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エルフの国
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「ねぇ、何処から来たの?」
「ニンゲン?ねぇ、ニンゲンなの?」
「ニンゲンて美味しいの?」
「キャハハハ」
滝に向かって、せせらぎの音を聞きながら川辺を歩いていると、羽根の生えた小さい人型の生き物数体に絡まれてしまい、俺の周りを五月蝿く飛び回っている。
リリィが言うには、これらはピクシーと言う妖精らしい。
100センチくらいのサイズで、可愛い見た目をしているが、発言内容がなんか怖い。
悪戯好きで好奇心旺盛だが、余程の事がない限り人間を襲う事はないとリリィは言う。
懐くのであればペットとして一匹欲しいくらい造形は見事なのだが。
ピーターパンに出てくる妖精はもっと小さいイメージだったけど、種類によって大きさ違うのかな?
「ねぇ、妖精さん、ここには何があるのかな?」
「喋った!喋った!ニンゲン喋った!」
「キャハハハハ」
ムカッとくるなぁ。
……いや、良くない。
紳士たれ。
無視だ。
しばらく歩いているとようやく滝壺が見えてきたので、リリィを伴い滝の麓まで一気に【転移】する。
【転移】前の場所で、置き去りにされた妖精達がピーピー騒いでいる。
本当に煩い。
滝は思ったより大きかったが、滝壺は澄んだ綺麗な緑色をしていた。
森を抜けた突き当たりが滝だったので、ここで行き止まりとなっている。
「幻想的で、とても綺麗ね」
「また罠かもしれんぞ」
すると、滝の中から人影が浮かび上がり、一人の男が不思議な事に水に全く濡れずに現れた。
病的に色白で鼻が高い端正な顔をしたその男は、長い金髪を後ろで束ね、丸出しになった耳の先は尖っている。
「エ、エルフだわ」
エルフとな?人間にしか見えないが、あんな耳を尖らせた人間は見た事がない。
「…………私は、ハイエルフだ。
さて、君達は、ガーディアンを、倒しここまでやってきたようだが。
来訪の、目的を聞かせて、もらえるか?」
「いや、えーと、目的とかは無いんですが、そこに山があるから登って、襲われたから倒して、穴が空いたから入った、というか。
言うなれば流れですかね」
「…………」
ハイエルフの兄ちゃんは黙ってこちらを伺っている。
言い方がまずかったか?
沈黙が辛くなってきた頃、兄ちゃんが再び口を開いた。
「ふむ、久しく山を登る者も、おらずガーディアンも劣化して、いたという、ことか。
いや、失礼。
虚偽が、無い事も敵意が、無い事も把握、している。
そこで、だがどうする?
我々の長老が、会ってみたいようなのだが、無理強いは、しない。
帰るなら来た道を戻れば、よい」
喋りの間の取り方が気持ち悪いな。
どこで言葉区切ってんだよ。
だが、ハイエルフの長が会いたいと言っているのなら会ってみたい気も、する。
「会わせてもらえますか?」
兄ちゃんはまたジッと俺を見る。
だから、間が怖いって。
「……ならば着いて、こい」
そう言うと、スタスタと滝に入っていった。
急いで兄ちゃんの後を追う。
滝を越えた瞬間、街の広場になっていた。
滝自体が空間転移装置になっていたのか、今、目の前に広がるこの光景こそが、ハイエルフの本当の住処であろう。
周囲を見回すと、広大な領域を大樹が覆い、そこに白亜の建造物や彫刻が建ち並ぶ。
まるで神々が暮らすかの様な神聖な気で満ち溢れている。
鳥や虫はもちろん、羽の生えた馬や妖精フェアリーまでもが、空を自由に飛んでいる。
そう、俺が知ってる妖精はアレだ。
辺りをキョロキョロしていると、数人のエルフと思しき人物が物珍しそうな目でこちらを見ている。
先程の兄ちゃんは、目の前の大きな階段のかなり上まで歩いていた。
歩くスピードがやたら早い。
だが【転移】を見せるのもどうかと思い、リリィと共に駆け足で急いだ。
大分歩かされたが、兄ちゃんはようやく宮殿らしい建物に入っていった。
歩いている間、すれ違う女性エルフは全員スーパーモデル級の美人だった。
ハリウッドスターレベルというか、住む世界が違う感じ。
エルフなんだから住む世界が違って当然だが。
ただ耳が長いんだよなぁ。
いや、マイナス要素にはならない。
ちょっと触ってみたいという欲求がすでに湧いている。
妄想していると、どうやら目的地である長の部屋に到着したようだ。
白を基調とした広い部屋。
一際でかい玉座の様な椅子に綺麗な女性が座っている。
何故か和の着物の様な服を着ていた。なんだあれは?
