時間を戻して異世界最凶ハーレムライフ

葛葉レイ

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事務官

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 グレモリーの【思念伝達テレパシー】で呼び出され、ジョンテ城に戻ってきた。

 また、ボルストン城からの使いの者が来ているという。

 以前にも説明したが、領主への使者は基本、大臣が務めるらしい。

 ラウールに促され、会議室に入ると使者が二人、椅子から立ち上がる。

 前に神官と一緒に来た腹ポテの中年大臣と、初めて見る髪の長い綺麗な女性だった。
 見知らぬ美女がいるだけで、テンションが爆上がっちゃいます。

 大臣の名前は確か……
 いや、知らん。
 おっさんの名前などいちいち覚えていない。
 大臣、それかおっさんでよい。

 大臣と美女が、丁寧に会釈をする。
 おっさんに頭を下げられるのは、すこぶる気持ちがいい。
 上司に頭を下げさせている気分になる。
 前世では、ペコペコしてばっかりだった気がするからな。

「突然のお目通り、大変失礼致します。
 此度は、テツオ侯爵の祭典での打ち合わせにやって参りました」

「え?」

「は?」

 忘れていた。
 一週間以内に、この街で俺の領主就任を祝う祭典をしなくてはいけないのだった。
 そんなの別にしなくていいんだが、来賓に王侯貴族がやってくるというから、たちが悪い。
 何か仕事をしなくてはいけないとなると億劫になる。

「ええ、もちろん覚えております」

「え、あ、はい。
 それは良かった」

 おっさんは額から流れる汗を拭いて焦っていた。
 見ていて面白いな。

「あの、私は事務官のキャミィと申します。
 大臣は多忙の為、祭典までは私が担当致しますので、どうか宜しくお願いします」

 ゆっくり落ち着いた口調で、キャミィと名乗る美女は挨拶をする。
 かなりの好印象だ。
 最初、秘書かと思っていたが違っていた。
 縛っていてもお尻まで届く深緑色の長髪。
 顔の三分の一隠れるほどの、垂らした前髪が非常にセクシーだ。

「それでは、キャミィ君頼んだよ。
 侯爵、私はこれで失礼します」

「お疲れ様でした」

 うっ、なんだ?
 お疲れ様でした……
 この台詞を言った瞬間、嫌な気持ちになった。
 前世で嫌な記憶がある言葉だろうか。

 気持ちを回復させる為に、ラウールに席を外させ、キャミィと二人で打ち合わせをする事にした。
 仕事が出来る美女を、真近で見るいい機会だ。
 椅子に座ると、タイトな白スカートが少し上がり、太ももがチラリと見える。

 ふぅ、役得役得。

 祭典自体は、領民達に王という存在をアピールする格好の場であって、俺自体は付録の様なもの。
 ダシに使われているだけだ。
 つまり、今回来た使者の仕事は、王が泊まる場所、食事、王の舞台など、王に相応しいものが用意出来るかどうかの視察となる。

 ふぅ、最低最悪。

 城内の来賓用の部屋を見せる。
 さっそくNGが出た。
 もう少し大きな部屋がいいらしい。
 無いのであればこちらでもやむを得ない、とは言うが。

 …………ふぅむ。
 特別にテツオリゾートホテルのスイートルームを用意しようか。
 むしろ、王ほどのVIPに、あそこ以上相応しい部屋はあるまい。

 治安確認の為、領内も視察したいというので、城を出て、二人で街を歩く。
 今日は、いい天気で良かった。
 慣れてない女性と歩く時に、些か緊張するのはいつもの事だが。

「領主様、こんにちは」

「おー侯爵、あの農場は最高だ!
 ありがとな」

 通行人が俺にすれ違う度、領主様、侯爵様とフレンドリーに挨拶してくる。
 どうにも有名になってしまったもんだ。
 手を振る程度の対応をしながら、適当に躱していく。

 キャミィがチラチラと俺を見ている気がする。
 なんだなんだ?

