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番外編 第五話

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俺とウェルはその後、エルシュバーグ家の屋敷に戻った。

屋敷ではセバスチャンとミーコが俺の帰りを待っていてくれたようで、セバスチャンは俺の顔を見るとホッとした表情になり、ミーコにはニャンニャンニャンニャンと「心配したぞこのバカヤロー」という感じでせわしなく足元に纏わりつかれ、何ともこそばゆい思いをした。
話を聞けば、俺の帰りが遅いことを心配したセバスチャン達が相談し、ウェルが代表でギルドに行き、ギルドにいた人間から聞き込みをして俺がキースにどこぞへ連れていかれたことが分かり……という流れだったらしい。

「よくあそこが分かったな?」
「あの店はよく冒険者時代に、ロズリーナを含めてよく三人で行った店なんです」
「ああ、なるほど……」

なら、あの店をキースが選んだ理由も、ウェルが探しに来た時にすぐに見つかりやすいようにということだったのだろう。つくづく、全てアイツの掌の上だったというわけだ。

……冷静に考えると、キースさん、すごすぎない?

策謀っぷりが一介の冒険者に収まる器じゃないだろ。俺が伯爵家の中でもっと権力とか持っていれば、うちで取り立てて……いや、やっぱりそれはないな。
頭の切れる男ではあるけれど、自分の味方にするにはデメリットがありすぎる男だ。というかデメリットがメリットを上回りすぎるな……。

「……ふっ。いい友人を持ったな、ウェル」
「……ええ、まったくそうですね」
「ちょっと……性癖というか趣向に、その、問題がありすぎる男だが……」
「ええ、それはまったく……」

自室のベッドに二人で並んで、一人の男を思い返す俺とウェルは、お互いともなんとも言えない遠い目をしていた。
本当、悪いヤツではないんだけどなぁ……。
一概にいいヤツとも言いきれねぇんだよなぁ……。

……そういえば、ウェルが俺の部屋に来てくれて、こうやって二人きりで並んで話すのも、あのケンカをした日以来だ。ちなみにミーコは隣であるウェルの部屋に行ってもらっている。
俺はちらりと隣のウェルを見た。すると、ウェルも俺のことを見ていたようで、ばっちりと視線が合う。俺と視線が合ったウェルは、恥ずかしそうに、はにかみながら微笑んだ。
……か、かわいいが過ぎる……!

「ロスト様……その、申し訳ありませんでした」

と、ウェルが一転、はにかんだ微笑みから、眉を八の字にして悲しげな表情へと変わった。

「ウェル、なにがだ?」
「キースに言われた通りです……。おれは、あなたのことが何よりも大事で。おれなんかのせいで、せっかくの栄えある未来を掴み損ねるような事になってほしくなかったんです」
「ウェル……」
「あなたには、誰よりも幸せになってほしいんです。そのためには、おれはロスト様から離れるべきなのに……どうしても、あなたの傍から離れることを選べなくて……!」

俺はウェルの身体を引き寄せると、ウェルの頭を自分の胸元に抱え込んだ。ウェルの方が背が高いのでかがんでもらうような体勢だ。
俺は胸元に抱き込んだウェルの栗色の短髪を、ぐしゃぐしゃと撫でる。

「ウェルの気持ちは誰よりも分かってるさ。俺こそ、ウェルに辛い思いをさせてすまなかった」
「ロスト様……」

そっとウェルを解放すると、ウェルがおずおずといった様子で顔を上げた。その若草色の瞳は、涙で濡れている。その眦からぽろりと銀色の雫がこぼれると、俺は顔を寄せて、ウェルの目元にちゅっと音を立ててキスをした。

「……ロスト様……んっ、ふ……」

そして、俺達はどちらともなく唇を重ねた。
初めはついばむようなキスだったが、それはすぐに舌を絡めあい、お互いの歯列をなぞり合うような激しい口づけへと変わる。ケンカをしてから数週間ぶりの触れ合いのためか、お互いとも、相手の存在を深く味わおうとするかのようなキスだった。

「んっ、ふぅ……」

キスの合間に、俺はウェルのシャツへと手を伸ばし、ボタンを外していく。ウェルももどかしげな手付きで俺の服へと手を伸ばしてきた。

一刻も早く、触れ合いたい。
言葉にせずとも、お互いのそんな気持ちが伝わってくる。

「……ひぅっ!」

突然、ウェルがかわいらしい悲鳴をあげて、肩をびくりと跳ねさせた。だが、その理由は俺には分かっている。
ウェルは俺から唇を離すと、困ったような、恥ずかしいような顔で見つめてくる。

「ロ、ロスト様っ。また、その魔眼を使っておられますね……?」
「たまにはいいだろ? それに、今回はウェルにお仕置きだからな」

俺の言葉に、ウェルが「うっ」と気まずそうな声を上げる。

「勝手に俺の幸せを決めて、別れ話を切り出してきて」
「う……」
「……何度も言うけどさ、俺はウェルがいてくれれば幸せなんだ。伯爵家の地位なんていらないし、そんなものよりも、ずっとお前が欲しい」
「ロスト様……」