横には、鎧を着た騎士風の女二人が立っている。
どいつもこいつも可愛い。
ヤバイな、エルフ。
「我らエルフの長、エルメス様だ」
「ようこそ人間よ。
人間がここにくるのは三百年振りだろうか。
私は長老エルメスだ。
歓迎するぞ」
「ど、どうも。
テツオといいます」
一応、会釈しておく。
初対面の人にはどうも緊張してしまうな。
リリィは慣れたように、丁寧に挨拶しお辞儀する。
「楽にしてよいぞ。
すでに分かってるだろうが、ここはエルフの国だ。
国という程の人口はおらぬが、十数人のハイエルフと数百人のエルフが住んでおる。
三百年前の魔族との戦争以来、同胞の数も減り、それ以降、種族間での交流はしておらん。
一部のエルフ、ハーフエルフは人間界におるが、それらはもう我らとは袂を別つ者達だ。
とは言え、我らは同胞も人間も嫌っている訳ではない。
私には同族を守る責務があるのでな。
三百年振りの客人よ、せっかく来たのだ。
ゆっくりしていかれよ。
アムロド」
「は。
……では、こちらへ」
あら?もう終わり?
男ハイエルフのアムロドに案内され、泉の休息所とやらに連れて行かれた。
川の上に巨大な葉が浮いており、そこに胞子で出来たふんわりとした椅子と巨大な虫の抜け殻で出来た透明なテーブルがある。
運ばれてきたのは、不思議な菓子と飲み物だった。
一見クッキーと紅茶に見えるが、苦味と酸味が相まって、めちゃくちゃマズい。
こいつら、味覚がどうかしてる。
「まさかエルフの国に来れるなんて、やっぱり貴方凄いわ」
「そんなにエルフって珍しいのか?」
「私の国にはハーフエルフなら数人いるけど、純血のエルフは一人しか見た事ないわ」
「他にこの世界にはどんな種族がいるんだ?」
「そうね、ドワーフ族、小人族、他に獣人とかの亜人族がいるわ。
ただ三百年前の戦争の影響で、人間と距離を置く種族もいるわね。
魔族に組みしてる種族もいると思うし」
「そんなにいっぱい種族いるのか。
魔族とか、怖いな」
話をしているとアムロドが再びやって来た。
「やはり、人間の口には、合わぬか」
残された菓子類を一瞥し、アムロドは無表情のまま呟いた。
なんとなく嫌な空気が流れたが、たいして気にした風もなくアムロドは、長老から俺に話があると続けた。
先程の長老の部屋に再び案内されると、長老が一人窓際に立っていた。
二人きりだ。
こんな超絶美女とマンツーマンなんてドキドキしちゃうね。
何だろう話って。
告白されたりして!
「何度も足を運ばせて悪いな」
「いえいえ」
ご褒美でございます。
「お主が連れてきた人間の女は、おそらく天命がある者だろう。
それと共に行動するお主に興味がある。
少し話がしたいのだがよいか?」
頷く俺。
この顔を堂々と眺めれる喜び。
「三百年前は勇者なる人間がここを訪れた。
そして、今日お主がここに来た。
勇者ではなくお主が。
その真意を測りかねておる」
と、言われましても。
俺にもよく分からん。
「まずは何があったかを教えておこう。
三百年前、この世界では魔族との戦争があった。
その時代の勇者に頼まれ、我らエルフ族は初めて人間に手を貸した。
だが魔族はとても強く、我らエルフ族は多くの犠牲を出した。
勇者達の働きにより、魔族は侵攻を止めたが、魔族は滅んではいない。
三百年の時を経て、再び力を蓄えた魔族がいずれ現れる。
その時、全種族は再び動乱に巻き込まれるだろう」
壮大な物語だ。
勇者の役回り大変過ぎない?
「これはこの世界に生まれ育つ者なら、種族問わず誰でも識る事だ。
お主は違う世界から来たのであろう?
そして何か神の加護を感じる」
「分かるんですか?」
「私には【千里眼】がある。
お主の事は、この眼で見えておるわ」
な、なんだと?
盗み見された気分だ。
よし、俺も見てやろう!
【解析】
え?み、見れない!
