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アザール
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ローパーを使い魔にした事で、気付いた事があった。
このダンジョンでは、使い魔が召喚可能であると。
俺は、勘違いをしていたようだ。
五層おきに存在する階層間を繋ぐ長い階段は、人間しか通れないというルールがあり、人間以外は階層間の移動が出来ない。
そのせいで、この迷宮には人間以外は召喚する事が出来ないと思い込んでいた。
しかし、その階段だけが特殊な空間なのであって、それ以外の場所では、使い魔を自在に召喚出来た。
これに気付けたギョロ吉に感謝である。
召喚コスト、つまり召喚における魔力消費は、地上より多くなるが、攻略の幅は一気に広がるであろう。
【召喚】
————————
————
男の俺から見ても美麗衆目な男型淫魔が三体、深々と頭を垂れている。
「此度は我らをご指名頂き、恐悦至極に存じます」
「調子に乗るな。お前らは使い捨ての駒に過ぎん」
「はっ、無論でございます」
「命令は既に魔力パスを通して把握しているだろ?早く行け!」
「御意ーッ!」
「恐れ多くーッ!」
命じたのは、ボス部屋の捜索。
ステラ達パーティメンバーが寝ているうちに、ある程度攻略しておきたい。
インキュバスが去ったのを見計らい、いそいそとテント内へと戻り、全裸で寝ている少女達の攻略を、改めて再開した。
————————
————
我が召喚主は、人間でありながら比類なき魔力の持ち主。
常日頃、我らに対して厳しい口調をお使いではあるが、冷酷非情な魔王などと違い、マスター御方の魔力パスからは、人間が持つという慈愛なる感情が流れてくる。
そして、絶えず供給される濃厚な魔力の前には、どんな悪魔であろうとたちまち虜囚と化すであろう。
「ご主人様は何故あのような少年の姿に変身されているのか」
「思慮深きご主人様の事、何かお考えがあっての事だろう」
「願わくば、ご主人様本来の御姿にお目にかかりたかったものよ」
「ブルー、グリーン、無駄話はそこまでだ。つまらぬ好奇心は命取りぞ」
「あいわかった」
恐れ多くもレッドという名をご主人様から賜った私は、暫定的とはいえ、使い魔達のリーダーを任じられている。
元々、下級悪魔である我々は、然程知能が高くない。
それ以前に、使い魔は命令に忠実であればいい。個で考える必要は無いのだ。
「我々はご主人様の命に応えるのみ。
早い報告をお待ちであるゆえ、ここは三手に分かれようぞ」
「異論無し」
賢そうなふりをしているだけで、提案はほぼ通る。
二体は別々の道へ、意気揚々と飛び去っていった。
名前持ちと魔力供給により、この階層で我らを超える魔物はいない。
いち早くボス部屋を見つけ、ご主人様からお褒めの言葉を賜るのは私だ。
レッドは、従来のインキュバスを遥かに凌駕するスピードでもって、ダンジョン奥へと潜っていった。
————————
この土地で生を受けた者の殆どは、【大食洞窟】と共に生き、そして死ぬ。
俺の父も、その父も、ずっとずっと前の父も、この地下迷宮に挑み、そして死んでいった。
俺達冒険者は、何百年間ずっと同じことを繰り返している。
何百年間もの時が経過した現在でも、我々はまだ十九階層までしか到達しておらず、この洞窟が何階層まであるのかすら分かっていない。
俺達は一体いつまでこの不毛な探索を続けるのだろうか。
【凍てつく永劫】のメンバーで構成された金等級パーティ【絶対零度】は、最高到達点である十九階層に挑戦中だったが、柱であるアリスが負傷してしまい、安全確保の為、一旦引き返す事にした。
