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第2部 闘技場騒乱
第二十五話
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おれ、ヴィクター、ゼノンの三人はコロッセオへと向かった。
とはいえ、コロッセオは地下牢を設けている性質上、夜間でも無人とはならず、皇国軍の衛兵たちが巡回警備を行っている。
だが、おれたちが到着した時には、皇国軍の兵士たちはみんな戸惑うような表情でコロッセオの外で待機しているだけだった。
コロッセオの中からは、人の悲鳴や戦う物音が響いてきているというのに、誰も中へ入ろうとする様子がない。
そんな彼らにヴィクターが近づいていった。ヴィクターとゼノンはおれの護衛騎士なので、一般の兵士たちよりも地位は上だ。衛兵たちも二人の顔は知っていたようで、ヴィクターの存在に気がつくと、慌てて敬礼をした。
ちなみにおれとゼノンは、近くの建物の陰に隠れて会話を盗み聞きしている。
双子はともかく、おれがここにいることがバレたらあとあと面倒なことになるかもしれないからだ。そのため、おれはフード付きの外套を目深に被って顔も隠している。
「どうしたんですか、あなたたち。なぜ誰も中に入ろうとしないのです?」
「こ、これはヴィクター様……!」
「仰ることはごもっともなのですが、その……リリア様と四天王ローズ様のお二人から、中からどんな物音が聞こえようともコロッセオの中には入るなと言われておりまして」
「リリア様が、ですか?」
不思議そうな顔をするヴィクターに、衛兵がおずおずと説明を続ける。
「はい。最初はリリア様が一時間前ほどにこちらへお越しになったんです。お一人ではなく、お付きの方たちと共に来られまして……」
「そのリリア様が『革命軍が捕虜を奪還しようと企んでいるという情報が入り、父上の命令で捕虜を今から移送することになった。お前たちの中に革命軍の手のものが紛れ込んでいるかもしれないから、移送手続きは私たちだけで行う。全員、ただちに正面入口前で待機するように。私が許可を出すまでは何人たりとも中へ入ってはいけません』とおっしゃられて……」
「そしたら今度はローズ様がいらっしゃったんです。ローズ様も『なにか物音や悲鳴が聞こえても、絶対に誰も中へ入らないように。上への報告も不要』とおっしゃられて。ですが、ローズ様が入られた後、中からは戦いのような音が聞こえるし、ついさっきはなんだか爆発音まで聞こえて……自分達は、本当にこうしていていいのでしょうか?」
不安そうな衛兵たちに対し、ヴィクターは安心させるような笑みを浮かべた。
「あなたたちの不安も分かりますが、恐らくリリア様とローズ様にはなにかお考えがあるのでしょう。あのお二人がそこまで強く念を押した以上、命令を遵守するべきだと思います」
「や、やはりそうですよね!」
「ですが、それにしたって中からは尋常ではない音が……」
「それも安心してください、これから私と仲間たちでコロッセオの中の様子を見に行ってきます。シキ様付きの私たちであれば、無断で入ったとしてもさほど叱責を受けることはないでしょう」
「おお、それならば助かります!」
「ありがとうございます、ヴィクター様」
ホッとした様子の衛兵たちに感謝されているヴィクター。
うーむ。本性を知らないと、人当たりのよくて気遣いのできる好青年にしか見えないな。
そんなことを考えていたら、ヴィクターがこちらに戻ってきた。まあ、おかげで堂々と正面からコロッセオの中へ入れるようになったからありがたい。
しかし、戻ってきたヴィクターも、話を聞いていたゼノンも怪訝そうな表情をしている。
「ローズは分かるけれど、なんであの女の名前が出てくるんだ?」
「確かリリア様は皇城で軟禁状態のはずですよね? 革命軍を助けるために皇城を抜け出してきたということでしょうか?」
「いや。多分、ここに来たのは本物のリリア嬢じゃないな」
「誰かの変装ってことですか?」
「変装といえば変装だが……恐らく神造兵器だ。変わりたい者の身体の一部を材料にすることで、その人間そっくりに変身できる神造兵器がある」
「ふうん。じゃあ、革命軍の誰かがあの女に化けたってことか」
「だろうな。リリア嬢の身体の一部――髪や爪なら、革命軍ならいくらでも手に入れられるだろう。本人に頼んでもらっておけばいいだけだ」
「……そんな神造兵器もあるのですね。それにしても、シキ様は本当に秘密の多い方ですねぇ」
呟くように告げられたヴィクターの言葉に、どう反応していいか分からず黙り込んでしまう。