ウェルが感極まったように、若草色の瞳を潤ませて俺を見つめてくる。その視線がすこし照れくさい。

けれど、こうは言ったものの。たとえば、俺とウェルの立場が逆だったら……ウェルと同じように、俺も身を引く選択肢を選ぶだろうしなぁ。そう考えると、ウェルが別れ話を切り出してきたのを責めすぎるのも酷か。
だって、俺のためにウェルがせっかくの跡継ぎ指名を蹴る羽目になるとか、そんなの申し訳なさすぎるよな。でも、だからと言って愛妾におさまるのも自分が惨めすぎて辛すぎる。それならいっそ自分から別れ話を切り出すだろう。

……そうだ。俺だってウェルと同じ選択を選ぶだろう。
だから、跡継問題が起きてからのここ数週間――俺なんかよりも、ずっとずっとウェルの方が苦しい思いをしてきたに違いない。

……これ以上、ウェルに辛い思いをさせるわけにはいかないな。
いい加減、俺も覚悟を決めないと。
ウェルが覚悟を決めて、俺とこれからも同じ道を歩くことを決めてくれたんだから、俺もウェルに応えるべきだよな。

「っ! ……ロスト、様……っ」

……そして覚悟を決める前に、まぁなんだ。
数週間ぶりに二人っきりになれたんだし、思う存分、ウェル成分を補給しないとな!

いや、だってこれからお祖父様や兄上を説得すると考えると、それはそれですごい憂鬱なんだよ……。お祖父様はイノシシみたいにどんどん俺の跡継話を進めてこようとするし……。
だからさ、これからの戦いに備えて栄養補給って大事だよね! うん、絶対にそう!

「んッ……ロ、ロスト様、魔眼は、やめて下さいませんか……」
「さっきも言っただろう? それに、これはずっと俺を放ったらかしにしておいたお仕置きだからな」
「そ、そんなっ……」

今、俺は魔眼を発動させて、微弱な快感と痒みがウェルの乳首と後肛に流れるようにしていた。
ウェルは頬を上気させて、痒みを解消するようにもじもじと内腿をすり合わせている。

そう。俺はウェルと付き合いはじめて一ヶ月半が経過した頃に、ウェルにこの『魔眼』のことを打ち明けていた。
……うん。予想はしていたけれど、めちゃくちゃウェルに怒られたよ……。

『おれはずっと自分の病気がもしもロスト様に移ったらどうしようかと心配していたんですよ!? それに、ど、どんなにおれが恥ずかしい思いをしたと……!』

と、顔を真っ赤にさせて涙目でぷるぷると俺を睨むウェルはたいっっっへんにかわいかったが、その後、3日間くらいウェルが口をきいてくれなくなってしまって、大変まいった……。
あの3日間は生き地獄だった。ウェルが俺に対して他人行儀だった頃よりも辛かった。3日目にとうとう耐えきれなくなった俺が涙目で謝り、俺が涙目になったのを見てめちゃくちゃ慌てたウェルがようやく許してくれた形となったのだ。

そしてその後、俺はウェルに約束させられたのだ。
そう――許可なく、ウェルに対して魔眼を使わない、と。

……俺は断腸の思いでその約束をせざるを得なかった。

でも! だからこそ、今日は!
今日は久しぶりに、仲直りと今までのお仕置きという名目にかこつけて、ウェルにいろいろとイタズラができる日なのだ!

俺はウェルをベッドに押し倒すと、その身体に覆いかぶさり、再び顔中にキスの雨を降らす。
それと同時に、ウェルの乳首と後肛に発生させている快楽と痒みを強めた。

「っあッ……!」

ウェルがびくんと身体を震わせる。
そして、ぷるぷると震えながら、縋るように俺を涙目で見上げた。しかし、そんなに可愛い顔をしても逆効果だ。俺はさらに魔眼の効力を強め、ウェルの身体に起こっている快楽と痒みを強める。
すると、耐えきれなくなったであろうウェルが、もぞもぞと自分の尻をベッドのシーツにすりつけるように腰を動かし始めた。

「ロ、ロストさまっ……おれ、もうっ……」

はぁはぁと息を荒げ始めたウェルに手を伸ばし、俺はウェルが身につけていたズボンを下着ごと脱がせる。
完全に生まれたままの姿になったウェルは、もう与えられた刺激が限界のようだ。胸元の乳首はその突起をこれでもかと尖らせ、真っ赤なグミのようになっている。そして、ウェルの陰茎はまだ触っていないというのに、ゆるく頭をもたげていた。

「ロスト様ぁ……」

ウェルが若草色の瞳に期待をこめて俺を見つめる。
……が、今日の俺はまだその期待に応えるつもりはない。

「ウェル。自分で後ろを触ってみろ」
「……え……」
「俺は胸を触ってやるから、後ろは自分でほぐすんだ」

ウェルは俺の言葉に躊躇いを覚えているようで、なかなか行動に移さなかった。
俺は焦れて、ウェルの後肛に発生させる痒みの効力を一気に強める。

「ひっ! ぁ、か、痒いです、ロストさま……ッ!」
「ほら、自分で触ってみろ。気持ちいいぞ?」

俺がウェルの片手を掴み、後肛へと導く。自分の指先がその蕾に触れた瞬間、ウェルの身体がビクンッと痙攣し、頭をもたげていた陰茎からトロリと透明な先走りがしとどに溢れ始めた。