この階層は、十一階層から十九階層までずっと繋がっており、五階層ごとのボス部屋や転移装置のある【休息の間】がなく、これが、探索をより困難にしている大きな要因になっている。
彼らは、比較的弱い敵しかいない十五階層まで戻り、簡易テントを設置した。
メンバーのヒーラー役を担うアザールは、負傷したアリスに【回復魔法】を施し、経過観察をしながら、休息中の警護役も買って出た。
「アザール、本当にいいのか?」
【絶対零度】のリーダーで、慎重派のルカクが彼に問う。
「ああ、もちろんだ。
俺のミスでアリスは傷付き、そのせいで、お前達にも迷惑をかけてしまったからな。
アリスは俺が看てるから、構わず休んでくれ」
「本来なら警備は二人にするべきだろうけど、アザールの【探知魔法】はクランでもトップクラス。
こいつがこう言ってるんだ、臨機応変も大事って訳さ。
ここはお言葉に甘えて、休ませて貰おうぜ。
なぁに、ベップ一時間もあれば、俺達ならすぐに立て直せる」
お調子者のデ・ブライネが俺に同調し、ルカクの背中を押し、簡易テントの中へと入っていった。
アザールは澄ました顔で、アリスの負傷した腹部に高級な薬草を摺り込み、ハイポーションを飲ませる。
「すま……ない、アザール」
「いや、それは俺の台詞だよ」
アリスが苦しそうに呟く。
それに応えながら彼は立ち上がり、テント内にいるルカクとデ・ブライネが強制睡眠回復剤(通称・ベップ)で熟睡したのを念入りに確認する。
そして再度、アリスの元へゆっくりと近付く。
「お前には本当に感謝してるんだ」
「仲間、なら…………助けて当然」
「違う違う、やっと隙を見せてくれた事がさ」
「何…………を、言ってるの?」
「お前は、強い。
俺は金等級になるのに十年以上掛かったが、お前はあっという間に追い抜いていった。
無理矢理襲い掛かっても返り討ちにあうだけだろうさ。
そこで、俺は何度も何度も、わざと敵に隙を見せて狙われ続けたんだ。
俺を庇ってお前が負傷するまで、な」
彼女の綺麗な髪を指で弄ぶ。
「お前がようやく怪我した瞬間は、あまりに嬉しくて胸が大きく弾んだぜ。
お前をおぶって逃げてる間、背中越しに伝わる体温、太ももの柔らかさに興奮して、ギンギンになって走り辛かったなぁ」
「ふざけ…………るな。じきに、回復…………する」
「あー、すまんすまん。
薬草とハイポーションは偽物だ。
ずっと麻痺して動けないだろ?
【回復魔法】だって空打ち。
念には念を、だよ」
「なっ…………!」
カチャリと白銀の胸当てを外す。
肌着姿のアリスを見て、男は思わず唾を飲み込んだ。
「隠れ巨乳って噂、本当だったんだな」
「何で、…………こんな事…………、もう少しで新しい階層に…………」
「勝手な価値観を押し付けるな!
…………おっと、悪い悪い。
もうさ、地下迷宮に潜るだけの人生なんて飽き飽きなんだ。
街に戻っても、何も楽しくない。娯楽らしい娯楽もない。掃き溜めみたいな街にもうんざりさ。
それでも、そうだな…………、強い女だけは好きだった。
お前が強くなっていく過程を見るのが、俺の唯一の楽しみだった。
だが、お前は幼馴染の小僧しか頭に無いときたもんだ。
だから、奪う事にしたよ。それが、冒険者本来の在り方ってもんだろ?」
「ま、待って…………」
初めて見た彼女の怯えた顔。
強い女を屈服させる瞬間こそが、人生における最高潮と言っていい。
アザールは彼女を抱きかかえて勝ち誇った。
「同じパーティのよしみだ。お前の処女は地べたでは無く、ベッドの上で奪ってやろう。
安心しろ。予行練習だとでも思えばいい。
ここで経験しておけば、あの小僧をリードしてやれるぞ?
アザール先輩のレッスンといこうか!ハッハッハーッ!」
————————
————
さて、どうした事でしょう?
