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第3話
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呼吸を止めて一秒、なんていう歌詞が古い歌にあったけれど。
レーザーライフルを相手に狙い定める時のおれの心境は、まさしくそんな感じだった。
「…………」
狙うは、『ホワイト・リリィ』の持つマシンガン――そしてそれを持つ右手首だ。
片手が被弾して動作がきかなくなり、そこにおれが姿を現すという作戦。マシンガンを失った『ホワイト・リリィ』がマニュアル部隊とおれのオートマタ相手に、これ以上の戦闘続行はさすがにしないはず。
しかし……もしもこの照準がずれれば、『ホワイト・リリィ』への被弾は失敗するかもしれない。
いや、被弾が失敗してもまだ幸いだ。
一番問題なのは――『ホワイト・リリィ』の搭乗席に射線が通り、搭乗騎士であるアルノー・ソカリスの命が失われることである。
もちろん、『ホワイト・リリィ』の搭乗騎士が死ねば、それは帝国戦闘騎士部隊を助けることには繋がるのだが……生憎、おれの方にまだその覚悟ができていなかった。
そう――人を殺す覚悟、である。
「……っ……」
どうしてこの世界に、今、自分がいるのか分からないけれど……おれが『舞乙女』の搭乗騎士としてこの世界にあり、これから先も『舞乙女』に乗っていくことを選ぶとすれば……。いつか、人を殺さなきゃいけない日がくるのかもしれない。
「……でも、今日はその日じゃない」
頭を切り替えろ。
幸い、今はまだその決断は迫られていないのだ。
だからおれが今やらなきゃいけないことは、『ホワイト・リリィ』に最小限の被弾をさせ、王国戦闘騎士部隊を助けることだ。
ただ、それだけを考えろ。
「――――よし」
戦闘を続行し続ける『ホワイト・リリィ』と王国戦闘騎士部隊の『スティンガー』たち。そのスティンガー のうち、隊長機と思われる深いオレンジ色の機体と、『ホワイト・リリィ』が剣で組み合い、『ホワイト・リリィ』の動きが止まる。
その刹那を見計らい、おれは引き金を引いた。
――――そして、空気を灼くルビー色の閃光。
『舞乙女』のレーザーライフルから伸びた閃光は見事、『ホワイト・リリィ』の右手に届いた。
しかもそれは、『ホワイト・リリィ』がマシンガンの切っ先を スティンガーの隊長機に向けた瞬間であったので、まさしくタイミングが良かったといってもいい。
……ここで誤算だったのは、レーザーライフルからのビームが当たった瞬間、なんと『ホワイト・リリィ』の右手が付け根からぶっ飛んだことだろうか。
ぶっ飛んだというか……その、マシンガンごと『ホワイト・リリィ』さんの右腕が灼けたように真っ赤に消失しちゃったというか……。おれの右手が光って唸る状態というか。あ、別に唸ってはいないか。
あ、あれ? なんでこんな高火力……あっ、そうか!
そういやこの機体のレーザーライフル、寝落ち前にやってたミッション仕様で最高出力に設定してたっけ!?
や、やっべー。被弾どころか『ホワイト・リリィ』さんの右手が消失しちゃったよ……。
っていうか、『ホワイト・リリィ』さんを通り越して当たった砂漠の部分も、なんかそこだけ消失しちゃってる……。
あまりの出来事にガクブル状態なおれだが、『ホワイト・リリィ』さんもスティンガーたちもなんかぽかーんとしてる。
ど、どうしようこれ?
でも、一応は予定通りにいったんだし、皆の前に出ていってみるか……。
隠れていた砂丘から立ち上がると、『舞乙女』の背部スラスターを起動させて『ホワイト・リリィ』とスティンガーたちのそばにふわりと降り立つ。
「――さすがだな、よくかわしたものだ」
そしてとりあえず、気まずい空気を払拭するように『ホワイト・リリィ』をヨイショしてみる小心者のおれ。
いや、別に『ホワイト・リリィ』さんはかわしてないんだけど、思いっきり被弾してるんだけど、なんか他に褒めることが思いつかなくて……。
しかし、『舞乙女』の外部音声で『ホワイト・リリィ』とスティンガーたちに話しかけるも、誰も返事はしてくれなかった。なんだか皆、呆然とした様子でおれを見つめてくる。
……本当にどうしよう、この空気……。
と、とりあえず『ホワイト・リリィ』に謝っておくか。
「背後から撃った無作法を詫びよう。だが、これ以上その部隊に手出しをするならおれが相手になるぞ」
「……貴様、いったい何者だ!」
す、すっごい怒ってるー!!!
