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ジョンテ領南
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午前十時を過ぎて、ジョンテ領に戻ってきた。
街入り口の広場には、今まさに【北の盾】の団員達が、南の森へと遠征に向かおうとしていた。
間に合って良かった。
門まで来ると、アマンダとナティアラが男性と話している場面に出くわした。
二人の話し相手が【北の盾】の男性団員だったら嫉妬で狂ってしまいそうだが、この人物にはそういった感情が出ることはない。
「ブレイダンさん、わざわざこんな遠方までお越しいただいて申し訳ありません」
「これはこれは、テツオ様。
いえ、これからは侯爵様とお呼びするべきでしょうか?」
「やめて下さいよ」
冗談だとばかりに口髭を上げ、にひるに笑う相変わらずダンディな雰囲気を醸し出すブレイダン。
今回の遠征に備え、武器提供の為に、サルサーレ領からわざわざジョンテ領までお越しいただいたのだ。
何もここジョンテ領で営む武具商の武器がダメだと言ってる訳では無いが、物足りなさは否めない。
この領地の流通経済に新しい風を吹かせる為、二人の姉妹をだしに無理矢理呼び付けた形になってしまったのは申し訳なさを感じている。
「大丈夫ですよ。
むしろテツオ様が領主になった原因は、私の依頼からくるところでもありますから。
テツオ様がここの領主である限り、我々も尽力致します」
「だってよ。
だから気にしなくていーよ、テツオ」
「テツオ様でしょう?ナティアラ」
「う、うう……」
アマンダが口の悪さを指摘すると、ナティアラは唇を尖らせた。
久しぶりにブレイダンに会えたのもあって、アマンダとナティアラの二人は嬉しそうだ。
「しかして、うちの鍛冶師達が今回の引越しにかなり渋りましたので、説得には些か骨を折りました。
早速で恐縮ですが、お願いしていた工房を見せていただけますか?
彼等を早く納得させる必要があります」
「分かりました。
それでは、今すぐにご案内します」
ブレイダンと数人の鍛冶師達を引率して、商店街から用水路を一つ挟んだ先の工房に向って歩いていく。
文句をぶつぶつ言いながら鍛冶師達は、案内された工房へと渋々入っていった。
工房なんて作った事がないので、果たして彼らを満足させれるかどうかは分からないが、サルサーレにある彼らの店に遜色ない出来にはしたつもりだ。
「なんじゃこりゃあ」
いかつい髭面の鍛冶師達が、目を見開きたじろいでいる。
どこか設計をミスったか?
ブレイダンに渡された図面通りに再現したし、火床の炉も完璧に制御されている筈だ。
「どこか不備がありましたか?」
「いいえ……
これは想像以上ですよ、テツオ様。
完璧です」
ブレイダンが興奮気味に完成した工房を眺めた。
「これは?」
ブレイダンは、工房の隅に置かれた、布に覆われた膨らみを見つけ尋ねてくる。
「めくってみて下さい」
布をバサッとめくると、いくつかの鉱石が鈍い光を放っていた。
「巨大な魔水晶の鉱石!
それにこれは、……まさか!