介入すべきか、否か————。
ご指示を仰ぐ為、冒険者同士のトラブル有り、と即座にご主人様へとお伝えしましたが、ボス部屋を発見するまで連絡するな、と叱責され、回線を切られてしまいました。
レッドと名付けられたテツオの使い魔であるインキュバスは、人間男性の発した強い性欲を辿り、冒険者パーティの休息地までやってきた。
淫魔は、その淫力に特化したスキルにより、性欲の気配を僅かであれ、広範囲に感知する事ができるのだ。
岩陰から様子を伺うレッド。
生体反応は四人。
うち二人は睡眠状態。
残り二人は会話中だった。
女は、軽度の負傷と、麻痺、性欲は無し。
男は、極度の興奮状態にあり、性欲はピーク。
これは、高確率で強姦直前の場面なのだろう。
悪魔にとって、人間の悪行は果実のようなもの。
悪意をエネルギーに変えて男を殺し、女を虜にして喰らう。
それがインキュバスの本能なのだが。
「待ていっ!」
人間の男は、背後から突然発せられた大きな声に、ビクッと身体を硬直させた。
そして、声のした方へ恐る恐る振り返ると、そこには、変な仮面を装着した真っ黒なスーツ姿の男が一人で立っている。
「なんだ、お前は?一人か?」
「その女性を離しなさい。さすれば、命だけは助けてさしあげましょう」
この不審な男がクランバッジを着けておらず、一人である事を確信し、アザールは笑みを浮かべた。
「誰に口を聞いている?
俺達は、【凍てつく永劫】所属最強パーティ【絶対零度】だぞ?
分かったら今すぐ消えろ。忙しいんだ」
「分かります。その女性を早く犯したくて、うずうずしてるんですね」
「しつこいぜ、お前…………」
乱暴に地面へ落とされるアリス。
同時にアザールは、レッドに向かって飛び出していた。
だが、その動きは強化されたインキュバスにとって、非常に遅く感じるものだった。
さて、どうしたものか。
殺人は我がマスターにより禁じられている。
ここは手足切断、あるいは生殖器破壊あたりで無力化するが最善か。
インキュバスは、斬りかかってきた人間を軽くいなし、ガラ空きになった腹部へ突きを叩き込む。
ところが、人間が握っていたナイフが、レッドの腕を切り裂いていた。
驚きと共に理解する。
最初わざと遅い動きを見せ、攻撃時に素早く動いたのだと。
人間は訓練により、戦闘時、緩急自在の動きができるという。
これが、金等級冒険者か。
…………侮り難し。
このダンジョンでは、使い魔が召喚可能であると。
俺は、勘違いをしていたようだ。
五層おきに存在する階層間を繋ぐ長い階段は、人間しか通れないというルールがあり、人間以外は階層間の移動が出来ない。
そのせいで、この迷宮には人間以外は召喚する事が出来ないと思い込んでいた。
しかし、その階段だけが特殊な空間なのであって、それ以外の場所では、使い魔を自在に召喚出来た。
これに気付けたギョロ吉に感謝である。
召喚コスト、つまり召喚における魔力消費は、地上より多くなるが、攻略の幅は一気に広がるであろう。
【召喚】
————————
————
男の俺から見ても美麗衆目な男型淫魔が三体、深々と頭を垂れている。
「此度は我らをご指名頂き、恐悦至極に存じます」
「調子に乗るな。お前らは使い捨ての駒に過ぎん」
「はっ、無論でございます」
「命令は既に魔力パスを通して把握しているだろ?早く行け!」
「御意ーッ!」
「恐れ多くーッ!」
命じたのは、ボス部屋の捜索。
ステラ達パーティメンバーが寝ているうちに、ある程度攻略しておきたい。
インキュバスが去ったのを見計らい、いそいそとテント内へと戻り、全裸で寝ている少女達の攻略を、改めて再開した。
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我が召喚主は、人間でありながら比類なき魔力の持ち主。
常日頃、我らに対して厳しい口調をお使いではあるが、冷酷非情な魔王などと違い、マスター御方の魔力パスからは、人間が持つという慈愛なる感情が流れてくる。
そして、絶えず供給される濃厚な魔力の前には、どんな悪魔であろうとたちまち虜囚と化すであろう。
「ご主人様は何故あのような少年の姿に変身されているのか」