「私を見ようとしたな?
だが、見れぬよう術を施しておる。
悪いな」
エルメス様はフフフと微笑する。
お美しい。
でも悔しい。
「私ばかり見ると言うのも些か悪い気がするのぅ。
お主は強大な魔力を持つようだが、魔法を使いこなせていないようだ。
酷く歪なバランスで、うまく魔法が機能しとらん。
どれ、詫びといっては何だが、お主の魔力回路を調整してやろう」
エルメス様が手を翳すと、何だか身体から力が湧き出すのを感じた。
「どうだ?
多分お主は、今まで簡単な初歩魔法しか出せなかっただろう。
桁違いの威力でも、下位魔法では限度がある。
だが、楽器を調律する様に、お主の魔力回路を整え、複雑な上位魔法も発動出来るようにした」
身体中に、魔力が行き渡る感じがする。
今なら強力な魔法も簡単に出せそうだ。
頭の中で色々術式を検索していると、【解析】で自分自身が見れるようになっている。
え?自分ってどうなんだ?
ワタライテツオ
年齢:25
LV:10
HP:120
MP:530000
俺、レベル10なのか。弱っ。
生命力も低いし。
というか魔力なんだこれ?
高過ぎなんだけど……
ただ、年齢が分かるようになったのはありがたい。
女性には年齢聞きにくいしね。
「この世界の理と違うところから来たお前は、どうやらレベルが上がりにくいようだな。
だが、経験を積んでいけばより強くなれよう」
という事は何かしらハンデがあるみたいだな。
気にする事もあるまい。
時間を戻せば、無限に経験値は稼げる。
「レベルという概念は、人間界ではまだまだ浸透しておらんし、あくまで魔力解析による大まかな指標に過ぎん。
お主の様に魔法を用い、レベルの高い敵を倒す事も出来る。
逆もまた然り。
ゆめゆめ忘れぬようにな」
「ありがとうございます。
肝に命じておきます」
全くその通りだ。
今まで、弱い敵に何度やられてきた事か。
魔法でなんとか勝てるようになってきたが、今のレベル、体力では、強い攻撃をまともに喰らえば死ぬくらい弱い。
自信過剰になりがちだったが、この世界で行きていくにはやはり慎重にならないといけないな。
「ニンゲン?ねぇ、ニンゲンなの?」
「ニンゲンて美味しいの?」
「キャハハハ」
滝に向かって、せせらぎの音を聞きながら川辺を歩いていると、羽根の生えた小さい人型の生き物数体に絡まれてしまい、俺の周りを五月蝿く飛び回っている。
リリィが言うには、これらはピクシーと言う妖精らしい。
100センチくらいのサイズで、可愛い見た目をしているが、発言内容がなんか怖い。
悪戯好きで好奇心旺盛だが、余程の事がない限り人間を襲う事はないとリリィは言う。
懐くのであればペットとして一匹欲しいくらい造形は見事なのだが。
ピーターパンに出てくる妖精はもっと小さいイメージだったけど、種類によって大きさ違うのかな?
「ねぇ、妖精さん、ここには何があるのかな?」
「喋った!喋った!ニンゲン喋った!」
「キャハハハハ」
ムカッとくるなぁ。
……いや、良くない。
紳士たれ。
無視だ。
しばらく歩いているとようやく滝壺が見えてきたので、リリィを伴い滝の麓まで一気に【転移】する。
【転移】前の場所で、置き去りにされた妖精達がピーピー騒いでいる。
本当に煩い。
滝は思ったより大きかったが、滝壺は澄んだ綺麗な緑色をしていた。
森を抜けた突き当たりが滝だったので、ここで行き止まりとなっている。
「幻想的で、とても綺麗ね」
「また罠かもしれんぞ」
すると、滝の中から人影が浮かび上がり、一人の男が不思議な事に水に全く濡れずに現れた。
病的に色白で鼻が高い端正な顔をしたその男は、長い金髪を後ろで束ね、丸出しになった耳の先は尖っている。
「エ、エルフだわ」
エルフとな?人間にしか見えないが、あんな耳を尖らせた人間は見た事がない。
「…………私は、ハイエルフだ。
さて、君達は、ガーディアンを、倒しここまでやってきたようだが。
来訪の、目的を聞かせて、もらえるか?」
「いや、えーと、目的とかは無いんですが、そこに山があるから登って、襲われたから倒して、穴が空いたから入った、というか。
言うなれば流れですかね」
「…………」
ハイエルフの兄ちゃんは黙ってこちらを伺っている。
言い方がまずかったか?
