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南の森
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ジョンテ領最大級の危険地帯、南の森。
そこに今、一獲千金を夢見て、三人組の冒険者が挑戦していた。
全員が金等級だけあって、まだ苦戦する程の敵は現れていない。
ただ、出現する敵の数は膨大で、戦闘が絶え間なく続き、彼らの疲労度は徐々に蓄積され、とっくに限界を迎えていた。
暗い森の中では、昼夜の判断が付きにくく、身体中に様々な障害が発生しだす。
最も、顕著なのは睡魔であろう。
「ここらで少し仮眠入れます?」
「いや、仮眠なら一旦、W12まで戻ろう」
「了解」
————————
草木でカムフラージュされた簡易テントにて、一人ずつ交代で仮眠休憩をとる。
仮眠といっても、特殊な魔法薬を飲み、無理矢理身体を休ませるだけだ。
冒険者が一番無防備になるのは睡眠時である。
その問題を解消する為に生み出されたのがベップ薬だ。
——ベップ薬——
稀代の魔術師グアルディオラが開発したこの薬は、身体を強制的に短時間眠らせ、自己治癒力を極限まで引き出し回復させる。
冒険中における睡眠時間を大幅に削る事を可能とした画期的な発明だ。
強い副作用がある為、金等級以上の冒険者にしか、取引は許可されていない。
「結構進んだ気でいましたけど、とんでもない広さですね。まるで迷路ですよ」
「ああ、四角い巨大樹が大量に隣接してるだけ。
似た様な風景ばっか。
ストレスが溜まってしょうがねぇ」
「それでも、サルサーレの奴等に先を越される訳にはいきませんよね」
「ああ、ジョンテ領には優れた金等級冒険者がいたって事を証明しなきゃな」
横になっていた冒険者の一人が、僅か二分で目覚める。
「ふぁあ、寝た寝た。
じゃあ、次はS15より先に行ってみるか」
「そうしよう。ともかく、ここを攻略すれば、羽振りのいいあの新領主に絶好のアピールになる」
最近のジョンテ領の好景気を聞いて、出戻りした金等級冒険者らしい彼らは、五分も経たぬ内に、食事、睡眠を終え、再び森攻略へと戻っていった。
これ以上の長居は、人間の気配を嗅ぎ付け、敵がやってくる事を、彼らは培った経験で分かっている。
————————
超高層ビルの如き巨大樹、デビルトレントが密集し、樹々の間は踏み固められて道となり、膨大な数の交差路が出来上がり、森に入った者を迷わせる。
魔獣以外にも、樹に寄生する虫や、魔力を持つ特殊な植物が、冒険者の行く手を阻む。
「こんな森が存在するなんて信じられんな。ジョンテ出身のクランパーティは、かなり先行したみたいだが大丈夫だろうか?」
【北の盾】の司令塔リヤドが、当依頼において協力関係にある【白金の輝き】のメンバーを心配する。
彼は、今回の攻略に関して、兼ねてから強く反対していた。
この世界において、危険地帯の攻略成功率はほぼゼロに等しく、古来より人智を超えた場所だと言い伝えられている。
それでも、ハイリスク・ハイリターンに賭ける冒険者は後を絶たない。
深度さえ注意すれば、そこそこの見返りが期待できるからだ。
だが、今回の任務は森の開通にあり、それはそのまま攻略と同義である可能性が高い。
危険地帯における攻略達成の条件は場所によって違うらしい。
主を倒す。力が認められる。呪いを解く。踏破する。開通する。
さて、何が制覇の条件なのだろうかと、リヤドは頭を抱えた。
歴史を紐解いても、前例が全く無いのだ。
ともかく、当任務において、団長をパーティから外す事、指揮官の判断で撤退できる事、を条件として、今回の【北の盾】参戦を渋々ながらも許可した流れとなった。
リヤド自身、【北の盾】をボルストン国一番のクランだと自負しているが、危険地帯を攻略出来る程の実力があるか問われれば、新参者ばかりの今メンバーでは難しいと言わざるを得ない。
一冒険者としては非常に血沸き肉踊る。
しかし、団員の命を預かる身としては、とても気が重い。
団長がテツオに執心している事実は、いくら感情を表に出さないタイプだとしても、機微を注意深く読み取れば、すぐ確信に変わった。
そして、領主クラスの貴族が一クランの団員として在籍している前列の無いこの状況では、彼の発言力は自ずと高くなってしまっている。
それでも、男の私から見ても彼は不思議な魅力をもつ青年だ。
私も彼を応援したい。
だが、彼は少し生き急いでる感じがする。
何故あんなに悪魔討伐に拘るのか?
