうこと?」
「話?」
「ロットワンダ商会はまだ冒険者チームを持っていない、って言ってたよね? 商会が冒険者チームを持ってるのって珍しいことじゃないのか?」
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「今日もこっち触ってみるね」
おれは左手でロディの太腿を抱え、反対の手でロディの後孔を指の腹でゆっくりとなぞる。入り口を指先でくすぐるようになぞると、そこはまるでおれの指を招くようにヒクヒクと震えた。
ご招待をお断りする理由はないので、ゆっくりと人差し指を埋めていく。昨日弄ったばかりだからか、そこはまだしっとりとやわらかかった。
「んぅっ……! ぁ、ん、アぁっ……」
人差し指を完全に埋めると、おれは昨日見つけたロディのイイ所を指先でとんとんと叩いた。
そのノックに合わせて、ロディの身体がびくびくと震える。
「ぁ、クロっ……き、昨日もそこ、触ったよな……?」
「そうだよ。ここ、弄ったことない?」
「な、なんか、そこ、おかしな感じがする……っ! 勝手に、その、身体が……」
ロディは上半身を枕に預けて、自分の下半身を信じられないものを見るかのように見ている。
彼の陰茎はまだ完全な勃起にはいたっておらず、先ほどと同様に、頭をゆるくもたげた状態から変わってはいなかった。それでも、その先端からは透明な雫が早くもとぷりと溢れ始めている。
「ここ、昨日も言った通り、前立腺って言ってね。男同士のセックスはここを使うんだよ。気持ちいいだろ?」
「ひゃっ……!」
人差し指でしこりをグリッと潰すと、ロディの口からは押し出されるように声があがった。
「いっ、今の、それっ……ふ、あぁッ!」
「それで、こっちのちょっと奥の部分。こっちがちょうど精嚢の裏側。こっちもたまらないだろ」
「ぁっ、あ、あァッ!」
壁を叩くたびにロディの内腿はびくびくと震え続ける。なんだかまるで、一つの楽器を演奏しているみたいだ。
未知の快楽のためか、ロディのターコイズブルーの瞳から、ぼろぼろと涙が溢れてきた。おれはロディの太腿を抱えていた左手を離すと、身体をかがめて、その涙をぺろりと舐め取る。
うん、しょっぱい。
「ぁ、クロっ……」
「うん?」
身体を起こすと、ロディがすがるようにおれを見上げてきた。
そして、ロディの右手がおずおずとおれに向かって伸ばされる。同時に、ロディの後孔がきゅうきゅうと開いたり締まったりするのを繰り返し、動きを止めていたおれの指を締め付けてくるものだからたまらない。
「……本当、おれのご主人様は可愛いなぁ」
「んっ……ぁ、クロ……」
「うん、大丈夫だからもっと気持ちよくなろうな」
ロディから伸ばされた右手を左手で取り、その指先をぎゅっと握ってやる。
おれがロディの手を左手で握ったため、彼の足を抱えることはできなくなったのだが、そこはロディが自分で太腿を上げてくれた。ただ、自分で自分の秘部を見せつけるような体勢になったため、ロディの顔はオーバーヒートでも起こしそうなぐらいに真っ赤になったけれど。
おれは右手の人差し指をいったん後孔から抜くと、ロディの陰茎からとめどなく零れる先走りにを、今度もまた指にまとわせる。そして、今度は中指と合わせて二本の指をゆっくりと埋めた。
おれ指が前立腺を左右に弾くようにナカで動くと、ロディの下腹部がそれに合わせてびくびくと痙攣した。
「んぁっ! ぁ、ふ……んあァっ……!」
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その度に、ロディの陰茎からはいっそう透明な雫がだらだら溢れた。下腹部の痙攣があまりにも激しい時など、彼の内腿に彼の垂れ下がった陰茎がびたびたと当たるぐらいだった。
「あ、ぁッ、ふぁ、クロっ……そ、それっ……!」
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こうなれば、ロディに気づかれない内に終わらせるしかないようだ。
おれは立て続けに、前立腺のみを指の腹でぐりぐりと押し込んだ。すると、ロディは喉をのけぞらせて、ひときわ大きな声をあげた。
「ぁ、あァ、んあァッ……ぁ、あぁッ!」
おれの指の責め立てに、とうとうロディの身体全体が弓のように大きくしなった。
そして、ナカに埋めているおれの指が痛いぐらいにしめつけられる。だが、昨夜と違うことがあった。ロディの陰茎からは何も出てこなかったのだ。
ただ、透明な先走りを垂れ下がった頭からだらだらと力なく零すだけであった。だが、ロディの反応は完全に絶頂したもののそれである。
……あれ? あ、あれー? おかしいな?
昨日と同じようにロディにところてんで射精してもらうつもりだったんだけど。
……もしかして、最後にちょっと焦って、前立腺だけを触ったのが悪かったかな?
ロディは身体全部が大きく何度もびくびくと痙攣させていたが、ようやく、その動きが静かになった。
反応が落ち着いた頃合いを見計らって、おれはゆっくりとロディの後孔から二本の指を引き抜く。
「ロディ、大丈夫?」
「……クロ……なんだか、その……昨日よりもすごい、身体全体が痺れているみたいなんだが」
おれはシーツで自分の下半身をロディから見えないように隠しながら、はぁはぁと荒い息を零すロディを覗き込む。すると、ロディはぐったりとしながら力ない瞳でおれを見返した。
あー……これはやっぱりあれか。
ところてんではなく、まさかのメスイキをロディにさせてしまうとは。完全な計算違いだ。
「ロディ、大丈夫? 変な感じとかするか?」
「ああ……いや、まだちょっと余韻が抜けていないが、大丈夫だ……」
「なら良かった。今日もこのまま眠っていいよ、あとはおれがやっておくから」
初めての女性的な絶頂を体験したロディの瞼が、ゆっくりと落ちていく。
その瞼が完全に閉ざされると、おれはロディの眦にそっと触れるだけのキスをしてから、ベッドから降りた。
……ふう。とりあえず、今日もロディがこのまま眠ってくれて良かった。
しかし、まさかロディにメスイキをさせてしまうとは……完全に計算が狂った。昨日はところてんで上手くいったのになー。
楽しんでやるとは言ったけど、さすがにこの結果は自分の趣味に走りすぎだ。おれはロディの治療をしたいのであって、彼を快楽の沼に引きずりこみたいわけじゃないし。
でも、ロディのロディもちょっと反応するようになってたしな。これは素晴らしい前進ですよ!
うん。だからまぁ、今日は一歩進んで一歩下がったっていうことで!
…………あれ。それだと前進はしてないな?
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「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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