沈黙が辛くなってきた頃、兄ちゃんが再び口を開いた。
「ふむ、久しく山を登る者も、おらずガーディアンも劣化して、いたという、ことか。
いや、失礼。
虚偽が、無い事も敵意が、無い事も把握、している。
そこで、だがどうする?
我々の長老が、会ってみたいようなのだが、無理強いは、しない。
帰るなら来た道を戻れば、よい」
喋りの間の取り方が気持ち悪いな。
どこで言葉区切ってんだよ。
だが、ハイエルフの長が会いたいと言っているのなら会ってみたい気も、する。
「会わせてもらえますか?」
兄ちゃんはまたジッと俺を見る。
だから、間が怖いって。
「……ならば着いて、こい」
そう言うと、スタスタと滝に入っていった。
急いで兄ちゃんの後を追う。
滝を越えた瞬間、街の広場になっていた。
滝自体が空間転移装置になっていたのか、今、目の前に広がるこの光景こそが、ハイエルフの本当の住処であろう。
周囲を見回すと、広大な領域を大樹が覆い、そこに白亜の建造物や彫刻が建ち並ぶ。
まるで神々が暮らすかの様な神聖な気で満ち溢れている。
鳥や虫はもちろん、羽の生えた馬や妖精フェアリーまでもが、空を自由に飛んでいる。
そう、俺が知ってる妖精はアレだ。
辺りをキョロキョロしていると、数人のエルフと思しき人物が物珍しそうな目でこちらを見ている。
先程の兄ちゃんは、目の前の大きな階段のかなり上まで歩いていた。
歩くスピードがやたら早い。
だが【転移】を見せるのもどうかと思い、リリィと共に駆け足で急いだ。
大分歩かされたが、兄ちゃんはようやく宮殿らしい建物に入っていった。
歩いている間、すれ違う女性エルフは全員スーパーモデル級の美人だった。
ハリウッドスターレベルというか、住む世界が違う感じ。
エルフなんだから住む世界が違って当然だが。
ただ耳が長いんだよなぁ。
いや、マイナス要素にはならない。
ちょっと触ってみたいという欲求がすでに湧いている。
妄想していると、どうやら目的地である長の部屋に到着したようだ。
白を基調とした広い部屋。
一際でかい玉座の様な椅子に綺麗な女性が座っている。
何故か和の着物の様な服を着ていた。なんだあれは?
横には、鎧を着た騎士風の女二人が立っている。
どいつもこいつも可愛い。
ヤバイな、エルフ。
「我らエルフの長、エルメス様だ」
「ようこそ人間よ。
人間がここにくるのは三百年振りだろうか。
私は長老エルメスだ。
歓迎するぞ」
「ど、どうも。
テツオといいます」
一応、会釈しておく。
初対面の人にはどうも緊張してしまうな。
リリィは慣れたように、丁寧に挨拶しお辞儀する。
「楽にしてよいぞ。
すでに分かってるだろうが、ここはエルフの国だ。
国という程の人口はおらぬが、十数人のハイエルフと数百人のエルフが住んでおる。
三百年前の魔族との戦争以来、同胞の数も減り、それ以降、種族間での交流はしておらん。
一部のエルフ、ハーフエルフは人間界におるが、それらはもう我らとは袂を別つ者達だ。
とは言え、我らは同胞も人間も嫌っている訳ではない。
私には同族を守る責務があるのでな。
三百年振りの客人よ、せっかく来たのだ。
ゆっくりしていかれよ。
アムロド」
「は。
……では、こちらへ」
あら?もう終わり?
男ハイエルフのアムロドに案内され、泉の休息所とやらに連れて行かれた。
川の上に巨大な葉が浮いており、そこに胞子で出来たふんわりとした椅子と巨大な虫の抜け殻で出来た透明なテーブルがある。
運ばれてきたのは、不思議な菓子と飲み物だった。
一見クッキーと紅茶に見えるが、苦味と酸味が相まって、めちゃくちゃマズい。
こいつら、味覚がどうかしてる。
「まさかエルフの国に来れるなんて、やっぱり貴方凄いわ」
「そんなにエルフって珍しいのか?」
「私の国にはハーフエルフなら数人いるけど、純血のエルフは一人しか見た事ないわ」
「他にこの世界にはどんな種族がいるんだ?」
「そうね、ドワーフ族、小人族、他に獣人とかの亜人族がいるわ。
ただ三百年前の戦争の影響で、人間と距離を置く種族もいるわね。
魔族に組みしてる種族もいると思うし」
「そんなにいっぱい種族いるのか。
魔族とか、怖いな」
話をしているとアムロドが再びやって来た。
「やはり、人間の口には、合わぬか」
残された菓子類を一瞥し、アムロドは無表情のまま呟いた。
なんとなく嫌な空気が流れたが、たいして気にした風もなくアムロドは、長老から俺に話があると続けた。
先程の長老の部屋に再び案内されると、長老が一人窓際に立っていた。
二人きりだ。
こんな超絶美女とマンツーマンなんてドキドキしちゃうね。
何だろう話って。
告白されたりして!