だが、ヴィクターは責めるつもりで言ったわけではないらしい。空気を変えるためか、続けておれに質問をしてきた。
「革命軍が化けたリリア様が『中へ入るな』と言った理由は分かりますが、ローズ様が同じことを言った理由はなんでしょうか? 神造兵器の能力に巻き込んでしまうからでしょうか?」
「だろうな。あまり人数が多いと、細かいコントロールは出来ないのだろう」
「っと……そろそろだぜ、シキ様!」
おれたち三人は、とうとうコロッセオの中へとたどり着いた。
正面入口から中へと入ってきたおれたちは、コロッセオの舞台の正面の観客席に出てきた。ちょうどこの前、皇族専用の観覧席で観戦をした真反対の席だ。
そして――目の前に広がっていたのは、混沌とした戦いだった。
「――逃げてくれ、頼む! 自分じゃ止められなくて……ぁ、アアッ!?」
「くそっ、違うんだ、これは身体が勝手に……!」
舞台の上や観客席では、あちこちで戦闘が起きている。
どうやらおれの予想通り、コロッセオに到着したローズは『パルファン・ドゥ・ローズ』を発動させたらしい。革命軍の捕虜たちは泣き叫びながら強制的に戦わされ、救出に来た革命軍たちは彼らを傷つけないように必死で応戦している。
人々の怒号や剣戟の音は絶え間なく響き、石畳に血しぶきが飛び散る。
あまりにいたましく、血生臭い戦いの光景に、思わず立ちすくんでしまう。
そんなおれの耳に、ある年若い女性の声が聞こえてきた。
どこかで聞いたことのある声だ。
「みんな、今ハルトが戦ってくれているわ! ハルトがローズを倒してくれれば全て終わる! だから、あともう少しだけ頑張って!」
声の主の顔を見て、おれは息を呑んだ。
あの子は――間違いない、あの日、ウルガ族の街で出会った女の子だ!
そうか、ハルトから聞いてはいたけれど……本当に生きていてくれたんだ……!
思いがけず再び見ることの出来た少女の顔に、胸がぐっと熱くなる。その胸に灯った熱は、怖気づきそうになった心に勇気を与えてくれた。
「大丈夫よ、貴方達の意思じゃないことは分かってるわ!」
「あと少しの辛抱だ、みんな耐えてくれ!」
ウルガ族の少女――確か、名前はナミカだ。
そんなナミカの力強い言葉に周囲にいる人々も心を奮い立たせ、操られている人たちに向かって声をかけ始めた。みんなの表情からは希望を感じる。
見れば、確かに周囲ではなおも戦いが続いているが……『ひよレジ』であったような悲壮さは感じられない。
『ひよレジ』の時は、革命軍は剣闘士たちが自分たちに襲い掛かってきたのか理由が分からず、混乱のあまり統率を失った。
だが、今はローズが元凶であることが分かっているためか、原作の時ほど混乱はしておらず、仲間同士の連携も失われていない。見たところ、怪我を負っている者はいても死人は出ていないようだ。
それに、コロッセオの周囲の壁は一部が破壊されて、そこから外気が流れ込んでいた。おかげで、操られている人数も原作の時よりは少ないようだ。
そうか――ハルトとアメリが間に合ったんだ。
彼らがみんなにローズの能力や対策を教えたおかげで、被害を最小限に食い止められたのだろう。
ならば、おれもこうしている場合じゃない!
「どうやらハルトがローズと戦っているらしいな。一体どこに……」
「いました、あの舞台の上ですね」
「へぇ、あのアダムっつー剣闘士もいやがるぜ」
ヴィクターが指差した方向――コロッセオの中央舞台を見ると、確かに、ローズとアダム、アメリ、ハルトたちの姿を見ることができた。
だが、状況はハルトたちが不利のようだ。
「――あはは! ほらほら、あたしを殺したいなら邪魔者をどうにかしないとねぇ~?」
「くそっ、卑怯だぞ! 今すぐ仲間を解放しろ!」
ローズは神造兵器を使って、剣闘士や捕虜たちを舞台上に上がらせて肉の盾としている。
ハルトは操られている者たちの攻撃を避けることに精一杯で、なかなか反撃に転じることができないようだ。
そしてアメリは、剣闘士アダムと戦っていた。アダムもまた、ローズの神造兵器によって操られているようだ。苦渋の表情を浮かべながら、アメリへ向かって攻撃を続けている。
「革命軍、このままじゃ共倒れになる! 自分のことはいいから、あの女を倒せ!」
「くっ、そうは言っても……!」
アメリもまたなかなか決断できずにいるようで、防戦一方だ。
とはいえ、こちらも原作と比べたらマシな展開だ。原作ではアメリもローズの支配下に入ってしまい戦力にならず、剣闘士アダムは自分の手で剣闘士の仲間を殺すことになってしまった。
だが、おれの忠告が功を奏したのか、ハルトとアメリは神造兵器に操られずにいるようだ。
とはいえ――このままではジリ貧だ。
一度、『パルファン・ドゥ・ローズ』の香水を吸い込んでしまうと、ローズが能力を解かない限り、しばらくの間はローズの支配下に置かれてしまう。