この先、彼に惚れてしまった団長は、彼の頼みを決して断らないだろう。
団長だけは必ず守らなければいけない。
今回、サルサーレを離れる事に、副団長モーガンや古参団員達から、強い反感を買った。
東の森で団長が死に掛けた事は、彼らの耳にも入った事だろう。
大きく膨れ上がり瓦解したクランは少なくない。
私もここで死ぬ訳にはいかないのだ。
「何を難しい事を考えてやがる?」
いつもより目付きが鋭くなっているヴァーディが、こいつなりの言い回しで心配してきた。
「リヤドさんが立てた作戦なら、今回も大丈夫っしょ?」
ここ最近、すっかり頼もしくなった成長著しい、高身長を誇る青年カンテが、根拠のない太鼓判を押す。
似たような地形が多く、そして今回の様にアタックできる人数が多い場合、やはりシラミ潰しでセーフティを積み重ねていく作戦がベストだ。
それでも、ローラー作戦は、ギミック、罠、敵との遭遇は避けられず、少なからず犠牲を伴うだろう。
————森を南へ抜ければいいのだ。
中央から西へのルートは、金稼ぎ目的の新参団員や、【白金の輝き】等の協力関係にあるクランに任せ、我々【北の盾】は東の端側からなるべく戦闘を避けつつ、南へ抜けるルートを探す事にした。
銀等級以下の団員達に偵察役を任せ、先行隊の通ったルートを、交差路から三つ先の交差路まで、つまり九本のデビルプラントを1ブロックとして括り、逐一報告させる。
安全を確保しつつ、進行する作戦だ。
枯れたデビルプラントの中をくり抜いて作った簡易拠点に、リヤド達は戻ってきていた。
数十人の団員達を前にリヤドが指示を出す。
「現段階で、知り得た情報を伝える。
まずデビルプラントは、近付いた者から無差別に魔力を吸い取る性質がある。
そして、恐らく吸い取った魔力が一定量貯まると、植物系エネミーを産み出す様だ。
知っての通り植物系エネミーは、様々な状態異常を付与してくる危険性がある為、各々注意されたし。
中でもっとも危ないのは、アルラウネだ。
美しい見た目を持つ女型妖魔で人間を襲う。
銀等級団員はこれらと対峙、又は見つけ次第、決して戦闘せず撤退し報告に戻る事。
次に、弱っている、もしくは枯れたデビルプラントを発見した者は、真っ先に知らせろ。
そこが、我々の新たな中継地点となる!
以上だ!」
————————
デカスドーム・テツオ邸
プライベートルーム
複数の水晶モニターに森の風景が投影されている。
テツオはここで、森へ大量に放った蜂を模した偵察機の一つから、リヤドの情報を聞いていた。
なるほど…………妖魔アルラウネ、か。
魔物はすこぶる怖いが、女型と聞けば、興味が唆られる。
百聞は一見に如かず。急ぎ蜂型蟲ドローンを複数散らし飛ばした。
この森は非常に暗いが、入り口から20ブロックくらいまでは、青く発光する植物が昼夜問わず周囲を明るく照らしている。
敵は比較的弱い。
だが、20ブロックを超えた辺りから徐々に赤く光る植物が多くなり、敵が徐々に強くなるようだ。
上空から見た限り、広さは1000ブロック以上は軽くある。
しばらくすると、蜂の一機が25ブロック進んだ辺りで、【白金の輝き】の三人を発見した。
「前、行きやす」「バフります」「チャージ済」
流れる様な連携を繰り出し、眼前の花弁型モンスター三体を一瞬で屠る。
なるほど、金等級三人で固めると、パーティとしてここまで完成度が高くなるのか。
安全を確認した彼らは速やかに武器を収めた。
その内の一人が、マントを広げデビルプラントへと近寄っていく。
ん?何かあるのか?カメラの角度が悪いな。
蜂を少し動かしていくと、太ももまで露出した素足が見えた。
衣類の乱れた女性がうずくまっていて……出血している?
集落で攫われた女性か?
