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痒み
しおりを挟むそして、運命の日。
俺は朝からこっそりとウェルスナーの後を尾けていた。
まぁ、尾けるといってもウェルスナーは俺の護衛騎士なので、俺が自宅の屋敷内にいる時には彼も屋敷内にいるので、廊下の影からこっそり様子を窺う形だ。
自分の護衛騎士を尾行する護衛対象って、本末転倒以外のなにものでもないと思うが、気にしちゃいけない。
ウェルスナーは屋敷の中から外へ出ると、わが家の食料や武器、資材なんかが置いてある外の倉庫に向かった。三つある倉庫の内、一番奥にある倉庫の一つへ一人きりで立ち入るのを見て、俺は「チャンスだ!」と思った。
どうもメイドの一人から、倉庫から荷物を運搬する力仕事を頼まれたようだ。木の扉をそっと開けて中を窺うと、ウェルスナーは壺や木箱が並んだ倉庫の真ん中できょろきょろと何かを探している。
そんなウェルスナーを見つめながら、俺はまず「痒み」の発生を魔眼で念じた。
最初は、首筋を狙ってみる。
「……っ?」
ウェルスナーはびくんと身体を震わせると、首筋に手をあてて指先でこするように触れた。
「なんだ……? 虫か?」
軽く魔力をこめて痒みを発生させる程度であれば、虫が触れたぐらいの痒みに感じるようだ。
ふむふむ。じゃあ、これならどうだろう?
「っ!?」
ウェルスナーが驚きに目を見開く。
今度は、乳首に対して痒みを発生させた。
魔力を強めにこめたので、かなりの痒みを感じているようだ。
「っ、なんだ!? 虫でも入ったのかっ?」
ウェルスナーは簡単なシャツと革のベストに、ズボンと革のブーツという軽装だったが、革のベスト越しに指先で自分の乳首をかりかりを掻きはじめた。
が、革のベスト越しでは大した刺激は得られなかったようで、「くそっ」と悪態をつくと、もどかしげにベストの前閉じの紐をほどいてひらく。
「っくそ、かゆい、かゆいっ……! なんでだっ!?」
シャツ越しに爪をたてて、自分の両方の乳首をかりかりと掻くウェルスナー。
眉根をよせ、若草色の瞳は苦しげに細められ、頬が上気している。見たことのないウェルスナーの扇情的な顔に、ごくりと喉がなった。
「ひぅっ!?」
次に、魔力をかなり込めて、痒みの程度を強める。
ウェルスナーはびくんと身体全体を震わせ、こぼれそうなぐらいに目を見開いた。
「あ……ひ、かゆい、かゆいっ! なんで、こんな……っ」
ウェルスナーはもどかしげにベストを脱ぎ捨てると、とうとうボタンを引きちぎる勢いでシャツもはだけた。現れた胸の上の2つの乳首は、まるで熟れた果物のように真っ赤にとがり、ヒクヒクと震えている。
「こんな、あぁ……っ、かゆい、掻くほどかゆくなるっ……!」
そんな真っ赤な乳首に対し、ウェルスナーは指の爪先でガリガリと乳首をもみしだき始める。
乳首を指で掻く快感に、ウェルスナーの腰ががくがくと揺れているが、本人は気がついていないようだ。
「はぅっ、あっ……!」
乳首を指先つまんでぐにぐにと揉みしだき、かと思えばその先端をガリガリと爪の先でひっかく。ずっと見ていたくなる光景だが、爪によって傷がついた乳首に血がにじみ始めてしまったようなので、俺はウェルスナーの乳首から痒みを引かせることにした。
「あっ……!?」
いきなり消失した痒みに、呆然とするウェルスナー。その声には、痒みがなくなったことの安堵ではなく、失われてしまった快感への未練がにじんでいた。
だが、安心してほしいウェルスナー。俺もここで終わらせる気はない。
「ひいっ!?」
さて、今度「痒み」を送った場所は、ウェルスナーの後ろの穴だ。
後ろの穴の入り口に、まずは軽めに痒みを発生させる。ぞわぞわとした痒みに、ウェルスナーが戸惑うように右手をズボン越しに触れさせている。場所が場所だからか、いきなり指で掻くのには戸惑いがあるようだ。
――ふふ。なら、そんな戸惑うような余裕があるなら、もっと飛ばしてもいいよな!
「なっ……なんで、今度はこんなところに……っ! あぁっ!」
入口から段々と奥にむかって、痒みを侵食させていく。
だんだんと広がっていく、後ろの穴の痒みに、ウェルスナーがぶるりと腰を震わせた。
「お、奥にどんどん痒みが広がって……! いやだ、こんな、なんで……っあァっ!?」
さて、実験を次のフェーズに進めよう。
俺は瞳に魔力をこめると、照準を穴の奥にある前立腺をねらうイメージを思い描く。そこを水鉄砲で狙うように「痒み」をたたきつける!
「あっ……あっ、あァ! かゆい、かゆいぃっ!」
耐えきれなくなったウェルスナーは、地面にどさりと膝をついて膝立の状態になると、腰の革ベルトをもどかしげにほどき、ズボンと下着を勢いよく脱ぎ下ろした。
ウェルスナーの陰茎はすでにがちがちに勃起しており、ズボンからぶるりとひっかかって出てきた。俺の予想に反して、ウェルスナーの陰茎はあまり使い込んでない、綺麗な色をしている。だが、その陰茎の先端からは今や、だらだらと透明な先走りをしとどなくこぼしており、何とも卑猥な佇まいになっていた。
「あっ、くぅっ……んぅっ!」
ウェルスナーは躊躇いのない勢いで、片手で自分の尻タブをつかんで開き、もう一方の手を後口にうずめた。そして、容赦なくずぼずぼと自分の指を後口から出し入れさせる。
指先で前立腺をひっかくと気持ちがいいのか、その度に「ひぅっ」と悲鳴をこぼしながら、身体を痙攣させている。
ごくり、と唾をのみこむ。
ウェルスナーも顔も真っ赤で、息も絶え絶えな状態なのに、自分の後肛をいじめるのをやめようとしない。いつも不愛想で、性欲のかけらも感じさせない顔は、いまや苦し気に歪められ、若草色の瞳からは涙がにじんでいる。口はだらしなく開き、赤い舌先がのぞいている。
あのウェルスナーが。
どんなに話しかけても表情一つかえないポーカーフェイスのウェルスナーが。
うちの可愛いメイドに言い寄られてもすげなく断っているあの堅物が。
今、ここで、きっと誰にも見せたことのない顔をしている。
俺はそのウェルスナーのみだらな痴態をもっとよく見ようと、前のめりになった。
瞬間、のぞき見をしていたドアにうっかり体重をかけてしまい、木造のドアが「ギッ」ときしんだ音を立てる。
「あっ、やばい」と思ったときには、もう遅かった。
「…………ロスト、様?」
「……やあ、ウェルスナー」
静かな倉庫でその音は見事にひびきわたった結果、おれはウェルスナーに見つかってしまったのだった。
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