そりゃそうだよね!
いきなり背後から撃たれて右腕がなくなれば、そりゃ怒るよね!
だが、怒声の外部音声とは裏腹に、すぐさま『ホワイト・リリィ』はスティンガーたちとおれから距離をとった。そして、離れた場所でこちらを睨みつけるように頭部を向けている。
よ、よしよし。おれにマジギレはしているようだが、戦闘続行してくるような雰囲気じゃないな。なら、このまま相手が逃げてくれるように勧めてみよう。
「ふっ。そんなことを言っている暇があれば早く撤退したらどうだ? 背後から撃った非礼として、おれはこのままお前を見逃すつもりだが、帝国の騎士達はそういうわけにもいかないだろう」
「貴様……!」
おれはもう背後から撃たないので心配しないでね。早く逃げた方がいいよ!
そう言ったつもりだったのに、おれの口下手のせいか、『ホワイト・リリィ』がますます激高したような外部音声をこちらにぶつけてくる。
な、なんでこうなるの?
おれの思考とリンクしている『舞乙女』が、連動してその頭部を抱えそうになったが、なんとかそれを押し留める。
「貴様のその機体、それに声! 覚えたぞ、今度会ったら命はないものと思え!」
なんだかんだ言いつつも、さすがに状況が不利になったが分かったのだろう。
『ホワイト・リリィ』は最後にそう捨て台詞を吐くと背中のスラスターを起動させて、飛ぶようにしてこの場を離脱したのだった。
そして後には、おれの『舞乙女』と、王国戦闘騎士部隊の『スティンガー』が残されたのであった。
……スティンガーさんたちはいまだにぽかーんとしたままだけどね!
レーザーライフルを相手に狙い定める時のおれの心境は、まさしくそんな感じだった。
「…………」
狙うは、『ホワイト・リリィ』の持つマシンガン――そしてそれを持つ右手首だ。
片手が被弾して動作がきかなくなり、そこにおれが姿を現すという作戦。マシンガンを失った『ホワイト・リリィ』がマニュアル部隊とおれのオートマタ相手に、これ以上の戦闘続行はさすがにしないはず。
しかし……もしもこの照準がずれれば、『ホワイト・リリィ』への被弾は失敗するかもしれない。
いや、被弾が失敗してもまだ幸いだ。
一番問題なのは――『ホワイト・リリィ』の搭乗席に射線が通り、搭乗騎士であるアルノー・ソカリスの命が失われることである。
もちろん、『ホワイト・リリィ』の搭乗騎士が死ねば、それは帝国戦闘騎士部隊を助けることには繋がるのだが……生憎、おれの方にまだその覚悟ができていなかった。
そう――人を殺す覚悟、である。
「……っ……」
どうしてこの世界に、今、自分がいるのか分からないけれど……おれが『舞乙女』の搭乗騎士としてこの世界にあり、これから先も『舞乙女』に乗っていくことを選ぶとすれば……。いつか、人を殺さなきゃいけない日がくるのかもしれない。
「……でも、今日はその日じゃない」
頭を切り替えろ。
幸い、今はまだその決断は迫られていないのだ。
だからおれが今やらなきゃいけないことは、『ホワイト・リリィ』に最小限の被弾をさせ、王国戦闘騎士部隊を助けることだ。
ただ、それだけを考えろ。
「――――よし」
戦闘を続行し続ける『ホワイト・リリィ』と王国戦闘騎士部隊の『スティンガー』たち。そのスティンガー のうち、隊長機と思われる深いオレンジ色の機体と、『ホワイト・リリィ』が剣で組み合い、『ホワイト・リリィ』の動きが止まる。
その刹那を見計らい、おれは引き金を引いた。
――――そして、空気を灼くルビー色の閃光。
『舞乙女』のレーザーライフルから伸びた閃光は見事、『ホワイト・リリィ』の右手に届いた。
しかもそれは、『ホワイト・リリィ』がマシンガンの切っ先を スティンガーの隊長機に向けた瞬間であったので、まさしくタイミングが良かったといってもいい。
……ここで誤算だったのは、レーザーライフルからのビームが当たった瞬間、なんと『ホワイト・リリィ』の右手が付け根からぶっ飛んだことだろうか。
ぶっ飛んだというか……その、マシンガンごと『ホワイト・リリィ』さんの右腕が灼けたように真っ赤に消失しちゃったというか……。おれの右手が光って唸る状態というか。あ、別に唸ってはいないか。
あ、あれ? なんでこんな高火力……あっ、そうか!