その刹那、デビルプラントから太く鋭い枝が伸び、男をマントごと貫いた。
「が、がはぁっ!」
「キャハハハハ!」
高笑いする女性の身体からシュルシュルと蔓が伸び、宙高く浮かび上がっていく。
魅惑的な曲線美からキラキラと光粉が舞い落ちる。
「アルラウネ!」「やられた!」
上を見上げる二人の足元には既に蔓が絡み付いていた。
脚にトゲが食い込む。
恐らくそこから毒が回る。
…………終わった。
金等級冒険者がまったく赤子扱いだ。
「ゴシュジーン、助ケナイノカー?」
最近、呼び方をテツオからやっとゴシュジンと言えるようになった妖精ピピが、俺の背後から尋ねる。
「なんだ、見ていたのか」
基本、妖精は人間の心配などしない。
ここデカスドームで人間と暮らす様になった事で、徐々に心境の変化が現れた様だ。
「無理だ。
映像で見ただけの場所へは【転移】出来ないんだ」
もしあれが、俺の大事な女達であれば話は別だ。
直ちに時間を戻し、全速力で掛けつけるだろう。
「アレ?」
「ん?どうした?」
アルラウネがとどめを刺す蜘蛛の様に降りてくる。
男一人が地面に瓶を投げつけると、閃光が走った。
すると、倒れていた男が起き上がりと同時、アルラウネの腕を剣で斬り落とした!
「ああっ、アルラウネがっ!」
「ン?ゴシュジン?」
思わずアルラウネを心配してしまった俺を、ピピが怪訝そうな顔で覗き込む。
「ごほ【睡眠】んんっ、げふんげふんっ。
解毒、止血、回復効果があるのか。凄い薬もあるもんだ。
ん?ピピ、どうした?」
どうやらピピは、疲れていたのか急激な睡魔に陥って、いきなり寝てしまったらしい。
寝ているピピに、イチモツを無理矢理差し込んだところで、再び映像をチェックする。
腕を斬られたアルラウネは森の中へ逃げていき、三人の冒険者は一旦後退を決めた様あの瓶の正体は、万能薬として有名なエリクサー。
体力や怪我、状態異常をたちまち全快させる、冒険者の間では【天使の奇跡】と呼ばれる秘薬だ。
確か時価で一本100万ゴールド以上はする入手難度の高い回復薬。
まさか、こんなとこで見ることが出来るとは。
腕を斬られたアルラウネは森の中へ逃げていった。
一方、逃げる場所の無い冒険者三人は、素早く確認作業を済ませ、再び森の奥へと進んでいく。
そこで、彼らを追っていたドローンの魔力が尽きたのか、何かに壊されたのか、突如映像が途切れる。
テツオは酒を舌の中で転がしながら、別の映像に視点を切り替えた。
そこに今、一獲千金を夢見て、三人組の冒険者が挑戦していた。
全員が金等級だけあって、まだ苦戦する程の敵は現れていない。
ただ、出現する敵の数は膨大で、戦闘が絶え間なく続き、彼らの疲労度は徐々に蓄積され、とっくに限界を迎えていた。
暗い森の中では、昼夜の判断が付きにくく、身体中に様々な障害が発生しだす。
最も、顕著なのは睡魔であろう。
「ここらで少し仮眠入れます?」
「いや、仮眠なら一旦、W12まで戻ろう」
「了解」
————————
草木でカムフラージュされた簡易テントにて、一人ずつ交代で仮眠休憩をとる。
仮眠といっても、特殊な魔法薬を飲み、無理矢理身体を休ませるだけだ。
冒険者が一番無防備になるのは睡眠時である。
その問題を解消する為に生み出されたのがベップ薬だ。
——ベップ薬——
稀代の魔術師グアルディオラが開発したこの薬は、身体を強制的に短時間眠らせ、自己治癒力を極限まで引き出し回復させる。
冒険中における睡眠時間を大幅に削る事を可能とした画期的な発明だ。
強い副作用がある為、金等級以上の冒険者にしか、取引は許可されていない。
「結構進んだ気でいましたけど、とんでもない広さですね。まるで迷路ですよ」
「ああ、四角い巨大樹が大量に隣接してるだけ。
似た様な風景ばっか。
ストレスが溜まってしょうがねぇ」
「それでも、サルサーレの奴等に先を越される訳にはいきませんよね」
「ああ、ジョンテ領には優れた金等級冒険者がいたって事を証明しなきゃな」
横になっていた冒険者の一人が、僅か二分で目覚める。
「ふぁあ、寝た寝た。
じゃあ、次はS15より先に行ってみるか」
「そうしよう。ともかく、ここを攻略すれば、羽振りのいいあの新領主に絶好のアピールになる」
最近のジョンテ領の好景気を聞いて、出戻りした金等級冒険者らしい彼らは、五分も経たぬ内に、食事、睡眠を終え、再び森攻略へと戻っていった。
これ以上の長居は、人間の気配を嗅ぎ付け、敵がやってくる事を、彼らは培った経験で分かっている。