ガルヴォルン鉱石!」
「なんじゃこりゃあ!」
大人の背丈は超える大きさの魔晶石に、二メートル級のガルヴォルン鉱石をサプライズとして用意しておいた。
ブレイダンと鍛冶師のおっさん達は、鉱石に飛びつき夢中になっている。
こんなに喜んでくれるとはありがたい。
「テツオ様、ありがとうございます。
彼らがこんなに目を輝かせているの見たは、冒険者として初めてガルヴォルン鉱石を発見した時以来です」
鍛冶師達がすぐにでも打たせてくれと言い出した。
これ以上工房に居る必要もないし、隣接する店舗スペースにナティアラ、アマンダを置いて俺は店を出た。
ブレイダンと募る話もあるだろう。
すると、ブレイダンが追いかけてくる。
「テツオ様」
「はい」
「テツオ様は領主、そして侯爵位の貴族になられました。
それでももし良ろしければ、また酒の席などご一緒できますか?」
「やめて下さいよ、ブレイダンさん。
そんなに畏まらないで下さい。
私はただの冒険者に過ぎませんから。
是非また飲みに行きましょう」
「ありがとうございます。
そう言っていただけてなによりです。
では、武器提供の為に【北の盾】の元へと行って参ります。
彼女達とはその後にでも、ゆっくりと過ごす事に致しましょう」
「わかりました」
こんな年下相手なのに、相変わらず気遣いが素晴らしい。
ジョンテの淑女達が、彼のファンになるのは時間の問題かもしれないな。
おっと、俺の方も時間を無駄には出来ない。
団長には、森の前に拠点となるベースキャンプの場所を探しておくと言ってある。
急ぎリリィを呼び出し、森の前まで【転移】しよう。
————ジョンテ領南
一気に森の近くまで来てみた。
空から拠点になりそうな、めぼしい場所を探してみる。
以前、上空から見た時には、高度が高過ぎて気付かなかっただけなのか、森周辺にある村や集落は、どこも無人だった。
どういう事だ?
リリィを連れて集落の一つに降りてみる。
「誰もいないわね。
襲われたって形跡もないし」
この集落には二十軒ばかりの家屋がある。
家を見ると、干されたままの洗濯物があった。
何枚かの衣類は、風のせいか地面に落ちている。
他にも、料理途中の食材が放置してあったり、腹を空かせてぐったりしている家畜がいたりと、人が少し前まで確かにここで住んでいたという証拠がいくつもあった。
「不気味だな」
でも、誰もいないなら、拠点にしてもいいような気もする。
不謹慎かな?
それよりも、ここを襲った正体を探るべきなのか?
リリィが気配を消し、周囲をキョロキョロと警戒する。
内股になっている脚から察するに、相当緊張しているようだ。
大丈夫か?
「怖いのか?」
「怖くなんて無いわ!
私は英雄よ?」
別に強がらなくてもいいのに。
おかしな奴だ。
ガタン!
「きゃあ!」
突如物音がし、リリィが俺の腕にしがみ付いた。
顔面蒼白じゃないか。
「おい、今音がした物置を確認してみてくれ。
英雄さん」
「う……、やっぱり怖いわ」
「言えたじゃねぇか」
ポンコツなリリィの手を剥がし、物置に近付く。
魔物が居るかもしれないので、魔法を付与して身体を守る。
【収納】から棒を出し、物置の扉をゆっくりと開けてみた。
中にいたのは、————子供だった。
中は暗くてよく見えないが、人数にして七人だろうか。
誰もが衰弱してぐったりしている。
一人の男の子が立ち上がり、棒を構え涙目で俺を睨んでいた。
「隠れていたのね。
ここにいるのは君達だけ?
他の人達は?」
リリィがすぐさま駆け付ける。
弱っているのに、そんな矢継ぎ早に質問投げかけるんじゃないよ。
子供達に【回復魔法】を掛けてやると、全員が元気を取り戻した。
元気になったのはよかったが、恐怖から解放された反動か、リリィにしがみつきわんわん泣き始める。
うるさくてしょうがない。
だが、空腹までは回復されない。
次第に泣き声が弱々しくなっていった。
【収納】から携帯食料と水を取り出し、リリィに配らせる。
ふぅ、やっと静かになってくれた。
「今までよく頑張ったな。
で、何があった?」
棒っきれで皆を守っていた一番年上らしい少年に、これまでの経緯を尋ねる。
だが、何が起こったのかよく分からないらしかった。
ただ一つ、物置に連れて来てくれた大人が、人が消えた、と言っていたのを少年は思い出し、教えてくれた。
ふむ、人が消えた…………、か。
神隠しがリアルタイムで起こったとでも言うのか?