「何度も足を運ばせて悪いな」
「いえいえ」
ご褒美でございます。
「お主が連れてきた人間の女は、おそらく天命がある者だろう。
それと共に行動するお主に興味がある。
少し話がしたいのだがよいか?」
頷く俺。
この顔を堂々と眺めれる喜び。
「三百年前は勇者なる人間がここを訪れた。
そして、今日お主がここに来た。
勇者ではなくお主が。
その真意を測りかねておる」
と、言われましても。
俺にもよく分からん。
「まずは何があったかを教えておこう。
三百年前、この世界では魔族との戦争があった。
その時代の勇者に頼まれ、我らエルフ族は初めて人間に手を貸した。
だが魔族はとても強く、我らエルフ族は多くの犠牲を出した。
勇者達の働きにより、魔族は侵攻を止めたが、魔族は滅んではいない。
三百年の時を経て、再び力を蓄えた魔族がいずれ現れる。
その時、全種族は再び動乱に巻き込まれるだろう」
壮大な物語だ。
勇者の役回り大変過ぎない?
「これはこの世界に生まれ育つ者なら、種族問わず誰でも識る事だ。
お主は違う世界から来たのであろう?
そして何か神の加護を感じる」
「分かるんですか?」
「私には【千里眼】がある。
お主の事は、この眼で見えておるわ」
な、なんだと?
盗み見された気分だ。
よし、俺も見てやろう!
【解析】
え?み、見れない!
「私を見ようとしたな?
だが、見れぬよう術を施しておる。
悪いな」
エルメス様はフフフと微笑する。
お美しい。
でも悔しい。
「私ばかり見ると言うのも些か悪い気がするのぅ。
お主は強大な魔力を持つようだが、魔法を使いこなせていないようだ。
酷く歪なバランスで、うまく魔法が機能しとらん。
どれ、詫びといっては何だが、お主の魔力回路を調整してやろう」
エルメス様が手を翳すと、何だか身体から力が湧き出すのを感じた。
「どうだ?
多分お主は、今まで簡単な初歩魔法しか出せなかっただろう。
桁違いの威力でも、下位魔法では限度がある。
だが、楽器を調律する様に、お主の魔力回路を整え、複雑な上位魔法も発動出来るようにした」
身体中に、魔力が行き渡る感じがする。
今なら強力な魔法も簡単に出せそうだ。
頭の中で色々術式を検索していると、【解析】で自分自身が見れるようになっている。
え?自分ってどうなんだ?
ワタライテツオ
年齢:25
LV:10
HP:120
MP:530000
俺、レベル10なのか。弱っ。
生命力も低いし。
というか魔力なんだこれ?
高過ぎなんだけど……
ただ、年齢が分かるようになったのはありがたい。
女性には年齢聞きにくいしね。
「この世界の理と違うところから来たお前は、どうやらレベルが上がりにくいようだな。
だが、経験を積んでいけばより強くなれよう」
という事は何かしらハンデがあるみたいだな。
気にする事もあるまい。
時間を戻せば、無限に経験値は稼げる。
「レベルという概念は、人間界ではまだまだ浸透しておらんし、あくまで魔力解析による大まかな指標に過ぎん。
お主の様に魔法を用い、レベルの高い敵を倒す事も出来る。
逆もまた然り。
ゆめゆめ忘れぬようにな」
「ありがとうございます。
肝に命じておきます」
全くその通りだ。
今まで、弱い敵に何度やられてきた事か。
魔法でなんとか勝てるようになってきたが、今のレベル、体力では、強い攻撃をまともに喰らえば死ぬくらい弱い。
自信過剰になりがちだったが、この世界で行きていくにはやはり慎重にならないといけないな。
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