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ヴェリアス
しおりを挟む…………クチュッ…………クチュッ…………
…………なんだ?
ああ、気持ちいい。
夢……か?
俺の頭どうなってんだ?
まだそんなエッチな夢を見るのか、俺は。
目を開けると、エリンの使い魔であるサキュバスが、俺に馬乗りになり、腰を艶めかしくグラインドさせていた。
名前は確かベルだったか?
そうだよな、エリンの前では流石にエッチしにくい。
その反動でこんな夢見るんだな。
透明なくらい青白い悪魔の肌。ツンと上を向いた小振りのおっぱい。魅惑的な赤い瞳。
細く括れた腰が、体験した事のないリズムで動き、俺の気持ちいいスポットをガンガン攻めてくる。
圧倒的なテクニックを味わいたいという男の願望だな、これは。
「なんて、いい夢だ」
ピタリと動きが止まる。
「くくく……夢な訳ないだろう?」
「え?え?」
「犯されてるんだ、お前は」
顔を横に向けると、エリンが俺の左腕でスヤスヤと寝息を立てて寝ている。
夢じゃない。
顔をベルに戻すと、淫らな笑みを浮かべた。
「淫魔の本気見たい?」
「ベ、ベル?」
「ヴェリアスだ」
ベルの膣内が、一際ウネウネと波立つ。
内部に触手でもあるのか、何本も俺の肉棒に絡みつき、時に優しく、時にキツく締め付ける。
腰の動きプラス触手の締め付けで、何パターンものバリエーションを生み出し、俺をこれでもかも攻めまくる。
「ど、どうなってんだ?コレ」
「人間じゃ満足出来ない体になるぞ?」
「ああっ!」
ヤバい!
大きめの声が漏れてしまった。
さっとエリンの眠る左腕を見ると、セーフ!
起こしてない。
「気にするのか?エリンの事を。
余裕だな?」
「くっ、何で、こんな、事を?」
止めどない快感に耐えながら理由を聞く。
淫魔に聞くのは間抜けか?
「くく、くはは!
私の事を犯したい目で、ずっーと見てたじゃないか。
淫魔はそういった性欲を敏感に感じ取れる。
これはお前が望んだ事だ」
うん。
そんな目で見てたよ。
「くっ、じゃあ俺の本気を見せてやる!」
【水魔法】発動!
掌を象ったゲル状の触手が何本も現れ、ベルの身体中に絡みついた。
更に一本の触手が、ベルの膣内ににゅるりと潜り込む。
それは俺の肉棒にぐるぐると巻きつき、採掘ドリルの様に回転する硬質ゲルとなって補強する。
分かりやすく言えば、ドリル型ディルドだ。
「くっ、俺のターンだ!気をしっかり持てよ」
【時間遅行】
ほんの少し、時間の流れをゆっくりにする。
その間、しっかりベルの腰をホールドしたまま、膣内をドリルでギュルギュル突いて突いて突きまくる。
これで時流を元に戻した時、全身に蓄積した快感が一気に襲い掛かるだろう。
ベルの表情が徐々に歪み、次第と耐える顔へと変化していく。
そのスローモーションは、俺を非常に興奮させる。
ついついピストンスピードが加速してまうわい。
くっ、そろそろか?
【解除】
「!!!」
時間が正常に戻り、積もり積もった快感が、ベルの全身を稲妻のように通り抜ける。
上半身が激しく振動し、肉棒を飲み込んだまま仰け反った。
気絶しているのかビクッビクッと痙攣している。
悪魔だし死なないよな?
そこへ俺も、生でフィニッシュ。
【回復魔法】
気絶して、しばらく反応がなかったので覚醒させてやる。
いつまでも俺の上に乗っていられても困る。
「淫魔が人間なんかにイかされるなんて……」
目覚めたベルは呆然としている。
自尊心を傷つけたかもしれない。
「こんなの絶対エリンにしたらダメだからな」
俺に顔を近づけてそう言うと、唇と唇が少し触れた気がしたが、ベルはもう消えていた。
ふぅ……
こんなドリルピストン、人間の女にはとても出来ないよ。
そんな事を考えながら、横で幸せそうに寝るエリンにそっとキスをする。
さてと、もう一眠りしようかな。
——————
結局、朝早く目覚めたので、テーブルでお茶を飲んでいた。
エリンはまだ寝ている。
お茶を入れてくれたのは、ベルことヴェリアスだった。
黒髪の前下がりボブから見える顔は、いつも通りの無表情で無感情だった。
悪魔って基本そうなのかな?
「は、話しても、いい?」
なんか、どう切り出していいか分からず、ボソボソっと話し掛けてしまった。
俺の残念な定番パターンだ。
「何?」
ううっ、冷たい。
でも、コミュニケーションは取ってくれるらしい。
「もしかしたら、今日これから悪魔を倒しに行くかもしれない」
「ふーん」
なんだ、ふーんて。
反応薄っ。
じゃあ先にお前を倒してやる、とか言われて敵対関係になる可能性まで考慮してたのに。
同族を倒される事に対して何も思わないのか?
「え?それだけ?」
「何か言って欲しいの?」
ベルは、窓際の植木鉢にいるウネウネした気持ち悪い植物に、怪しげな色の液体をやりながら、俺に冷たい目を向ける。
その目に気押され黙っていると、
「人間だって、動物を可愛がったり食べたりするだろ?