ともかくここで考えていても、答えは出ないし、大人達は戻ってこない。
いずれやってくる団員達に子供達を保護させるとして、ここにベースキャンプを作る事にしよう。
リリィに子供達の相手をさせ、上空に飛び上がり【土魔法】を行使していく。
森の中だけでなく、森の外にも危険があるのであれば、ここを休息地以外に防衛拠点としても機能させねばならない。
まず大事なのは防壁となる塀だ。
分厚い石壁を築き、集落から十分距離をとって二重に囲う。
次に塀と塀の間に、団員用の宿泊施設を何棟か建てる。
最後に魔物に反応する罠をいくつか仕掛けて完成だ。
上から見ると蛇の目のお猪口の様に見え、芸術作品の様な出来栄えに、軽い達成感を得る。
罠の発想を促してくれたラモスに是非見せたいくらいだ。
何かやってこないかなぁ、と思っていたら、建設中の大きな音に反応したのか、熊みたいな四つ足の魔獣が、何頭かぞろぞろと近付いてくる。
どれどれ。
【解析】
ドルドル
LV:35
HP:1900
MP:50
レベルの割に体力がやたら多い、かなり強そうな熊だ。
ドルドルって名前だが、熊にしか見えないから熊と呼ぼう。
熊の群れは、のそのそと塀に近付くと、それに埋め込まれた魔石が反応し、突如現れた落とし穴へと落ちていった。
「ビンゴ!」
他の熊がそれに気付き、直接門へと進路変更を始める。
俺が知っている熊より、魔獣なだけあって頭が良さそうだ。
だが、門に近付くと魔石から次々と【衝撃魔法】が放たれた。
パパパパッと音が鳴り、まるでマシンガンで撃たれたかの如く、蜂の巣になっていく熊型魔獣。
身体が穴だらけになり、そこから血がビュービューと噴き出した。
結果、門の前には十を超えるドルドルの骸が転がっている。
上出来じゃないか?
もし門が突破されたら、更なる罠が発動する仕組みだったんだがなぁ。
ちなみに、罠用の魔石は思ったより魔力を食う。
例えば、魔石に一発当たり魔力10消費する【衝撃魔法】を仕込む際、二倍の魔力20を込めなければならない。
罠を増やせば増やす程、その分魔力を消費する事になる。
だが、南の森攻略の為にこの拠点は、大事な生命線になるかもしれない。
さらに罠を仕掛けておこう。
それが終わったらリリィと稽古だ。
街入り口の広場には、今まさに【北の盾】の団員達が、南の森へと遠征に向かおうとしていた。
間に合って良かった。
門まで来ると、アマンダとナティアラが男性と話している場面に出くわした。
二人の話し相手が【北の盾】の男性団員だったら嫉妬で狂ってしまいそうだが、この人物にはそういった感情が出ることはない。
「ブレイダンさん、わざわざこんな遠方までお越しいただいて申し訳ありません」
「これはこれは、テツオ様。
いえ、これからは侯爵様とお呼びするべきでしょうか?」
「やめて下さいよ」
冗談だとばかりに口髭を上げ、にひるに笑う相変わらずダンディな雰囲気を醸し出すブレイダン。
今回の遠征に備え、武器提供の為に、サルサーレ領からわざわざジョンテ領までお越しいただいたのだ。
何もここジョンテ領で営む武具商の武器がダメだと言ってる訳では無いが、物足りなさは否めない。
この領地の流通経済に新しい風を吹かせる為、二人の姉妹をだしに無理矢理呼び付けた形になってしまったのは申し訳なさを感じている。
「大丈夫ですよ。
むしろテツオ様が領主になった原因は、私の依頼からくるところでもありますから。
テツオ様がここの領主である限り、我々も尽力致します」
「だってよ。
だから気にしなくていーよ、テツオ」
「テツオ様でしょう?ナティアラ」
「う、うう……」
アマンダが口の悪さを指摘すると、ナティアラは唇を尖らせた。
久しぶりにブレイダンに会えたのもあって、アマンダとナティアラの二人は嬉しそうだ。
「しかして、うちの鍛冶師達が今回の引越しにかなり渋りましたので、説得には些か骨を折りました。
早速で恐縮ですが、お願いしていた工房を見せていただけますか?