「思慮深きご主人様の事、何かお考えがあっての事だろう」
「願わくば、ご主人様本来の御姿にお目にかかりたかったものよ」
「ブルー、グリーン、無駄話はそこまでだ。つまらぬ好奇心は命取りぞ」
「あいわかった」
恐れ多くもレッドという名をご主人様から賜った私は、暫定的とはいえ、使い魔達のリーダーを任じられている。
元々、下級悪魔である我々は、然程知能が高くない。
それ以前に、使い魔は命令に忠実であればいい。個で考える必要は無いのだ。
「我々はご主人様の命に応えるのみ。
早い報告をお待ちであるゆえ、ここは三手に分かれようぞ」
「異論無し」
賢そうなふりをしているだけで、提案はほぼ通る。
二体は別々の道へ、意気揚々と飛び去っていった。
名前持ちと魔力供給により、この階層で我らを超える魔物はいない。
いち早くボス部屋を見つけ、ご主人様からお褒めの言葉を賜るのは私だ。
レッドは、従来のインキュバスを遥かに凌駕するスピードでもって、ダンジョン奥へと潜っていった。
————————
この土地で生を受けた者の殆どは、【大食洞窟】と共に生き、そして死ぬ。
俺の父も、その父も、ずっとずっと前の父も、この地下迷宮に挑み、そして死んでいった。
俺達冒険者は、何百年間ずっと同じことを繰り返している。
何百年間もの時が経過した現在でも、我々はまだ十九階層までしか到達しておらず、この洞窟が何階層まであるのかすら分かっていない。
俺達は一体いつまでこの不毛な探索を続けるのだろうか。
【凍てつく永劫】のメンバーで構成された金等級パーティ【絶対零度】は、最高到達点である十九階層に挑戦中だったが、柱であるアリスが負傷してしまい、安全確保の為、一旦引き返す事にした。
この階層は、十一階層から十九階層までずっと繋がっており、五階層ごとのボス部屋や転移装置のある【休息の間】がなく、これが、探索をより困難にしている大きな要因になっている。
彼らは、比較的弱い敵しかいない十五階層まで戻り、簡易テントを設置した。
メンバーのヒーラー役を担うアザールは、負傷したアリスに【回復魔法】を施し、経過観察をしながら、休息中の警護役も買って出た。
「アザール、本当にいいのか?」
【絶対零度】のリーダーで、慎重派のルカクが彼に問う。
「ああ、もちろんだ。
俺のミスでアリスは傷付き、そのせいで、お前達にも迷惑をかけてしまったからな。
アリスは俺が看てるから、構わず休んでくれ」
「本来なら警備は二人にするべきだろうけど、アザールの【探知魔法】はクランでもトップクラス。
こいつがこう言ってるんだ、臨機応変も大事って訳さ。
ここはお言葉に甘えて、休ませて貰おうぜ。
なぁに、ベップ一時間もあれば、俺達ならすぐに立て直せる」
お調子者のデ・ブライネが俺に同調し、ルカクの背中を押し、簡易テントの中へと入っていった。
アザールは澄ました顔で、アリスの負傷した腹部に高級な薬草を摺り込み、ハイポーションを飲ませる。
「すま……ない、アザール」
「いや、それは俺の台詞だよ」
アリスが苦しそうに呟く。
それに応えながら彼は立ち上がり、テント内にいるルカクとデ・ブライネが強制睡眠回復剤(通称・ベップ)で熟睡したのを念入りに確認する。
そして再度、アリスの元へゆっくりと近付く。
「お前には本当に感謝してるんだ」
「仲間、なら…………助けて当然」
「違う違う、やっと隙を見せてくれた事がさ」
「何…………を、言ってるの?」
「お前は、強い。
俺は金等級になるのに十年以上掛かったが、お前はあっという間に追い抜いていった。
無理矢理襲い掛かっても返り討ちにあうだけだろうさ。
そこで、俺は何度も何度も、わざと敵に隙を見せて狙われ続けたんだ。
俺を庇ってお前が負傷するまで、な」
彼女の綺麗な髪を指で弄ぶ。
「お前がようやく怪我した瞬間は、あまりに嬉しくて胸が大きく弾んだぜ。
お前をおぶって逃げてる間、背中越しに伝わる体温、太ももの柔らかさに興奮して、ギンギンになって走り辛かったなぁ」
「ふざけ…………るな。じきに、回復…………する」
「あー、すまんすまん。
薬草とハイポーションは偽物だ。
ずっと麻痺して動けないだろ?
