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ランパード
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魔玉搭載監獄型結界【鋼鉄の処女】
結界内へ投獄された瞬間、マモン、バアル、インキュバス、サキュバス、リリム、アルラウネ、ローパー等のあらゆる魔物の固有スキルが発動し、閉じ込められた囚人は術者が設定した状態異常に陥ってしまう。
脱出するには術者の魔力を超える力が必要とされ、結界内において術者に逆らう事はほぼ不可能となる。
石棺が重々しく開き、中から魔障に満ちた黒煙が吹き出す。
清々しい顔をしたテツオに手を引かれ、神々しい波動を放つ聖女アリスが現れた。
「テツオ様!」
「エナ、待たせたな」
二時間以上に渡る陵辱も、時間操作により実質二十分しか経っていない。
しかし、短い時間でも、エナの心を掻き乱すには効果的だった。
「アリス様、大丈夫ですか?」
「ご安心ください、エナ様。侯爵様は紳士的に対話してくださり、お互い信頼し合える事が出来ました。今後、私は聖女として、微力ながら侯爵様を手助けしていければと考えております」
「そ、それは素晴らしい歩み寄りですね」
エナは精一杯の気丈な態度で俺に近付くと、アリスから引き離すように腕を引っ張る。
その目は少し涙ぐんでいた。
焼き餅を焼く彼女はとても可愛い。
今夜はたっぷりと可愛いがってやるとしよう。
「俺はエナと話がある。お前は下がっていい」
「はい、畏まりました」
アリスは少し寂しそうにしながらも、恭しく挨拶し、寝所へと戻っていく。
扉の隙間から贅を尽くした豪華なベッドがチラリと見えた。
ふひひ、いずれこの宮殿で乱交パーティもいいだろう。
そんな事を夢想しつつ、エナの脇に手を回して胸を掴み、転移してから気付く。
部屋の隅でずっと平伏す戦乙女五人の存在をすっかりと忘れてしまっていた。
————————
デカスホーム
プライベートルーム
最初は村娘、次は巫女兼学生、遂には聖女。
きっかけ一つで成長し、垢抜け、洗練されていったエナ。
表面上では処女、いや、肉体的に間違いなく処女だが、何度も逢瀬を重ねた結果、内面は俺とエッチがしたくてウズウズしているどエロ女である。
経験豊富な聖女という非常識な存在を、俺は生み出してしまったのだ!
ベッド上へ転移と同時に、エナの膣内へ即ズボ。
一つ、何を食ってここまで大きくなったのか分からない、そしてただひたすら柔らかいおっぱい。
二つ、内臓がどこにあるのか心配になるくらい薄っぺらい腹。
三つ、男の欲望をしっかりと受け止めてくれる桃尻。
四つ、何も知らなそうなおっとりした慈愛に満ちた顔。
五つ、極め付けは全身が性感帯。
そこから導かれし解答は、抜かずの中出し五連発。
どうやら、今夜はちんぽの乾く暇が無いようだ。
————夜は更けていく…………
両脚で挟み込むようにエナを股枕させ、右脚はエナの尻の上に乗せ寛ぐ。
彼女はイチモツを愛おしそうに眺めながら、俺に話しかける。
「ここは理想郷のようなところですね」
「理想郷?」
え?もしやここがハーレムだとバレてる?
「エルフや精霊、竜種、魔族と、本来であれば決して相容れない存在達が、ご主人様の元に集っております」
「お、おお…………、俺は平和を愛する男だからな」
「素敵なお考えです」
エナは俺を見つめて瞳を潤ませていた。
危ねぇ、デカスドーム内を見透かしてやがる。聖女の力、やはり侮り難し。
「なぁ、エナ。聖女にもなれた事だし、そろそろ俺のところに戻らないか?」
「ありがとうございます。嬉しいです……とても。
ですが、テツオ様、私はまだ学徒の身であり、駆け出しの聖女に過ぎません。まだまだ多くの事を学ぶ時間が必要なのです」
「つまり、俺の誘いを断る、と?」
「…………テツオ様、この世界には多くの傷付いた方がいらっしゃいます。
聖女の力を求める民の声があるならば、出来る限り応えていきたいのです。
聖女は民の希望でなければなりません。
それでも、知っておいて下さい。
テツオ様、私の心は常にテツオ様のものです。どれだけ離れていようとも、私の愛は決して変わる事はありません」
エナの涙がイチモツに垂れる。
ふむ、高尚な志は結構だが、聖女ばかりがその重荷を背負う事は無い。
民の救済は国のすべき仕事。
それを聖女に押し付けている。
このままでは、エナは永遠に多忙なままだ。
それでも、エナの意思は固い。
【洗脳】してまでその意思を捻じ曲げる必要もない。
「エナの気持ちはよく分かった。まだ夜は長い。続きをするとしよう」
「あっ…………」
試したい事がある。
前にエナの部屋でした天使とのセックスが忘れられないのだ。
あれをもう一度味わいたい。
天使、出て来てくれ!