彼等を早く納得させる必要があります」
「分かりました。
それでは、今すぐにご案内します」
ブレイダンと数人の鍛冶師達を引率して、商店街から用水路を一つ挟んだ先の工房に向って歩いていく。
文句をぶつぶつ言いながら鍛冶師達は、案内された工房へと渋々入っていった。
工房なんて作った事がないので、果たして彼らを満足させれるかどうかは分からないが、サルサーレにある彼らの店に遜色ない出来にはしたつもりだ。
「なんじゃこりゃあ」
いかつい髭面の鍛冶師達が、目を見開きたじろいでいる。
どこか設計をミスったか?
ブレイダンに渡された図面通りに再現したし、火床の炉も完璧に制御されている筈だ。
「どこか不備がありましたか?」
「いいえ……
これは想像以上ですよ、テツオ様。
完璧です」
ブレイダンが興奮気味に完成した工房を眺めた。
「これは?」
ブレイダンは、工房の隅に置かれた、布に覆われた膨らみを見つけ尋ねてくる。
「めくってみて下さい」
布をバサッとめくると、いくつかの鉱石が鈍い光を放っていた。
「巨大な魔水晶の鉱石!
それにこれは、……まさか!
ガルヴォルン鉱石!」
「なんじゃこりゃあ!」
大人の背丈は超える大きさの魔晶石に、二メートル級のガルヴォルン鉱石をサプライズとして用意しておいた。
ブレイダンと鍛冶師のおっさん達は、鉱石に飛びつき夢中になっている。
こんなに喜んでくれるとはありがたい。
「テツオ様、ありがとうございます。
彼らがこんなに目を輝かせているの見たは、冒険者として初めてガルヴォルン鉱石を発見した時以来です」
鍛冶師達がすぐにでも打たせてくれと言い出した。
これ以上工房に居る必要もないし、隣接する店舗スペースにナティアラ、アマンダを置いて俺は店を出た。
ブレイダンと募る話もあるだろう。
すると、ブレイダンが追いかけてくる。
「テツオ様」
「はい」
「テツオ様は領主、そして侯爵位の貴族になられました。
それでももし良ろしければ、また酒の席などご一緒できますか?」
「やめて下さいよ、ブレイダンさん。
そんなに畏まらないで下さい。
私はただの冒険者に過ぎませんから。
是非また飲みに行きましょう」
「ありがとうございます。
そう言っていただけてなによりです。
では、武器提供の為に【北の盾】の元へと行って参ります。
彼女達とはその後にでも、ゆっくりと過ごす事に致しましょう」
「わかりました」
こんな年下相手なのに、相変わらず気遣いが素晴らしい。
ジョンテの淑女達が、彼のファンになるのは時間の問題かもしれないな。
おっと、俺の方も時間を無駄には出来ない。
団長には、森の前に拠点となるベースキャンプの場所を探しておくと言ってある。
急ぎリリィを呼び出し、森の前まで【転移】しよう。
————ジョンテ領南
一気に森の近くまで来てみた。
空から拠点になりそうな、めぼしい場所を探してみる。
以前、上空から見た時には、高度が高過ぎて気付かなかっただけなのか、森周辺にある村や集落は、どこも無人だった。
どういう事だ?
リリィを連れて集落の一つに降りてみる。
「誰もいないわね。
襲われたって形跡もないし」
この集落には二十軒ばかりの家屋がある。
家を見ると、干されたままの洗濯物があった。
何枚かの衣類は、風のせいか地面に落ちている。
他にも、料理途中の食材が放置してあったり、腹を空かせてぐったりしている家畜がいたりと、人が少し前まで確かにここで住んでいたという証拠がいくつもあった。
「不気味だな」
でも、誰もいないなら、拠点にしてもいいような気もする。
不謹慎かな?
それよりも、ここを襲った正体を探るべきなのか?
リリィが気配を消し、周囲をキョロキョロと警戒する。
内股になっている脚から察するに、相当緊張しているようだ。
大丈夫か?
「怖いのか?」
「怖くなんて無いわ!
私は英雄よ?」
別に強がらなくてもいいのに。
おかしな奴だ。
ガタン!