どうしたものかと考えていた矢先、ローズが醜悪な笑い声を発した。
「アハハ、ほんとイイ気味! そこのアンタ、さっきはよくもこのあたしを騙してくれたわね! アンタのせいで、アンタの仲間たちは今から殺し合いをするのよ? せいぜい目に焼き付けなさい?」
ローズがそう言って、指をパチリと鳴らす。
すると、ハルトとアメリに向かって剣をふるっていた剣闘士たちが――今度はお互いに向かって、剣を振り上げ始めた。それはアダムもそうだった。
「なっ……!? か、革命軍! 今すぐ自分を殺せ!」
アダムが引きつった表情で叫ぶも、ハルトとアメリは間に合わない。
ローズに操られた剣闘士たちがいっせいに二人にしがみつき、アダムを邪魔させまいとしたからだ。二人は懸命にもがいているが、その前に、アダムの持った剣が、仲間である剣闘士へと振り下ろされる――
「や、やめろぉおおッ!?」
ギィン、と甲高い音が響く。
そしてアダムは、あっけにとられた表情で目の前の人間を呆然と見つめていた。
そう――アダムの前に立ちふさがったヴィクターをである。
おれがヴィクターとゼノンに指示を出して、二人にアダムを止めるように向かってもらったのだ。なんとか間に合ってくれたヴィクターは、持っていた刀でアダムの剣を根本から切り飛ばした。
なお、ヴィクターもゼノンも革命軍に顔が割れているので、今はおれと同様に、外套のフードと口覆いで顔を隠している。口を覆う布は、ローズの香水を吸い込まないようにするためでもある。
「よっと!」
すかさず、唖然としているアダムの背後にまわるゼノン。
操られているアダムはなおも戦闘を続けようとしたが、それよりも早く、ゼノンがアダムの両腕を背中側にまとめた。次の瞬間、ゴキン、という嫌な音が響く。
「ぐぅ、ぉっ……!?」
「わりーな、ちょっと関節外したぜ。手を縛っても、あんたの馬鹿力ですぐに解かれちまいそうだからさ」
「なっ、なるほど……感謝する……ぐっ、ぅ」
両腕の関節を外されたことで戦闘を続けることができなくなったアダムは、がくりと地面に膝をついた。けっこうな激痛だろうに、それでも律儀にゼノンに礼を述べてるあたり、彼の人の良さが窺える。
なお、ハルトとアメリも二人の覆面の闖入者に驚いた表情をしていたが、すぐにそれがヴィクターとゼノンだということに気がついたようだ。
「アンタたち、どうしてここに……!?」
「オレたちを助けに来てくれたのか?」
「ええ、残念ながら。私は別にあなたたちが皆殺しになっても全然かまわないのですが」
「まあ、うちのご主人サマのお願いだからな」
ハルトとアメリと同様に、ローズもまた覆面の男たちの正体に気がついたらしい。
「その声……シキちゃんのところの双子ちゃんかぁ。ふうん、リリアちゃんが革命軍に協力してることを黙ってたのみならず、まさか革命軍を直接助けに来るなんてねぇ……」
にやついた笑みを浮かべて、再び指を鳴らそうとするローズ。
その動作を見て、ハルトとアメリ、アダムをはじめとする剣闘士たちは顔をこわばらせて身構える。
「でも、誰が来たってなにも変わらないわよぉ? また剣闘士たちに殺し合いを演じてもらうだけだもの!」
「ええ、どうぞご勝手に」
「べつにクズどもが何人死のうと、俺らには関係ねーしな」
「…………え?」
双子の平然とした様子に、ぽかんとした表情になるローズ。
というか、離れて様子をうかがっていたおれもぎょっとした。
えっ、ちょっ、二人とも?
「な、なにそれ? あ、あんたたち、革命軍に協力するためにここに来たんでしょ!?」
「ええ。主から一時的に革命軍に協力しろ、とは言われました。でも、彼らを助けろとかそういう指示は受けてませんので」
「というか、こいつらが死のうが、殺し合いをさせられようが俺らはどうでもいいし。それより早く帰ってうちのご主人サマに夕飯食わせてやんねーと」
隠れながら二人の言葉を聞いていたおれは、思わず頭を抱えた。
そ、そうだった……ついつい忘れてたけれど、あの二人倫理観ゼロに近いんだった……
見れば、おれだけではなく舞台の上にいるハルトやアメリ、アダムたち剣闘士もドン引きした表情になっている。
「そ、そんなのハッタリでしょ! そんな平気な顔してあたしを騙そうったって、そうはいかないんだから!」
ローズは顔をひきつらせて、指をぱちんと鳴らした。
次の瞬間、双子の近くにいた剣闘士たちがわっとアダムへと襲いかかった。アダムは両腕の関節を外されたまま、力なく地面に座り込んでいる。
ハルトとアメリはまだ剣闘士たちにしがみつかれており、助けにいけそうにもない。
まずい、あのままじゃアダムが危ない――!