————————
時間は、【凍てつく永劫】クランホーム【古神殿】にて、ベルトンゲンが暴れに暴れ、パーティがお開きになった頃に遡る。
クランマスター・ランパードはベルトンゲンを含む四人構成のパーティで、【大食洞窟】新階層である二十階層へと来ていた。
新階層の探索は早いもの勝ち。
早く貴重な鉱石や魔物の素材、未発見の宝箱などを、他のクランや冒険者よりも早く見つけ出したい。
クランと同じ名を冠するパーティ【凍てつく永劫】は、前述したクランマスターである魔法師ランパードとニースの鬼こと重戦士ベルトンゲンに、剣士テリー、回復術師ロビンソンを加えた男性冒険者四名で構成され、その実力はアリスが所属するパーティ【絶対零度】に匹敵する。
デリーの剣技はニースで一、二を競う程と謳われ、ロビンソンの回復魔術はクランに並ぶ者はいない。
先行隊としてはクラン随一といっても過言では無い。
「講義や指導で日々多忙な両名と再びパーティを組む事が出来て、これほど頼もしいと思った事はないよ」
「何を言うランパード。お前こそクラン運営には手を焼いているんだろう?俺達がクランを離れ王都へ出張れるのもお前の采配のお陰さ」
回復術師ロビンソンがランパードを労う。
「いや、運営の殆どはクルトワが仕切ってる。俺は団員達の機嫌取りをしてるだけさ」
「人事は立派な職務ゆえ。お主がいるからこそのクランぞ。クルトワなんぞは金の亡者に過ぎん」
剣士テリーがクルトワに毒付く。
「グハハ、下らん話はそのくらいにして早く潜らせろランパード。【大食洞窟】が腹を空かせて待っとるわい」
「そうだなベルトンゲン。俺も早く暴れたい気分なんだ」
「主らだけでは無いぞ、儂も実戦を心待ちにしておったわ」
「血の気の多い奴等だ。あんまり俺の仕事を増やすなよ」
三人が揃って笑うと、ロビンソンが肩をすくめて呆れている。
「さぁ、いくぞ!クルトワを黙らせる程の成果を持ち帰ろう!」
ランパードが転移装置に手を翳すと、【大食洞窟】二十階層へ一瞬で到着する。
ベルトンゲンが【始まりの間】の重々しい扉を開けると、眼前には地下迷宮とは思えぬ不思議な光景が広がっていた。
上層で見られる苔がかった仄暗い岩壁では無く、綺麗に磨かれた翠鉱石の床と壁。
壁側には禍々しい悪魔が彫られた円柱が立ち並び、奥へ延々と続いている。
「まるで城のようだ…………」
ランパードがボソリと呟く。
「フフ、人間に作れる代物じゃないがな。これは規模が大きすぎる」
「グハハ、魔物が作ったんじゃないのか?ガタイのいいヤツいっぱいいるだろ?トロールとか、ミノタウロスとか」
「ふむう…………」
「どうしたんだい?テリー」
ロビンソンやベルトンゲンが談笑する一方で、難しい顔をしているテリーに気付き、ランパードが訊ねた。
「そもそも地下迷宮とは、外敵の侵入を阻止する為に作られるものだ?