そういやこの機体のレーザーライフル、寝落ち前にやってたミッション仕様で最高出力に設定してたっけ!?
や、やっべー。被弾どころか『ホワイト・リリィ』さんの右手が消失しちゃったよ……。
っていうか、『ホワイト・リリィ』さんを通り越して当たった砂漠の部分も、なんかそこだけ消失しちゃってる……。
あまりの出来事にガクブル状態なおれだが、『ホワイト・リリィ』さんもスティンガーたちもなんかぽかーんとしてる。
ど、どうしようこれ?
でも、一応は予定通りにいったんだし、皆の前に出ていってみるか……。
隠れていた砂丘から立ち上がると、『舞乙女』の背部スラスターを起動させて『ホワイト・リリィ』とスティンガーたちのそばにふわりと降り立つ。
「――さすがだな、よくかわしたものだ」
そしてとりあえず、気まずい空気を払拭するように『ホワイト・リリィ』をヨイショしてみる小心者のおれ。
いや、別に『ホワイト・リリィ』さんはかわしてないんだけど、思いっきり被弾してるんだけど、なんか他に褒めることが思いつかなくて……。
しかし、『舞乙女』の外部音声で『ホワイト・リリィ』とスティンガーたちに話しかけるも、誰も返事はしてくれなかった。なんだか皆、呆然とした様子でおれを見つめてくる。
……本当にどうしよう、この空気……。
と、とりあえず『ホワイト・リリィ』に謝っておくか。
「背後から撃った無作法を詫びよう。だが、これ以上その部隊に手出しをするならおれが相手になるぞ」
「……貴様、いったい何者だ!」
す、すっごい怒ってるー!!!
そりゃそうだよね!
いきなり背後から撃たれて右腕がなくなれば、そりゃ怒るよね!
だが、怒声の外部音声とは裏腹に、すぐさま『ホワイト・リリィ』はスティンガーたちとおれから距離をとった。そして、離れた場所でこちらを睨みつけるように頭部を向けている。
よ、よしよし。おれにマジギレはしているようだが、戦闘続行してくるような雰囲気じゃないな。なら、このまま相手が逃げてくれるように勧めてみよう。
「ふっ。そんなことを言っている暇があれば早く撤退したらどうだ? 背後から撃った非礼として、おれはこのままお前を見逃すつもりだが、帝国の騎士達はそういうわけにもいかないだろう」
「貴様……!」
おれはもう背後から撃たないので心配しないでね。早く逃げた方がいいよ!
そう言ったつもりだったのに、おれの口下手のせいか、『ホワイト・リリィ』がますます激高したような外部音声をこちらにぶつけてくる。
な、なんでこうなるの?
おれの思考とリンクしている『舞乙女』が、連動してその頭部を抱えそうになったが、なんとかそれを押し留める。
「貴様のその機体、それに声! 覚えたぞ、今度会ったら命はないものと思え!」
なんだかんだ言いつつも、さすがに状況が不利になったが分かったのだろう。
『ホワイト・リリィ』は最後にそう捨て台詞を吐くと背中のスラスターを起動させて、飛ぶようにしてこの場を離脱したのだった。
そして後には、おれの『舞乙女』と、王国戦闘騎士部隊の『スティンガー』が残されたのであった。
……スティンガーさんたちはいまだにぽかーんとしたままだけどね!
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