だが、焦って身を乗り出したおれとは真逆に、双子の表情はいたって冷静なままだった。
冷静な表情のまま――アダムを守ろうとすることも、剣闘士たちを止めようともせず。二人ともまっすぐにローズへと向かって走り出す。
「なっ!?」
双子がアダムの窮地を意に介さず、ローズへと一直線に攻撃をしかけたのをみて、周囲の人間は目を見張った。
その間にも操られた剣闘士たちは、地面に座るアダムへと剣をふるい、彼の身体を傷つける。
「ぐぅ、ゥウッ!」
切りつけられたアダムは苦しそうなうめき声を上げる。
それを指差し、ローズは焦ったように甲高い声を上げた。悲鳴に近い声だった。
「ほ、ほら、いいのぉ!? このままじゃ、あのアダムって剣闘士は嬲り殺しよ!」
「それはあなたが命じてやらせていることではないですか。責任転嫁をしないでください」
「そうやって人の罪悪感を煽って、自分は高みの見物か? くだらねぇ戦い方だな」
双子がまったくアダムや剣闘士たちを気にする様子がないのを見て、ローズは顔を青ざめさせた。
そうしている間にも双子はそれぞれ武器を抜いて肉薄する。
「っ……!」
とうとうローズは、数秒の間だけ逡巡する素振りを見せた後、双子へと背中を向けてそのまま一目散に駆け出した。
「おや、逃げるのですか?」
「待ちやがれ、テメェ!」
双子はローズの背中を追う。
おれもまた隠れていた場所から抜け出して、慌てて舞台の上へと駆け出した。
幸いなことに、ローズが逃げ出したのと同時に、操られていた剣闘士たちの身体の自由が戻ったのだ。見れば、闘技場内にいる全員が、ローズの支配から解放されていた。
ローズが恐怖心によって心の均整を保てなくなり、神造兵器の効力が消えたのだろう。
そういえば今日、ハルトが男バレした時にも、ローズは怒りにかられて神造兵器の効力を解いてしまったらしい。彼女の神造兵器は強力だが、その分、力を行使しつづけるようには強靭な精神力とコントロールが求められるようだ。
おれはそんなことを考えながら、正気を取り戻した剣闘士たちをかきわけて舞台の上へとのぼった。そして、大量に血を流しているアダムへと近づき、傍らに膝をつく。
「おい、アダム。これを飲め」
「あ、あなたは……?」
「あの二人の上司だ。いいからこれを飲め」
おれは上着のポケットへ用意していた神薬をアダムの唇へと押し当てた。アダムはすこしだけ躊躇う様子を見せたものの、わずかに唇を開いてくれた。その隙間に押し込むようにして神薬を含ませる。
「ぅ……」
神薬を飲んだアダムの身体は、みるみるうちに傷が癒えていった。
見れば、さっきゼノンが無理やり外した関節も元に戻っているようだ。周囲の剣闘士たちは、アダムの傷が回復するのを見て「おお、アダムさん……!」「良かった、アダムさんを殺さないで済んだ」と涙を流しながら喜んでいた。
「シ――えっと、その! アダムを治療してくれたのか!」
「……驚いた。まさかアンタが、アダムのためにそれを使ってくれるなんてねぇ」
剣闘士たちの拘束から解放されたハルトとアメリも、こちらへ駆け寄ってきた。
二人とも周囲におれの正体がバレないように、おれの名前や神薬の名は出さないように気を遣ってくれている。
今ハルトはちょっと危なかったけどね!