罠の類いならともかく豪華な装飾を施すのは、作り手に何らかの意図があると察する。
それは、力の誇示か、崇拝なのか分からぬが」
「該当するとすれば…………魔王、か」
危険地帯には、それに認定されるだけの強大な力の持ち主が存在する。
それは龍族や他の種族である場合もあるが、目の前に悪魔の彫像がある以上、魔王の可能性が高いと言わざるを得ない。
四人の間に緊張が走った。
だがそれは決して萎縮し恐怖した訳では無く、この地で先人達がずっと追い求めていた長い冒険譚の終わりを予感したからである。
「俺達の代で終わらせるんだ」
「ああ」
「無論」
「グハハ、燃えてきたぜぇ!」
四人は円陣を組み、再び結束を固める。
そんな時だった。
突然、ロビンソンが口から血を吹き、膝から崩れ落ちる。
並のパーティであれば、混乱したり狼狽したりするところだろう。
それでも、彼らは金等級の中でもトップクラスに君臨する冒険者であった。
彼らは豊富な経験によって培われた対応力を発揮する。
ランパードは、一瞬で取り出したハイポーションをロビンソンに振り撒く。
ベルトンゲンは、ロビンソンが襲われた背後へ向け【咆哮】を上げ、空間を激しく震わせた。
テリーは素早く剣を構え、目を閉じ僅かな気配を読み取りだす。
ロビンソンは、倒れながらも自身に対して【回復魔法】を発動しようとしていた。
全員がやるべき事、できる事を、考える前に行動に移す。
布が擦れる程度のほんの僅かな雑音を、既にテリーが感じ取っていた。
「咆哮にて転びし音あり、恐らくは姿見えざる敵!」
【見破る氷霜】
間髪入れずランパードが【氷系魔法】を発動。
術師を中心に、細かい氷の結晶が放射状に射出されていく。
他の三人の体に付着した霜がキラキラと光っている。
もし迷彩、あるいは透明化した敵がいた場合、この氷の霜が触れればたちまちのうちに姿が露見してしまうだろう。
しかし、その魔法は敵に届く事は無かった。
刺傷から完全に回復していたロビンソンが、胸から激しく出血し、再び膝から崩れ落ちる。
口から紫色の泡を吹き出しながら、仲間に情報を伝える。
「すまんっ!また刺さ、れたっ!」
「ロビンソンが狙われている!毒かもしれない!」
「クッソ!どこだぁ!」
「察知!」
テリーが何も無い空間へ向け、剣を抜き、斬り付けた。
金属がぶつかり合う甲高い音が鳴り響く。
「姿が見えぬ敵か。つ、強い…………」
テリーの足元で鈍い金属音が響く。
剣が落ちたようだ。
その柄には、切り落とされた手首が握られたままだった。
「不覚…………ッ!」
ランパードはロビンソンから生気が一気に引いていくのをただ見ているしか無かった。
姿形すら分からない敵に、テリーの手を落とす程の力量に、リーダーとしての選択を迫られる。
「ロビンソンが死んだっ!撤退するっ!」
苦渋の決断だった。
「仲間殺られて引けるかぁっ!出てきやがれっ!卑怯者がーッ!」
完全に頭に血がのぼった強戦士は、何も無い空間へ向け、ひたすら拳を振るい続ける。
ところが、ベルトンゲンの動きが徐々に遅くなっていく。
「なん…………だ?身体、が…………」
「それ以上動くな!お前、身体中から出血しているぞ!気付いてないのかッ!」
ランパードの指摘でようやく冷静さを取り戻したベルトンゲンは、自身の身体の異変に気付く。
「なんだ、何か刺さってやがらぁ」
不思議な事にベルトンゲンはあまり痛みを感じてなかったが、出血している部分を触ると短刀のような感触があった。
その見えない透明な刃物は身体の至る所に突き刺さっている。
「う、うおおおおっ?」
いつの間にか見えない刃物が身体中に刺さっていた恐怖から、ベルトンゲンは狂ったように手当たり次第それを抜き始めた。
抜いた箇所から次々に大量の血が吹き出していく。
「不用意に抜く馬鹿がいるか!ロビンソンはもういないんだぞ!」
「うおっ?おっ?おおっ?」
ベルトンゲンは大量出血により意識レベルが急激に低下していった。
それでも体力が桁違いなのか、その場に立ったまま、白目を剥いて上半身を揺らしている。
ランパードに出来る事は出血している箇所を凍らせ、一時的に存命させるだけだった。
回復出来なければ、死を引き延ばすだけだろう。
打開策を探し続けていたランパードだったが、ここまで崩れてしまってはどうしようもできなかった。
未だ俺だけ狙われていない。魔法を警戒しているのか。各個撃破は複数戦の基本。テリーだけ連れて逃げる、か?それだけは出来ない。
逡巡している最中、ランパードは自身の手足に刃物が刺さっている事にようやく気付く。
全身が痺れている。仕込み毒だ。
まんまと一人ずつ倒されてしまったようだ。
