時間を戻して異世界最凶ハーレムライフ

葛葉レイ

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ソニア

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 【北の盾ノールブークリエ】の団長ソニアが、少し話をしてみたいという事で、面接室のような部屋に入っていた。

 大理石風のテーブルを挟んで二人掛けの椅子があり、それだけで部屋が埋まる程のスペースだが、大きな窓があるので狭さはそこまで感じない。
 窓から差し込む夕陽が、ソニアを照らす。
 初対面の美人と、こんな狭い空間に二人きり…………緊張するな。

「推薦状を読ませてもらった。
 スーレの村では、うちの団員が迷惑をかけた様で、大変申し訳なかった。
 この手紙には、君への感謝と、クランへ勧誘したい熱い思いが、びっしりと書いてある。
 随分と気に入られたようだな」

 え?そうなの? 
 おっさん共に気に入られても困るんだけど。

「軽く紹介しておこう。
 我がクラン【北の盾ノールブークリエ】は、二百年の伝統があり、現在、百人を超える団員が在籍している。
 死んだ父から団長を受け継いだ私は、このクランを本当の家族だと思っている。
 もし君に入る気があるなら、みんなを家族だと思ってくれ」

 うーむ。
 アットホームという誘い文句に騙され、いいようにコキ使われる事例はよくある。
 長年続いているクランなんだから信頼度も高いよ!と思わせておいて、古い考えや風習に縛られ、腐敗してる組織も少なくない。
 そもそも、金等級ゴールドにこだわらずとも、なんならクランに入らずとも、独自で捜査して、貴族と悪魔を討伐できる自信だってある。

 だが、そんな悲観的感情すら一瞬で搔き消す圧倒的な説得力を、この団長は胸に二基備えていた。
 冷たくすら感じるクールな瞳に、反比例する包容力たっぷりな母性の膨らみがひたすらに暖かい。
 あったけぇよぉ。

「温情ありがとうございます。
 ですが、今回の依頼次第じゃ、迷惑をかけるかもしれません」

「ああ、依頼の事はラーチェから聞いている。
 今日ギルドに初めて来た君が、沢山ある捜索依頼の中から、金等級ゴールドしか受けれない不思議な案件を見つけ出したのは、単なる偶然ではないだろう。
 心当たりがあるなら聞かせて欲しい」

 どうしよう。
 貴族と魔族 、どちらも敬遠したいキーワードだろうが、正直に全部言ってもいいものか?
 それとも、まだ魔族の仕業と確定した訳でもないし、そこまで言う必要もないか?
 こいつは迷う!迷う!

「私の知人の仲間が、何者かに攫われたので探し出したいんです」

「君は分かりやすいな。
 私に気を遣っている。
 犯人の目星は付いているんだろう?」

「すいません。
 では、お言葉に甘えて言わせてもらいますが、犯人はもしかしたら貴族かもしれないんです」

「貴族……か」

 なんでバレたか分からないが正直に言ってみると、やっぱりというか団長は顔を顰めた。

「やはり厳しいですか?
 団長さんには依頼を受けていただくだけでもいいんです。
 私一人で全部やりますので」

「いや、違うんだ。
 貴族の悪い噂はどこにだってあるさ。
 ただ、あいつらは尻尾をなかなか掴ませない。
 ようやくチャンスが来て嬉しいんだよ。
 それに依頼として、手順を踏んでギルドに要請されている案件ならば、断る理由はない」

「は、はぁ」

「いいだろう、君には借りがある。
 依頼は私が受け、情報収集は空いてる団員に頼もう。
 明日の昼過ぎにでも、またギルドに来てくれ。
 こちらで調査しておく」

「分かりました。
 ありがとうございます」

 トントン拍子で話がまとまってしまった。
 こんな簡単でいいのか?
 ソニアはではまた明日、と言って早々に席を立った。
 おっと、金等級ゴールドの実力ってヤツを見ておこう。

【解析】

 ソニア
 年齢:21
 LV:51
 HP:2500
 MP:120

 レベル50で金等級ゴールドになれるんだ。
 雪山にいたアイアンウィングくらいの強さか。
 あの鳥さん強かったんだな。
 それよりも団長、俺より年下だったのか。
 だからと言って年下でも、お姉さん属性がある事に変わりは無い。
 用事が終わったので、ギルド一階へ戻ろう。

 一階に戻ると、テーブル席に座っているリリィを見つけた。
 というか、地味な装備と眼鏡で目立たない様にしていても、どこにいるかすぐに分かってしまう。
 リリィの周りに、男性冒険者達が群がっている。勧誘ならまだいいが、ナンパ目的のヤツもいる様だ。
 駆け出し冒険者風のショボい装備、綺麗な顔に、露出したスリムな体型。
 手取り足取り教えてあげたくなる気持ちは、分からんでもない。