「傷は治したが、血を失いすぎている。早くどこか安全な場所に――」
おれがそう告げた瞬間――あたりに、獣の唸り声が響いた。
異様な臭気に、ばっと声のした方向へと顔を向ける。するとそこには、先ほど背中をみせて逃げ出したローズがいた。
そんな彼女の背後には、銀色の毛皮を持った大きな狼――そう、コロッセオの地下で対戦相手用に飼育している魔獣を三頭、自身の下僕のように付き従えていた。
ローズは唇をにんまりと釣り上げ、勝ち誇ったような哄笑を上げる。
「アハハッ、言ってなかったかしらぁ!? パルファン・ドゥ・ローズで操れるのはねぇ、人間だけじゃないのよ?」
とはいえ、コロッセオは地下牢を設けている性質上、夜間でも無人とはならず、皇国軍の衛兵たちが巡回警備を行っている。
だが、おれたちが到着した時には、皇国軍の兵士たちはみんな戸惑うような表情でコロッセオの外で待機しているだけだった。
コロッセオの中からは、人の悲鳴や戦う物音が響いてきているというのに、誰も中へ入ろうとする様子がない。
そんな彼らにヴィクターが近づいていった。ヴィクターとゼノンはおれの護衛騎士なので、一般の兵士たちよりも地位は上だ。衛兵たちも二人の顔は知っていたようで、ヴィクターの存在に気がつくと、慌てて敬礼をした。
ちなみにおれとゼノンは、近くの建物の陰に隠れて会話を盗み聞きしている。
双子はともかく、おれがここにいることがバレたらあとあと面倒なことになるかもしれないからだ。そのため、おれはフード付きの外套を目深に被って顔も隠している。
「どうしたんですか、あなたたち。なぜ誰も中に入ろうとしないのです?」
「こ、これはヴィクター様……!」
「仰ることはごもっともなのですが、その……リリア様と四天王ローズ様のお二人から、中からどんな物音が聞こえようともコロッセオの中には入るなと言われておりまして」
「リリア様が、ですか?」
不思議そうな顔をするヴィクターに、衛兵がおずおずと説明を続ける。
「はい。最初はリリア様が一時間前ほどにこちらへお越しになったんです。お一人ではなく、お付きの方たちと共に来られまして……」
「そのリリア様が『革命軍が捕虜を奪還しようと企んでいるという情報が入り、父上の命令で捕虜を今から移送することになった。お前たちの中に革命軍の手のものが紛れ込んでいるかもしれないから、移送手続きは私たちだけで行う。全員、ただちに正面入口前で待機するように。私が許可を出すまでは何人たりとも中へ入ってはいけません』とおっしゃられて……」
「そしたら今度はローズ様がいらっしゃったんです。ローズ様も『なにか物音や悲鳴が聞こえても、絶対に誰も中へ入らないように。上への報告も不要』とおっしゃられて。ですが、ローズ様が入られた後、中からは戦いのような音が聞こえるし、ついさっきはなんだか爆発音まで聞こえて……自分達は、本当にこうしていていいのでしょうか?」
不安そうな衛兵たちに対し、ヴィクターは安心させるような笑みを浮かべた。
「あなたたちの不安も分かりますが、恐らくリリア様とローズ様にはなにかお考えがあるのでしょう。あのお二人がそこまで強く念を押した以上、命令を遵守するべきだと思います」
「や、やはりそうですよね!」
「ですが、それにしたって中からは尋常ではない音が……」
「それも安心してください、これから私と仲間たちでコロッセオの中の様子を見に行ってきます。シキ様付きの私たちであれば、無断で入ったとしてもさほど叱責を受けることはないでしょう」
「おお、それならば助かります!」
「ありがとうございます、ヴィクター様」
ホッとした様子の衛兵たちに感謝されているヴィクター。
うーむ。本性を知らないと、人当たりのよくて気遣いのできる好青年にしか見えないな。
そんなことを考えていたら、ヴィクターがこちらに戻ってきた。まあ、おかげで堂々と正面からコロッセオの中へ入れるようになったからありがたい。
しかし、戻ってきたヴィクターも、話を聞いていたゼノンも怪訝そうな表情をしている。
「ローズは分かるけれど、なんであの女の名前が出てくるんだ?」
「確かリリア様は皇城で軟禁状態のはずですよね? 革命軍を助けるために皇城を抜け出してきたということでしょうか?」
「いや。多分、ここに来たのは本物のリリア嬢じゃないな」
「誰かの変装ってことですか?」
「変装といえば変装だが……恐らく神造兵器だ。変わりたい者の身体の一部を材料にすることで、その人間そっくりに変身できる神造兵器がある」
「ふうん。じゃあ、革命軍の誰かがあの女に化けたってことか」
「だろうな。リリア嬢の身体の一部――髪や爪なら、革命軍ならいくらでも手に入れられるだろう。本人に頼んでもらっておけばいいだけだ」
「……そんな神造兵器もあるのですね。それにしても、シキ様は本当に秘密の多い方ですねぇ」