「クソォッ!」
————フフフ、チェックメイトのようですね。
何も無いところから声が聞こえてきた。
結界内へ投獄された瞬間、マモン、バアル、インキュバス、サキュバス、リリム、アルラウネ、ローパー等のあらゆる魔物の固有スキルが発動し、閉じ込められた囚人は術者が設定した状態異常に陥ってしまう。
脱出するには術者の魔力を超える力が必要とされ、結界内において術者に逆らう事はほぼ不可能となる。
石棺が重々しく開き、中から魔障に満ちた黒煙が吹き出す。
清々しい顔をしたテツオに手を引かれ、神々しい波動を放つ聖女アリスが現れた。
「テツオ様!」
「エナ、待たせたな」
二時間以上に渡る陵辱も、時間操作により実質二十分しか経っていない。
しかし、短い時間でも、エナの心を掻き乱すには効果的だった。
「アリス様、大丈夫ですか?」
「ご安心ください、エナ様。侯爵様は紳士的に対話してくださり、お互い信頼し合える事が出来ました。今後、私は聖女として、微力ながら侯爵様を手助けしていければと考えております」
「そ、それは素晴らしい歩み寄りですね」
エナは精一杯の気丈な態度で俺に近付くと、アリスから引き離すように腕を引っ張る。
その目は少し涙ぐんでいた。
焼き餅を焼く彼女はとても可愛い。
今夜はたっぷりと可愛いがってやるとしよう。
「俺はエナと話がある。お前は下がっていい」
「はい、畏まりました」
アリスは少し寂しそうにしながらも、恭しく挨拶し、寝所へと戻っていく。
扉の隙間から贅を尽くした豪華なベッドがチラリと見えた。
ふひひ、いずれこの宮殿で乱交パーティもいいだろう。
そんな事を夢想しつつ、エナの脇に手を回して胸を掴み、転移してから気付く。
部屋の隅でずっと平伏す戦乙女五人の存在をすっかりと忘れてしまっていた。
————————
デカスホーム
プライベートルーム
最初は村娘、次は巫女兼学生、遂には聖女。
きっかけ一つで成長し、垢抜け、洗練されていったエナ。
表面上では処女、いや、肉体的に間違いなく処女だが、何度も逢瀬を重ねた結果、内面は俺とエッチがしたくてウズウズしているどエロ女である。
経験豊富な聖女という非常識な存在を、俺は生み出してしまったのだ!
ベッド上へ転移と同時に、エナの膣内へ即ズボ。
一つ、何を食ってここまで大きくなったのか分からない、そしてただひたすら柔らかいおっぱい。
二つ、内臓がどこにあるのか心配になるくらい薄っぺらい腹。
三つ、男の欲望をしっかりと受け止めてくれる桃尻。
四つ、何も知らなそうなおっとりした慈愛に満ちた顔。
五つ、極め付けは全身が性感帯。
そこから導かれし解答は、抜かずの中出し五連発。
どうやら、今夜はちんぽの乾く暇が無いようだ。
————夜は更けていく…………
両脚で挟み込むようにエナを股枕させ、右脚はエナの尻の上に乗せ寛ぐ。
彼女はイチモツを愛おしそうに眺めながら、俺に話しかける。
「ここは理想郷のようなところですね」
「理想郷?」
え?もしやここがハーレムだとバレてる?
「エルフや精霊、竜種、魔族と、本来であれば決して相容れない存在達が、ご主人様の元に集っております」
「お、おお…………、俺は平和を愛する男だからな」
「素敵なお考えです」
エナは俺を見つめて瞳を潤ませていた。
危ねぇ、デカスドーム内を見透かしてやがる。聖女の力、やはり侮り難し。
「なぁ、エナ。聖女にもなれた事だし、そろそろ俺のところに戻らないか?」
「ありがとうございます。嬉しいです……とても。
ですが、テツオ様、私はまだ学徒の身であり、駆け出しの聖女に過ぎません。まだまだ多くの事を学ぶ時間が必要なのです」
「つまり、俺の誘いを断る、と?」
「…………テツオ様、この世界には多くの傷付いた方がいらっしゃいます。
聖女の力を求める民の声があるならば、出来る限り応えていきたいのです。
聖女は民の希望でなければなりません。
それでも、知っておいて下さい。
テツオ様、私の心は常にテツオ様のものです。どれだけ離れていようとも、私の愛は決して変わる事はありません」
エナの涙がイチモツに垂れる。
ふむ、高尚な志は結構だが、聖女ばかりがその重荷を背負う事は無い。
民の救済は国のすべき仕事。
それを聖女に押し付けている。
このままでは、エナは永遠に多忙なままだ。
それでも、エナの意思は固い。
【洗脳】してまでその意思を捻じ曲げる必要もない。
「エナの気持ちはよく分かった。まだ夜は長い。続きをするとしよう」
「あっ…………」
試したい事がある。
前にエナの部屋でした天使とのセックスが忘れられないのだ。
あれをもう一度味わいたい。
天使、出て来てくれ!