「待たせたな」

「あっ、テツオ!」

 連れがいる事が分かったからか、男達は舌打ちしながら去っていった。
 よかったな、お前ら。
 こいつ、お前らの三倍以上は強いぞ。

「メシ食いに行くか」

「うん!」

 ギルドを出ると、外はすっかり暗くなっていた。
 スーレの村と違い、灯りが街を明るく照らしている。
 街灯?
 電気もガスも使われてないこの低文化世界で、何が燃料なのだろうか。

 中世建築を照らす綺麗な淡い光を眺めながら、異国情緒溢れるテーマパークを歩いてるような気分に浸る。
 夕食時で人が増え出した繁華街を、ほんの数分ばかり歩くと、一際賑やかな酒場に到着した。
 中を覗くと、数多の冒険者で混雑している。

「騒々しくないか?
 お姫様は、もっと落ち着いた高級店で食べたいだろ?」

「こういう店に一度入ってみたかったの。
 スーレの村に行く前に通ったんだけど、一人じゃ入りづらくて」

「そうなんだ。
 じゃあ、ここにするか」

「いいの?やったぁ」

 嬉しそうに破顔するリリィが、一際可愛く見えてしまう。
 実際可愛いんだから、当然といえば当然だが。
 …………参ったな。


 ——バッファロー・テリー

 街一番の大きさと美味しさを自負する大衆酒場。
 夜になる前から連日盛況で、冒険者と同じく定休日は存在しない。
 店舗中央に調理場があり、そこを囲む様に客席が並ぶ。巨漢店主テリーが調理をし、露出度高めのウェイトレス達が、酒や料理を運ぶ。

 それにしても、商店街、ギルド、酒場、この街はどこも人が多過ぎじゃないか?

 俺たち二人は、少しでも目立ちたくない理由から、端の席でのんびり食事をしていた。
 何故か最初の一杯で、すでにリリィが酔っ払っている。
 酒弱ぇな、こいつ。
 そういえば何才なんだ?

【解析】

 スカーレット
 年齢:16
 LV:67
 HP:2100
 MP:220

 待て待て待て、16才て!
 未成年やん!

「お、おい!そういえば、リリィって何才だっけ?」

「え?私、16よ」

「酒とかまだ早いんじゃないのか?」

「えー、何言ってるの?
 とっくに13才で成人してるんだから」

「は?
 あ、いや、そうなんだ」

 まぁ確かに、その国その時代で、成人する年齢はバラバラだ。
 自分の基準に当て嵌めてはいけない。
 郷に入らば郷に従え、だ。
 この世界の基準、常識、法律について、識っていかねばならないな。

「それより頼んでたモノはあったのか?」

「ああ、これね」

 リリィから何枚かの羊皮紙を受け取る。
 依頼要請書だ。
 俺が金等級ゴールドとなる為に、非常に有利な内容になっている。
 よく揃えてくれたもんだ。

「おお!ありがとな」

「えっ?
 えへへ……役にたったかな?」

「ああ」

「ねぇ、ちゃんと褒めてよー」

「酔ってるのか?お前」

 酔っぱらいを無視して、ちょうど運ばれてきた出来立ての料理を口に運ぶ。
 ここの料理は、どれもが美味くて酒が進む。
 特にこの豆と果実と獣肉の包み焼きなんかは、あまりの美味さにお代わりしたくらいだ。
 勧められた果実酒に切り替えてからは、アルコール度数が高かったのかリリィが完全に酔っ払い、俺にもたれ掛かっている。
 ついつい胸元に目がいってしまう。

「そういやお前結構強かったんだな。
 さっき会った団長より、お前の方が強かったぞ」

「えー、その団長って女ー?」

 やばいな、絡み酒か?
 肩をぐいぐい押し当てて、俺の顔をじっと見ている。

「おい、お二人さん。
 ここは乳繰り合う場所じゃねぇぞ!」

 髭面のゴツいおっさんがガコン!とジョッキをテーブルに叩き付けた。
 あー、出たよ。
 これが嫌だから酒場避けたかったんだよねー。

「ぐわぁっ!」

 おっさんが一瞬で店外に吹き飛ぶ。
 俺は何もしてないぞ?
 恐ろしく早い手刀。
 おっさんは倒れたまま微動だにしない。
 生きてるよね?

「ったく、邪魔しないでよねー」

 酔ったリリィが凶暴になっている。
 おっさんにそっと【回復魔法】を掛けておいた。

 いやしかし、まさかこうやって女性と二人で酒が飲めるなんて、この世界に来てよかったと素直に思えるな。

 おっさんが吹っ飛んでからは誰も近寄らず、その後、落ち着いて過ごせた。

 気になっていた街灯の燃料が聞きたかったが、リリィが酔い潰れた為、結局分からずじまいだった。

 酒場を出て、リリィをおぶって宿に向かう。

 こいつを寝かせたら、ようやく俺のお楽しみの時間だ。
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