呟くように告げられたヴィクターの言葉に、どう反応していいか分からず黙り込んでしまう。
だが、ヴィクターは責めるつもりで言ったわけではないらしい。空気を変えるためか、続けておれに質問をしてきた。
「革命軍が化けたリリア様が『中へ入るな』と言った理由は分かりますが、ローズ様が同じことを言った理由はなんでしょうか? 神造兵器の能力に巻き込んでしまうからでしょうか?」
「だろうな。あまり人数が多いと、細かいコントロールは出来ないのだろう」
「っと……そろそろだぜ、シキ様!」
おれたち三人は、とうとうコロッセオの中へとたどり着いた。
正面入口から中へと入ってきたおれたちは、コロッセオの舞台の正面の観客席に出てきた。ちょうどこの前、皇族専用の観覧席で観戦をした真反対の席だ。
そして――目の前に広がっていたのは、混沌とした戦いだった。
「――逃げてくれ、頼む! 自分じゃ止められなくて……ぁ、アアッ!?」
「くそっ、違うんだ、これは身体が勝手に……!」
舞台の上や観客席では、あちこちで戦闘が起きている。
どうやらおれの予想通り、コロッセオに到着したローズは『パルファン・ドゥ・ローズ』を発動させたらしい。革命軍の捕虜たちは泣き叫びながら強制的に戦わされ、救出に来た革命軍たちは彼らを傷つけないように必死で応戦している。
人々の怒号や剣戟の音は絶え間なく響き、石畳に血しぶきが飛び散る。
あまりにいたましく、血生臭い戦いの光景に、思わず立ちすくんでしまう。
そんなおれの耳に、ある年若い女性の声が聞こえてきた。
どこかで聞いたことのある声だ。
「みんな、今ハルトが戦ってくれているわ! ハルトがローズを倒してくれれば全て終わる! だから、あともう少しだけ頑張って!」
声の主の顔を見て、おれは息を呑んだ。
あの子は――間違いない、あの日、ウルガ族の街で出会った女の子だ!
そうか、ハルトから聞いてはいたけれど……本当に生きていてくれたんだ……!
思いがけず再び見ることの出来た少女の顔に、胸がぐっと熱くなる。その胸に灯った熱は、怖気づきそうになった心に勇気を与えてくれた。
「大丈夫よ、貴方達の意思じゃないことは分かってるわ!」
「あと少しの辛抱だ、みんな耐えてくれ!」
ウルガ族の少女――確か、名前はナミカだ。
そんなナミカの力強い言葉に周囲にいる人々も心を奮い立たせ、操られている人たちに向かって声をかけ始めた。みんなの表情からは希望を感じる。
見れば、確かに周囲ではなおも戦いが続いているが……『ひよレジ』であったような悲壮さは感じられない。
『ひよレジ』の時は、革命軍は剣闘士たちが自分たちに襲い掛かってきたのか理由が分からず、混乱のあまり統率を失った。
だが、今はローズが元凶であることが分かっているためか、原作の時ほど混乱はしておらず、仲間同士の連携も失われていない。見たところ、怪我を負っている者はいても死人は出ていないようだ。
それに、コロッセオの周囲の壁は一部が破壊されて、そこから外気が流れ込んでいた。おかげで、操られている人数も原作の時よりは少ないようだ。
そうか――ハルトとアメリが間に合ったんだ。
彼らがみんなにローズの能力や対策を教えたおかげで、被害を最小限に食い止められたのだろう。
ならば、おれもこうしている場合じゃない!
「どうやらハルトがローズと戦っているらしいな。一体どこに……」
「いました、あの舞台の上ですね」
「へぇ、あのアダムっつー剣闘士もいやがるぜ」
ヴィクターが指差した方向――コロッセオの中央舞台を見ると、確かに、ローズとアダム、アメリ、ハルトたちの姿を見ることができた。
だが、状況はハルトたちが不利のようだ。
「――あはは! ほらほら、あたしを殺したいなら邪魔者をどうにかしないとねぇ~?」
「くそっ、卑怯だぞ! 今すぐ仲間を解放しろ!」
ローズは神造兵器を使って、剣闘士や捕虜たちを舞台上に上がらせて肉の盾としている。
ハルトは操られている者たちの攻撃を避けることに精一杯で、なかなか反撃に転じることができないようだ。
そしてアメリは、剣闘士アダムと戦っていた。アダムもまた、ローズの神造兵器によって操られているようだ。苦渋の表情を浮かべながら、アメリへ向かって攻撃を続けている。
「革命軍、このままじゃ共倒れになる! 自分のことはいいから、あの女を倒せ!」
「くっ、そうは言っても……!」
アメリもまたなかなか決断できずにいるようで、防戦一方だ。
とはいえ、こちらも原作と比べたらマシな展開だ。原作ではアメリもローズの支配下に入ってしまい戦力にならず、剣闘士アダムは自分の手で剣闘士の仲間を殺すことになってしまった。
だが、おれの忠告が功を奏したのか、ハルトとアメリは神造兵器に操られずにいるようだ。
とはいえ――このままではジリ貧だ。