————————
時間は、【凍てつく永劫】クランホーム【古神殿】にて、ベルトンゲンが暴れに暴れ、パーティがお開きになった頃に遡る。
クランマスター・ランパードはベルトンゲンを含む四人構成のパーティで、【大食洞窟】新階層である二十階層へと来ていた。
新階層の探索は早いもの勝ち。
早く貴重な鉱石や魔物の素材、未発見の宝箱などを、他のクランや冒険者よりも早く見つけ出したい。
クランと同じ名を冠するパーティ【凍てつく永劫】は、前述したクランマスターである魔法師ランパードとニースの鬼こと重戦士ベルトンゲンに、剣士テリー、回復術師ロビンソンを加えた男性冒険者四名で構成され、その実力はアリスが所属するパーティ【絶対零度】に匹敵する。
デリーの剣技はニースで一、二を競う程と謳われ、ロビンソンの回復魔術はクランに並ぶ者はいない。
先行隊としてはクラン随一といっても過言では無い。
「講義や指導で日々多忙な両名と再びパーティを組む事が出来て、これほど頼もしいと思った事はないよ」
「何を言うランパード。お前こそクラン運営には手を焼いているんだろう?俺達がクランを離れ王都へ出張れるのもお前の采配のお陰さ」
回復術師ロビンソンがランパードを労う。
「いや、運営の殆どはクルトワが仕切ってる。俺は団員達の機嫌取りをしてるだけさ」
「人事は立派な職務ゆえ。お主がいるからこそのクランぞ。クルトワなんぞは金の亡者に過ぎん」
剣士テリーがクルトワに毒付く。
「グハハ、下らん話はそのくらいにして早く潜らせろランパード。【大食洞窟】が腹を空かせて待っとるわい」
「そうだなベルトンゲン。俺も早く暴れたい気分なんだ」
「主らだけでは無いぞ、儂も実戦を心待ちにしておったわ」
「血の気の多い奴等だ。あんまり俺の仕事を増やすなよ」
三人が揃って笑うと、ロビンソンが肩をすくめて呆れている。
「さぁ、いくぞ!クルトワを黙らせる程の成果を持ち帰ろう!」
ランパードが転移装置に手を翳すと、【大食洞窟】二十階層へ一瞬で到着する。
ベルトンゲンが【始まりの間】の重々しい扉を開けると、眼前には地下迷宮とは思えぬ不思議な光景が広がっていた。
上層で見られる苔がかった仄暗い岩壁では無く、綺麗に磨かれた翠鉱石の床と壁。
壁側には禍々しい悪魔が彫られた円柱が立ち並び、奥へ延々と続いている。
「まるで城のようだ…………」
ランパードがボソリと呟く。
「フフ、人間に作れる代物じゃないがな。これは規模が大きすぎる」
「グハハ、魔物が作ったんじゃないのか?ガタイのいいヤツいっぱいいるだろ?トロールとか、ミノタウロスとか」
「ふむう…………」
「どうしたんだい?テリー」
ロビンソンやベルトンゲンが談笑する一方で、難しい顔をしているテリーに気付き、ランパードが訊ねた。
「そもそも地下迷宮とは、外敵の侵入を阻止する為に作られるものだ?