お前が何を殺そうが、私は気にしない。
エリンを悲しませたら殺すがな」
そういうものか。
悪魔が人間を殺したら、人間達は結託して悪魔を恨むけど、人間同士はいがみ合い殺し合っている。
人間と悪魔の共生は、歪な形でも可能なのかもしれない。
「うーん、何を殺すんだ?」
パジャマ姿の少女エリンが、眠そうに目をこすりながら、ふわふわと宙に浮いて起きてきた。
下は何も履いてないが、ロリスタイルに戻っててがっかりだ。
そのまま、ふわふわと何の迷いもなく、俺の膝にちょこんと収まった。
「えへへー、わらわの特等席だぁ」
「おい、椅子なんていっぱいあるだろ?」
「わらわはいつもここに座ってるんじゃ!
テツオがここに座ってたのが悪いんじゃぞー」
朝から変な駄々を捏ねやがって。
まぁ、いいか。
もうすぐ出掛けるし。
何気なしに柱を見る。
なんと、時計が掛かっていた!
でも、四分割の時計だから、十二時、三時、六時、九時で区切られ、針とかは無い。
「あ、時計だ」
「当たり前じゃ。
わらわは時空魔法を研究してるんじゃからな。
南の王国に行けば、城にもあるぞ。
わらわが作ってやったんだ。
でも三百年経ってるしなー。
もう壊れてるかもなー」
そうなのか。
エリンが時計作ったんか。
でもサルサーレクラスの大きい街でもまだ普及してないなんて、人類三百年間も何してたんだ?
「で、何を殺すんじゃ?」
「ああ、エリンを悲しませたらベルが俺を殺すらしい」
ピキリと空間が震え、エリンの目が赤く光る。
「テツオを殺そうとしたら、わらわが先に貴様を消すぞ」
「申し訳ありません」
怖っ。
え?この二人、仲良しコンビじゃないの?
「テツオー、わらわはお主が何をしようと悲しんだりせんからなー」
切り替えの早さがおかしい。気が付けば、エリンは何かにつけて俺に甘えてくる。
ベルに視線を送ると無表情のままだ。
悪魔がいまいち分からない。
「エリン、俺は冒険者になった。
任務は悪魔退治なんだ」
エリンは下から俺を見上げ、キョトンとしている。
「テツオがなんでわざわざ冒険者なんぞするんじゃ?」
「冒険者は男のロマンなんだよ」
「わからんのぅ」
エリンは全く感心を示さず、長い銀髪をブラシで梳かしている。
いい匂いがふわりと鼻をくすぐった。
「それよりこの北の領地にいる悪魔の事知らないか?
どこか潜んでいるみたいなんだが」
「悪魔なんていっぱいいるからなー。
人間に化けてたり、操ったり、色々な」
「そういう悪魔は見破れるのか?」
「悪魔には関わらん方がいいがなぁ。
あー、でも任務と言ってたのぅ。
そうじゃ、ベルを連れていけ。
悪魔を探すのに役立つぞ」
うーん、確かに。
人間に化けてる悪魔を【解析】したとしても、もしかしたら分からないかもしれない。
「じゃあ、今回は借りていこう。
よろしくな、ベル」
「ふん。
私を呼び出す時は【召喚ヴェリアス】と唱えろ」
そう言い残すと、影の様にブゥンと消えていった。
「なんじゃー、あやつは?
わらわのテツオに対して不敬じゃなー!
テツオ、何かしたのか?」
エリンがぷんぷんしているが、あまり突っ込まれたくないし、もう帰ろうかな。
お茶を飲み干し、エリンをひょいと持ち上げ椅子に座らせる。
「そろそろ行かないとな」
「気をつけるのじゃぞー」
そう言うと、エリンが椅子の上に立って背伸びし、俺に腕を回して口付けをしてきた。
「いってらっしゃいのチュウじゃ。
コイビトはこういう事するんじゃろ?」
意外にも可愛らしい事をする。
本当は三百年前にしたかった事なんだろうな。
そう思い至り、エリンをそのままギュッと抱きしめる。
「行ってくる」
エリンは俺が【転移】して消えるまで、顔を真っ赤にし、身体をカチコチに固まらせていた。
——————
そこは、深く暗い洞窟だった。
二つの影が、蝋燭の灯りに揺らめく。
その影達は、何やらヒソヒソ話をしている。
「あの依頼を受けた奴がいる」
「誰だ?」
「部下の報告じゃ北の盾らしい」
「【北の盾】!でかいクランじゃないか!
大丈夫なのか!?」
細い影は動揺で激しく揺れる。
「その為に俺を雇ったんだろうが」
太い影は揺れない。
「た、高い金を払ってるんだ!
仕事はちゃんとしろよ!」
洞窟内に一際大きな反響を残したまま、影の一つがふぅっと消える。
「ちっ!度胸もねぇくせに、一人前に悪事は働きやがる」
太い影が手を挙げると、どこに潜んでいたのか無数の影が一斉にざわざわと蠢き出した。
「ふふふ、クランの生き残りを懸けた仕事になるな。
だから冒険者は面白い。
ハハハハハ!」
太い影はそこで大きく揺れた。
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