一度、『パルファン・ドゥ・ローズ』の香水を吸い込んでしまうと、ローズが能力を解かない限り、しばらくの間はローズの支配下に置かれてしまう。
どうしたものかと考えていた矢先、ローズが醜悪な笑い声を発した。
「アハハ、ほんとイイ気味! そこのアンタ、さっきはよくもこのあたしを騙してくれたわね! アンタのせいで、アンタの仲間たちは今から殺し合いをするのよ? せいぜい目に焼き付けなさい?」
ローズがそう言って、指をパチリと鳴らす。
すると、ハルトとアメリに向かって剣をふるっていた剣闘士たちが――今度はお互いに向かって、剣を振り上げ始めた。それはアダムもそうだった。
「なっ……!? か、革命軍! 今すぐ自分を殺せ!」
アダムが引きつった表情で叫ぶも、ハルトとアメリは間に合わない。
ローズに操られた剣闘士たちがいっせいに二人にしがみつき、アダムを邪魔させまいとしたからだ。二人は懸命にもがいているが、その前に、アダムの持った剣が、仲間である剣闘士へと振り下ろされる――
「や、やめろぉおおッ!?」
ギィン、と甲高い音が響く。
そしてアダムは、あっけにとられた表情で目の前の人間を呆然と見つめていた。
そう――アダムの前に立ちふさがったヴィクターをである。
おれがヴィクターとゼノンに指示を出して、二人にアダムを止めるように向かってもらったのだ。なんとか間に合ってくれたヴィクターは、持っていた刀でアダムの剣を根本から切り飛ばした。
なお、ヴィクターもゼノンも革命軍に顔が割れているので、今はおれと同様に、外套のフードと口覆いで顔を隠している。口を覆う布は、ローズの香水を吸い込まないようにするためでもある。
「よっと!」
すかさず、唖然としているアダムの背後にまわるゼノン。
操られているアダムはなおも戦闘を続けようとしたが、それよりも早く、ゼノンがアダムの両腕を背中側にまとめた。次の瞬間、ゴキン、という嫌な音が響く。
「ぐぅ、ぉっ……!?」
「わりーな、ちょっと関節外したぜ。手を縛っても、あんたの馬鹿力ですぐに解かれちまいそうだからさ」
「なっ、なるほど……感謝する……ぐっ、ぅ」
両腕の関節を外されたことで戦闘を続けることができなくなったアダムは、がくりと地面に膝をついた。けっこうな激痛だろうに、それでも律儀にゼノンに礼を述べてるあたり、彼の人の良さが窺える。
なお、ハルトとアメリも二人の覆面の闖入者に驚いた表情をしていたが、すぐにそれがヴィクターとゼノンだということに気がついたようだ。
「アンタたち、どうしてここに……!?」
「オレたちを助けに来てくれたのか?」
「ええ、残念ながら。私は別にあなたたちが皆殺しになっても全然かまわないのですが」
「まあ、うちのご主人サマのお願いだからな」
ハルトとアメリと同様に、ローズもまた覆面の男たちの正体に気がついたらしい。
「その声……シキちゃんのところの双子ちゃんかぁ。ふうん、リリアちゃんが革命軍に協力してることを黙ってたのみならず、まさか革命軍を直接助けに来るなんてねぇ……」
にやついた笑みを浮かべて、再び指を鳴らそうとするローズ。
その動作を見て、ハルトとアメリ、アダムをはじめとする剣闘士たちは顔をこわばらせて身構える。
「でも、誰が来たってなにも変わらないわよぉ? また剣闘士たちに殺し合いを演じてもらうだけだもの!」
「ええ、どうぞご勝手に」
「べつにクズどもが何人死のうと、俺らには関係ねーしな」
「…………え?」
双子の平然とした様子に、ぽかんとした表情になるローズ。
というか、離れて様子をうかがっていたおれもぎょっとした。
えっ、ちょっ、二人とも?
「な、なにそれ? あ、あんたたち、革命軍に協力するためにここに来たんでしょ!?」
「ええ。主から一時的に革命軍に協力しろ、とは言われました。でも、彼らを助けろとかそういう指示は受けてませんので」
「というか、こいつらが死のうが、殺し合いをさせられようが俺らはどうでもいいし。それより早く帰ってうちのご主人サマに夕飯食わせてやんねーと」
隠れながら二人の言葉を聞いていたおれは、思わず頭を抱えた。
そ、そうだった……ついつい忘れてたけれど、あの二人倫理観ゼロに近いんだった……
見れば、おれだけではなく舞台の上にいるハルトやアメリ、アダムたち剣闘士もドン引きした表情になっている。
「そ、そんなのハッタリでしょ! そんな平気な顔してあたしを騙そうったって、そうはいかないんだから!」
ローズは顔をひきつらせて、指をぱちんと鳴らした。
次の瞬間、双子の近くにいた剣闘士たちがわっとアダムへと襲いかかった。アダムは両腕の関節を外されたまま、力なく地面に座り込んでいる。
ハルトとアメリはまだ剣闘士たちにしがみつかれており、助けにいけそうにもない。
まずい、あのままじゃアダムが危ない――!