罠の類いならともかく豪華な装飾を施すのは、作り手に何らかの意図があると察する。
それは、力の誇示か、崇拝なのか分からぬが」
「該当するとすれば…………魔王、か」
危険地帯には、それに認定されるだけの強大な力の持ち主が存在する。
それは龍族や他の種族である場合もあるが、目の前に悪魔の彫像がある以上、魔王の可能性が高いと言わざるを得ない。
四人の間に緊張が走った。
だがそれは決して萎縮し恐怖した訳では無く、この地で先人達がずっと追い求めていた長い冒険譚の終わりを予感したからである。
「俺達の代で終わらせるんだ」
「ああ」
「無論」
「グハハ、燃えてきたぜぇ!」
四人は円陣を組み、再び結束を固める。
そんな時だった。
突然、ロビンソンが口から血を吹き、膝から崩れ落ちる。
並のパーティであれば、混乱したり狼狽したりするところだろう。
それでも、彼らは金等級の中でもトップクラスに君臨する冒険者であった。
彼らは豊富な経験によって培われた対応力を発揮する。
ランパードは、一瞬で取り出したハイポーションをロビンソンに振り撒く。
ベルトンゲンは、ロビンソンが襲われた背後へ向け【咆哮】を上げ、空間を激しく震わせた。
テリーは素早く剣を構え、目を閉じ僅かな気配を読み取りだす。
ロビンソンは、倒れながらも自身に対して【回復魔法】を発動しようとしていた。
全員がやるべき事、できる事を、考える前に行動に移す。
布が擦れる程度のほんの僅かな雑音を、既にテリーが感じ取っていた。
「咆哮にて転びし音あり、恐らくは姿見えざる敵!」
【見破る氷霜】
間髪入れずランパードが【氷系魔法】を発動。
術師を中心に、細かい氷の結晶が放射状に射出されていく。
他の三人の体に付着した霜がキラキラと光っている。
もし迷彩、あるいは透明化した敵がいた場合、この氷の霜が触れればたちまちのうちに姿が露見してしまうだろう。
しかし、その魔法は敵に届く事は無かった。
刺傷から完全に回復していたロビンソンが、胸から激しく出血し、再び膝から崩れ落ちる。
口から紫色の泡を吹き出しながら、仲間に情報を伝える。
「すまんっ!また刺さ、れたっ!」
「ロビンソンが狙われている!毒かもしれない!」
「クッソ!どこだぁ!」
「察知!」
テリーが何も無い空間へ向け、剣を抜き、斬り付けた。
金属がぶつかり合う甲高い音が鳴り響く。
「姿が見えぬ敵か。つ、強い…………」
テリーの足元で鈍い金属音が響く。
剣が落ちたようだ。
その柄には、切り落とされた手首が握られたままだった。
「不覚…………ッ!」
ランパードはロビンソンから生気が一気に引いていくのをただ見ているしか無かった。
姿形すら分からない敵に、テリーの手を落とす程の力量に、リーダーとしての選択を迫られる。
「ロビンソンが死んだっ!撤退するっ!」
苦渋の決断だった。
「仲間殺られて引けるかぁっ!出てきやがれっ!卑怯者がーッ!」
完全に頭に血がのぼった強戦士は、何も無い空間へ向け、ひたすら拳を振るい続ける。
ところが、ベルトンゲンの動きが徐々に遅くなっていく。
「なん…………だ?身体、が…………」
「それ以上動くな!お前、身体中から出血しているぞ!気付いてないのかッ!」
ランパードの指摘でようやく冷静さを取り戻したベルトンゲンは、自身の身体の異変に気付く。
「なんだ、何か刺さってやがらぁ」
不思議な事にベルトンゲンはあまり痛みを感じてなかったが、出血している部分を触ると短刀のような感触があった。
その見えない透明な刃物は身体の至る所に突き刺さっている。
「う、うおおおおっ?」
いつの間にか見えない刃物が身体中に刺さっていた恐怖から、ベルトンゲンは狂ったように手当たり次第それを抜き始めた。
抜いた箇所から次々に大量の血が吹き出していく。
「不用意に抜く馬鹿がいるか!ロビンソンはもういないんだぞ!」
「うおっ?おっ?おおっ?」
ベルトンゲンは大量出血により意識レベルが急激に低下していった。
それでも体力が桁違いなのか、その場に立ったまま、白目を剥いて上半身を揺らしている。
ランパードに出来る事は出血している箇所を凍らせ、一時的に存命させるだけだった。
回復出来なければ、死を引き延ばすだけだろう。
打開策を探し続けていたランパードだったが、ここまで崩れてしまってはどうしようもできなかった。
未だ俺だけ狙われていない。魔法を警戒しているのか。各個撃破は複数戦の基本。テリーだけ連れて逃げる、か?それだけは出来ない。
逡巡している最中、ランパードは自身の手足に刃物が刺さっている事にようやく気付く。
全身が痺れている。仕込み毒だ。
まんまと一人ずつ倒されてしまったようだ。
「クソォッ!」
————フフフ、チェックメイトのようですね。
何も無いところから声が聞こえてきた。
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しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
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男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
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