 気にせずしばらく歩いていく。

「あちらは何の施設なんですか?」

 キャミィが、透明度の高い窓がたくさん嵌め込まれた、四角い白壁の建築物を指差して訊ねる。

「あそこは、王都にある魔法学院の様な学校ですね。
 現在、四歳から二十歳までを対象にこちらで学ぶ事が出来ます」

「ええっ?」

 そう。
 サルサーレでもジョンテでも、小さい子供は学校に行かず、親が教育するのが常識で、勉強に興味がある子供でも、教会などで軽く学ぶ程度が現状だ。
 長期的に考えて、文化レベルを上げるには教育制度が絶対に必要だと思う。

 街にいた学者、識者達を説得し、教師として雇用した。
 ジャンルにおいては、植物学、魔法学、戦闘術、言語、音楽などなど、統一性は全く無いが、まずは学ぶという事を識り、楽しんでもらいたい。
 教室の数は、張り切り過ぎて三十クラス作ったが、今使われているのは十歳以下と十一歳以上の二クラスのみ。
 それでも、グレモリーの報告では、街の殆どの子供が入学したようだ。
 大変喜ばしい。

「これは大変素晴らしい試みですね!
 私、感動しました」

 キャミィがキラキラした目で俺を見てくる。
 ふふふ。
 さては好感度がアップしたな?

「街はこんなところですね。
 では、場所を移動しましょうか」

「えっと、宿屋は街の入り口では?」

「王の宿泊施設ですね。これからご案内します」

 街中を定期的に走る馬車を呼び止め、キャミィの手を引きエスコートする。
 車内はジョンテ特産の白金細工が施され、高級感溢れる内装と上質な革貼りで乗り心地は快適だ。

「全然揺れませんね!
 凄いです!」

 キャミィが些か興奮気味になってきたな。

 以前、舗装されているのは貴族が住む区画のみ、他は泥道や砂利道ばかりでひどいものだった。
 現在、街の道路は全て舗装済みで、揺れは最小限に抑えられている。
 魔石制御による無人トロッコも運行可能ではあるが、あまり領民の仕事を奪ってはいけない。
 何事にもバランスが必要だ。

 前方にいよいよテツオパークリゾートが見えてきた。
 横に座るキャミィは、俺の予想通りの顔をしていた。

「こ、この施設は何なんですか?」

 開いた口が塞がらない。
 だらしない口をしやがって。

「ジョンテ一番のサプライズです」

 ここに何があるかを簡単に説明する。
 スパ、遊園地、ビーチ、ホテル。
 どれもいまいちピンと来てないようだ。

 キャミィに関係者専用パスポートを渡し、中へと進む。
 先ずは式典に使える多目的ホールへ案内する。
 広さ、VIP席、セキュリティ共に一発OKをいただいた。

 それよりも遊園地に、興味津々のようだ。

「行ってみる?」

 もう敬語は使わなくていいだろう。

「いいんですか?」

 まだ時間は午後四時。
 特に予定がある訳でもない。
 少しくらいなら付き合ってやってもいいだろう。
 というか、突き合いたい。

 コーヒーカップ、メリーゴーランド。
 キャミィは視察中にも関わらず、少女の様にはしゃいでいる。
 真面目でキツい目つきをしてるから、厳しい性格なのかと思いきや、子供の様に無邪気な笑顔を見ると印象が変わったな。

 子供用とはいえコーヒーカップに乗って、ハァハァと息を乱している。
 ふらつく事務官の腰に手を回して先導し、次のアトラクションでトドメだ!

 大観覧車。
 遠くにデカス山脈の稜線が、そして眼下には街や川が一望出来る。
 ジョンテ領の素晴しい景観をその目に焼き付けるがよい!

 夕陽を見ながら、キャミィが興奮気味に話す。

「あんなに街が小さく見える。
 私、感動しました。
 こんな街、他に見た事ありません。
 凄いです。
 領主様を尊敬します!」

 地上に降りてくるまで、キャミィはこの街がいかに他の領地と違うか、その素晴らしさをつらつらと語った。
 どうやら話し足りないみたいなので、スパリゾートホテル二階にある高級クラブに誘うと、ホイホイとついてきた。