だが、焦って身を乗り出したおれとは真逆に、双子の表情はいたって冷静なままだった。
冷静な表情のまま――アダムを守ろうとすることも、剣闘士たちを止めようともせず。二人ともまっすぐにローズへと向かって走り出す。
「なっ!?」
双子がアダムの窮地を意に介さず、ローズへと一直線に攻撃をしかけたのをみて、周囲の人間は目を見張った。
その間にも操られた剣闘士たちは、地面に座るアダムへと剣をふるい、彼の身体を傷つける。
「ぐぅ、ゥウッ!」
切りつけられたアダムは苦しそうなうめき声を上げる。
それを指差し、ローズは焦ったように甲高い声を上げた。悲鳴に近い声だった。
「ほ、ほら、いいのぉ!? このままじゃ、あのアダムって剣闘士は嬲り殺しよ!」
「それはあなたが命じてやらせていることではないですか。責任転嫁をしないでください」
「そうやって人の罪悪感を煽って、自分は高みの見物か? くだらねぇ戦い方だな」
双子がまったくアダムや剣闘士たちを気にする様子がないのを見て、ローズは顔を青ざめさせた。
そうしている間にも双子はそれぞれ武器を抜いて肉薄する。
「っ……!」
とうとうローズは、数秒の間だけ逡巡する素振りを見せた後、双子へと背中を向けてそのまま一目散に駆け出した。
「おや、逃げるのですか?」
「待ちやがれ、テメェ!」
双子はローズの背中を追う。
おれもまた隠れていた場所から抜け出して、慌てて舞台の上へと駆け出した。
幸いなことに、ローズが逃げ出したのと同時に、操られていた剣闘士たちの身体の自由が戻ったのだ。見れば、闘技場内にいる全員が、ローズの支配から解放されていた。
ローズが恐怖心によって心の均整を保てなくなり、神造兵器の効力が消えたのだろう。
そういえば今日、ハルトが男バレした時にも、ローズは怒りにかられて神造兵器の効力を解いてしまったらしい。彼女の神造兵器は強力だが、その分、力を行使しつづけるようには強靭な精神力とコントロールが求められるようだ。
おれはそんなことを考えながら、正気を取り戻した剣闘士たちをかきわけて舞台の上へとのぼった。そして、大量に血を流しているアダムへと近づき、傍らに膝をつく。
「おい、アダム。これを飲め」
「あ、あなたは……?」
「あの二人の上司だ。いいからこれを飲め」
おれは上着のポケットへ用意していた神薬をアダムの唇へと押し当てた。アダムはすこしだけ躊躇う様子を見せたものの、わずかに唇を開いてくれた。その隙間に押し込むようにして神薬を含ませる。
「ぅ……」
神薬を飲んだアダムの身体は、みるみるうちに傷が癒えていった。
見れば、さっきゼノンが無理やり外した関節も元に戻っているようだ。周囲の剣闘士たちは、アダムの傷が回復するのを見て「おお、アダムさん……!」「良かった、アダムさんを殺さないで済んだ」と涙を流しながら喜んでいた。
「シ――えっと、その! アダムを治療してくれたのか!」
「……驚いた。まさかアンタが、アダムのためにそれを使ってくれるなんてねぇ」
剣闘士たちの拘束から解放されたハルトとアメリも、こちらへ駆け寄ってきた。
二人とも周囲におれの正体がバレないように、おれの名前や神薬の名は出さないように気を遣ってくれている。
今ハルトはちょっと危なかったけどね!
「傷は治したが、血を失いすぎている。早くどこか安全な場所に――」
おれがそう告げた瞬間――あたりに、獣の唸り声が響いた。
異様な臭気に、ばっと声のした方向へと顔を向ける。するとそこには、先ほど背中をみせて逃げ出したローズがいた。
そんな彼女の背後には、銀色の毛皮を持った大きな狼――そう、コロッセオの地下で対戦相手用に飼育している魔獣を三頭、自身の下僕のように付き従えていた。
ローズは唇をにんまりと釣り上げ、勝ち誇ったような哄笑を上げる。
「アハハッ、言ってなかったかしらぁ!? パルファン・ドゥ・ローズで操れるのはねぇ、人間だけじゃないのよ?」
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