————————
超高層ビルの如き巨大樹、デビルトレントが密集し、樹々の間は踏み固められて道となり、膨大な数の交差路が出来上がり、森に入った者を迷わせる。
魔獣以外にも、樹に寄生する虫や、魔力を持つ特殊な植物が、冒険者の行く手を阻む。
「こんな森が存在するなんて信じられんな。ジョンテ出身のクランパーティは、かなり先行したみたいだが大丈夫だろうか?」
【北の盾】の司令塔リヤドが、当依頼において協力関係にある【白金の輝き】のメンバーを心配する。
彼は、今回の攻略に関して、兼ねてから強く反対していた。
この世界において、危険地帯の攻略成功率はほぼゼロに等しく、古来より人智を超えた場所だと言い伝えられている。
それでも、ハイリスク・ハイリターンに賭ける冒険者は後を絶たない。
深度さえ注意すれば、そこそこの見返りが期待できるからだ。
だが、今回の任務は森の開通にあり、それはそのまま攻略と同義である可能性が高い。
危険地帯における攻略達成の条件は場所によって違うらしい。
主を倒す。力が認められる。呪いを解く。踏破する。開通する。
さて、何が制覇の条件なのだろうかと、リヤドは頭を抱えた。
歴史を紐解いても、前例が全く無いのだ。
ともかく、当任務において、団長をパーティから外す事、指揮官の判断で撤退できる事、を条件として、今回の【北の盾】参戦を渋々ながらも許可した流れとなった。
リヤド自身、【北の盾】をボルストン国一番のクランだと自負しているが、危険地帯を攻略出来る程の実力があるか問われれば、新参者ばかりの今メンバーでは難しいと言わざるを得ない。
一冒険者としては非常に血沸き肉踊る。
しかし、団員の命を預かる身としては、とても気が重い。
団長がテツオに執心している事実は、いくら感情を表に出さないタイプだとしても、機微を注意深く読み取れば、すぐ確信に変わった。
そして、領主クラスの貴族が一クランの団員として在籍している前列の無いこの状況では、彼の発言力は自ずと高くなってしまっている。
それでも、男の私から見ても彼は不思議な魅力をもつ青年だ。
私も彼を応援したい。
だが、彼は少し生き急いでる感じがする。
何故あんなに悪魔討伐に拘るのか?
この先、彼に惚れてしまった団長は、彼の頼みを決して断らないだろう。
団長だけは必ず守らなければいけない。
今回、サルサーレを離れる事に、副団長モーガンや古参団員達から、強い反感を買った。
東の森で団長が死に掛けた事は、彼らの耳にも入った事だろう。
大きく膨れ上がり瓦解したクランは少なくない。
私もここで死ぬ訳にはいかないのだ。
「何を難しい事を考えてやがる?」
いつもより目付きが鋭くなっているヴァーディが、こいつなりの言い回しで心配してきた。
「リヤドさんが立てた作戦なら、今回も大丈夫っしょ?」
ここ最近、すっかり頼もしくなった成長著しい、高身長を誇る青年カンテが、根拠のない太鼓判を押す。
似たような地形が多く、そして今回の様にアタックできる人数が多い場合、やはりシラミ潰しでセーフティを積み重ねていく作戦がベストだ。
それでも、ローラー作戦は、ギミック、罠、敵との遭遇は避けられず、少なからず犠牲を伴うだろう。
————森を南へ抜ければいいのだ。
中央から西へのルートは、金稼ぎ目的の新参団員や、【白金の輝き】等の協力関係にあるクランに任せ、我々【北の盾】は東の端側からなるべく戦闘を避けつつ、南へ抜けるルートを探す事にした。
銀等級以下の団員達に偵察役を任せ、先行隊の通ったルートを、交差路から三つ先の交差路まで、つまり九本のデビルプラントを1ブロックとして括り、逐一報告させる。
安全を確保しつつ、進行する作戦だ。
枯れたデビルプラントの中をくり抜いて作った簡易拠点に、リヤド達は戻ってきていた。
数十人の団員達を前にリヤドが指示を出す。
「現段階で、知り得た情報を伝える。
まずデビルプラントは、近付いた者から無差別に魔力を吸い取る性質がある。
そして、恐らく吸い取った魔力が一定量貯まると、植物系エネミーを産み出す様だ。
知っての通り植物系エネミーは、様々な状態異常を付与してくる危険性がある為、各々注意されたし。
中でもっとも危ないのは、アルラウネだ。
美しい見た目を持つ女型妖魔で人間を襲う。
銀等級団員はこれらと対峙、又は見つけ次第、決して戦闘せず撤退し報告に戻る事。
次に、弱っている、もしくは枯れたデビルプラントを発見した者は、真っ先に知らせろ。
そこが、我々の新たな中継地点となる!