「きゃあ!」
突如物音がし、リリィが俺の腕にしがみ付いた。
顔面蒼白じゃないか。
「おい、今音がした物置を確認してみてくれ。
英雄さん」
「う……、やっぱり怖いわ」
「言えたじゃねぇか」
ポンコツなリリィの手を剥がし、物置に近付く。
魔物が居るかもしれないので、魔法を付与して身体を守る。
【収納】から棒を出し、物置の扉をゆっくりと開けてみた。
中にいたのは、————子供だった。
中は暗くてよく見えないが、人数にして七人だろうか。
誰もが衰弱してぐったりしている。
一人の男の子が立ち上がり、棒を構え涙目で俺を睨んでいた。
「隠れていたのね。
ここにいるのは君達だけ?
他の人達は?」
リリィがすぐさま駆け付ける。
弱っているのに、そんな矢継ぎ早に質問投げかけるんじゃないよ。
子供達に【回復魔法】を掛けてやると、全員が元気を取り戻した。
元気になったのはよかったが、恐怖から解放された反動か、リリィにしがみつきわんわん泣き始める。
うるさくてしょうがない。
だが、空腹までは回復されない。
次第に泣き声が弱々しくなっていった。
【収納】から携帯食料と水を取り出し、リリィに配らせる。
ふぅ、やっと静かになってくれた。
「今までよく頑張ったな。
で、何があった?」
棒っきれで皆を守っていた一番年上らしい少年に、これまでの経緯を尋ねる。
だが、何が起こったのかよく分からないらしかった。
ただ一つ、物置に連れて来てくれた大人が、人が消えた、と言っていたのを少年は思い出し、教えてくれた。
ふむ、人が消えた…………、か。
神隠しがリアルタイムで起こったとでも言うのか?
ともかくここで考えていても、答えは出ないし、大人達は戻ってこない。
いずれやってくる団員達に子供達を保護させるとして、ここにベースキャンプを作る事にしよう。
リリィに子供達の相手をさせ、上空に飛び上がり【土魔法】を行使していく。
森の中だけでなく、森の外にも危険があるのであれば、ここを休息地以外に防衛拠点としても機能させねばならない。
まず大事なのは防壁となる塀だ。
分厚い石壁を築き、集落から十分距離をとって二重に囲う。
次に塀と塀の間に、団員用の宿泊施設を何棟か建てる。
最後に魔物に反応する罠をいくつか仕掛けて完成だ。
上から見ると蛇の目のお猪口の様に見え、芸術作品の様な出来栄えに、軽い達成感を得る。
罠の発想を促してくれたラモスに是非見せたいくらいだ。
何かやってこないかなぁ、と思っていたら、建設中の大きな音に反応したのか、熊みたいな四つ足の魔獣が、何頭かぞろぞろと近付いてくる。
どれどれ。
【解析】
ドルドル
LV:35
HP:1900
MP:50
レベルの割に体力がやたら多い、かなり強そうな熊だ。
ドルドルって名前だが、熊にしか見えないから熊と呼ぼう。
熊の群れは、のそのそと塀に近付くと、それに埋め込まれた魔石が反応し、突如現れた落とし穴へと落ちていった。
「ビンゴ!」
他の熊がそれに気付き、直接門へと進路変更を始める。
俺が知っている熊より、魔獣なだけあって頭が良さそうだ。
だが、門に近付くと魔石から次々と【衝撃魔法】が放たれた。
パパパパッと音が鳴り、まるでマシンガンで撃たれたかの如く、蜂の巣になっていく熊型魔獣。
身体が穴だらけになり、そこから血がビュービューと噴き出した。
結果、門の前には十を超えるドルドルの骸が転がっている。
上出来じゃないか?
もし門が突破されたら、更なる罠が発動する仕組みだったんだがなぁ。
ちなみに、罠用の魔石は思ったより魔力を食う。
例えば、魔石に一発当たり魔力10消費する【衝撃魔法】を仕込む際、二倍の魔力20を込めなければならない。
罠を増やせば増やす程、その分魔力を消費する事になる。
だが、南の森攻略の為にこの拠点は、大事な生命線になるかもしれない。
さらに罠を仕掛けておこう。
それが終わったらリリィと稽古だ。
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