「ぁ……っ、こ、こんなの、だめなのに……」

とうとう、痒みが解消される気持ちよさと、快楽の二重波状には勝てなかったようだ。
ウェルはとろんとした顔つきになると、自分の後肛にあてがった指先をジュポジュポと水音を立てて抽送をし始めた。

「そうだ。そうやって自分で後ろを広げてみせてくれ、ウェル」
「っ、はぁッ……ロスト様っ。まえ、まえもいじってください……っ!」
「ああ、そうだった。悪い悪い。じゃあ、俺が乳首をいじってやるから、ウェルは自分の後ろをいじめるんだぞ?」

ウェルの尖りきった真っ赤な乳首に手を伸ばし、まずは手の平ですりすりと撫で回してやる。
それだけでウェルの身体はびくびくと面白いように跳ねた。
しかし、未だに痒みと快楽が発生し続けるため、そんな風になっても自分の後ろをいじめる手をウェルが休めることは決してない。乳首を弄り続けられながら、ウェルは自分の後ろをグチュグチュと水音を立てながら指で広げ、こすり続ける。

「ウェルは本当にいやらしい身体になったな」
「……っ……ロストさまの、せいではないですかっ……!」

そう言って、ウェルの胸元に顔を寄せて、右の乳首をべろりと舌で舐める。

「ひァッ、あぁっ……!」

今のウェルは何をされても感じるらしい。
舌で舐められて濡れ光る乳首が、ふるふると震えている。

「ふっ……ここも、最初の頃よりずいぶんといやらしくなったな」
「っ、ロストさま……」

ウェルの顔を優しく俺の方に向かせる。そして、恥ずかしさのためにか、茹でダコみたいに真っ赤になった唇にキスをする。その肉厚の唇を舌先で舐めると、ウェルもすぐに唇を開き、俺の舌を招き入れた。
その間にも、俺は指先でぐにぐにと乳首といじめ続け、ウェルは自分の後肛をぐちゅぐちゅと指で拡張し続ける。

「んっ……ふぁっ、ロスト様、おれっ……おれ……!」
「ウェル……」

キスをしながら、ウェルの乳首を俺がいじめ、ウェルは自分で後肛をいじり続ける。
そんな至福の時間がどれぐらい経過しただろうか、
ついばむようなキスを終えた直後、ウェルがもどかしげに俺に腰をすりつけてきた。

「ロスト様、おれ、もう準備できましたから……早く、おれの中に……」
「さすがにまだ早いだろ? もう少し準……」
「ずっと、ご無沙汰でしたから……早く、ロスト様と繋がりたいんです」

……こんな風に言われたら、もはや俺もNOと言ってはいられなかった。
俺はウェルのご要望に応えるため、いそいそとウェルの両足を抱えて割り開くと、その後肛に自分の陰茎をあてがう。

「ぁ、あッ……!」

久しぶりなのでゆっくりと陰茎を埋めていく。
だが、俺の心配に反して、ずぶずぶと俺の陰茎を飲み込んでいくそこは、熟れきった果実のようだった。
肉壁は俺の陰茎にねっとりと絡みついて離さず、きゅうきゅうと締め付けてくる。

……ああ、そういえば、俺の魔眼の効力を切ってなかったか。
今、ウェルの後肛には痒みと快楽が発生しっぱなしの状態だ。特に痒みの方は、俺の陰茎がごりごりと肉壁にぶつかるたびに、痒みが解消されて気持ちいいのだろう。

「本当にいやらしい身体になったな、ウェル」
「……全部、ロストさまの、せいですっ……だから……」
「うん?」

そこまで言ったウェルが、ふいに、ベッドの枕に顔を押し付けて自分の顔を隠してしまう。
だが、その真っ赤に染まった耳は隠せてはいない。

「だから……責任、とってください。おれはもう、貴方から離れては生きていけないんですから……。ロスト様もずっとおれと一緒にいてください……」
「……ウェル……」

思いがけない言葉に、俺はとてつもない感動を覚えていた。

ウェル。お前ってやつは……一体どこまで俺を惚れさせれば気が済むんだ!?
っていうか、なんだ。これ、本当に現実に起きてること? こんなに可愛い生き物が俺の恋人なの、本当に? マジで?

……俺、来世はヤゴの抜け殻とか、犬の抜けたヒゲとか、そんな存在に生まれ変わるんだろうな……。
うん、今生でこんなにいい思いしたもんな、しょうがないな……。

俺はウェルに再び噛み付くように口づけると、埋めた陰茎を一気に抜いて、最奥に叩きつけた。ウェルがそれに対して甲高い嬌声を上げながら、しかし俺の身体にしっかりと自分の両足をまわして快楽を享受する。


そして俺とウェルの睦み合いは、日付が変わる頃になっても続いたのであった――。
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