以上だ!」
————————
デカスドーム・テツオ邸
プライベートルーム
複数の水晶モニターに森の風景が投影されている。
テツオはここで、森へ大量に放った蜂を模した偵察機の一つから、リヤドの情報を聞いていた。
なるほど…………妖魔アルラウネ、か。
魔物はすこぶる怖いが、女型と聞けば、興味が唆られる。
百聞は一見に如かず。急ぎ蜂型蟲ドローンを複数散らし飛ばした。
この森は非常に暗いが、入り口から20ブロックくらいまでは、青く発光する植物が昼夜問わず周囲を明るく照らしている。
敵は比較的弱い。
だが、20ブロックを超えた辺りから徐々に赤く光る植物が多くなり、敵が徐々に強くなるようだ。
上空から見た限り、広さは1000ブロック以上は軽くある。
しばらくすると、蜂の一機が25ブロック進んだ辺りで、【白金の輝き】の三人を発見した。
「前、行きやす」「バフります」「チャージ済」
流れる様な連携を繰り出し、眼前の花弁型モンスター三体を一瞬で屠る。
なるほど、金等級三人で固めると、パーティとしてここまで完成度が高くなるのか。
安全を確認した彼らは速やかに武器を収めた。
その内の一人が、マントを広げデビルプラントへと近寄っていく。
ん?何かあるのか?カメラの角度が悪いな。
蜂を少し動かしていくと、太ももまで露出した素足が見えた。
衣類の乱れた女性がうずくまっていて……出血している?
集落で攫われた女性か?
その刹那、デビルプラントから太く鋭い枝が伸び、男をマントごと貫いた。
「が、がはぁっ!」
「キャハハハハ!」
高笑いする女性の身体からシュルシュルと蔓が伸び、宙高く浮かび上がっていく。
魅惑的な曲線美からキラキラと光粉が舞い落ちる。
「アルラウネ!」「やられた!」
上を見上げる二人の足元には既に蔓が絡み付いていた。
脚にトゲが食い込む。
恐らくそこから毒が回る。
…………終わった。
金等級冒険者がまったく赤子扱いだ。
「ゴシュジーン、助ケナイノカー?」
最近、呼び方をテツオからやっとゴシュジンと言えるようになった妖精ピピが、俺の背後から尋ねる。
「なんだ、見ていたのか」
基本、妖精は人間の心配などしない。
ここデカスドームで人間と暮らす様になった事で、徐々に心境の変化が現れた様だ。
「無理だ。
映像で見ただけの場所へは【転移】出来ないんだ」
もしあれが、俺の大事な女達であれば話は別だ。
直ちに時間を戻し、全速力で掛けつけるだろう。
「アレ?」
「ん?どうした?」
アルラウネがとどめを刺す蜘蛛の様に降りてくる。
男一人が地面に瓶を投げつけると、閃光が走った。
すると、倒れていた男が起き上がりと同時、アルラウネの腕を剣で斬り落とした!
「ああっ、アルラウネがっ!」
「ン?ゴシュジン?」
思わずアルラウネを心配してしまった俺を、ピピが怪訝そうな顔で覗き込む。
「ごほ【睡眠】んんっ、げふんげふんっ。
解毒、止血、回復効果があるのか。凄い薬もあるもんだ。
ん?ピピ、どうした?」
どうやらピピは、疲れていたのか急激な睡魔に陥って、いきなり寝てしまったらしい。
寝ているピピに、イチモツを無理矢理差し込んだところで、再び映像をチェックする。
腕を斬られたアルラウネは森の中へ逃げていき、三人の冒険者は一旦後退を決めた様あの瓶の正体は、万能薬として有名なエリクサー。
体力や怪我、状態異常をたちまち全快させる、冒険者の間では【天使の奇跡】と呼ばれる秘薬だ。
確か時価で一本100万ゴールド以上はする入手難度の高い回復薬。
まさか、こんなとこで見ることが出来るとは。
腕を斬られたアルラウネは森の中へ逃げていった。
一方、逃げる場所の無い冒険者三人は、素早く確認作業を済ませ、再び森の奥へと進んでいく。
そこで、彼らを追っていたドローンの魔力が尽きたのか、何かに壊されたのか、突如映像が途切れる。
テツオは酒を舌の中で転がしながら、別の映像に視点を切り替えた。
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