 今日から暫くここに滞在するらしいから、お酒を飲んでも大丈夫だそうだ。

 クラブに着くとまだ開店前だったが、アマンダが店を開けてくれた。
 ここは、アマンダのクラブだ。

「テツオ様、お待ちしておりましたわ。
 あら?そちらのお方は?」

 何だろう、この後ろめたさは……
 アマンダの物言いに含みを感じるのは俺の思い過ごしだろうか?
 いや、俺は自由に生きる冒険者。
 堂々しておればよいのだ。

「ちっ、違うんだ!
 こっ、こちらは王都から視察に来られた事務官の、キャミィさんだ。
 丁重にもてなしてやってくれ。
 キャミィさん、こちらはアマンダだ」

 ふぅ、セーフ。
 噛まずにうまく言えた。

「そうでございましたか。
 キャミィ様、この度はジョンテの街へようこそ。
 ごゆっくりとお寛ぎ下さいませ」

「はい、ありがとうございます」

 アマンダは、キャミィを席に案内すると、流れるように酒の好みを聞き出し、会話を弾ませ、いつの間にやらほろ酔い状態にまで持っていった。
 仕事が早い。
 同性だろうが関係無く虜にしてしまう、この魔性のテクニック。
 げに恐ろしき。

「ちょっと失礼」

 俺も少々飲み過ぎたようなので、レストルームに向かう。
 この領地のトイレ事情は酷いものだった。

 川の上に小屋があり、穴に向かって用を足す。
 事後は布や荒い紙切れを湿らせて拭くのに使う。
 貴族のトイレは、高級な布を何枚も使い捨て、召使いが溜め桶を川へと洗いに行く。
 その為、川上に貴族が住むのは、どこへ行っても変わらない。

 そこで俺は、魔石制御された魔法便所を作り上げた。
 水魔法、風魔法、火魔法を色々組み合わせ、使用者をより綺麗な状態にし、排泄物は瞬時に消失させる。
 このトイレを、街中に設置した。
 清潔さは何にも勝る必須事項だ。
 非常に満足している。

 魔法って本当に便利だ。

 トイレを出ると、数人の女性達が控え室へと入って行くのが見えた。
 デカスに住むメリーズ達だ。
 労っておこう。

「みんな、お疲れさん」

「ご主人様、お疲れ様です」

 女性四人が俺に気付くと挨拶をしてくれた。
 うん、気持ちいい。
 お疲れ様という言葉に苦手意識があったが、積極的に挨拶として使う事で、克服する事ができた。
 メルロスは、俺への挨拶に、ハグやキスも習慣として付け足そうとしたが、人数が余りに多い為、却下した。

「みんな、頑張ってますのよ」

 いつの間にやら俺の横にアマンダが立っていた。
 アマンダには、三十五人の女性の中から、クラブ勤務に向いていそうな女の子何人か選ばせた。
 だが、接客業である以上、誘拐された時の心の傷が心配なのは否めない。

「アマンダに任せっきりで悪いな」

「いえいえ、こんないい環境でのびのびと自由にやらせてもらっています。
 毎日、楽しいですわ。
 ……後は、テツオ様に可愛がって貰えれば、何も言う事はありません」

 上目遣いで俺の胸に、そっと人差し指を這わせる。
 俺の身体に電撃が通り抜けた。
 まさか、アマンダも雷系魔法を持っていただなんて!
 まさに【雷光の矢ライトニングボルト】!
 ビリビリするぜ。

「も、もちろん。
 その内な!」

「ふふふ、楽しみにしてますわ。
 それよりも、あの可愛らしい事務官さん。
 どうするおつもりですか?」

 やっぱり突っ込まれたか。

「彼女は王都や各領地の情報をいっぱい持っている。
 色んな話が聞ければいいな、と」

「なるほど、分かりました。
 どれくらい酔わせたいのか仰っていただければ、その様に致しますので何なりと」

 耳元でそう囁くと、妖艶な笑みを浮かべてホールへと戻っていった。

 エロくて怖い。
 アマンダは最強の夜の女王だ。

 オープンしてすぐに、この店は予約で一杯になった。
 アマンダの魅力はどの街でも、男を軒並み虜にしてしまう。

 暫く余韻で惚けていると、目の前のメリーズ改めアミーズ達が、服を着替える為に裸になりだした。
 一応、待っていたみたいだが、俺が出て行かないから、止むを得ず着替え始めたようだ。

「あっ、すまん!
 邪魔したな!」

 そそくさと控え室を出ると、「邪魔だなんてぇ」「見られても構わないのに」「むしろ見て欲しい」「私……魅力ないのかな」など色々な声が聞こえてくる。

 同じ屋根の下で暮らしているのに、手を出さないのは失礼なのか?
 そろそろ一人ずつ吟味してもいい頃合いかもしれない。

 時計を見ると六時過ぎ。
 今日は魔力不足の為、時は戻せない。

 時間は大切に使わなきゃな。
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