時間を戻して異世界最凶ハーレムライフ

葛葉レイ

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サルサーレの街

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「一つ確認なんだけど、リリィがこのまま街に入ったら身分がバレる可能性はあるか?
 一応、お姫様なんだろ?」

「そうね。
 私の顔を知ってる民は、この国にも少なからずいると思うわ」

 そりゃまずいな。
 初めての街で、いきなり目立ちたくはない。
 リリィの装備はプラチナ製らしく、更に王家の紋章が入っていたりと、装飾も豪華過ぎて目立ちやすい。

「それじゃ一緒に歩けないな。
 これに着替えてくれ」

 そういって【土魔法】で創り出した黒鉄装備一式を渡し、着替えさせた。

「これでいいの?」

 見られたら恥ずかしいからと、臨時で創った簡易試着箱から現れたリリィを見て、少しムラっとしてしまった。
 黒鉄の装備といっても、手足のガードと薄い胸当て程度の防御力皆無の瑣末な物。
 足と胸元が多めに露出していて、これもある意味注目を集めそうだが、お姫様だとバレなきゃそれでいい。
 明らかに俺の目の保養だ。

「あとこれを掛けてくれ」

「眼鏡?」

「伊達眼鏡だ」

【土魔法】で創り出した眼鏡なので、レンズはただのガラスでしかない。
 でもどうやら、この世界にも眼鏡はあるようで安心した。
 さてと、ようやく街に入るか。

 ————サルサーレの街

 サルサーレ領の領主であり、貴族であるサルサーレ何世だかの城がある。
 このデカい街は、城下町というわけだ。

 そのせいか街の至るところに、施設兵がちらほら見受けられる。
 街の大きな門を潜り、堀に掛かった橋を渡ると、五十軒以上の商店がズラリと建ち並び、所狭しと冒険者や商人達で賑わっている。

「ちょっと見てっていいか?」

「も、もちろん!
 なんだかデートみたいわね」

 無視して歩き続けていると、トトトッと駆け足で近付いて、腕を組んできた。
 リリィが露骨に距離を縮めてくる。
 参ったな。
 どんどん可愛くみえてきている。
 情が移ると別れる時が大変だ。
 ペットが死んだ時みたく、別れは悲しくなるもんだ。
 昔飼っていた犬を思い……出せない。
 ……どんな犬だっけ?
 記憶が無くなるって想像以上に精神にくる。
 腕を組んでニコニコしているリリィを見て少し癒されるが。

「ぼうっとしてどうしたの?」

「ああ、悪い。
 ……行くか」

 暫くは腕を組ませておいてやろうか。

「この街の通貨もゴールドなんだよな?」

「単位はゴールドで統一されてるけど、金貨に彫ってある模様や大きさで金額に差があるわ。
 一番高額な一万ゴールドは白金貨ね。
 今、テツオが持ってるのは百ゴールド金貨よ。それより下には十ゴールド銀貨、一ゴールド銅貨が続くわ」

 なるほど、金額によって素材や色、デザインと色々違うのね。
 今までよく見てなかったな。
 百ゴールド金貨を手の平で遊びながら歩く。
 ふと【土魔法】で金貨を模倣してみると、あら不思議。
 もう一枚増えた。
 あ、簡単に億万長者になれそうだ。

「えっ!?
 今の何!?
 金貨増えなかった?」

 どうやら一部始終見られていたようだ。

「手品だよ手品。
 増えるわけないだろ?」

「そ、そうよね」

 危ない危ない。

「それよりこの街で、一番高価な武具屋に行ってみたいな」

「それならあっちよ」

 リリィに案内されるまま、大きい屋敷に入る。
 天井が広く、年季の入った木造の室内。
 床には絨毯が敷き詰められ、高級感を演出している。
 その広い部屋に、クロスのひかれたテーブルがいくつも並び、その上には、強そうな武具が丁重に置かれている。

「どれもが当店自慢の逸品でございます」

 ビシッとスーツを着こなした老紳士が近づいてきた。
 口髭がダンディで、目つきが鋭く、渋さを感じる。

「ご挨拶が遅れました。
 私、当店の支配人ブレイダンと申します。
 以後お見知り置きを……
 して、本日はどのような物をお探しで?」

「ちょっとこれを見てもらえますか?」

 あらかじめ出しておいた【土魔法】で創った水晶剣【クリスタルソード】を、支配人に渡す。

「では、失礼します」

 支配人の目がさらに鋭くなる。

「ふむ、素晴らしい!
 これは魔晶鉱の剣ですね」

「魔晶鉱?水晶ではないんですか?」

「ご説明致しましょう。
 部類で言えば水晶で間違いありません。
 ただこれは天然の水晶ではなく、恐らく魔力が集まってできた結晶でしょう。
 それを魔晶鉱、または魔晶石と申します」

「魔晶石」

「はい。
 硬度で言えばどちらも同じ水晶なので大した差はありませんが、天然の水晶は、鍛治師の腕次第で強化できます。
 魔晶石は鍛治師による強化は出来ませんが、魔法剣の様に、魔力の効果を乗せやすい性質があります。
 奥の工房から音が聞こえるでしょうか?
 当店の鍛治師であれば、より強い水晶剣を打つ事が出来ます」