【回復魔法】だって空打ち。
念には念を、だよ」
「なっ…………!」
カチャリと白銀の胸当てを外す。
肌着姿のアリスを見て、男は思わず唾を飲み込んだ。
「隠れ巨乳って噂、本当だったんだな」
「何で、…………こんな事…………、もう少しで新しい階層に…………」
「勝手な価値観を押し付けるな!
…………おっと、悪い悪い。
もうさ、地下迷宮に潜るだけの人生なんて飽き飽きなんだ。
街に戻っても、何も楽しくない。娯楽らしい娯楽もない。掃き溜めみたいな街にもうんざりさ。
それでも、そうだな…………、強い女だけは好きだった。
お前が強くなっていく過程を見るのが、俺の唯一の楽しみだった。
だが、お前は幼馴染の小僧しか頭に無いときたもんだ。
だから、奪う事にしたよ。それが、冒険者本来の在り方ってもんだろ?」
「ま、待って…………」
初めて見た彼女の怯えた顔。
強い女を屈服させる瞬間こそが、人生における最高潮と言っていい。
アザールは彼女を抱きかかえて勝ち誇った。
「同じパーティのよしみだ。お前の処女は地べたでは無く、ベッドの上で奪ってやろう。
安心しろ。予行練習だとでも思えばいい。
ここで経験しておけば、あの小僧をリードしてやれるぞ?
アザール先輩のレッスンといこうか!ハッハッハーッ!」
————————
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さて、どうした事でしょう?
介入すべきか、否か————。
ご指示を仰ぐ為、冒険者同士のトラブル有り、と即座にご主人様へとお伝えしましたが、ボス部屋を発見するまで連絡するな、と叱責され、回線を切られてしまいました。
レッドと名付けられたテツオの使い魔であるインキュバスは、人間男性の発した強い性欲を辿り、冒険者パーティの休息地までやってきた。
淫魔は、その淫力に特化したスキルにより、性欲の気配を僅かであれ、広範囲に感知する事ができるのだ。
岩陰から様子を伺うレッド。
生体反応は四人。
うち二人は睡眠状態。
残り二人は会話中だった。
女は、軽度の負傷と、麻痺、性欲は無し。
男は、極度の興奮状態にあり、性欲はピーク。
これは、高確率で強姦直前の場面なのだろう。
悪魔にとって、人間の悪行は果実のようなもの。
悪意をエネルギーに変えて男を殺し、女を虜にして喰らう。
それがインキュバスの本能なのだが。
「待ていっ!」
人間の男は、背後から突然発せられた大きな声に、ビクッと身体を硬直させた。
そして、声のした方へ恐る恐る振り返ると、そこには、変な仮面を装着した真っ黒なスーツ姿の男が一人で立っている。
「なんだ、お前は?一人か?」
「その女性を離しなさい。さすれば、命だけは助けてさしあげましょう」
この不審な男がクランバッジを着けておらず、一人である事を確信し、アザールは笑みを浮かべた。
「誰に口を聞いている?
俺達は、【凍てつく永劫】所属最強パーティ【絶対零度】だぞ?
分かったら今すぐ消えろ。忙しいんだ」
「分かります。その女性を早く犯したくて、うずうずしてるんですね」
「しつこいぜ、お前…………」
乱暴に地面へ落とされるアリス。
同時にアザールは、レッドに向かって飛び出していた。
だが、その動きは強化されたインキュバスにとって、非常に遅く感じるものだった。
さて、どうしたものか。
殺人は我がマスターにより禁じられている。
ここは手足切断、あるいは生殖器破壊あたりで無力化するが最善か。
インキュバスは、斬りかかってきた人間を軽くいなし、ガラ空きになった腹部へ突きを叩き込む。
ところが、人間が握っていたナイフが、レッドの腕を切り裂いていた。
驚きと共に理解する。
最初わざと遅い動きを見せ、攻撃時に素早く動いたのだと。
人間は訓練により、戦闘時、緩急自在の動きができるという。
これが、金等級冒険者か。
…………侮り難し。
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