 確かに、先程から奥の方で、金属を叩く音がする。
 奥にいる鍛治師が、ここにある武具を造ったのだろう。

「ありがとうございます。
 勉強になります。
 実は今回は、これより硬い剣が無いか探しにきました」

「これも相当良い剣ですが、そうですか。
 より切れる剣、より強い剣ではなく、より硬い剣をお探しですか」

 言い方が悪かったか?
 素材さえ分かれば、【土魔法】で創れると思ったが、この男何か気付いているのやも。

「では、まずはこちらの剣。
 ミスリルで出来ております。
 魔法効果は水晶より乗りやすく、硬さは魔晶石に匹敵します。
 打ち方次第で切れ味は水晶を超えます。
 なかなか出回らない金属ですね」

 銀光沢で輝く剣は、綺麗な刀身で確かによく切れそうだ。
 魔力を帯びており、攻撃力はかなり高いだろう。

「次にこちらダマスカス鋼の剣。
 当店一番の品でございます。
 魔力は乗りにくいですが、硬さという点においてはミスリル、魔晶鉱を遥かに超えています」

「ダマスカス鋼……
 これがこの世界で一番硬いんですか?」

「武具に使われる素材でしたら、最強に近い部類に入ります。
 これより上になりますと伝説級になりますが、アダマンタイト、オリハルコン、ガルヴォルン等があると言われております」

 まだ上があるのか。

「それらの素材はどこで手に入るんですか?」

 そう尋ねると、奥から袋を持って、俺の前に置いた。
 袋から重そうな包みを取り出し、布を丁寧にめくっていくと、黒光りした金属がお目見えした。

「これは?」

「ガルヴォルンの欠片です。
 この小ささではとても武具などは作れませんが、私が冒険者時代に、悪魔の巣食う迷宮にて運良く入手した宝物でございます」

「これがガルヴォルン」

「そうです。
 それらは入手難度からして伝説級なのです。
 もしお客様が今後珍しい鉱石を見つけられましたら、是非当店にお持ち下さい。
 言い値で買い取らせていただきます。
 その鉱石の武具等をお求めでしたら、私の信頼する鍛冶師が、必ずや希望の品を仕立てさせて頂きます」

「分かりました。
 ありがとうございます。
 ちなみにこの剣だと幾らで買い取って貰えますか?」

「この魔晶剣でしたら、そうですね。
 15万ゴールドでいかがでしょうか?」

「え?そんなに?」

「魔晶鉱自体は大変貴重ですし、そもそも高い魔力を持つ魔物や悪魔等の潜む場所でしか採れない鉱石と言われています。
 入手難度が高い為求める人も多くいる事でしょう。
 しかもこれは、柄の部分まで魔晶石で出来ており、魔力伝導に優れてます。
 誰の銘かは分かりませんが、かなりの逸品ですね。
 悪魔、もしくは魔人が、創り出した物かもしれません」

 支配人が熱く語っている。
 まさか俺が魔法で創り出したとは言えないが、高値なら売ってもいい。

 最高値の金貨を入手さえすれば、あとは【土魔法】で増殖させるだけだ。
 罪悪感は少しあるが。
 さて、金貨偽装はこの世界ではどれだけの罪になるのだろう?

「ちなみにミスリルの剣とダマスカス鋼の剣は幾らになりますか?」

「ミスリルの剣は約10万ゴールドで、ダマスカス鋼の剣は約30万ゴールドになります」

「ではこの剣を売って、ミスリルの剣を彼女に一本買いたいと思います」

「えっ?」

「ありがとうございます」

「い、いいの?」

「もちろん」

 こいつは、これが魔法で出した剣だと知っている。
 それを売った金で、剣の一つでも買ってやれば共犯だ。
 口止めになるだろう。

「ミスリルの剣は何本かあるので、ご説明しますね。
 では、どうぞこちらに」

 支配人が、ミスリルの剣について説明している。
 どうやら、鍛冶師の腕次第で、攻撃や敏捷、魔力など色々な付与効果が得られるらしい。
 鍛冶師って凄いな。
 リリィが候補を二つに絞って悩んでいる時に、ボソリと支配人に話しかけてみた。

「こんな身なりをした私達に、よくしてくれてありがとうございます」

「いえいえ、滅相もございません。
 この仕事をしていると、目が鍛えられるのです。
 こちらの令嬢は高貴な方、貴方様は相当な力の持ち主とお見受けします。
 幸運だったのはむしろ、私めの方でございましょう」

 一般人と言っていいのか分からないが、ある程度の鑑定眼の持ち主は、結構いるのかも知れないな。

 リリィのミスリルの剣と、白金貨を含めた金貨を受け取り、店を後にする。
 当初の目的だった硬い物質を知る事ができた。
 ガルヴォルンが見れたのはラッキーだった。
 白金貨も入手したので、これを増殖すれば金に困る事はもう無い。

 いい街じゃないか!
 あとはいい女との出会いだな!
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